著者
縫部 義憲
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.144, pp.4-14, 2010 (Released:2017-04-15)
参考文献数
11

本論では,日本語教育の多様化に対応して日本語教師の多様化が求められていることを踏まえて,そもそも日本語教師は基本的に,あるいは共通して,どのような力量や専門性(リーダーシップ)を備えているべきかを考えるために,学習者と教師を対象とした日本語教師の行動特性に関する一連の国際調査を紹介した。その分析結果,目標達成機能(言語知識・言語技能・運用能力,文化・世界に関する知識,授業の実践能力)と集団維持機能(教室経営,人間関係,フィードバック行動,カウンセリング・マインド)を総合的に身につけることが必要だと分かった。 これを受けて,カウンセリング・マインドを備えた日本語教師の育成が今後の課題であることを指摘し,その新しい傾向を教師の成長という概念で表現した。どのような日本語教育を行うために,どのような教師が必要なのか,を常に自問することも大切である。
著者
縫部 義憲
出版者
広島大学大学院教育学研究科日本語教育学講座
雑誌
広島大学日本語教育研究 (ISSN:13477226)
巻号頁・発行日
no.12, pp.25-31, 2002

The present article aims to evaluate the new guideline for Japanese language teacher education issued by the Bunkacho in 2000). Although the new one has its own concept and curriculum framework different from the present one, I investigated how much they overlap each other in content. In conclusion, both of them are much the same in content and the present one will be radically restructured into the new one according to the new concept of "teacher development" consciously or unconsciously.
著者
縫部 義憲 松崎 寛 佐藤 礼子
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.21-30, 2005-09-20

平成12年の「日本語教育のための教員養成について」への対応を巡り,国内における日本語教員養成は大きな転換を迫られている。本論では,この新たな教育内容を基に独自に作成した調査用紙を用いて,全国の教員養成課程を持つ大学を対象に,十分対応できる,もしくは対応できない項目を調べた。その結果,マクロレベルでは言語や教育実習に関する側面は対応できているが,心理的及び異文化的側面は対応できていないことが確認された。また,クラスター分析を行い,対応度の傾向によって大学をグループ分けした結果,全体平均では値が高かった項目に関しても,大学群によっては対応できていないことが確認された。これらへの対応策として,各大学の特長を活かした養成カリキュラムの策定や大学間の提携プログラムやVOD教材利用のネットワーキング構築に柔軟に取り組むための提案を行った。
著者
縫部 義憲
出版者
広島大学
雑誌
広島大学日本語教育学科紀要 (ISSN:13415298)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-10, 1995-03-31

The present article aims to find out the problems of Japanese language education in the special Japanese language classrooms designed to help foreign students learn "Basic Interpersonal Communication Skills" (BICS) in Japanese at elementary schools in Hiroshima Prefecture, and to posit solutions for them from the standpoint of bilingual education.
著者
縫部 義憲
出版者
広島大学教育学部
雑誌
広島大学教育学部紀要 第二部 (ISSN:04408713)
巻号頁・発行日
no.37, pp.p167-175, 1988

The purpose of the present article is to present a conceptual framework for systematizing the Japanese-language teacher training curriculum. Firstly, I discussed what an outstanding Japanese language teacher is like. Secondly, I focussed on teacher development. Thirdly, I proposed the principles of constructing a systematic curriculum. Lastly, I insisted that a new curriculum for human dynamics in Japanese be introduced and established in the Japanese language teacher training course.
著者
縫部 義憲
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.69-78, 2007-06-10

日本語教育学における研究の動向と展望を探るために,代表的な学会誌『日本語教育』((社)日本語教育学会)を中心として過去5年間(2002年度〜2006年度)の審査論文である「研究論文」・「調査報告」・「実践報告」(編集委員会が審査)と「口頭発表」(大会委員会が審査)を分析した。その結果,審査論文について「研究論文」では言語関係の分野に偏重しているが,「調査報告」。「実践報告」では教育関係の分野が多く,言語習得関係,言語関係,心理関係,文化・異文化関係の分野と続いている。後者と同じような傾向が「口頭発表」でも見られ,年少者日本語教育,専門分野別日本語教育,日本語教員養成,日本語教授法・指導法,第二言語習得研究,日本語文法研究,社会言語学的研究が主要な研究分野となっている。従来少なかった心理学領域と異文化間教育学領域が徐々に増えており,とりわけ認知心理学関係の手法を援用した調査・実験が目に付くようになった。日本語教育学においては,年少者日本語教育関連の調査が多く,中には参与観察法(質的調査研究)という文化人類学・異文化間教育学の手法を導入したものがある。さらに社会学・社会言語学領域の研究が注目されている。戦前から続く日本事情教育から脱皮して,最近では言語と文化の統合を目指す日本文化教育(総合的言語活動論),バフチン等の対話教育や状況的学習論(社会的・文化的アプローチ)が現れている。最後に,文化庁から平成12年3月に発表された「日本語教育のための教員養成について」という報告書は,日本語教員養成の担当者から厳しい批判を浴びているが,新たな教員養成カジキュラムの枠組みと幅広い内容を提示している。どのような日本語教育をするために どのような日本語教師が必要なのか,という観点から,日本語教育学のあり方についても考える契機を与えている。この報告書が提示しているように 日本語教育学は幅広い研究領域を有しているが,それらが一つのシステムとして成立することが求められる。 日本語教育学においても,日本語教育「学」か,日本語教育「研究」か,という議論が本格的に始まったところである。