著者
羽石 英里 河原 英紀 岸本 宏子 竹本 浩典 細川 久美子 榊原 健一 新美 成二 萩原 かおり 齋藤 毅 藤村 靖 本多 清志 城本 修 北村 達也 八尋 久仁代 中巻 寛子 エリクソン ドナ
出版者
昭和音楽大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

歌手は自らの身体が楽器であるため、歌唱にかかわる諸器官の動きを視認することができない。本研究では、歌手の身体感覚と実際の現象との対応関係を検証することを目的として、歌手へのインタビューを行い、歌唱技術の要とされる横隔膜の動きを実時間での磁気共鳴画像法(MRI動画)を用いて可視化した。その結果、プロ歌手の制御された横隔膜の動きが観察され、その現象が歌手の主観的な身体感覚の説明とも一致することが明らかになった。また、声道や舌の形状、ヴィブラートにも歌唱技術を反映すると思われる特性がみられた。本研究で提案されたMRIによる撮像法と分析法は、歌唱技術を解明する上で有用な手段のひとつとなりうるであろう。
著者
加藤 浩介 榊原 健一 川井 敬二
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は、音場が歌唱に与える影響に着目し、歌唱時における体性感覚・聴感印象および発声された歌声の音響的特徴に対して音場が及ぼす影響を検証した。その結果、次の3点が示された。1)残響条件によって、異なる聴感的印象の歌声が発声される。2)残響条件によって、歌唱者が異なる体性感覚・異なる聴感的印象を感じながら発声を行う。3)残響条件によって、異なる声帯振動が起こり、異なる音響的特徴の歌声が発声される。
著者
竹本 浩典 榊原 健一
出版者
千葉工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、オペラ歌手が声量のある良く響く発声を行うメカニズムの解明を試みる。オペラ歌唱では、共鳴器である声道(声帯から口唇までの空間)と、呼気を生成する横隔膜を独特の方法で制御することにより、特有の発声を行っていると考えられているが、声道も横隔膜も直接観察できないため、詳細は明らかになっていない。そこで、まず、オペラ歌唱時の声道や横隔膜の運動を医療用のMRIで動画として撮像し、変位量などを分析する。次に、これらの分析結果に基づいて、声道や呼気の制御が音声に及ぼす影響をシミュレーションでも検討する。そして、これらを踏まえてオペラ歌唱のメカニズムの解明に取り組む。
著者
石井 カルロス寿憲 榊原 健一 石黒 浩 萩田 紀博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム = The IEICE transactions on information and systems (Japanese edition) (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.89, no.12, pp.2679-2687, 2006-12-01
参考文献数
20

Vocal fry(フライ)は,声帯振動の様式に起因する声質の一種であり,気分的にテンションが低くリラックスしている場合や,強い感情や態度の表現の際に喉頭を力んだ場合に生じ,バラ言語や非言語情報を伝達する役割をもっている.本論文は,音声信号からフライ区間を自動的に検出することを目的としている.フライは通常発声よりも低い基本周波数の範囲で生じやすい.ゆえに,典型的な固定フレーム長の短時間処理が問題となるが,その解決策として,本論文では声帯パルスに同期した手法を提案した.具体的には,フライの声帯パルスのインパルス的な特性とダンピング特性を考慮し,超短時間処理で求めたパワー軌道から声帯パルスの候補となるパワーピークを検出する.検出されたパワーピークにおいて,周期性とパルス間類似度を用いて,フライであるか,それともインパルス的な雑音であるかを判定する.評価実験として,パワーピーク検出・周期性・パルス間類似度に関連するしきい値パラメータを様々な条件で分析した.その結果,73%の高い検出率と4%の低い挿入誤り率により,自動的にフライ区間が検出可能であることが示された.
著者
榊原 健一 林 良子 後藤 多嘉緒 河原 英紀 牧 勝弘 齋藤 毅 山川 仁子 天野 成昭 山内 彰人
出版者
北海道医療大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

喉頭音源に関連する声質の客観的表記に関し、生理学的、物理学的視点から、音源となる振動体の分類により(i) 声帯発声 ; (ii) 声帯-仮声帯発声; (iii) 声帯-披裂部発声; の3種類の有声音と,無声音である声門乱流雑音発声と分類が可能であり、有声音源に関しては、物理的・音響的特徴から周期的、準周期的、非周期的の3つの振動への分類を提案した。また、声質表現として緊張-弛緩と声門開放時間率との関係を明らかにし、声質の客観的な表現語として適切であることを明らかにした。声門開放時間率の分析方法として、余弦級数包絡の複素wavelet分析に基づく簡易なGCI, GOIの検出方法を考案した。
著者
金子 真美 平野 滋 楯谷 一郎 倉智 雅子 城本 修 榊原 健一 伊藤 壽一
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.201-208, 2014 (Released:2014-09-05)
参考文献数
28
被引用文献数
2 3

一般人の音声障害に関する音声治療については多くの報告があり,高いエビデンスレベルのものもある.しかし歌唱者の音声障害に対する音声治療については国内外で報告は少なく,現時点で確立された手技もない.今回われわれは歌唱者の音声障害に対し音声治療を行い,症状に一定の改善を認めた.対象は声帯結節,声帯瘢痕,声帯萎縮,過緊張性発声障害のいずれかと診断され,音声治療を施行した歌唱者9例(男性5例,女性4例,平均年齢53.3歳)である.口腔前部の共鳴を意識した音声治療を施行し,効果をGRBAS,ストロボスコピー,空気力学的検査,音響分析,自覚的評価,フォルマント周波数解析で評価した.治療後,音声の改善は個人差があるものの全例で認められ,MPTやVHI-10,GRBASで有意差が認められた.また,歌唱フォルマントもより強調されるようになった.歌唱者の音声障害に対する音声治療は一定の効果が期待できると考えられた.
著者
二藤 隆春 今川 博 溜箭 紀子 山岨 達也 榊原 健一 田山 二朗
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.166-170, 2010-04-20
参考文献数
8

声帯瘢痕は, 手術や外傷による損傷, 炎症の反復などにより本来柔軟な声帯粘膜が硬い瘢痕組織に置換され, 声帯振動の異常から音声障害が生じる疾患である. 瘢痕性病変の部位や程度を正確に評価するには通常の喉頭内視鏡検査では困難であり, 喉頭ストロボスコピーや高速度デジタル撮影が必要である. 患側の声帯振動, 粘膜波動の減弱や消失, 両側声帯間の位相差や声門閉鎖不全などの所見が観測される. 画像解析法として, 声帯振動の時系列的な変化を追うキモグラフや部位ごとの声帯振動の差異を表示可能な喉頭トポグラフなどが活用されはじめ, さらなる発展が期待されている. 症状と喉頭内視鏡検査所見が一致しない場合は, 声帯瘢痕の可能性も念頭におき, 積極的に精査を進めることが重要である.
著者
河原 英紀 榊原 健一 坂野 秀樹 森勢 将雅
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:21888752)
巻号頁・発行日
vol.2018-MUS-121, no.1, pp.1-5, 2018-11-14

瞬時周波数と群遅延は,それぞれ位相の時間微分と周波数微分として定義されており,そのままでは,逆三角関数や位相の unwrap という脆弱で効率の悪い演算を必要としていた.Flanagan によって 1966 年に紹介された信号の瞬時周波数を求める式は,これらを必要とせず,群遅延の計算にも応用できることから広く用いられてきた.しかし,マルチメディア処理の普及により,最近の処理系では逆三角関数の計算を高速に実行することができるため,明示的に位相を経由することなく瞬時周波数と群遅延の計算を実装することができようになった.ここでは,サイドローブの減衰が急峻な余弦級数を時間領域の振幅包絡とする解析信号をインパルス応答とするフィルタを用いて有声音の音源を分析する方法を提案する.
著者
岸本 宏子 羽石 英里 ERICKSON Donna エリクソン ドナ 細川 久美子 鈴木 とも恵 河原 英紀 竹本 浩典 榊原 健一 藤村 靖 新美 成二 本多 清志 中巻 寛子 長木 誠司 八尋 久仁代
出版者
昭和音楽大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

音楽学の学際的な研究の試みとしてとりあげた「ソプラノの声の特性」の研究は、音声学、音響学、物理学、医学、声楽演奏、声楽指導、音楽学、音楽療法等の関係分野それぞれに、有益な収穫をもたらした。しかしそれにも増す成果は、研究の進行と共に個々の分野内の研究成果の枠を超えて、「学際的研究」としての総合的な研究への興味が高まって来た。そして、新たな研究代表者の下、本研究の成果を礎とした新たな研究へと発展的に継承されることである(基盤研究C25370117「歌唱時の身体感覚の解明:MRIによる発声器官の可視化と音響分析を中心とした試み」)。
著者
榊原 健一 徳田 功 今川 博 山内 彰人 横西 久幸 Sommer David E.
出版者
北海道医療大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

声帯振動の3次元計測および音声のダイナミクスについてプロファイリングにおける基礎的検討をおこなった。声帯振動の3次元計測に関しては、新しく構築したステレオ喉頭側視鏡を用い、声帯振動のステレオ喉頭デジタル撮像のステレオマッチングの方法を提案、実装した。それらの方法を用い、発声中にin vivoで記録された高速度デジタル画像から、声帯縁の上下動を分析た。音声のダイナミクスのプロファイリングをおこなうための基礎的な検討として、喉頭全体の筋緊張を反映するとされるパラメータである声門開放時間率を、構造的な音声課題を用いて異なる定義の声門開放時間率と音響パラメータを比較した。
著者
柳田 早織 今井 智子 榊原 健一 西澤 典子
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.1-8, 2011 (Released:2011-02-18)
参考文献数
18

日本人乳児に関する前言語期音声の詳細な発達過程は明らかになっていない. そこで生後4~10ヵ月時まで月1回の頻度で音声を録音し, 評価者2名が日本人乳児5名の音声を聴覚的に評価した. 日本人乳児の場合も英語圏乳児と同様に (i) 「stage model」に相当する発達段階の設定が可能かどうか, (ii) 段階設定が可能な場合に各段階は重複するのか, (iii) 発達段階における個人差はどの程度か, (iv) 摂食機能と出現音声は関連があるかについて検討した. その結果, 日本人乳児の場合も, 規準喃語が母音的音声や声遊び音声に遅れて出現し発達段階の設定が可能であること, 規準喃語出現以降も母音的音声や声遊び音声が観察され各段階は重複することが示された. また, 観察された音声タイプや出現頻度, 規準喃語の出現時期は対象児間で異なっていた. 離乳食開始に伴い, 口唇を震わせて産生するraspberry (RSP) が増加し, RSPの出現と摂食機能との関連が示唆された.
著者
柳田 早織 今井 智子 榊原 健一 西澤 典子
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.1-8, 2011-01-20

日本人乳児に関する前言語期音声の詳細な発達過程は明らかになっていない. そこで生後4~10ヵ月時まで月1回の頻度で音声を録音し, 評価者2名が日本人乳児5名の音声を聴覚的に評価した. 日本人乳児の場合も英語圏乳児と同様に (i) 「stage model」に相当する発達段階の設定が可能かどうか, (ii) 段階設定が可能な場合に各段階は重複するのか, (iii) 発達段階における個人差はどの程度か, (iv) 摂食機能と出現音声は関連があるかについて検討した. その結果, 日本人乳児の場合も, 規準喃語が母音的音声や声遊び音声に遅れて出現し発達段階の設定が可能であること, 規準喃語出現以降も母音的音声や声遊び音声が観察され各段階は重複することが示された. また, 観察された音声タイプや出現頻度, 規準喃語の出現時期は対象児間で異なっていた. 離乳食開始に伴い, 口唇を震わせて産生するraspberry (RSP) が増加し, RSPの出現と摂食機能との関連が示唆された.
著者
伊東乾 榊原 健一 青木 涼子 小坂 直敏
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.19, pp.79-82, 2000-02-17

五線記譜法に由来する音高や音色などの概念は、作曲や聴取、分析に深い影響を及ぼしている。本稿では正弦波モデルによる音楽音声の新しい取り扱いを提案する。能楽の発声と記譜の事例に関して正弦波モデルを適用して考察し、合わせて観世榮夫氏の協力で行った研究制作「能オペラ『邯鄲』」にも触れる。The concepts of pitch and timbre, which have their origin in western classical music notation system, deeply ruled the music thinking of composition, listening and analysis. In this article we propose a new treatment of musical voice based on a sinusoidal model. Noh music theater, Japanese traditional opera, have proper charactaristics in its singing technique and notation system to be analysed with a sinusoidal model. We also report research = production "Quand-Temps" Noh-Opera after the concepts of M. Duchamp and J. Cage, which is a collaboration with Hideo KANZE, prominent Noh actor in KANZE style.
著者
永沼 宙 徳田 功 木村 美和子 今川 博 榊原 健一 田山 二朗
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.399, pp.5-10, 2007-12-12
参考文献数
6

声帯麻痺による音声障害は声帯の複雑な非線形振動に起因しており,病態との関連については未解明な問題が多い.声帯数理モデルの異常振動解析による音声障害の理解は,音声外科手術に際しても重要な知見を与える可能性がある.声帯モデル研究では,単純な二質量モデルから複雑な多質量モデルに至るまで様々のモデルが存在するが,これまでは,声帯の標準的かつ定性的な性質に着目することが主流であり,実際の声帯計測データの個々の定量的性質を反映したモデル化を目指した例は0少ない.本研究では,高速デジタル撮影法を用いて臨床的に計測された声帯の異常振動データに対して,その定量的性質を実現するために,数理モデルのパラメータ推定を行う.数理モデルには非対称な二質量モデルを用い,声門下圧,左右の声帯張力,声門開口面積などのパラメータを推定する.外科手術前後のデータを用いることにより,手術効果がパラメータの推定結果に反映されているかを判定する.これによって,数理モデルによる音声外科手術のシミュレータが構築可能かを検討する.