- 著者
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城本 修
- 出版者
- 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
- 雑誌
- 日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
- 巻号頁・発行日
- vol.121, no.3, pp.193-200, 2018-03-20 (Released:2018-04-06)
- 参考文献数
- 25
- 被引用文献数
-
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音声障害の治療は, 耳鼻咽喉科医による医学的治療と言語聴覚士による (発声) 行動そのものに介入する行動学的治療に大別できる. 音声治療は, 健康行動科学理論を背景とした行動変容法に基づいており,「何らかの働きかけ (音声治療) によって, 望ましい発声行動に修正され, その新しい発声行動が一定期間にわたり維持される行動変容法」とも定義される. つまり, 習慣化した望ましくない発声行動を望ましい発声行動に継続的に変える (習慣化する) ことを目的とした言語聴覚士が実施する行動変容法が音声治療であるとも言い換えることができる. したがって, 発声行動の変容ということなので, 患者のアドヒアランスが訓練効果に影響することはいうまでもない. 音声治療は, これまで言語聴覚士の方法論的観点から, 音声障害患者に実際に発声させながら望ましい発声に修正する直接訓練と音声訓練を全く伴わない間接訓練に大別されてきた. しかし, 音声治療のエビデンスを示すコクランレビューでは, 各訓練単独の治療効果は認められず, 直接訓練と間接訓練の併用訓練のみの治療効果が示されており, 本来は, 両訓練の一体的な治療が必要であることが示唆されている. さらに, 音声治療の頻度に関するレビューによれば, 音声治療は, 平均して1セッションあたり30分か60分が多く, 平均するとほぼ9週で10セッション程度と報告されている. 近年, 声道と声帯振動の非線形性に着目したストローを利用した声道準狭窄という新しい治療技法が報告されるようになった. まだ, 理論的に十分な検証がなされたとはいえないが, 非常に簡便な方法で実施しやすいので今後, 拡大すると思われる.