著者
山本 天誠 萩原 富司 諸澤 崇裕 加納 光樹
出版者
一般社団法人 日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
pp.22-022, (Released:2022-11-25)
参考文献数
29

The bitterling Acheilognathus macropterus, introduced from the continent of China to the Tone River system, including Lake Kasumigaura, is designated as an invasive alien species by the Invasive Alien Species Act of Japan, due to their potentially negative impacts on other threatened bitterling species through interspecific competition. Although ecological studies of immature and adult stages of A. macropterus have already been reported in both China and Japan, little is known about larval and juvenile stages in the wild. To ascertain habitat characteristics in early life stages of the species, spatial distribution of larval and juvenile A. macropterus and environmental variables were investigated at 131 sites in two river systems (Ono R. and Shintone R.) flowing into Lake Kasumigaura in June 2018. A total of 1,118 larval and juvenile specimens (5.8–18.4 mm in body length, BL) were collected using hand nets during the study period, ca. 93% of the total number being larvae. A generalized liner mixed model based on the data for larval density with a variety of environmental variables (i.e., water temperature, dissolved oxygen, water depth, flow velocity, vegetation density, mud content ratio in the bottom sediment, distance from a freshwater pearl farm, and wave height) at each site revealed that greater vegetation density with higher dissolved oxygen and distance to pearl farms utilizing the unionid hybrid mussel Sinohyriopsis schlegeli × S. cumingii were the most significant determinants of larval density. The results indicated that appropriate management of river vegetation and pearl farm factors are necessary for the establishment of essential controls, so as to manage the reproduction and expansion of A. macropterus in the Ono and Shintone River systems.
著者
諸澤 崇裕 萩原 富司 熊谷 正裕 荒井 聡 奥井 登美子 岩崎 淳子 三浦 一輝
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.2213, (Released:2023-04-30)
参考文献数
39

霞ケ浦において、定置網で漁獲された魚類を参加者が回収、種同定、重量の計測を行い、最後に漁獲物の一部を試食し、群集調査を行う一日漁師体験というイベント型の市民参加型モニタリングを 2006 年 4 月から 2020 年 1 月までの期間、月に 1 回程度の頻度で実施した。計 142 回のイベントを実施し、参加者数はのべ 2177 人、1 回あたりの参加者数は約 20 名であった。モニタリングの結果、在来種については、シラウオ Salangichthys microdon、オイカワ Opsariichthys platypus、クルメサヨリ Hyporhamphus intermedius、アシシロハゼ Acanthogobius lactipes、マハゼ Acanthogobius flavimanus、ジュズカケハゼ Gymnogobius castaneus などが一時的に減少したのち再び増加傾向に転じたこと、タナゴ類は 2009 年ごろを境に確認されなくなったことが明らかとなった。また、外来種については、国外外来種のダントウボウ Megalobrama amblycephala が 2018 年から確認され始めたほか、国内外来種のゼゼラ Biwia zezera が 2013 年から確認され始めるなど新規定着、もしくは増加傾向の種が確認できた。さらに、国外外来種のアオウオ Mylopharyngodon piceus やペヘレイ Odontesthes bonariensis については、2010 年以降確認されなくなり、外来種の減少傾向も捉えることができた。以上の結果から市民参加型モニタリングが在来種や絶滅危惧種の増減、外来種の定着や増減を把握するために有効であることが示唆された。一方で、15 年間継続したモニタリングも新型コロナウィルスの流行等により継続できなくなり、継続性という観点からイベント型の市民参加型モニタリングの課題も明らかとなった。
著者
萩原 富司
出版者
公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
雑誌
伊豆沼・内沼研究報告 (ISSN:18819559)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.75-81, 2017 (Released:2017-11-10)
参考文献数
18

霞ヶ浦の江戸崎入り奥部において2009~2017 年の期間に中国原産のコイ科魚類ダントウボウMegalobrama amblycephala が7個体採集された.このうち2016~2017年の短期間に採集された4個体の体長からは2年連続して再生産されており,本種はすでに霞ヶ浦で再生産しているであろう.関東地域において霞ヶ浦は高い生物多様性を有し,多くの希少種の生息地である.このため本種の定着と増殖により在来生態系に予知できない影響が及ぶ恐れもあり,増殖と他水域への拡散を防止するための漁業者や釣り人への周知と早期防除が望まれる.
著者
萩原 富司 白井 亮久 諸澤 崇裕 熊谷 正裕 荒井 聡
出版者
公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
雑誌
伊豆沼・内沼研究報告 (ISSN:18819559)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.139-149, 2021-06-30 (Released:2021-06-30)
参考文献数
28

イケチョウガイ(琵琶湖固有種)と中国産ヒレイケチョウガイとの交雑種(ヒレイケチョウガイ交雑種)は霞ヶ浦において真珠養殖に用いられてきた.特にヒレイケチョウガイ交雑種は水質汚濁に強いとされ,養殖施設からの幼生の拡散による水域への定着が危惧される.そこで交雑種の逸出状況を把握するため,野生個体を採集し,外部形態を養殖のヒレイケチョウガイ交雑種やイケチョウガイと比較した.真珠養殖場近傍で採集された野生個体は採取地点,殻の形態から養殖されているヒレイケチョウガイ交雑種と同様であると判断された.これらのヒレイケチョウガイ交雑種の成貝の形状は三角形で,後背縁から殻頂にかけて翼状突起が顕著であり,翼長卵形のイケチョウガイと区別できることがわかった.また,ヒレイケチョウガイ交雑種とイケチョウガイの殻の形態を共分散分析により検討した結果,殻長に対する殻高の比率について,両者に有意差が認められた.1936 年以降,霞ヶ浦に放流されたイケチョウガイは現地に定着・増加し1963 年以降真珠養殖に利用されたが,水質汚濁に弱く1980 年以降減少した.一方1988 年に作出されたヒレイケチョウガイ交雑種は水質汚濁に強く,真珠養殖規模の拡大とともに,現地に定着したことを本研究は示した.しかし近年ではこの交雑種も養殖場でたびたび死滅する事例が確認されており,現在の霞ヶ浦は淡水二枚貝類の生息環境として適していないと推察された.
著者
荒山 和則 松崎 慎一郎 増子 勝男 萩原 富司 諸澤 崇裕 加納 光樹 渡辺 勝敏
出版者
一般社団法人 日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.141-146, 2012-11-05 (Released:2014-12-02)
参考文献数
29
被引用文献数
2

Eight specimens (28.2–170.2 mm SL) of the non-indigenous bagrid catfish Pseudobagrus fulvidraco were collected from the Lake Kasumigaura system, Ibaraki Prefecture, central Japan, during December 2008 and November 2011. Three juvenile specimens of this invasive species indicated successful reproductive activity in the lake system. The species is known to have similar morphological and food habits to channel catfish Ictalurus punctatus, which has also invaded Lake Kasumiguara, causing damage to the ecosystem and problems for local fisheries. The establishment and future habitat expansion of P. fulvidraco would also cause serious ecological and economic problems.
著者
萩原 富司 田中 利勝 鈴木 盛智 古川 大恭 森 晃
出版者
公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
雑誌
伊豆沼・内沼研究報告 (ISSN:18819559)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.27-35, 2018-10-24 (Released:2018-10-24)
参考文献数
30
被引用文献数
1

関東地方にはかつて利根川の氾濫原を中心に多くの河川・池沼が点在し,カラスガイ,イシガイ,ドブガイ類が生息していた.しかし近年,特にカラスガイの生息数の減少が顕著であり,各県のレッドリストにおいて,絶滅危惧種に指定されており,地域個体群の絶滅が危惧されている.2017 年3 月11 日に,渡良瀬遊水地内の水路においてカラスガイを採集した.カラスガイの殻長は180–300mm の範囲であり,同所的に生息するドブガイ類と異なり小型個体は見られなかった.カラスガイは新規加入がほとんどなく老齢個体だけが生き残っている状態と思われる.本種の分布や生息地に関する報告が非常に少ない現在,既報に記載された生息地の再確認を行うとともに,関東地方には過去に琵琶湖産二枚貝類の移植に伴ってカラスガイが持ち込まれた可能性もあるため,自然分布域の遺伝子を分析して地域ごとの遺伝子型を調べておくことが急がれる.
著者
熊谷 正裕 萩原 富司
出版者
公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
雑誌
伊豆沼・内沼研究報告 (ISSN:18819559)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.17-22, 2013 (Released:2017-11-10)
参考文献数
13
被引用文献数
2

青森県のタビラの生息に関しては,日本海に注ぐ岩木川水系と太平洋に注ぐ高瀬川水系で報告されているが,亜種名が不明瞭であり,在来種かは明らかではない.高瀬川水系で2009年6月に採集した雄は,アカヒレタビラ特有の明瞭な婚姻色を発現していた.雌から搾取した卵22個はすべて鶏卵形で,長径/短径は1.75±0.090であり,アカヒレタビラA. t. erythropterusについての記載と一致した.高瀬川水系は本種の産地と隣接しており,北限の生息地と考えられる.一方岩木川水系で2005年9月に採集した雄は,尻鰭が白色に発現し,シロヒレタビラ特有の明瞭な婚姻色を呈していた.体高/体長は0.351±0.014でシロヒレタビラA. t. tabiraについての記載とほぼ一致した.関西地方に産する本亜種は,岩木川水系においては国内外来種と思われる.
著者
萩原 富司 諸澤 崇裕 熊谷 正裕 野原 精一
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.157-167, 2016-09-26 (Released:2018-06-11)
参考文献数
36
被引用文献数
2

霞ヶ浦には,在来種のヤリタナゴ,ゼニタナゴ,タナゴおよびアカヒレタビラの4種が同所的に生息する。近年,これら個体群の減少が著しく,地域絶滅が危惧されるものの,種ごとの個体数変動の要因はよく分かっていない。そこで,本湖におけるタナゴ亜科魚類群集の変遷とその要因を明らかにするため,1999年から2011年まで,タナゴ亜科魚類およびその産卵基質として利用されるイシガイ科二枚貝類の生息状況調査を実施した。調査の結果,在来タナゴ類の内,ゼニタナゴとヤリタナゴは採集されず,アカヒレタビラとタナゴは湖内全域で徐々に減少し,2010年頃にはほとんど採集されなくなった。外来種のオオタナゴは2000年頃に初確認され,その後徐々に増加し,2005年以降は毎年採集された。外来種のタイリクバラタナゴは減少傾向にあり,国内外来種のカネヒラも全調査期間を通して数個体しか採集されなかった。一般化混合加法モデルを用いて種ごとにタナゴ類個体数の時系列変化を解析した結果,在来タナゴ類が激減した要因として,オオタナゴの影響は検出できなかった。在来タナゴ類が利用するイシガイ科二枚貝類は,2006年の調査時点において,湖内全域で個体数が著しく減少していたことから,産卵基質の減少が影響している可能性が示唆された。一方,オオタナゴは,他のタナゴ類が激減した2010年以降も比較的多数採集された。これは,本種が産卵母貝として外来種のヒレイケチョウガイ交雑種を主に利用し,その産卵基質が淡水真珠養殖用に毎年供給されているためと考えられた。
著者
向井 貴彦 Padhi Abinash 臼杵 崇広 山本 大輔 加納 光樹 萩原 富司 榎本 昌宏 松崎 慎一郎
出版者
一般社団法人 日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.81-87, 2016-11-05 (Released:2018-06-01)
参考文献数
20

The North American channel catfish Ictalurus punctatus, an invasive freshwater fish introduced to Japan for aquaculture in the 1970s, has become established in several rivers and lakes, with subsequent detrimental effects on local fisheries and other freshwater fauna. The origin and invasive distribution of channel catfish in Japan was assessed from the geographical distribution of mtDNA haplotypes of channel catfish populations, utilizing partial (412 bp) nucleotide sequences of the mtDNA control region from 174 individuals collected from 7 localities. A total of 12 haplotypes (J01–J12) were found in Japanese freshwater systems. Populations in eastern Japan (Fukushima and Ibaraki Prefectures) and a fishing pond in Aichi Prefecture were characterized by many haplotypes, shared among those localities. However, the haplotype compositions of populations in western Japan (Yahagi River, Aichi Prefecture and Lake Biwa water system, Shiga Prefecture) differed from the former and also from each other. A phylogenetic analysis using Japanese (nonindigenous), Chinese (non-indigenous) and United States (indigenous) haplotypes indicated that all of the Asian haplotypes were included in "Lineage VI," distributed over a wide area of the United States, confirming that lineage as the primary source of introduced Asian populations. However, the introduction of channel catfish into Japan occurred on at least three occasions (in eastern Japan, Yahagi River and Lake Biwa water system).