著者
諸澤 崇裕 萩原 富司 熊谷 正裕 荒井 聡 奥井 登美子 岩崎 淳子 三浦 一輝
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.2213, (Released:2023-04-30)
参考文献数
39

霞ケ浦において、定置網で漁獲された魚類を参加者が回収、種同定、重量の計測を行い、最後に漁獲物の一部を試食し、群集調査を行う一日漁師体験というイベント型の市民参加型モニタリングを 2006 年 4 月から 2020 年 1 月までの期間、月に 1 回程度の頻度で実施した。計 142 回のイベントを実施し、参加者数はのべ 2177 人、1 回あたりの参加者数は約 20 名であった。モニタリングの結果、在来種については、シラウオ Salangichthys microdon、オイカワ Opsariichthys platypus、クルメサヨリ Hyporhamphus intermedius、アシシロハゼ Acanthogobius lactipes、マハゼ Acanthogobius flavimanus、ジュズカケハゼ Gymnogobius castaneus などが一時的に減少したのち再び増加傾向に転じたこと、タナゴ類は 2009 年ごろを境に確認されなくなったことが明らかとなった。また、外来種については、国外外来種のダントウボウ Megalobrama amblycephala が 2018 年から確認され始めたほか、国内外来種のゼゼラ Biwia zezera が 2013 年から確認され始めるなど新規定着、もしくは増加傾向の種が確認できた。さらに、国外外来種のアオウオ Mylopharyngodon piceus やペヘレイ Odontesthes bonariensis については、2010 年以降確認されなくなり、外来種の減少傾向も捉えることができた。以上の結果から市民参加型モニタリングが在来種や絶滅危惧種の増減、外来種の定着や増減を把握するために有効であることが示唆された。一方で、15 年間継続したモニタリングも新型コロナウィルスの流行等により継続できなくなり、継続性という観点からイベント型の市民参加型モニタリングの課題も明らかとなった。
著者
酒井 敏夫 増田 充 荒井 聡博 大野 恒男 田辺 正夫
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.111-116, 1951-08-01

吾々は, 徹夜時に見られる心身諸変化の消長を詳細に観察する目的を以つて, 蓮続反応時, 時間錯誤, 膝蓋腱反射閾値, 脈膊恢復曲線, 体温, 血圧, 及び尿竝びに唾液のpHを逐時的に測定した。共の結果,<BR>(1) 体温, 及び尿のpH, は, 漸次下降する傾向にある。唾液は, 尿のpHほど一定の傾向が得られなかつた。<BR>(2) 血圧は, 順時下降し, 特に最小血圧の変動は, 徹夜作業時に微妙な関係を有しているようであつた。<BR>(3) 運動負荷に対する, 脈膊数の増加は, 時間の經過につれて減少し, 又恢復時間も延長するようであつた。<BR>(4) 膝蓋健反射閾値の逐時的変化は, 從來発表されている成績と一致した。<BR>(5) 時間錯誤試験では, 午前12時を境にして正の錯誤, 負の錯誤が著明で, その移行は逐時的なものが説察された。<BR>(6) 迚続反応時より見たる徹夜時の大腦機能は午前12時頃までは本実験の如き精神負荷では漸次集中過程に入り, それ以向は, 興奮と抑制の強い混在が著明に現われて來るようであつた。翌日に於ける大腦機能では, 從來吾々が実験し得なかつた大腦皮質興奮の異常なものの存在を知つた。
著者
萩原 富司 白井 亮久 諸澤 崇裕 熊谷 正裕 荒井 聡
出版者
公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
雑誌
伊豆沼・内沼研究報告 (ISSN:18819559)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.139-149, 2021-06-30 (Released:2021-06-30)
参考文献数
28

イケチョウガイ(琵琶湖固有種)と中国産ヒレイケチョウガイとの交雑種(ヒレイケチョウガイ交雑種)は霞ヶ浦において真珠養殖に用いられてきた.特にヒレイケチョウガイ交雑種は水質汚濁に強いとされ,養殖施設からの幼生の拡散による水域への定着が危惧される.そこで交雑種の逸出状況を把握するため,野生個体を採集し,外部形態を養殖のヒレイケチョウガイ交雑種やイケチョウガイと比較した.真珠養殖場近傍で採集された野生個体は採取地点,殻の形態から養殖されているヒレイケチョウガイ交雑種と同様であると判断された.これらのヒレイケチョウガイ交雑種の成貝の形状は三角形で,後背縁から殻頂にかけて翼状突起が顕著であり,翼長卵形のイケチョウガイと区別できることがわかった.また,ヒレイケチョウガイ交雑種とイケチョウガイの殻の形態を共分散分析により検討した結果,殻長に対する殻高の比率について,両者に有意差が認められた.1936 年以降,霞ヶ浦に放流されたイケチョウガイは現地に定着・増加し1963 年以降真珠養殖に利用されたが,水質汚濁に弱く1980 年以降減少した.一方1988 年に作出されたヒレイケチョウガイ交雑種は水質汚濁に強く,真珠養殖規模の拡大とともに,現地に定着したことを本研究は示した.しかし近年ではこの交雑種も養殖場でたびたび死滅する事例が確認されており,現在の霞ヶ浦は淡水二枚貝類の生息環境として適していないと推察された.
著者
ティラカラタネ ラール 今井 健 荒井 聡 ティラカラタネ エランガ
出版者
日本農業市場学会
雑誌
農業市場研究 (ISSN:1341934X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.34-45, 2000

1997年1998年にスリランカのエッパワラ地域で行った農家調査結果にもとづき、稲作農業に関するコストや所得を試算し、現代の稲作農家の経済状況に影響している要因について分析し考察した。その結果、第1に、肥料・農薬の投下量が米の収量に比例しており、このことはすでに稲作が近代化されていることを示しいてること。第2に、肥料・農薬の投下量は、経営面積に比例して増加し、稲作の収量は経営面積が大きくなるほど増加する傾向が見られる。しかし、それは肥料・農薬の投下量の増加ほど明確ではないこと。第3に、1エーカー当たりの稲作の粗収益と総コストは経営面積が大きくなるにしたがって増加するが、所得については、経営規模間の相違は見られないこと、などである。このように稲作の経営規模間の生産性にかかわる諸指標の間にズレがあることが明らかとなったが、その要因は、農業雇用労賃、農業資材費用と不十分な潅漑条件などにあると考えられる。スリランカの稲作は技術的には、一部潅漑条件や機械化などの不十分さはあるものの「緑の革命」や開放経済過程の条件下で近代化されたといえる。しかし、近年の低価格な輸入米の増加による生産者米価の低下や雇用賃金などのコストの高騰が、大規模経営のスケールメリットを不十分なものとし、経営的優位性が確認できない要因となっているといえる。そのため大規模経営農家は、稲作経営の一層の拡大ではなくて、金貸しや稲作以外の農業やサイドビジネスに投資する傾向が強まっでいる。