- 著者
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大嶋 依子
大津 光寛
若槻 聡子
岡田 智雄
苅部 洋行
藤田 結子
永島 未来
羽村 章
- 出版者
- 一般社団法人 日本障害者歯科学会
- 雑誌
- 日本障害者歯科学会雑誌 (ISSN:09131663)
- 巻号頁・発行日
- vol.37, no.2, pp.169-173, 2016 (Released:2016-10-31)
- 参考文献数
- 9
現在,日本の大うつ病性障害(うつ病)患者は100万人以上いると報告され,決してまれな障害ではない.うつ病の精神症状として無気力や興味の喪失があり,これらは口腔衛生状態の悪化に繋がる.そのため歯科医療従事者にも,うつ病の知識が必要とされている.今回,うつ病患者を長期にわたり,歯科衛生士が精神状態に配慮しながら歯科保健指導を行った結果,口腔衛生状態が著しく改善した症例を経験した.患者は56歳女性.近医にて上顎左側側切歯の抜髄処置を受け,その1週間後から上顎前歯部口蓋側歯肉と舌に疼痛を認めた.その後,この疼痛が改善しないことから当センターへ紹介受診となった.初診時に不安焦燥感が強く,うつ病の特徴的身体症状である食欲不振,体重減少と精神症状である気力低下を認めたため,精神科へ紹介したところ,うつ病と診断された.そこで,主訴である疼痛などの口腔内症状を改善するため,歯科衛生士が歯科治療と並行して口腔衛生指導を行った.実施の際には,患者のうつ症状に合わせ,無理をせずにできることから行うといった姿勢をとった.また,向精神薬の副作用による口渇に対して,唾液分泌を促進させると考えられる食事指導などを併せて行った結果,口腔内症状は安定し,うつ症状に波はあるものの良好な口腔内環境を維持している.