著者
羽石 英里 河原 英紀 岸本 宏子 竹本 浩典 細川 久美子 榊原 健一 新美 成二 萩原 かおり 齋藤 毅 藤村 靖 本多 清志 城本 修 北村 達也 八尋 久仁代 中巻 寛子 エリクソン ドナ
出版者
昭和音楽大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

歌手は自らの身体が楽器であるため、歌唱にかかわる諸器官の動きを視認することができない。本研究では、歌手の身体感覚と実際の現象との対応関係を検証することを目的として、歌手へのインタビューを行い、歌唱技術の要とされる横隔膜の動きを実時間での磁気共鳴画像法(MRI動画)を用いて可視化した。その結果、プロ歌手の制御された横隔膜の動きが観察され、その現象が歌手の主観的な身体感覚の説明とも一致することが明らかになった。また、声道や舌の形状、ヴィブラートにも歌唱技術を反映すると思われる特性がみられた。本研究で提案されたMRIによる撮像法と分析法は、歌唱技術を解明する上で有用な手段のひとつとなりうるであろう。
著者
萩原 かおり 羽石 英里 河原 英紀 岸本 宏子 下倉 結衣 本多 清志
出版者
昭和音楽大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ミュージカル俳優は声を酷使することが多いが、未だ彼らの喉の健康を守る効果的な発声・訓練法が確立されているとは言い難い。本研究では、歌手の多くが体感している「喉・胸が開く」という感覚を手掛りに手技を用いての発声実験、アンケート、聴覚印象評価、MRI動画の撮像を行うことで、健康的な発声法を構築するための方法を探った。その結果、体感・評価スコア・音圧レベルの好変化、声帯位置の下制が観察される等「喉・胸が開く」という感覚に対する科学的根拠を得ることができたと考えられる。またそのMRI動画を用いての視覚による発声への影響についても良い結果が得られ、健康的な発声法訓練のための道筋を見つけることができた。
著者
羽石 英里
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.160-164, 2023 (Released:2023-09-28)
参考文献数
9

本稿では,発声・発話機能の改善を目的とする歌によるリハビリテーション「音楽療法ボイスプログラム(MTVP)」について解説する.この介入プログラムは,パーキンソン病患者を対象とし,歌うことの運動療法的な効果に着目したものである.歌うことが呼吸器官や体幹の筋肉をダイナミックに活用した「運動」であることは,リアルタイムMRIで確認されたプロ歌手による横隔膜の巧みなコントロールにも表れている.また,長年歌うことを習慣としてきた高齢者の発声機能が,習慣としてこなかった者に比べ高いことから,歌を継続することのメリットも推察される.MTVPは,身体のウォームアップ,呼吸・発声・構音の訓練,音読訓練,好みの曲の歌唱等を含む一連の活動からなる.音楽療法士は,歌うことに伴う心理的な影響も勘案しながら,発声・発話能力の向上を目指す.
著者
羽石 英里
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.177-182, 2012 (Released:2012-10-09)
参考文献数
4
被引用文献数
1 3 1

職業歌手における音声障害の意味を知るために,オペラ,ミュージカル,ジャズ,ポピュラーを含むさまざまなジャンルの職業歌手9名を対象にインタビューを行った.インタビューでは,まず望ましい歌唱時の状態・身体感覚・筋感覚を言語化してもらい,次に望ましくない状態,すなわち音声障害の様子と,耳鼻咽喉科の受診等について語ってもらった.望ましい歌唱時には,呼吸の適切なコントロールにより,発声・共鳴も含めた歌うことのシステム全体が調整されていること,喉頭がリラックスした状態にあることなどが,歌手たちの言語表現から推察された.職業歌手は歌うためにさまざまな筋肉を使う「アスリート」であり,音声障害には,身体全体の調整不良が背景にある場合が考えられる.コンサートをキャンセルできない等の職業歌手に特有な「労働環境」,歌うことを職業とするがゆえの不安・ストレスへの理解も,職業歌手の音声障害への対処にあたって重要と思われる.
著者
岸本 宏子 羽石 英里 ERICKSON Donna エリクソン ドナ 細川 久美子 鈴木 とも恵 河原 英紀 竹本 浩典 榊原 健一 藤村 靖 新美 成二 本多 清志 中巻 寛子 長木 誠司 八尋 久仁代
出版者
昭和音楽大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

音楽学の学際的な研究の試みとしてとりあげた「ソプラノの声の特性」の研究は、音声学、音響学、物理学、医学、声楽演奏、声楽指導、音楽学、音楽療法等の関係分野それぞれに、有益な収穫をもたらした。しかしそれにも増す成果は、研究の進行と共に個々の分野内の研究成果の枠を超えて、「学際的研究」としての総合的な研究への興味が高まって来た。そして、新たな研究代表者の下、本研究の成果を礎とした新たな研究へと発展的に継承されることである(基盤研究C25370117「歌唱時の身体感覚の解明:MRIによる発声器官の可視化と音響分析を中心とした試み」)。