著者
中村 謙吾 肴倉 宏史 川辺 能成 駒井 武
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.39-48, 2015 (Released:2015-02-20)
参考文献数
24

製鋼スラグの利用用途で,腐植物質との混合による磯焼け回復技術が注目されているが,製鋼スラグから溶出する重金属等の環境影響を検討する必要がある.本研究では純水による検討に加えて,海域利用を想定し,実海水を用いて振とう試験および浸漬式のシリアルバッチ試験を実施した.さらに,海域利用において要求される環境安全品質の考え方に基づき,海域利用への適合性について考察を行った.試験結果より,Cd,Pb,Cr,Bは,試験条件を変えた場合に,溶出濃度が港湾用途溶出量基準を超過することは確認されず,製鋼スラグ及び腐植物質の相互作用により,重金属類の溶出濃度は減少傾向を示した.また,本研究で想定した海域利用の環境安全品質を設定し,本試験結果を適用した結果,重金属類による海域汚染の原因となる可能性は低いことが示唆された.
著者
肴倉 宏史 成岡 朋弘
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会研究発表会講演集
巻号頁・発行日
vol.28, 2017

筆者らは、有害金属負荷を低減した焼却主灰の土木資材化について検討を行い、含有量の比較的高い落じん灰やボイラー灰等の主灰との混合回避や、エージングにより溶出抑制を図る等の提言を行ってきた<sup>2)</sup>。さらに本報告では、焼却残渣中の有害金属等の由来を探るため、厨芥類や紙・布類といった各可燃物が焼却残渣中の各元素に占める寄与率の推定を試みた。その結果、可燃物の灰化物の元素組成は調査対象施設で採取した全ての焼却残渣から求めた元素組成と良い相関が得られた。有害金属の由来として、Pbはビニール・樹脂類が68%、Cdは木・竹・わら類とゴム・皮革類がそれぞれ38%、29%を占める等の結果となった。
著者
遠藤 和人 中川 美加子 肴倉 宏史 井上 雄三 井 真宏 杉原 元一
出版者
公益社団法人 日本材料学会
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.31-36, 2012-01-15 (Released:2012-01-20)
参考文献数
8
被引用文献数
1

Necessity to promote a recycle of waste plaster board is mounting, since the waste plaster board has been legally prohibited to dispose into inert landfill site. However, it is concerned that the recycled waste plaster board (recycled gypsum) produces hydrogen sulfide gas, so that it is one of the interference with the recycling. There is a possibility to control the hydrogen sulfide gas production from the recycled gypsum by artificially changing into alkaline condition or adding iron oxide. In this study, we discussed the hydrogen sulfide gas production from a ground improvement with the recycled gypsum, quick lime, and/or iron oxide powder. In addition, unconfined compression strength of the ground improvement is evaluated in order to obtain an incentive of the recycling. Adding only the recycled gypsum cannot improve strength of a soft ground having much amount of fine particles. Quick lime was required for strength improvement. If pH of the ground improvement is greater than 9, it was observed that the hydrogen sulfide gas production potential is negligible. Increasing pH by adding the quick lime is able to more effectively control the production of the hydrogen sulfide gas than adding the iron oxide powder. The production of the hydrogen sulfide gas is able to be controlled by adding the quick lime more than half of the amount of gypsum addition.
著者
肴倉 宏史 仲川 直子 前田 直也 角田 康輔 水谷 聡 遠藤 和人 宮脇 健太郎
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会研究発表会講演集 第25回廃棄物資源循環学会研究発表会
巻号頁・発行日
pp.399, 2014 (Released:2014-12-16)
被引用文献数
1

水素イオン濃度指数(pH)は,有害物質である重金属等の挙動に大きな影響を与えるだけでなく,その変化自体が生態系へ多大な影響を及ぼす。海水のpHは約8.1で安定しているが,都市ごみ焼却灰,廃コンクリート,製鋼スラグなど,廃棄物や副産物の中には水と接触すると高いアルカリ性を示すものが多い。これらは最終処分やリサイクルのために海面に投入される場合があり,その際に,海水のpHに影響を及ぼす可能性がある。ただし,海水は,外的なpH変化の要因に対して緩衝能力を有しており,pH変化の幅は蒸留水等よりも小さいことが知られている。そこで本研究では,海水のpH緩衝能力のうちの、水酸化物イオンの添加に対するモデルを構築し,緩衝のメカニズムについて考察を行った。
著者
辻本 浩子 王 寧 肴倉 宏史 大迫 政浩
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.86-93, 2010 (Released:2010-04-15)
参考文献数
10
被引用文献数
2 1

溶融飛灰中の重金属の溶出を抑制させる方法として,液体キレート剤を用いた薬剤処理法が主流であるが,処理飛灰中の金属キレート化合物の長期安定性が懸念されている。本研究では,溶融飛灰のみ埋立処分を行い埋立開始から8年経過した最終処分場を対象に,表層から深さ5mまでの飛灰試料を採取し,金属キレート化合物の存在量の変化および重金属の溶出特性について調査した。その結果,埋立後の試料では金属キレート化合物の存在量の減少はPbで著しく,処理直後の10%以下となった試料も確認され,埋立後に金属キレート化合物が分解した可能性が高いことが示された。しかし,溶出試験でのPbの溶出濃度および処分場浸出水の実測値はすべて0.031mg/L以下と極めて低かった。pH依存性試験を実施したところ,pH14の条件でも鉛の溶出率は全含有量の10%以下であり,キレート化合物から分解したPbは強アルカリ性でも溶出しにくい化学形態であると推測された。