著者
伊藤 加代子 井上 誠
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.305-310, 2017-12-31 (Released:2018-01-25)
参考文献数
32
被引用文献数
2
著者
伊藤 加代子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.281-283, 2011-03-15

1 . 更年期に現れやすい口腔疾患 更年期世代によくみられる口腔の疾患には,口腔乾燥症,味覚障害,舌痛症,顎関節症,歯周疾患などが挙げられる.実際,女性専門外来の医師にアンケート調査を行ったところ,“口が渇く”“味がおかしい”“舌が痛い”“顎が痛い”などの愁訴が多くみられた(図1)1).これらの症状が,女性ホルモンの減少そのものによって引き起こされているのか,あるいは閉経に伴うストレスが原因となっているのかは,よくわかっていない. 前述のアンケート調査によると,女性専門外来においては,口腔に関する愁訴をカルテに記載するのみで,歯科への紹介には至らないケースもあることが明らかになった.しかし,適切な検査を行って加療することで,口腔の症状が緩解するばかりでなく,更年期症状そのものが軽減する可能性がある. 本稿では,更年期世代の女性に現れやすい口腔疾患とその検査方法について概説する.
著者
伊藤 加代子 福原 孝子 高地 いづみ 井上 誠
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.77-87, 2009-08-31 (Released:2020-06-27)
参考文献数
26

【目的】誤嚥性肺炎予防という観点からも,口臭予防という観点からも舌清掃は重要である.近年,形態が異なる舌ブラシが多種開発されているが,使用効果に関する客観的データは少なく,歯科医療従事者以外の介護スタッフが適切な舌ブラシを選択するのは困難である.よって,舌ブラシ選択の指標を作成することを目的として,舌ブラシの形態による清掃効果を検討した.【対象と方法】老人福祉施設に入所している39 名を対象とし,A 群(両面の細かいナイロンブラシタイプの舌ブラシ),B 群(アーチワイヤー状のねじりブラシタイプの舌ブラシ),C 群(スポンジブラシ)の3群に分けた.各ブラシを用いて,介護者による清掃を14 日間実施し,舌苔の評価と口腔衛生状態に関するアンケートによる評価を行った.【結果および考察】どの群においても経時的に舌苔の厚みが有意(p<0.05)に改善していたが,ブラシによる違いは認められなかった.舌苔の厚みによって分析したところ,舌苔が厚い群ではA 群が有意(p<0.05)に改善していた.また,有意差は認められなかったものの,ケア時の痛みはA 群,C 群で少なく,べたつきはB 群およびC 群で改善する傾向が認められた.アンケートの自由筆記欄には,B 群では痛みがあったため十分な清掃ができないまま中断してしまったという記載があった.A 群のほうがB 群より与える痛みが少なかったので,舌苔の除去効果が大きかった可能性が考えられる.【結論】どのブラシでも継続して使用することによって,舌苔の厚みが改善することが明らかになった.また,舌苔が厚い場合は両面の細かいナイロンブラシタイプの舌ブラシが,べたつき感改善にはアーチワイヤー状のねじりブラシタイプの舌ブラシが有効であり,ケア時の痛みやブラシへの抵抗が少ないのは,両面の細かいナイロンブラシタイプの舌ブラシおよびスポンジブラシであることが示唆された.
著者
船山 さおり 伊藤 加代子 濃野 要 井上 誠
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.41-47, 2019 (Released:2020-03-31)
参考文献数
24
被引用文献数
1

近年,味覚障害患者が増加している.味覚外来における治療効果を検討することを目的として臨床統計を実施し,亜鉛補充療法の効果について調査した.対象は2012年12月より2017年12月までの5年間に当院味覚外来を受診した患者172名(男性56名,女性116名)とした.患者の既往歴,服用薬剤,診断について単純統計を行った.さらに亜鉛製剤投与による自覚症状の改善に関わる因子を多変量解析により探索した.患者の平均年齢61.1歳であった.亜鉛欠乏性および特発性と診断された99名に亜鉛製剤を処方した.自覚症状の改善があった者は82.8%であった.ロジスティック回帰分析の結果,自覚症状改善に関わる因子は,病悩期間や亜鉛/銅(Zn/Cu)比であることが示された.
著者
船山 さおり 伊藤 加代子 濃野 要 井上 誠
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.41-47, 2019

近年,味覚障害患者が増加している.味覚外来における治療効果を検討することを目的として臨床統計を実施し,亜鉛補充療法の効果について調査した.対象は2012年12月より2017年12月までの5年間に当院味覚外来を受診した患者172名(男性56名,女性116名)とした.患者の既往歴,服用薬剤,診断について単純統計を行った.さらに亜鉛製剤投与による自覚症状の改善に関わる因子を多変量解析により探索した.患者の平均年齢61.1歳であった.亜鉛欠乏性および特発性と診断された99名に亜鉛製剤を処方した.自覚症状の改善があった者は82.8%であった.ロジスティック回帰分析の結果,自覚症状改善に関わる因子は,病悩期間や亜鉛/銅(Zn/Cu)比であることが示された.
著者
金子 正幸 葭原 明弘 伊藤 加代子 高野 尚子 藤山 友紀 宮崎 秀夫
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.26-33, 2009-01-30
被引用文献数
6

平成18年度より,地域支援事業の一環として口腔機能向上事業が実施されている.本調査の目的は,口腔機能向上事業が高齢者の口腔の健康維持・増進に与える効果を検討し,今後の事業展開のための指針を得ることである.対象者は65歳以上の高齢者で,基本健康診査を受診し,厚生労働省が示す特定高齢者の選定に用いる基本チェックリストの「半年前に比べて固い物が食べにくくなりましたか」「お茶や汁物等でむせることがありますか」「口の渇きが気になりますか」の3項目すべてに該当する55名である.対象者に対して,口腔衛生指導や集団訓練としての機能的口腔ケアからなる口腔機能向上事業を,4回または6回コースとして3ヵ月間実施した.口腔衛生状態,口腔機能およびQOLについて事業前後の評価を行った.その結果,反復唾液嚥下テスト(RSST)積算時間は,1回目:事前7.5±5.6秒,事後5.6±3.1秒,2回目:事前16.2±9.7秒,事後12.4±6.9秒,3回目:事前25.7±14.7秒,事後19.4±10.9秒と改善がみられ,2回目,3回目について,その差は統計学的に有意であった(p<0.01).口腔機能についてはその他のすべての項目について,統計学的に有意な改善がみられた.本調査より,新潟市における口腔機能向上事業は,高齢者の摂食・嚥下機能をはじめとした口腔機能の維持・増進に有効であることが認められた.