著者
細谷 洋子
出版者
四国大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

駆け引きのプロセスを楽しむカポエイラ教材の基礎的研究として、カポエイラの社会的位置づけ、カポエイラの基礎的な身体技術、練習内容の軸となるカポエイラの理念を明らかにした。その結果、カポエイラは「問いかけと応答」という行為の意味を重視することが特徴といえ、異文化間教育などにおける教材化の軸になる理念であると考察された。
著者
細谷 洋子
出版者
公益社団法人 日本女子体育連盟
雑誌
日本女子体育連盟学術研究 (ISSN:18820980)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.1-16, 2014 (Released:2014-06-11)
参考文献数
27

アフロ・ブラジル文化カポエイラは,アフリカ系奴隷によってブラジルで創造され,近年ブラジル社会,歴史,文化の象徴としてブラジル国家によって認められた民族スポーツである。本稿はこのようなカポエイラの,幼児を対象にした教授内容を明らかにし,授業構成の観点とその鍵となる概念を考察することを目的とした。その結果,授業パターンにおいて,幼児の心身の発育発達段階を考慮して,多様な動きの体験が優先された。そしてカポエイラの独特の世界観が重視されない「ジョゴ」(カポエイラのゲームを意味する。以下「ジョゴ」と略す)が行われていると考察された。授業構成の観点として「行為の意味を重視する」ことが重要であることが明らかになった。つまり,技の完成度よりもジョゴを行う二人の間で技が行われることで生じる「問いかけと返答」という意味を重視する傾向が考察された。更には,「問いかけと返答」の意味生成において,即興性が基軸となる「ジョゴ」概念が授業構成の観点として重要であり,この「ジョゴ」概念はカポエイラ特有の文化的特性であるという知見が得られた。
著者
細谷 洋子
出版者
公益社団法人 日本女子体育連盟
雑誌
日本女子体育連盟学術研究 (ISSN:18820980)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.1-16, 2014

アフロ・ブラジル文化カポエイラは,アフリカ系奴隷によってブラジルで創造され,近年ブラジル社会,歴史,文化の象徴としてブラジル国家によって認められた民族スポーツである。本稿はこのようなカポエイラの,幼児を対象にした教授内容を明らかにし,授業構成の観点とその鍵となる概念を考察することを目的とした。<br>その結果,授業パターンにおいて,幼児の心身の発育発達段階を考慮して,多様な動きの体験が優先された。そしてカポエイラの独特の世界観が重視されない「ジョゴ」(カポエイラのゲームを意味する。以下「ジョゴ」と略す)が行われていると考察された。<br>授業構成の観点として「行為の意味を重視する」ことが重要であることが明らかになった。つまり,技の完成度よりもジョゴを行う二人の間で技が行われることで生じる「問いかけと返答」という意味を重視する傾向が考察された。<br>更には,「問いかけと返答」の意味生成において,即興性が基軸となる「ジョゴ」概念が授業構成の観点として重要であり,この「ジョゴ」概念はカポエイラ特有の文化的特性であるという知見が得られた。
著者
細谷 洋子
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.55_2, 2018

<p> カポエイラとは、350年ほど前にブラジルで創出されたアフリカ系ブラジル文化固有の格闘技である。これまで報告者は、児童、生徒、学生を対象に、数回のみの体験授業(45分~90分)ならびに正課授業(90分×15回)における、カポエイラを教材とした授業を実践してきた。これらの授業では、知識による理解だけでなく、学習者自身の身体を介した体験的な文化理解を目指した。これまでの実践を振り返ると、授業では、カポエイラにおいて不可欠の民族楽器による演奏や合唱を必ずおこなっており、それによって文化的な文脈の場が再現されていた。そのようなカポエイラ固有の実践形式や、組手中の駆け引きは、学習者間のコミュニケーションの促進に役立つと見受けられた。また、学習者は非日常的な雰囲気の中、「楽しさ」を伴う情動的な活動を体験し、文化としてのカポエイラについて深い理解がもたらされたようであった。しかしながら、教育目的、学習内容・方法、学習者のニーズ等を踏まえた教材化における改良の余地があり、課題も多い。そうしたカポエイラの教材化の現状について報告する。</p>
著者
菱田 慶文 中嶋 哲也 細谷 洋子
出版者
四日市看護医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

今年度の調査は、8月にタイで行われたアマチュアムエタイの世界ユース大会と12月末ブラジルのリオデジャネイロにある4つのブラジリアン柔術の道場に調査に行くことができた。タイ国のアマチュアムエタイ世界大会では、ブラジルチームにインタビューした結果、選手は、自ら渡航費を捻出するほどの金銭を所持しておらず、チームは、寄付金や企業にスポンサーとなってもらい世界大会に参加している状況であることが分かった。大会事務局発行のアマチュアムエタイの機関誌において、リオデジャネイロやサンゴンサロなどの都市では、ムエタイの普及が、教会や公民館などを借り,ボランティアて行われていることが分かった。ファベイラ(スラム街)では、特に、犯罪組織や麻薬の密売者に関わらせないためにも活動が重要であると記されている。ムエタイのボランティア指導は、週に2、3回行われており、参加者の中には、いじめ被害者や不登校児の報告もあった。12月に行ったブラジル、リオデジャネイロでの調査は、観光客でにぎわうコパカーナビーチにあるブラジリアン柔術道場やカンタガーロのファベイラにある柔術場の調査に成功した。コパカーナビーチの柔術道場は、ミドルクラス以上の白人が多く、フィットネスでもブラジリアン柔術は、行われていた。これらの道場の教育観は、少年少女に礼儀作法や身体訓練など健全育成のために、ブラジリアン柔術を教えるという理念のもと行われている。一方、ファベイラのジムでは、健全育成の側面に加えて、前述のムエタイと同様に、犯罪組織や麻薬の密売から遠ざけたい、という目的が第一であり、柔術をやっていれば、将来にファベイラ以外での生活ができるように、目標を持たせたい、等という、教育観を垣間見ることができた。これらの道場もボランティアでムエタイやブラジリアン柔術を教える人々の教育観や格闘技観を知ることができた。