著者
舩津 保浩 砂子 良治 小長谷 史郎 今井 徹 川崎 賢一 竹島 文雄
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.1036-1045, 2000-11-15
被引用文献数
18 25

マルソウダから調製した魚醤油(FMS)の呈味成分を, 国内産魚醤油(しょっつる(S), いかいしる, いわしいしる(IS))および大豆こいくち醤油(SS)と比較した。その結果, FMSは遊離アミノ酸やオリゴペプチド態アミノ酸総量が, 比較した全試料の中で最も多く, SSのそれらよりも多かった。全試料で, AMP, IMPおよびGMPは検出されなかった。FMSとSSで有機酸の総量は極めて高いが, その大部分は乳酸であった。FMSとSSはKとP含量が高く, Naが比較的少なかった。官能評価では, SとISでは塩味が強いが, FMSとSSでは, 塩味は強いとは感じられず, まろやかで味のバランスがとれていた。
著者
舩津 保浩 深見 克哉 近藤 秀裕 渡部 終五
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.611-617, 2005-07-15
被引用文献数
1 10

醤油麹を用いて調製したマルソウダ魚醤油のもろみから分離した <i>Staphyrococcus nepalensis</i> を黒作りイカ塩辛に添加し,4℃で 30 日間貯蔵後の呈味成分と揮発性成分を HPLC および GC/MS 分析した。その結果,本菌を添加した黒作りと無添加の黒作りの呈味成分含量には差異がみられなかったが,揮発性有機酸類,アルデヒド類,含硫化合物,アルコール類およびエステル類の組成は両者で異なり,二硫化ジメチルは前者からは検出されなかった。官能評価では,前者の魚臭さや不快なイカの臭いは後者のそれよりも弱かった。<br>
著者
舩津 保浩 西村 由紀子 石下 真人 上馬塲 和夫 西尾 由紀夫 寺島 晃也 真船 直樹
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.367-372, 2008-08-15 (Released:2008-09-30)
参考文献数
26
被引用文献数
1 3

豆乳や豆腐の副産物として排出される「おから」の有効活用を目的として,おからをケーキに利用した製品(「おからケーキ」)の一般成分,血糖値上昇抑制効果および官能的特性について従来の小麦を利用した製品(「対照ケーキ」)のそれらと比較検討を行った.その結果を下記に示す.(1)「おからケーキ」と「対照ケーキ」の一般成分を調査したところ,食物繊維量,とくに不溶性食物繊維量が前者は後者よりも多い点に特徴がみられ,糖質量やエネルギー値でも前者が後者よりも低かった.(2)実用面を考慮した「おからケーキ」と「対照ケーキ」の100g同量摂取試験の結果,前者の食後15分,30分,45分および120分の血糖値は後者のそれらに比べて有意に低い値を示した.(3)「おからケーキ」と「対照ケーキ」の50g糖質摂取試験を実施したところ,前者は食後30分の血糖値を有意に抑制した.また,両者のGIを比較したところ,前者のGIは後者のそれより39.1%低い値であった.(4)「おからケーキ」と「対照ケーキ」の官能評価を実施したところ,外観,香り,大豆臭および甘味については両者に有意差はみられなかった.しかし,食感,飲み込みやすさおよび全体味では前者が後者より有意に好ましく,受容性でも高い傾向が認められた.以上の結果より,「おからケーキ」は,食後の血糖上昇しにくい食品であり,嗜好面でも「対照ケーキ」に比べて大きな違いがみられないことから,糖尿病予防食の一つとして利用可能であることが明らかとなった.
著者
舩津 保浩 哥 明葉 島 里美 田中 彰 寺井 格 眞船 直樹
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.162-169, 2016

本研究では,II型糖尿病予防効果のある食品開発を目指し,道産黒千石大豆の機能性成分に着目し,ACとIFの含有量や化学組成を調査し,機能性を十分に活用したおにぎりの加工方法を検討した.その結果,黒千石大豆は他の黒大豆と同様にACやIFを豊富に含有していた.煮豆加工時にACが煮汁へ溶出したが,炊飯時に煮汁を利用することで,ACを有効活用することができ,黒千石大豆の機能性を活かしたおにぎりの加工方法が開発できた.<BR>糖質50g相当量のおにぎり摂取試験での血糖値とGI,昼食相当量のおにぎり摂取後の血糖値とインスリン値は,いずれも対照おにぎりと比較して黒千石大豆おにぎりで低値を示し,特に昼食相当量摂取試験では食後120分において有意に低値であった.したがって黒千石大豆おにぎりはタンパク質,脂質,食物繊維,ACおよびIFなどの単一,あるいは複合的作用により食後の血糖値の上昇を抑制し,その結果インスリンの過剰な分泌が不必要となり食後のインスリン値の上昇が抑制されたと考えられた.嗜好性試験では,対照おにぎりと比較して黒千石大豆おにぎりで調査した全ての項目で優れない結果となったが,今後,黒千石大豆の軟化や調理形態の工夫により嗜好性を高めることが考えられ,II型糖尿病予防食としての有用性が期待された.