著者
青木 美和 升谷 英子 畠山 明子 髙尾 鮎美 荒尾 晴惠
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.23-31, 2022 (Released:2022-03-14)
参考文献数
30

【目的】本研究の目的は,看護師の進行がん患者への積極的治療の推奨とその関連要因を明らかにすることである.【方法】A県内のがん診療連携病院2施設の看護師383名に無記名自記式質問紙調査を実施.2事例への積極的治療の推奨,推奨を決定づける看護師の価値観を尋ね,単変量および多変量解析を行った.【結果】有効回答の得られた300名(有効回答率78.3%)を分析した.治療の推奨には,患者の予後やPerformance Status(PS)を問わず患者の希望や生存期間の延長を重視する看護師の価値観が,予後1カ月の患者には副作用に伴う不利益の回避を重視する価値観が関わっていた.また,予後6カ月の事例には治療を推奨するが,予後1カ月の事例への治療の推奨は看護師の価値観の違いにより二分された.【結論】看護師の治療の推奨には看護師の価値観が関わっていた.看護師は,患者の治療目標を共有したうえで,治療の意思決定のプロセスに関わる必要性が示された.
著者
佐竹 陽子 荒尾 晴惠
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.201-208, 2018 (Released:2018-06-14)
参考文献数
23
被引用文献数
3

研究目的は,救急領域で終末期ケアを実践する看護師の葛藤を明らかにすることである.救急看護に従事する看護師11名を対象に半構造化面接を実施し,内容分析を行った.その結果,[救命と看取りの混在][患者や家族のニーズの捉えにくさ][看護の目標の不確かさ]という救急領域の特徴が看護師の葛藤を引き起こしていた.葛藤には,[終末期ケアを実践する環境への葛藤][倫理原則に関する葛藤][家族や医療チームとの関係性から生じる葛藤][確信がもてないまま実践する看護ケアへの葛藤]という看護の役割を果たせないと感じる葛藤や,[看護師としての死生観がうむ葛藤]という看護師の心理的負担があった.救急という特殊な状況での終末期ケアとして看護の役割を検討すること,看護の目標は経過に応じて検討し医療チームや家族と共有すること,看護師への心理的支援としてデブリーフィングの機会をもつことの必要性が示唆された.
著者
福嶋 真志 來村 徳信 溝口 理一郎 山本 瀬奈 間城 絵里奈 淺野 耕太 田墨 惠子 青木 美和 中村 成美 荒尾 晴惠
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.SWO-058, pp.05, 2022-11-22 (Released:2022-12-03)

本研究の目的は,がん治療の副作用による生活上の問題点を感じているがんサバイバーの生活改善を支援するために,問題を解決する生活の知恵を知識モデルとして記述し,患者同士が生活の知恵を共有・活用できるシステムを開発することである.文献や患者インタビューの分析結果に基づいて,行為分解木というオントロジカルな枠組みを援用して,投薬から症状の発現,症状から日常生活における問題点と,それに対する対処方法を,原因—結果の因果連鎖として構造化し,対処方法を分類して,知識モデルとして記述した.記述した知識モデルに基づいて,患者がWebブラウザ上で生活上の問題点から対処方法を閲覧・共有できる知識共有システムのプロトタイプを開発した.本稿では設計思想,プロトタイプの機能と動作などについて報告する.
著者
來村 徳信 中條 亘 笹嶋 宗彦 師岡 友紀 辰巳 有紀子 荒尾 晴惠 溝口 理一郎
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.D-K94_1-16, 2021-07-01 (Released:2021-07-01)
参考文献数
32

For appropriate execution of human actions as a service, it is important to understand goals of the actions, which are usually implicit in the sequence-oriented process representations. CHARM (an abbreviation for Convincing Human Action Rationalized Model) has been proposed for representing such goals of the actions in a goal-oriented structure. It has been successfully applied for training novice nurses in a real hospital. Such a real-scale and general knowledge model, however, makes the learners difficult to understand which actions are important in a specific context such as a patient’s risk for complications. The goal of this research is to realize a context-adaptive knowledge structuring mechanism for emphasizing such actions that need special attention in a given context. As an extension of the CHARM framework, the authors have developed a general mechanism based on multi-goal action models and pathological mechanism models of abnormal phenomena. It has been implemented as a software system on tablet devices called CHARM Pad. We have also described knowledge models for the nursing domain, which include pathological mechanism models of complications with their risk factors. CHARM Pad with these models had been used by nursing students and evaluated by them through questionnaires. The result shows that CHARM Pad helped them understand the goals of nursing actions as well as finding of symptoms of complications context-adaptively.
著者
杉浦 康代 青木 美和 市原 香織 荒尾 晴惠
出版者
一般社団法人 日本専門看護師協議会
雑誌
日本CNS看護学会誌 (ISSN:21895090)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-10, 2021-03-31 (Released:2021-03-31)
参考文献数
21

本研究は,がん診療連携拠点病院に勤務するがん看護専門看護師(以下,がん看護CNS)のがんゲノム医療に関する学習ニーズを明らかにし,学習支援に示唆を得ることを目的とした.がん診療連携拠点病院で勤務するがん看護CNSのうち,日本看護協会HPに氏名・所属が掲載されていた464名を対象として無記名自記式質問紙調査を実施し,記述統計,χ٢検定およびFisherの正確確率検定を実施した.対象者233名(有効回答率50.2%)の6割が全調査項目に学習ニーズを有していたが,なかでも「複雑で解決困難な看護問題への対応」「意思決定支援」は,8割の対象者が学習ニーズを有していた.また,がんゲノム医療に関する施設要件別において,「多職種連携」と「がん遺伝子パネル検査の結果を伝える際のアセスメント方法」の学習ニーズに有意差が認められた.以上より,がん看護CNSががんゲノム医療の特殊性のなかで自身の役割を発揮するための学習支援の必要性が示唆された.
著者
竹井 友理 山本 瀬奈 師岡 友紀 南口 陽子 畠山 明子 辰巳 有紀子 荒尾 晴惠
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.35-43, 2021 (Released:2021-02-09)
参考文献数
23

【目的】本研究の目的は,がん患者の緩和ケア開始時期の認識と関連要因を明らかにすることである.【方法】がん診療連携拠点病院に入院・通院中のがん患者を対象に無記名自記式質問紙調査を行った.個人属性,がん・治療状況,緩和ケア開始時期の認識,緩和ケアの認知や提供状況を調査し,ロジスティック回帰分析を行った.【結果】3,622名のうち1,981名(54.7%)の回答を得た.1,187名(59.9%)が早期から,414名(20.9%)が終末期からの緩和ケアの認識であった.症状への対応あり(vs.該当なし,OR=0.56),再発・転移あり(vs.なし,OR=1.44),40代以下(vs.70代以上,OR=1.67)は終末期からの緩和ケアの認識と有意に関係した.【考察】症状への対応が必要となる前から緩和ケアの普及啓発を行うことが早期からの緩和ケアの認識を促進する可能性がある.
著者
三澤 貴代美 升谷 英子 荒尾 晴惠
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.309-319, 2020 (Released:2020-11-24)
参考文献数
22

【目的】再発・転移をきたした悪性骨軟部腫瘍患者のケアに携わる看護師が抱く困難感の実態とその関連要因を明らかにする.【方法】骨軟部腫瘍治療を行う12施設の看護師315名を対象に,看護師のがん看護に関する困難感および本疾患患者のケアへの困難感を調査した.また重回帰分析により関連要因を検討した.【結果】回答者は165人(有効回答率52.4%)であった.〈看護師のがん看護に関する困難感〉では,コミュニケーションの困難が最も高く,自らの知識・技術や,システム・地域連携の困難も高かった.〈悪性骨軟部腫瘍患者への看護に関する困難感〉では,ケアの対象特性に関することが高かった.関連要因は,施設特性,看護師経験や骨軟部腫瘍看護経験,骨軟部腫瘍看護の学習方法,多職種カンファレンスを認めた.【結論】骨軟部腫瘍に携わる看護師は,全人的苦痛,発症年齢,希少性に基づく困難があり,背景要因を踏まえた支援が必要である.
著者
荒尾 晴惠 小林 珠実 田墨 惠子
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

【研究目的】本研究は、化学療法を受ける乳がん患者の認知機能障害について明らかにし、患者自身が必要なセルフケアを実行できるよう支援する有効な看護介入を考案することにある。最終年度の平成22年度は、化学療法を受ける乳がん患者の認知機能障害の様相を明らかにすることを目的として2つの研究に取り組んだ。【研究方法】研究(1)外来通院中の化学療法を受ける乳がん患者を対象に、認知機能障害の様相について質的研究を行った。半構成的面接法を行い共通したコードを集めてカテゴリー化した。研究(2)在宅療養中の乳がん患者を対象に研究者らが作成した認知機能障害の項目について自記式質問紙による調査を行った。研究の実施にあたっては、調査施設の研究倫理委員会で審査を受け承認を得た後に実施した。【結果と考察】研究(1)対象者は10名で、全員が女性、平均年令は53.5歳、2名が術前化学療法。〈自覚する認知機能の変化〉として《記憶力の低下》《思考力の低下》《注意力の低下》があった。さらに、《家族からの認知機能の評価》があり、自分では気づかないが同居者から指摘を受けていた。影響を与える状況として、末梢神経障害や倦怠感などの〈身体機能の変化〉と同時に〈心の在り様の変化〉があった。これらは《注意力の低下》に影響し〈いつもの暮らしの継続の支障〉として《自動車運転への支障》《対人関係への支障》を来していた。また《記憶力の儀下》は、《家事遂行の支障》を引き起こしていた。研究(2)対象者は30名(回収率62.5%)全員が女性平均年齢は55.3歳。認知機能障害の項目として対象者の自覚があったのは短期記憶、運動機能、情報処理速度だった。以上の研究成果から、化学療法を受ける乳がん患者の認知機能障害の様相の特徴が明らになったが、加齢による認知機能障害との識別など課題も明確になっており、対象者の人数を増やし程度や時期による変化についても検証していくことを今後の課題とした。