著者
新福 一貴 笹嶋 宗彦
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.655-667, 2023-05-15 (Released:2023-05-15)
参考文献数
20

顧客満足度とは企業が提供するサービスや商品に対する顧客の満足度を表す指標であり,顧客満足度を向上させることは企業にとって最も重要な課題の1つである.しかし,最も投資対効果の高い顧客満足度向上方法を発見することは容易ではない.なぜなら,サービスや商品は,それ自体の品質や価格だけではなく,提供のされ方や提供される店の雰囲気,利用した時に得られる満足感など,多くの軸から評価されるものであり,どの評価軸における課題を解決することが顧客満足度向上につながるのかを見極めることは,一般に困難である.評価軸には,「この企業に対する満足度」のような企業に対する総合的な満足度を問う質問項目に対する回答である総合満足度と,総合満足度を判断する根拠となる,個々の質問項目への回答である個別項目満足度が含まれる.これらから課題の選択を支援するための可視化手法については従来から研究が行われており,総合満足度とそれに対する個別項目の重要度を相関関係より算出し,可視化するCS(Customer Satisfaction)ポートフォリオ分析やIPA(Importance-Performance Analysis)と呼ばれる方法がある.しかし,既存研究は,判断の際に重要である,競合企業との関係性についての可視化が不十分である.そこで本論文では,カフェ,ドラッグストア,保険販売業,など自社企業が所属する業種に含まれる,複数企業を対象に行った個別項目と総合満足度のアンケートを入力として,自社企業に対する顧客満足度が,業種の中でどのような位置にあるかを可視化するツールCSIMGを提案する.CSIMGは,従来研究が可視化してきた,自社サービスや商品の総合満足度と個別項目の関係だけではなく,各個別項目の評価値が,同業種の他社と合わせてどの程度ばらついているか,言い換えれば,改善の余地があるか否かを可視化することで,経営者が,どの項目に優先して投資すべきか判断することを支援する.4つの業界アンケートを対象に,CSIMGの出力と,人間の経営アドバイスの専門家である中小企業診断士の判断とを比較した結果,アンケート回答者である一般消費者が,サービスや商品を自分で複数社利用し比較できるような業種については,CSIMGが,人間の専門家と近い評価結果を出力できる可能性があることを示すことができた.
著者
笹嶋 宗彦 石橋 健 山本 岳洋 加藤 直樹
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第37回 (2023) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.1N4GS1003, 2023 (Released:2023-07-10)

兵庫県立大学社会情報科学部では,実践力のあるデータサイエンティストの育成を目標に,学部1年生,2年生を対象として,連携企業の実データを用いた課題解決型演習(PBL)を実施しており,今年で4年目となる.本学部が育成を目指すデータサイエンティストとは,ITスキルと統計学の知識を用いてデータを分析する力だけではなく,実社会の課題を定式化し必要なデータを収集する力や,分析の結果を用いて社会をよくする提案が出来る社会実装力を備えた人材である.低学年はデータ分析力が低いが,ツールを利用して実データを分析し,実店舗へ向けた販売施策を提案する過程を体験することで,経営を改善することへの興味を持たせることや,データだけでなく現場を見て考えることの重要性を学ばせることを狙いとしている.2019年の学部創設以来1年生向けのPBLを4回実施し,今年度は新しい試みとして,実習対象となる店舗を1店舗に限定して実施した.事後に学生アンケートを取ることで,演習を評価した.本稿では,2022年度実施したPBL演習の概要と,これまでのPBL演習を通じて得られた,実データを利用するPBLの長所と課題について述べる.
著者
坂井 明日香 丸橋 弘明 羽室 行信 笹嶋 宗彦 加藤 直樹 宇野 毅明
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.WI2-I_1-12, 2021-01-01 (Released:2021-01-01)
参考文献数
12

Recently, data-driven sales management is widely recognized and sales at the real super-market is not the exception. For designing such strategies, first of all, we have to analyze consumers’ behavior. However, such an analysis is difficult, especially for the managers of the real shops, since they only have customers’ data of their own shops. Generally, the customers buy things not only from the managers’ shops but also other shops. The goal of this research is to develop a general method to transfer sales promotion strategy, derived from analysis on wide area, to local real shop. The authors analyzed such consumers’ characteristics who buy olive oils in Kansai region. For the analysis, we used QPR(Quick Purchase Report system, developed and managed by MACROMILL, Inc). Firstly, we divided the consumers on the QPR into five clusters, according to the simultaneous buying pattern. Then, we analyzed each of the clusters and found some emerging patterns of the purchasing behavior. Observing the patterns, we designed a marketing strategy for the real shop in Hyogo prefecture belonging Kansai district. Finally, we carried out an experiment at the shop to evaluate whether the strategy promotes the sales of the olive oil or not for six weeks. The result of the experiment showed that the marketing strategy is effective in one view. At the same time, we learned many lessons from the research, especially difficulty of the evaluation at the real shop.
著者
笹嶋 宗彦 石橋 健 山本 岳洋 加藤 直樹
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.1I1OS601, 2022 (Released:2022-07-11)

兵庫県立大学社会情報科学部では,実践力のあるデータサイエンティストの育成を目標に,学部1年生,2年生を対象として,連携企業の実データを用いた課題解決型演習(PBL)を実施している.本学部が育成を目指すデータサイエンティストとは,ITスキルを用いてデータを分析する力だけではなく,実社会において課題を発見・定式化し必要なデータを収集する力や,分析の結果を用いて社会をよくする提案が出来る社会実装力を備えた人材である.低学年は,データ分析力も,ITスキルも持っていないが,スキルに合ったやり方でデータを分析し,実店舗へ向けた販売施策を提案する過程を体験することで,経営を改善することへの興味を持たせることや,データだけでなく,現場を見て考えることの重要性を学ばせることを狙いとしている.2019年の学部創設以来,1年生向けのPBLを3回,2年生向けを2回実施し,それぞれ事後に学生アンケートを取ることで,演習を評価してきた.本稿では,今年度実施したPBL演習の概要と,これまでのPBL演習を通じて得られた,実データを利用するPBLの長所と課題について述べる.
著者
來村 徳信 中條 亘 笹嶋 宗彦 師岡 友紀 辰巳 有紀子 荒尾 晴惠 溝口 理一郎
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.D-K94_1-16, 2021-07-01 (Released:2021-07-01)
参考文献数
32

For appropriate execution of human actions as a service, it is important to understand goals of the actions, which are usually implicit in the sequence-oriented process representations. CHARM (an abbreviation for Convincing Human Action Rationalized Model) has been proposed for representing such goals of the actions in a goal-oriented structure. It has been successfully applied for training novice nurses in a real hospital. Such a real-scale and general knowledge model, however, makes the learners difficult to understand which actions are important in a specific context such as a patient’s risk for complications. The goal of this research is to realize a context-adaptive knowledge structuring mechanism for emphasizing such actions that need special attention in a given context. As an extension of the CHARM framework, the authors have developed a general mechanism based on multi-goal action models and pathological mechanism models of abnormal phenomena. It has been implemented as a software system on tablet devices called CHARM Pad. We have also described knowledge models for the nursing domain, which include pathological mechanism models of complications with their risk factors. CHARM Pad with these models had been used by nursing students and evaluated by them through questionnaires. The result shows that CHARM Pad helped them understand the goals of nursing actions as well as finding of symptoms of complications context-adaptively.
著者
林 宏樹 笹嶋 宗彦 大里 隆也
雑誌
情報教育シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.146-150, 2020-12-12

本論文は,全校生を対象とした兵庫県立姫路西高等学校のデータサイエンス教育の3年間のカリ キュラム開発についての概要である.教科「数学」「情報」「課題研究」「総合的な探究の時間」における 横断的なカリキュラムマネジメントにより,データサイエンスを基盤とした研究活動を実施するカリキ ュラム開発を行う.全校生対象の高等学校におけるデータサイエンス教育実践の1つの事例である。 また,「データサイエンス探究・研究」という学校設定科目の客観的な評価基準を作成する.
著者
笹嶋 宗彦 加藤 直樹 丸橋 弘明 羽室 行信
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回全国大会(2020)
巻号頁・発行日
pp.4K3GS304, 2020 (Released:2020-06-19)

データサイエンス教育においては,プログラミング技術や統計学知識などのデータ分析力だけでなく,社会の現場から問題を見つけ出す課題発見力や,分析の結果を現場に浸透させて改善する社会実装力の重要性を学ばせることが必要である.兵庫県立大学社会情報科学部では,これらデータサイエンティストが備えるべきスキルを実践的に学ばせるために,企業と連携して,実際のデータを用いた課題解決型演習を,学部1年生から必修科目として取り入れている.2019年度入学の一期生101名を対象としてPBL演習を実施し,事後アンケートを取ることで,学生からの主観評価を得た.その結果,自分自身がデータサイエンティストとして社会活動していく上での課題や,本人の持つスキルのバランスなど,様々な気づきを学生に与えることができた.他方,PBL演習の運営については,初めての試みでもあり,様々な知見が得られた.

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著者
笹嶋 宗彦 西村 悟史 來村 徳信 高岡 良行 溝口 理一郎
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.27, 2013

様々な組織の業務マニュアルや,工作機械に添付される分厚い説明書には,行動規範や操作方法だけでなく,想定リスクなど有用な知識や無形のノウハウが蓄積されているが,非常に読みにくく,十分活用されていない.こうしたマニュアルを構造化することで,新人教育,機械の設置や保守,営業活動,クレーム収集など,様々な用途向けの知識を抽出し活用することが可能となる.実際の病院や工作機械メーカーとの実践を交えて紹介する.