- 著者
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笠間 周
- 出版者
- 公益財団法人 日本心臓財団
- 雑誌
- 心臓 (ISSN:05864488)
- 巻号頁・発行日
- vol.40, no.1, pp.89-92, 2008-01-15 (Released:2013-05-24)
- 参考文献数
- 6
心不全患者は心臓交感神経終末におけるノルェピネフリン(NE)の放出が充進している.同時にアルドステロンの影響でNEの再取込機構uptake-1が障害されており,心臓交感神経活性が亢進すると考えられている.その指標となる123I-MIBGシンチグラフィによる心縦隔比(H/M比)の低下,洗い出し率(WR:washout rate)の上昇は予後不良を示すため,心臓交感神経活性の改善が重要となる.われわれはこれまでに,ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(hANP:カルペリチド)がレニンーアンジオテンシンーアルドステロン(RAA)系の抑制を介して,心不全患者における心臓交感神経活性を抑制することを報告した.しかし,急性心筋梗塞(AMI)患者の心臓交感神経活性に対するカルペリチドの効果は明らかでない.今回,初回前壁AMI症例においてdirect PCI前からカルペリチドまたは硝酸イソソルビド(ISDN)を投与し,心臓交感神経活性と左室リモデリングに対する効果を比較検討した.また,再灌流障害,心筋サルベージ,左室リモデリングについても検討した.その結果,カルペリチド群はISDN群と比較してH/M比は高く,WRは低値であった.また.心筋サルベージ率もISDNと比較して高かった.さらに,慢性期左室拡張末期容積の増加を抑制し,左室駆出率を改善した.以上から,カルペリチドはISDNと比較し心臓交感神経活性および左室リモデリングの抑制に有効であることが示された.