著者
佐藤 久美 粟津原 理恵 原田 和樹 長尾 慶子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.323-330, 2011 (Released:2014-05-16)
参考文献数
28
被引用文献数
2

我々は和食献立の抗酸化能を高める食事設計法を具体的に提案することを目指し,料理に用いる素材や調理法を変化させながら料理および食事献立単位での抗酸化能を評価し,各種料理における最適条件を検討した。測定にはケミルミネッセンス法を用い,ペルオキシラジカル捕捉活性能をIC50値として算出した。その結果,鶏つくねでは電子レンジ加熱法が,きんぴらごぼうでは水浸漬なしのゴボウを用いる方法が,味噌汁では鰹一番だしと赤味噌の「基準味噌汁」に抗酸化能の高いナスを添加する方法が,それぞれ抗酸化能を高める料理と決定した。それらに[主食]の玄米飯と[副々菜]のホウレンソウの白和えを組み合わせた1汁3菜のモデル献立にすると,他の組み合わせ献立に比べ抗酸化能が有意に高くなった。抗酸化能の高い料理を工夫し組み合わせることで,酸化ストレスに対応する理想的な和食献立として提案できることが明らかとなった。
著者
英 晴香 長尾 慶子 久松 裕子 粟津原 理恵 遠藤 伸之 原田 和樹
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】抗酸化能の高い中国料理の調製を目指し、今回は"紅焼白菜"をとりあげ、具材の魚介類ならびに野菜・キノコの種類を変えて抗酸化能をそれぞれ検討し、食材の組み合わせにより抗酸化能を高める調理法を見出し提案する。【方法】白菜の煮込み料理である"紅焼白菜"の魚介類として、タラ、サケ、ボイル済みカニ、および加工品のカニカマボコとチクワをとりあげ、抗酸化能をそれぞれ測定し、抗酸化能の高い魚介類を選定した。野菜類においても、白菜、キャベツの原種であるケールおよびキノコ三種(エノキタケ、ブナシメジ、シイタケ)をとりあげ同様に抗酸化能を比較した。これらの結果をもとに、抗酸化能の高い食材に置き換えて作成した"紅焼白菜"をモデル料理とし、一般的な材料で作成した基本料理と比較した。各料理を凍結乾燥後、粉砕し、水および70v/v%エタノールで抽出し、測定に用いた。AAPHによりペルオキシラジカルを発生させ、化学発光(ケミルミネッセンス)法で活性酸素ペルオキシラジカルの捕捉活性を測定し、IC50値および抗酸化量値として求め、基本料理とモデル料理を比較した。【結果】カニの抗酸化能が他の魚介類に比べて有意に(p <0.05)高い結果となった。野菜では白菜に比べてケールの抗酸化能が特に高くなった。キノコの抗酸化能はエノキダケ>シイタケ>ブナシメジの順となった。結果をもとに魚介類はカニを用い、白菜の一部をケールに代替し、キノコはエノキダケに、さらに薬味のコネギとショウガを加えて調製したモデル料理の"紅焼白菜"では、基本料理に比べて抗酸化能が向上したことから、食材の組み合わせの工夫により嗜好性と健康面に配慮した大菜料理を提案できると判断した。
著者
長尾 慶子 久松 裕子 粟津原 理恵 遠藤 伸之 原田 和樹
出版者
The Japan Society of Cookery Science
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.324-334, 2013-10-05
被引用文献数
1

抗酸化能を高めた中国料理献立を立案するために,栄養・嗜好面に配慮した基本献立と食材や調理手法を変えて抗酸化能を高めたモデル献立の抗酸化能を評価した。その結果,大菜の煮込み料理の[紅焼白菜]では食材のカニ,ケール及びエノキタケを選択し,同じく 炒め料理の[木穉肉]では調味料の五分たまり醤油と甜麺醤に薬味のネギ,ショウガを選択した。[湯菜]ではだし素材の干し椎茸と鶏ガラにネギとショウガを加えて加熱した。甜点心の [杏仁豆腐]では,杏仁霜と牛乳で調製した寒天ゲルに,黒糖シロップと果物のブルーベリーを選択し,鹹点心の[餃子]ではキャベツを脱水せずに加え蒸し加熱する方法で,どの料理も抗酸化能を高めることができた。これらを組み合わせたモデル献立にして,数種の測定法で抗酸化を測定したところ,基本献立に比べて抗酸化能の有意に高い中国料理モデル献立として提案できることが示唆された。
著者
長尾 慶子 佐藤 久美 粟津原 理恵 遠藤 伸之 原田 和樹
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成23年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.59, 2011 (Released:2011-08-30)

【目的】活性酸素による酸化ストレスから身体を守るには食品の抗酸化成分の摂取が有効だといわれている。しかし食品の抗酸化能は調理法で変化するため、食事全体の抗酸化能評価においては実測値に基づいた考察が必要である。我々は和食献立の抗酸化能を高める食事設計法を具体的に検討するために、壮年期女子の食事摂取基準を参考に調製した数種の料理や献立全体の抗酸化能をORAC法および化学発光法により実測評価した。 【方法】各料理の凍結乾燥試料を0.2g/20mL超純水で抽出して2種の抗酸化能測定に供した。化学発光法ではペルオキシラジカル捕捉活性をIC50値で求め、ORAC法ではペルオキシラジカルにより分解される蛍光物質の蛍光強度からORAC値を求め、料理単位での抗酸化能を比較した。その結果から抗酸化能の高い料理を組み合わせたモデル献立を作り、基準献立との比較を行った。 【結果】主菜の[鶏つくね]では電子レンジ加熱が、副菜の[金平ごぼう]では水浸漬なしのごぼうを用いた方法が、汁物の[野菜味噌汁]では鰹だしと赤みその味噌汁にナスを加える方法が、それぞれ抗酸化能を高める料理と決定した。それらに主食の玄米飯と副々菜にホウレンソウの白和えを組み合わせたモデル献立にすると化学発光法のIC50値(%)は平均1.11、およびORAC値(μmol trolox等量/100g乾燥重量)は平均2,475となり、基準献立における同測定値の平均1.46および平均2,115に比べて抗酸化能が高くなり、共にp < 0.05であった。以上より、日常の食事づくりにおいて抗酸化能の高い料理を組み合わせることで、酸化ストレスに対応する理想的な和食献立を提案できることが示唆された。
著者
川村 昭子 請田 芳恵 粟津原 理恵 新澤 祥恵 中村 喜代美 嶋田 靖子 張江 和子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.19, pp.133, 2007

<BR><B>【目的】</B><BR> 2003~4年にかけて、石川県を金沢を中心に南部の加賀、北部の能登の三地域に区分して、調査を行った特別研究「調理文化の地域性と調理科学-魚介類の調理-」より、各地域の調理文化と魚介類の調理の地域性については既に報告した。今回は、三地域において出現している魚介類がどのような行事に食されているかの比較検討を行った。<BR><B>【方法】</B><BR> 三地域において、自記式留置法により調査し集計した143世帯(能登:78 金沢:42 加賀:23)の結果から、今回は行事に用いられる魚介類をとりあげ検討した。<BR><B>【結果】</B><BR> 三地域で出現率の高かった行事は、正月、春・夏・秋の祭り、祝い事、ひな祭り、土用丑の日、誕生日などであり、三地域間では、能登は金沢・加賀に比べ行事は少なかった。しかし、能登では、他の二地域ではみられない「あえのこと(田の神)」という行事が出現していた。行事で食されている魚介類の料理については、金沢では、正月にはタラやサワラ(カジキマグロ)の昆布じめ(刺身)、甘露煮、棒ダラの煮物、かぶらずしなど、祭りや祝い事にはタイの唐蒸し、タイの塩焼き、鉄砲イカなどがあった。加賀では、祭りにシイラやサバを使った柿の葉ずし、押しずしなどであり、能登では、正月や祭りにはイモダコ、なます、麹漬け、昆布巻き(身欠きニシン)などであった。また、能登の「あえのこと」では、メバルの塩焼きをお供えし、家族も同様の料理を食する。今回の調査で出現している魚介類のほとんどは日常で食され、行事又は日常と行事の両方で食するとした割合は少なかった。また、行事に食するとしても行事名が記載されていない魚介類も多くみられた。しかし、三地域間には、魚介類の調理と行事におけるそれぞれの特徴がみられた。
著者
川村 昭子 請田 芳恵 粟津原 理恵 新澤 祥恵 中村 喜代美 嶋田 靖子 張江 和子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.20, pp.146, 2008

<BR> 【目的】<BR> 2003~4年にかけて、石川県を金沢を中心に南部の加賀、北部の能登の三地域に区分して、調査を行った特別研究「調理文化の地域性と調理科学-魚介類の調理-」より、今回は、調理法で最も一般的な「生・煮る・焼く」をとりあげ、三地域において出現している魚介類との比較検討を行った。<BR>【方法】<BR> 出現料理7389件(金沢2598件、加賀846件、能登3945件)を調理法別に分類し、「なま物・煮物・焼き物」の調理法に用いられている魚介類をとりあげ検討した。<BR>【結果】<BR> 「なま物・煮物・焼き物」の三調理法で全調理法の77.0%を占めていた。地域別にみると、金沢、加賀、能登の順に高くなり、金沢はこの三調理法以外の調理法が多かった。出現率は煮物、なま物、焼き物の順に高かった。地域別にみると、金沢・加賀は同様の結果であったが能登は、煮物、焼き物、なま物の順であった。年齢別では、なま物は40~70代、特に60代が多く20・30代は少なかった。煮物は各年齢にあまり差がみられないが50・60代が多く、焼き物は20・30代に多く出現していた。三調理法に出現していた魚介類は85種で、なま物は63種、煮物は67種、焼き物は67種であり、そのうち46種が三調理法すべてに出現していた。なま物では、金沢のタラ、ホタルイカ、マグロ、加賀のホッケ、キス、能登のトビウオ、スズキ、煮物では、金沢のサワラ(カジキマグロ)、フグ、加賀のエイ、カワハギ、能登のタコ、焼き物では、金沢のドジョウ、ホッケ、マス、ムツ、加賀のカマス、カレイ、サケ、サンマ、能登のイワシ、タチウオ、タラ、ニギス、メバルなどに出現率に差がみられ、出現料理にも行事に用いられるものもあり差異がみられた。
著者
長尾 慶子 久松 裕子 粟津原 理恵 遠藤 伸之 原田 和樹
出版者
The Japan Society of Cookery Science
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.324-334, 2013-10-05
被引用文献数
1

抗酸化能を高めた中国料理献立を立案するために,栄養・嗜好面に配慮した基本献立と食材や調理手法を変えて抗酸化能を高めたモデル献立の抗酸化能を評価した。その結果,大菜の煮込み料理の[紅焼白菜]では食材のカニ,ケール及びエノキタケを選択し,同じく 炒め料理の[木穉肉]では調味料の五分たまり醤油と甜麺醤に薬味のネギ,ショウガを選択した。[湯菜]ではだし素材の干し椎茸と鶏ガラにネギとショウガを加えて加熱した。甜点心の [杏仁豆腐]では,杏仁霜と牛乳で調製した寒天ゲルに,黒糖シロップと果物のブルーベリーを選択し,鹹点心の[餃子]ではキャベツを脱水せずに加え蒸し加熱する方法で,どの料理も抗酸化能を高めることができた。これらを組み合わせたモデル献立にして,数種の測定法で抗酸化を測定したところ,基本献立に比べて抗酸化能の有意に高い中国料理モデル献立として提案できることが示唆された。
著者
粟津原 理恵 樋口 二美子 土田 幸一 長尾 慶子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.319-326, 2008-10-20
参考文献数
18
被引用文献数
2

ソバの機能性成分ルチンの損失を抑え,歯応えの良いソバ切り(麺)の調理条件の解明を目指し,ソバ切り調製時におけるルチンと小麦グルテンの相互作用について追究した。ルチン含量の異なる普通ソバ粉,普通-ダッタン配合ソバ粉,およびダッタンソバ粉を用いてグルテン添加量を変えたモデル麺を調製し,ゆで麺の破断特性測定および走査型電子顕微鏡による構造観察を行った。配合ソバはグルテン添加量の増加により,均一な構造となり,普通ソバに類似した破断特性を示したが,ルチン含量の最も高いダッタンソバはグルテンを添加しても構造が粗く,歯ごたえの弱い脆い麺であった。また,逆相クロマトグラム分析から,ゆで処理による配合ソバおよびダッタンソバからのルチン損失が,グルテン添加により抑制されることが示唆された。以上より,配合ソバ程度までのルチン含量のソバ粉は,10~20wt%のグルテン添加により,歯応えがあり,機能性の高い麺に調製できることが期待できる。