著者
小笠原 正 笠原 浩 小山 隆男 穂坂 一夫 渡辺 達夫
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.899-906, 1990-12-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
10
被引用文献数
2

健常な幼児の寝かせ磨きに対する適応性と発達年齢,暦年齢との関連性を明らかにするために,保護者に寝かせ磨きをさせ,その状態を観察するとともにVTRにて記録し,AICに基づき解析を行った.調査対象者は,健常な幼児98名である.発達検査は遠城寺式乳幼児分析的発達検査を実施した.結果は以下の通りである.1.歯磨き介助(仕上げ磨きを含む)を1日1回以上行っていた保護者は,89.8%であった.2.寝かせ磨きの際に,観察された幼児の不適応行動のうち,最も多かったのは「手を出して邪魔をする(20.4%)」であった.以下,「頭を動かす(17.3%)」,「体位を変える(17.3%)」,「口を閉じる(15.3%)」,「歯ブラシを〓む(13.3%)」,「泣く(13.3%)」の順であった.3.寝かせ磨きに適応した者は78.6%で,不適応であった者は21.4%であった.4.寝かせ磨きの際に,子供を抑制した保護者は,12.2%認められ,他の87.8%は抑制しなかった.子供が拒否行動を示したにもかかわらず,抑制しなかった保護者は9.2%いた.5.寝かせ磨きの適応性と発達年齢,暦年齢とは,強い関連性が認められた.6.寝かせ磨きの適応・不適応を判別できる最適なカテゴリーは,遠城寺式乳幼児分析的発達検査項目のいずれも2歳6カ月前後であった.7.暦年齢2歳6カ月以上であれば,寝かせ磨きに適応できるレディネスが備わっていることが明らかとなった.
著者
脇本 仁奈 松尾 浩一郎 河瀬 聡一朗 岡田 尚則 安東 信行 植松 紳一郎 藤井 航 馬場 尊 小笠原 正
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.11-16, 2010-04-30 (Released:2020-06-26)
参考文献数
12

【目的】頸部回旋法は,頭を麻痺側に回旋して嚥下することで,嚥下後の咽頭残留を軽減させる摂食・嚥下代償法のひとつである.しかし,頸部を回旋した状態で長い時間食事をとるという姿勢は,身体へ負担がかかる可能性がある.そのため,頸部回旋の有効性を残したままで,できる限り摂食しやすい姿勢が望まれる.今回われわれは,若年健常者において,どの程度の頸部回旋角度から咽頭嚥下時の食物通過側に変化があるか検討した.【対象と方法】摂食・嚥下障害のない健常若年成人30 名(平均26 歳)を対象とした.被験者がバリウムを嚥下するときの頸部回旋角度を,正面位と左右各15 度,30 度,45 度および最大回旋位の合計9 角度に設定した.被験者が3 ml の液体バリウムを嚥下するところをVF 正面像にて撮影,記録した.デジタル化されたVF 映像上で,下咽頭での回旋側のバリウム通過の有無を同定した.各頸部回旋角度で,回旋側下咽頭をバリウムが通過した人の割合を比較検討した.【結果】正面位では,全例で両側をバリウムが通過していたが,頸部回旋角度が増すと,回旋側通過の割合が減少した.30度頸部回旋でのバリウムの回旋側下咽頭通過の割合は,右側回旋23%(7名/ 30名),左側回旋40%(12 名/ 30 名)と有意な減少を認めた(p<0.01).最大まで頸部を回旋すると,右側回旋1 名,左側回旋4 名のみで,バリウムが回旋側を通過していた.【結論】今回の検討より,頸部回旋が30 度以上になると,バリウムが回旋側下咽頭を通過した人の割合が有意に減少することが明らかになった.摂食・嚥下障害者への姿勢代償法は,必要十分な安全性をもち,かつできるだけ楽な摂食姿勢が望ましい.頸部回旋法の有用性は,通常VF や経鼻内視鏡を用いて決定される.今回の検討より,頸部回旋の有用性を確認するときには,30 度程度の回旋からその有効性を確かめてみる価値があることが示唆された.
著者
春日井 淳夫 小笠原 正志 伊藤 朗
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.530-539, 1992-10-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
34
被引用文献数
1

In order to evaluate iron balance in the human body, we studied the effects of exercise on iron excretion in urine, sweat and feces. The subjects were five healthy male, college athletes. The daily intake of nutrients by the subjects was regulated by a prescribed diet (Calorie Mate, Ohtsuka), and the control measurements and the exercise measurements were performed within seven days. Excretion of iron in the urine during the exercise period was significantly higher than in the control period. The excretion of iron in the sweat was 1.076±0.118 mg, i. e, , about 70% of total iron physiologically excreted from the human body. The excretion of iron in the feces during the exercise period was significantly lower than during control period. Feces volume was positively correlated with energy expenditure and negatively correlated with the excretion of iron in the feces. Iron absorption during the exercise period was significantly higher than during the control period. These findings suggest that exercise stimulates not only iron excretion via urine and sweat, but iron absorption, and that iron balance remains positive in healthy male subjects who have normal iron status.
著者
小笠原 正 川瀬 ゆか 磯野 員達 岡田 芳幸 蓜島 弘之 沈 發智 遠藤 眞美 落合 隆永 長谷川 博雅 柿木 保明
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.11-20, 2014-07-22 (Released:2014-08-15)
参考文献数
21
被引用文献数
2

要介護者の口腔粘膜にみられる付着物は,痰,痂皮,剥離上皮と呼ばれているが,上皮成分を主体とした付着物を剥離上皮膜と定義づけ,本研究にて,要介護高齢者の口腔内に形成された剥離上皮膜を部位別に形成要因を検討した。調査対象者は,入院中の患者のうち 65 歳以上の要介護高齢者 70 名であった(81.1±7.7 歳)。入院記録より年齢,疾患,常用薬,寝たきり度を調査し,意識レベル,発語の可否,介助磨きの頻度は担当看護師から聴取した。歯科医師が口腔内診査を行い,膜状物質の形成の有無,Gingival Index などを評価した。形成された膜状物質は,歯科医師がピンセットで採取した。粘膜保湿度(舌背部,舌下粘膜)は,粘膜湿潤度試験紙(キソウエット®)により 10 秒法で評価した。採取された膜状物質は,通法に従ってパラフィン切片を作製し,HE 染色とサイトケラチン 1 による免疫染色で重層扁平上皮か否かについて確認し,重層扁平上皮由来の角質変性物が認められたものを剥離上皮膜と判断した。剥離上皮膜形成の有無を従属変数として,患者背景・口腔内の 14 項目,疾患の 15 項目,常用薬の 32 項目,合計 61 項目を独立変数として部位ごとで決定木分析を行った。 すべての部位で剥離上皮膜の形成に最優先される要因は「摂食状況」であり,経口摂取者には,剥離上皮膜がみられなかった。第 2 位は舌背部で舌背湿潤度,頰部で開口,歯面の第 3位が開口であり,口腔粘膜の乾燥を示唆する結果であった。以上,剥離上皮膜の形成要因には口腔乾燥があり,保湿の維持が剥離上皮膜の予防につながると考えられた。
著者
入江 由香子 小笠原 正志 吉田 裕人
出版者
Japan Society of Sports Industry
雑誌
スポーツ産業学研究 (ISSN:13430688)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.4_345-4_355, 2018 (Released:2018-10-12)
参考文献数
36
被引用文献数
1

The purpose of this study was to examine the business model of sports tourism utilized by the South Korean walking trail "Jeju Olle", leading to social change not only domestically but also internationally. Jeju Olle was opened in 2007 and currently it offers 26 courses (totaling 425 km). From 2011 to 2014, over a million Korean walkers rushed to Jeju, causing a walking tour boom. Jeju Olle has changed the leisure-time activities, regional economy, and policies of Korea and it is spreading to Kyushu Olle and Mongol Olle. Ms. Myung-sook Suh, the founder of Jeju Olle, serves as the president of the Jeju Olle Foundation, a non-profit organization (NPO) that operates without dependence on administrational subsidies. The NPO succeeded in transforming an old country road into a fashionable trail decorated with a gentle feminine sensibility that has become known as the "Olle" brand. The NPO’s business operates on revenue from membership fees, company sponsorships, and sales of original brand products and it is supported by a large number of volunteers. Thus, it is a sustainable business model made possible by its financial independence, enthusiastic followers, and brand image, based on female sensibilities and flexibility, and it represents a new global approach to health promotion.
著者
脇本 仁奈 松尾 浩一郎 河瀬 聡一朗 隅田 佐知 植松 紳一郎 藤井 航 馬場 尊 小笠原 正
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.3-11, 2011 (Released:2011-12-14)
参考文献数
14
被引用文献数
1

頸部回旋法の液体嚥下時の有効性についての報告はあるが, 食物咀嚼時の嚥下前の食物通過への影響は明らかになっていない。また, どの程度の頸部回旋角度が代償手技として有効であるかは不明である。今回われわれは, 咀嚼嚥下時に頸部回旋角度を変化させ, 嚥下までの咽頭での食物通過側の変化について検討した。若年健常者22名が頸部回旋し, 液体バリウム5 mlとコンビーフ4 gを同時に摂食した時の咽頭での食物の流れを経鼻内視鏡にて記録した。頸部回旋角度は, 正中, 左右各30度, 最大回旋位の5角度とした。嚥下までの舌根部, 喉頭蓋谷部, 下咽頭部での食物先端の流入側および嚥下咽頭期直前の咽頭での食物の分布を同定し, 食物通過の優位側について解析した。喉頭蓋谷部では, 頸部回旋側の食物通過の割合が増加する傾向がみられた一方で, 下咽頭部では非回旋側での食物通過の割合が増加する傾向を示した。嚥下開始直前でも, 食物は, 喉頭蓋谷部では回旋側と正中部に多く存在していたが, 下咽頭では非回旋側に多く認めた。頸部回旋角度は30度と最大回旋で, 食物通過経路に有意差はなかった。食物咀嚼中, 頸部回旋すると喉頭蓋谷までは回旋側へ優位に流入するが, 頸部回旋による物理的な下咽頭閉鎖により, 食物が下咽頭へと侵入するときには反対側へと経路を変えることが示唆された。さらに, 姿勢代償法として頸部回旋法は, 最大回旋位まで頸部を回旋する必要性がない可能性が示された。
著者
朝比奈 滉直 小笠原 正 朝比奈 伯明 石原 紀彰 山上 裕介 秋枝 俊江 望月 慎恭 朝比奈 義明 蓜島 弘之
出版者
一般社団法人 日本障害者歯科学会
雑誌
日本障害者歯科学会雑誌 (ISSN:09131663)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.146-152, 2019-06-30 (Released:2019-10-31)
参考文献数
14

リドカインテープを表面麻酔として使用した浸潤麻酔の刺入時と注入時の痛みをアミノ安息香酸エチルと比較した.さらに知的障害者へのリドカインテープ使用による浸潤麻酔時の外部行動について評価したので,報告する.はじめに,健常成人9名に対してリドカインテープとアミノ安息香酸エチルの表面麻酔効果をVASとカテゴリカルスケールにて評価を行った.次に,知的障害者20名を対象に,浸潤麻酔時に外部行動として体動,発声,啼泣の有無,表情の変化を評価した.健常成人の調査では,リドカインテープ群が刺入時と薬液注入時に「違和感がある」と評価し,「少し痛い」とした者は存在しなかった.アミノ安息香酸エチル群は刺入時に55.6%,薬液注入時に77.8%の者が「少し痛い」と評価した.知的障害者への浸潤麻酔時は,リドカインテープ群は,体動,発声,啼泣の有無,表情の変化において全員が平静を維持したが,アミノ安息香酸エチルでは,平静を維持しなかった者が存在した.1つ以上の項目で不適応行動がみられた者を不適応と判定した場合,リドカインテープ群は不適応が0%,アミノ安息香酸エチル群で不適応が50%であった(p<0.05).したがって,リドカインテープは,浸潤麻酔時に痛みを与えず,知的障害者において浸潤麻酔時の不適応行動を引き起こさず,歯科治療時の適応行動を維持するのに有用であることが示唆された.
著者
小笠原 正彦 宮崎 佳典
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.71, pp.711-712, 2009-03-10

現在のwebの特徴としてブログなどユーザーの手による参加が挙げられる.現在のブログは様々な機能を持っているが,数式に関してはプレーンテキストによる一次元記述か,画像化して添付ファイルとして載せる方法など直接二次元表記を行うことができない.本稿では, Javaアプレットを用いて二次元記述可能な数式作成支援ツールを開発し,ブログシステム上への実装を行った.また,ブログシステムヘの数式の反映については,数学用マークアップ言語であるMathMLを利用し,作成された数式に関する情報を維持可能とした.
著者
畠山 悠馬 髙橋 武彦 小笠原 正剛
出版者
一般社団法人 日本エネルギー学会
雑誌
日本エネルギー学会誌 (ISSN:09168753)
巻号頁・発行日
vol.102, no.3, pp.33-40, 2023-03-20 (Released:2023-03-31)
参考文献数
13

スギ粗粉末をリング媒体利用粉砕機で粉砕した粉末は高い酵素糖化性を示すことが知られている。この高い酵素糖化性をもたらす構造的要因は明らかにされているが,粉砕力などの物理的因子と構造変化との関係は十分に明らかとなっていない。本研究ではリング媒体粉砕における物理的因子として,接触応力とせん断角速度を定義した。そして,接触応力とせん断角速度が構造変化に与える影響を調査した。スギ粗粉末の粉砕は接触応力が27 MPaから42MPaの範囲でせん断角速度が147 rad/sから168 rad/sの範囲で実施した。粉砕粉末のメディアン径,セルロース結晶化度(CrI)およびドメインサイズを評価することで接触応力およびせん断角速度との関係を調査した。粉砕粉末のメディアン径は接触応力とせん断角速度に関係なく,凝集によって増加した。接触応力はCrIと正の相関を示し,ドメインサイズとは負の相関を示した。一方で,せん断角速度はCrIとドメインサイズと相関がないことが分かった。
著者
小笠原 正弘 平尾 孝 藤田 静雄
出版者
公益社団法人 日本材料学会
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.634-638, 2017-09-15 (Released:2017-09-20)
参考文献数
22

Light emitting diodes (LEDs) possess advantages to be applied as one of the key medical devices in the field of phototherapy. In this paper, effects of blue light on inducing sleep have been examined based on the experiments for 100 test subjects. Narrow-band (<11 nm in full width of half maximum in the emission spectrum) irradiation was found to be more effective for inducing sleep. It should be noted that the intensity of light employed in this study was far less that that suppressing the secretion of melatonin and obstructing the circadian rhythm, which has recently extended widely. Since a variety of light sources in terms of wavelengths, bandwidths, and intensity are required in the medical applications or light therapy, LEDs are the ideal device and the efforts of developing new LEDs with the materials research of semiconductors are strongly demanded.
著者
荒木 速雄 加野 草平 西間 三馨 小笠原 正志 松崎 守利 田中 宏明 田中 守 進藤 宗洋
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3-1, pp.205-214, 1991-03-30 (Released:2017-02-10)
被引用文献数
1

気管支喘息児12名に自転車エルゴメーターを用いて4週間のトレーニングを行い, WBPLA_1 (work load at first braking point of lactic acid) より設定した5段階負荷強度にて physical working capacity の向上, EIB の改善をトレーニング前後で比較した. また, 高張食塩水吸入による気道反応の変化についても検討し, 以下の結果を得た. 1)心拍数はトレーニング前の WBPLA_1 175%強度に相当する仕事率で, トレーニング前値の188.5±9.6bpmよりトレーニング後178.4±9.7bpmへと, また WBPLA_1 150%強度では174.0±11.9bpmより165.6±11.3bpmへと, それぞれトレーニング後に有意に低下した. また最大酸素摂取量(Vo_2max/wt)は34.5ml/min/kgより41.lml/min/kgに有意に上昇した. 2) FEV_<1.0>の運動負荷後のMax.%fall は WBPLA_1 175%強度にて, トレーニング前37.4±17.4%よりトレーニング後30.3±17.4%へと, また WBPLA_1 150%強度では27.1±24%より18.0±17.1%へとそれぞれトレーニング後に有意に低下した. 3) 3.6%高張食塩水吸入試験ではトレーニング群においてPD_<20>は4.2±5.9mlから8.1±8.0mlへと有意に増加した. なお, コントロール群では3.7±5.8mlより4.3±6.3mlへと有意な変化は認められなかった.
著者
脇本 仁奈 吉成 伸夫 小笠原 正 薦田 智 河瀬 瑞穂 河瀬 聡一朗 大木 絵美 伊能 利之 金銅 英二 岡田 芳幸
出版者
一般社団法人 日本障害者歯科学会
雑誌
日本障害者歯科学会雑誌 (ISSN:09131663)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.84-90, 2021

<p>歯肉肥大を誘発する薬物の服用や遺伝的素因はないが,水平性歯肉肥大を認める重症心身障害児・者を散見する.重症心身障害児・者病棟入院中の患者で,歯肉肥大を誘発する薬物の服用や遺伝的素因がなく,3.5mm以上の水平性歯肉肥大がある者の比率,臨床的特徴を検討した.</p><p>対象者は,重症心身障害児・者病棟入院中の患者73名であった.入院記録から年齢,性別,疾患,ADL,常用薬,栄養摂食状況を調査用紙に転記した.口腔内診査は,プロービング検査,咬合状態,Plaque Index,3.5mm以上の水平性歯肉肥大の有無を評価した.水平性歯肉肥大は,歯肉肥大を誘発する薬物の服用はなく,WHOプローブにて水平的に3.5mm以上の肥大を1カ所でも認めたものとした.水平性歯肉肥大を認めた者は,入院記録からフェニトインなどの服用経験を調査し,保護者へ家族で遺伝性歯肉線維腫症を認めた者の有無を聴取するとともに水平性歯肉肥大の臨床的特徴を検討した.</p><p>特発性水平性歯肉肥大の発現率は,重症心身障害児・者で73名中4名(5.5%),胃瘻のみでは18名中4名(22.2%)であった.特発性水平性歯肉肥大を認めた者は,そうでない者と比較して平均年齢が低く,経管栄養と開咬の者の割合が有意に多かった.特発性水平性歯肉肥大の特徴は,上顎前歯部と上下顎臼歯部の口蓋側・舌側への水平性の肥大で,薬物性歯肉肥大症や遺伝性歯肉線維腫症とは歯肉肥大の形態特徴が明らかに異なっていた.4例とも経口摂取の既往を認めなかった.</p>
著者
秋枝 俊江 吉田 明弘 小笠原 正 朝比奈 滉直 宮原 康太 松村 康平 荘司 舞 島田 茂 島田 裟彩 谷口 誠
出版者
一般社団法人 日本障害者歯科学会
雑誌
日本障害者歯科学会雑誌 (ISSN:09131663)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.287-298, 2020

<p>経管栄養と経口摂取の要介護高齢者における口蓋・舌・咽頭の細菌叢を明らかにするために次世代シークエンス解析(NGS)を行い,さらに細菌叢に影響を与えている要因を検索する目的で主成分分析と相関比を用いた.経管栄養者20名と経口摂取者19名の要介護高齢者を調査対象とした.入院記録より栄養摂食状況,年齢,性別,疾患,寝たきり度を確認し,Japan Coma Scale,意識レベル,意思疎通の有無,残存歯とう蝕の有無,CPI測定を行った.検体採取は,口蓋,舌,咽頭をスワブ法にて実施し,DNA抽出,PCR法,次世代シークエンス・メタゲノム解析を行い,塩基配列を解読し,細菌の種類と構成率を評価した.</p><p>Shannon指数は,経管群で口蓋と咽頭において経口群よりも有意に低く,舌では,平均値で経管群が低かったが,有意差を認めなかった.経管群における口蓋,舌,咽頭は,好気性菌が有意に多く,通性嫌気性菌は,経管群で有意に多く認めた.経管群における口蓋,舌,咽頭の細菌叢は<i>Neisseria</i>属,<i>Streptococcus</i>属,<i>Rothia</i>属の割合が多かった.主成分分析による口蓋の第1主成分の寄与率は21.3%,舌で32.7%,咽頭で30.1%であった.「経管/経口」「意思疎通」「年齢」「全身疾患の種類」などを含めた18項目と細菌叢との関連を示す相関比は,「経管/経口」の相関比が最も高いことが認められ,口蓋・舌・咽頭の細菌叢に最も影響を与える要因は,「経管/経口」であった.</p>