著者
石森 洋行 遠藤 和人 山田 正人 大迫 政浩
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.39-49, 2017 (Released:2017-04-11)
参考文献数
11
被引用文献数
2

放射性物質に汚染された廃棄物の焼却灰はその濃度によって埋立方法が異なるものの,放射性物質の拡散防止対策として土壌吸着層の設置は義務付けられており,その性能評価は重要である。本研究では,放射性セシウムに対する土壌や廃棄物,吸着材等の吸着特性を把握するために,放射能汚染飛灰から作製した4 種類の飛灰溶出液を溶媒として,22種類の試料を対象に吸着試験を行った。その結果より分配係数を評価し,その影響因子を検討した。また試料に吸着した放射性セシウムの脱着特性を調べるために,純水,1 mol/L 酢酸アンモニウム,人工海水,飛灰溶出液を溶媒とした溶出試験を行い溶出率を評価した。
著者
藤井 実 中谷 隼 大迫 政浩 森口 祐一
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会研究発表会講演集 第20回廃棄物資源循環学会研究発表会
巻号頁・発行日
pp.76, 2009 (Released:2009-09-25)
被引用文献数
1

プラスチックのリサイクル方法はマテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、エネルギー回収と多様である。リサイクルによって代替される新規資源を設定して評価する従来のLCAによる評価でも、マテリアルリサイクルとエネルギー回収の差であれば、プラスチックの製造エネルギーを含めて代替されるか否かの差異として評価された。しかし、同じマテリアルリサイクルで、水平リサイクルとカスケードリサイクルを比較する際には、これらの差が結果に反映されない場合が多い。近年、使用済みPETボトルなどの廃プラスチックが海外に輸出され、リサイクルされている。国内のリサイクルは、海外でのリサイクルに比べて質の高いリサイクルを行っている場合があるが、これらの差異は従来のLCAでは十分に評価されていない場合が多い。本研究では、カスケードリサイクルとの相対的な水平リサイクルの効果を過不足なく評価する方法を検討する。
著者
小島 英子 阿部 直也 大迫 政浩
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.343-358, 2015-09-30 (Released:2016-08-01)
参考文献数
22
被引用文献数
1

住民のごみ問題への関心は個人のライフステージの変遷とともに変化するという認識のもと,その関心が何から影響を受け,どのように変化しているのかを明らかにするために,川崎市民を対象にアンケート調査を実施した(回答者数:1,308)。未成年期から現在に至るごみへの関心の変化とその理由を10年刻みの自由記述で尋ね,テキストマイニングと多重コレスポンデンス分析によって解析した。ごみへの関心は年齢が高いほど高く,一人暮らし,結婚,出産,子育て,退職などのライフステージに特徴的なライフイベントの影響を受けて,高まっていた。また,ライフステージの変遷とともに,家庭内でのごみ管理の役割や,時間的な余裕の有無,地域との繋がり,家庭から出るごみ量などが変化し,ごみへの関心に変化を与えていた。他方,ごみ問題の顕在化により世間の意識が喚起されたり,分別制度が始まったりといった,個人のライフステージとは直接関係のない,社会状況や廃棄物管理制度の違いが,個人の関心の高まりに影響している様子も窺えた。また,現在50歳代あたりを境として性差による役割分担の違いが,ごみへの関心に影響している可能性も示された。以上から,ライフイベントなどのライフステージ要因と非ライフステージ要因である社会・制度的背景が,相互に関連して住民のごみへの関心に対して影響を及ぼしていることが示唆された。自治体は,一人暮らしや結婚等の住民がごみとの関わりを変えるライフイベントを捉えて情報提供を行うなど,ライフステージに応じた施策を実施することで,効果的に意識を喚起し,分別の遵守や3R行動を促すことができると考えられる。
著者
秋山 貴 大迫 政浩 松井 康弘 原科 幸彦
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.121-130, 2004-03-31
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

産業廃棄物処理施設は忌避施設と見なされ, その設置をめぐる紛争が多発している。このような特性を有する施設が偏在することは, 環境保護と社会正義の同時達成を目指す「環境的公正」の概念に照らして問題であるとの仮説を基に, 本稿ではその空間的偏在性について定量的に検討した。同時に, 昨今大きな社会問題になっている産業廃棄物の不法投棄についても検討した。分析対象は関東とその周辺の1都8県の最終処分場, 中間処理施設, 不法投棄とし, それらを市町村ごとに集計してその立地や発生の傾向を調べた。分析の結果, 最終処分場, 中間処理施設, 不法投棄のすべてにおいて正の空間的自己相関が存在し, これらが市町村単位で見たとき偏在性があることがわかった。さらに, 最終処分場立地点と不法投棄発生点には空間的分布において類似性が認められることから, 問題構造に共通性が存在する可能性があることが示された。
著者
水原 詞治 前背戸 智晴 倉持 秀敏 大迫 政浩
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会研究発表会講演集
巻号頁・発行日
vol.27, 2016

除染廃棄物を処理する仮設焼却炉では、焼却飛灰からの放射性Cs溶出率が低いなど、一般廃棄物焼却炉とは異なる傾向が確認されているが、放射性Csの挙動について知見が十分でないため、本研究では除染廃棄物仮設焼却炉の耐火物における放射性Csの溶出特性、除去特性に焦点をあて、放射性Csの挙動評価を行った。その結果、除染廃棄物仮設焼却炉の耐火物は、難溶性Csが蓄積されやすく、結果として放射性Cs溶出率が低く、加熱による揮発除去が起こりにくい傾向が確認された。
著者
阿部 清一 川本 克也 倉持 秀敏 大迫 政浩
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会研究発表会講演集
巻号頁・発行日
vol.25, 2014

溶融技術は、1,300~1,400℃の高温炉内で処理固形物を塩化物や可燃物と共に溶かし、Csを塩化揮発等により高効率に揮散分離して溶融飛灰中に濃縮できる技術である。前報では、草木類を含む土壌を対象として、大型テストプラントを用いた溶融試験を行い、Csを高効率で分離できることを確認した。そこで、本報では、処理対象の範囲を広げ、バイオマス焼却灰、下水汚泥焼却灰及びそれらと土壌の混合物について同様の実証試験を行い、以下の結果を得た。<br>① 対象物種によらずCaCl2添加により塩化揮発が起こり、全条件において95%以上、最大99.9%のCs揮散率が得られた。<br>② 二段BFの適用により、Csは少量のNo.1 BF灰に高濃度濃縮できた。また、それは水溶解しやすい性状であった。<br>
著者
大迫 政浩 山田 正人 井上 雄三 金 容珍 朴 政九 李 東勲 吉田 悳男 野村 稔郎
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.12, no.6, pp.256-265, 2001-11-30 (Released:2010-05-31)
参考文献数
30
被引用文献数
3 2

韓国では, 都市ごみ焼却主灰 (以後主灰と略す) からの鉛の溶出濃度が判定基準に適合しないために, 埋め立てできない状況に陥っており, 深刻な問題になっている。その原因を明らかにするとともに, 日本の主灰においても同様の問題が生じていないかを明らかにするために, 韓国の都市ごみ焼却施設に野積み保管されている主灰を採取し, 日本の施設からも主灰試料を採取して, 含有量試験, 環境庁告示13号法による溶出試験およびpH依存性試験を実施した。試験結果に基づいて, 日韓の主灰の重金属類含有量および溶出量を日本を中心にした文献データと比較検討した。その結果, 韓国の試料で鉛 (Pb) の溶出濃度が高い原因は, アルカリ・アルカリ土類金属の含有量が高く, それらの酸化物等の溶解によってpHが高くなったためであると考えられ, 文献データを基にした考察から, 日本の主灰でも同様の現象が起こっていることがわかった。韓国において埋立を法的に可能にするためには, 埋立前にエイジングを行う方法などが考えられる。日本では主灰に対する溶出基準はなく, 今後の埋立処分および有効利用の観点から適切な対策を講じる必要がある。
著者
倉持 秀敏 崔 基仁 大迫 政浩 前田 光治 中村 一夫 酒井 伸一
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物学会研究発表会講演論文集 第18回廃棄物学会研究発表会
巻号頁・発行日
pp.175, 2007 (Released:2007-11-23)

トラップグリースのような低品質な廃油脂類をBDF原料として利用するには、既存のBDF製造ラインに投入する前に原料の脱水および遊離脂肪酸(FFA)の除去が必要である。そこで、本研究では、脱水方法として莫大な水の蒸発潜熱の投入を回避でき、かつ、後段の反応系への展開が容易な溶媒抽出法に着目し、溶媒抽出による脱水の可能性を検討するとともに、新規BDF製造法として抽出剤を含む抽出物をFFAの除去およびBDF製造プロセスに直接導入した場合を想定し、抽出剤がFFAの除去および油脂のBDF化に与える影響を調べた。
著者
辻本 浩子 王 寧 肴倉 宏史 大迫 政浩
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.86-93, 2010 (Released:2010-04-15)
参考文献数
10
被引用文献数
2 1

溶融飛灰中の重金属の溶出を抑制させる方法として,液体キレート剤を用いた薬剤処理法が主流であるが,処理飛灰中の金属キレート化合物の長期安定性が懸念されている。本研究では,溶融飛灰のみ埋立処分を行い埋立開始から8年経過した最終処分場を対象に,表層から深さ5mまでの飛灰試料を採取し,金属キレート化合物の存在量の変化および重金属の溶出特性について調査した。その結果,埋立後の試料では金属キレート化合物の存在量の減少はPbで著しく,処理直後の10%以下となった試料も確認され,埋立後に金属キレート化合物が分解した可能性が高いことが示された。しかし,溶出試験でのPbの溶出濃度および処分場浸出水の実測値はすべて0.031mg/L以下と極めて低かった。pH依存性試験を実施したところ,pH14の条件でも鉛の溶出率は全含有量の10%以下であり,キレート化合物から分解したPbは強アルカリ性でも溶出しにくい化学形態であると推測された。