- 著者
-
舟橋 和夫
- 出版者
- 京都女子大学
- 雑誌
- 一般研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1990
本研究の成果は以下の通りである。まず、第1は移民個人のデ-タベ-スをはじめてコンピュ-タ上に形成したことである。これにより移民デ-タの処理と分析が自在に行えるようになった。しかも、移民デ-タベ-スは公開するので、他の移民研究者も自在に研究分析が可能になった。従来の移民研究では、明治元年から明治18年までの間に集団的な移民はないという見解であったが、今回明治4年にハワイへの集団移民が新たに見つかった。現時点ではこの移民がどのような移民であったのか詳しいことは不明であるため、今後の研究課題である。日本からの出移民122年間の地域的特徴を簡単に述べると以下の通りである。明治元年から明治18年頃までは、当時開港されていた神奈川県と長崎を中心として、その周辺から多く出ている。行き先はアジアである。明治18年から明治末までは広島、山口、和歌山、熊本、沖縄などからのハワイ行きと、長崎からのアジア行きの2つの移民の流れが見られる。大正年間から第2次世界大戦前までは広島の出移民がもっとも多く、北海道、福島、新潟、静岡、滋賀、和歌山、岡山、山口、福岡、熊本、沖縄など各県に広がった。戦後の出移民を多い順に指摘すれば、沖縄、東京、福岡、北海道、熊本、長崎の順である。戦前の出移民県である広島と山口はそれほど上位にはランクされていないのが特徴である。このように、移民現象はそれぞれ地域の特徴が鮮明に出ている。生活史研究においては、既に移民経験者が非常に少なくなっており、インタビュ-することが極めて困難であったが、今回は夫婦の移民経験者にインタビュ-できた。2人の生活史を掲載し、移民研究の基視資料としたい。