著者
雪岡 聖 田中 周平 鈴木 裕識 藤井 滋穂 清水 尚登 齋藤 憲光
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.72, no.7, pp.III_87-III_94, 2016 (Released:2017-04-03)
参考文献数
20

本研究では,化粧品中のペルフルオロ化合物類(PFCs)の前駆体の把握を主目的とし,一定条件下で酸化分解を行うことで,種々の前駆体をPFCsに変換し,生成ポテンシャルを評価した.さらに精密質量分析により前駆体の化学構造の探索を行った.30製品中の15種のPFCsの総含有量は146~8,170 ng/g-wetであり,PFCs生成ポテンシャルは75~93,200 ng/g-wetであった.一部のファンデーションと化粧下地にPFCsの11~199倍のPFCs生成ポテンシャルが存在した.化粧品成分として「フルオロ(C9-15)アルコールリン酸」を含むファンデーションを精密質量分析した結果,7種のポリフルオロアルキルリン酸エステル類(PAPs)が検出され,それらはPFCsを生成する前駆体である可能性が示唆された.
著者
牛島 大志 田中 周平 鈴木 裕識 雪岡 聖 王 夢澤 鍋谷 佳希 藤井 滋穂 高田 秀重
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.107-113, 2018 (Released:2018-07-10)
参考文献数
14
被引用文献数
1 8

近年, マイクロプラスチック汚染が世界中で注目を集め, 生態系への悪影響が懸念されている。マイクロプラスチックとは粒径5 mm以下のプラスチック粒子である。本研究では日本内湾5ヶ所および琵琶湖における魚7種を対象とし, その消化管中の粒径100 μm以上のマイクロプラスチックの存在実態の把握を目的とした。魚197匹中74匹から140個のマイクロプラスチックが検出され, すべての地点でその存在が確認された。魚1匹あたりから検出されたマイクロプラスチック数は平均1.89個であり, その大半がポリプロピレン (40.7%) とポリエチレン (35.0%) であった。平均粒径の中央値は543 μmであった。摂食方法別にろ過摂食魚類とろ過摂食以外の魚類に分類すると, 前者97匹中54.6%, 後者100匹中21.0%からマイクロプラスチックが検出された。摂食方法によるマイクロプラスチックの誤飲量への影響が示唆された。
著者
木村 功二 藤井 滋穂 田中 周平 邸 勇 野添 宗裕
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
環境工学研究論文集 (ISSN:13415115)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.301-308, 2008-11-28 (Released:2011-06-27)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

本研究では、近年注目を集め始めている残留性有機フッ素化合物PFOS、PFOAおよびその類縁化合物6種類に着目し、粉末活性炭による吸着除去特性を検討した。単成分系での各物質の吸着特性は、炭素鎖が長いものほど高く疎水性による吸着である可能性が示唆された。吸着平衡定数KはPFOS: 198.19、PFOA: 64.97であった。8成分混合系ではPFDA、PFDoA、PFOSの3種類で吸着性が高く、単成分系と比較して吸着量が20%しか低下せず、他のPFHxA、PFHpA、PFOA、PFNA、PFHxSでは50-90%低下した。琵琶湖水を溶媒とした8成分混合系では、溶存有機物に吸着が阻害されPFOS、PFHxSで超純水中と比較して除去率が約60%低下し、PFHxA、PFHpA、PFOA、PFNA、PFDA、PFDoAでは不規則な濃度変化を示しほぼ除去されなかった。
著者
田中 周平 高見 航 田淵 智弥 大西 広華 辻 直亨 松岡 知宏 西川 博章 藤井 滋穂
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.9-15, 2020 (Released:2020-01-10)
参考文献数
8
被引用文献数
1

2015年に琵琶湖岸の132の抽水植物群落を対象に, 単独測位携帯型GPSを用いたオオバナミズキンバイの植生分布調査を実施した。琵琶湖岸12か所の観測所における風速, 風向および有効吹送距離を元に群落ごとの有義波高を算出し, オオバナミズキンバイの生育地盤高との関係を検討した。その結果, 1) 有義波高18 cm以上の群落ではオオバナミズキンバイは確認されなかった。2) オオバナミズキンバイは55群落で確認され, 地盤高別の生育分布を整理すると, 琵琶湖標準水位B.S.L. -150 cm~-50 cmに分布する群落 (沖型) , B.S.L. -90 cm~-30 cmに概ね均等に生育する群落 (準沖型) , B.S.L. -50 cm~-30 cmに集中して生育する群落 (準陸型) , B.S.L. -30 cm~-10 cmに集中して生育する群落 (陸型) の4タイプに分類することができた。3) 平均有義波高は沖型, 準沖型, 準陸型の順に5.5 cm, 9.4 cm, 13.2 cmであり, 有義波高によりオオバナミズキンバイの生育地盤高をある程度説明することができた。
著者
田中 周平 垣田 正樹 雪岡 聖 鈴木 裕識 藤井 滋穂 高田 秀重
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.75, no.7, pp.III_35-III_40, 2019 (Released:2020-03-23)
参考文献数
10
被引用文献数
2 4

本研究では,下水処理場の処理工程におけるマイクロプラスチック(以下,MPs)の挙動と琵琶湖への負荷量を把握することを主目的として,2017年11月~2018年2月に4か所の流域下水処理場(分流式)の流入水,放流水,処理工程別において100μm以上のMPsを,流入水と放流水ではさらに10~100μmのMPsの分析を行った.その結果,下水,処理水,汚泥,スカムなどから合計30種類のMPsが検出され,流入水中のMPs濃度は158~5,000個/m3であった.放流水中のMPs濃度は0.3~2.2個/m3であり,放流先の琵琶湖水中のMPs濃度と同等であった.一方,10~100μmのMPsの除去率は76.3%であった.100μm未満のMPsの除去は急速砂ろ過を行っても不十分であると示唆された.4つの下水処理場からの合計負荷量は501,630個/日と推計され,晴天時の琵琶湖流入河川からの総負荷量とほぼ同じであることが示された.
著者
ニーフ アンドレアス SINGER Jane 水野 啓 勝見 武 乾 徹 藤井 滋穂 原田 英典 小林 広英 藤枝 絢子 深町 加津枝
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は沿岸コミュニティが大規模災害からの復興するために必要な要件を、タイ、フィジー、ベトナム、日本の事例を学際的に比較することで検証するもので、以下の成果が得られた。(1)タイ南部で2004年に津波被害を受けたPhang Nga省の住民の再定住過程について現地調査を実施し、観光業や漁業を中心とする経済復興に際して外部からの援助の不適切な配分が住民間の格差を導くことを確認した。また少数民族Moklenのコミュニティにおいては、不適切な住宅整備や観光開発により災害の影響が拡大している現状が確認された。(2)フィジー西部Ba川流域において、2009年と2012年の洪水による影響と復興過程について約120件の聞き取り調査を行い、物的・人的支援が高い効果をもたらしているとともに、下流部の村落においては災害時の情報共有や相互扶助によるソーシャル・キャピタル向上の自助努力が被害軽減や迅速な復旧に寄与していることが判明した。(3)ベトナム中部フエ省で1999年、2009年に洪水被害を受けた60世帯で聞き取り調査を実施し、住居や生計を含む多様な災害の影響と、復旧過程における社会的ネットワークや生業多様化戦略の重要性を検証した。(4)宮城県気仙沼市および南三陸町における自然公園周辺地域を対象としてケーススタディを実施し、震災時に自然公園に関する施設などがどのような役割を果たしたかをふまえ、国立公園と地域をつなぐ「資源」や「人材・組織」の観点から今後の国立公園の保全管理や利用のあり方について考察した。(5)これらの事例研究に際し、災害前後と復興過程における生活に対する満足度をスコア化して回答する新しい調査法を提案・実践し、災害の影響や回復状態の個人間・世帯間の差異が明確に把握できることを確認した。
著者
田中 宏明 藤井 滋穂 越川 博元 高田 秀重 鈴木 穣 山下 尚之 小森 行也
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

新たな汚染物質として、生活で広く使われている医薬品や化粧品などの日常用品(Pharmaceutical & Personal Care Product,PPCP)が潜在的な環境問題となり始めている。これらの多くは、難分解で、やや極性があるPersistent Polar Pollutant(P3)で、排水処理では取りにくいことが予想される。PPCPが水環境へ流出する状況を把握するため、広範囲な生活排水などを収集する下水道をターゲットに汚染実態と下水道での削減状況を捉えるとともに、バイオアッセイによる毒性データから初期リスク評価を行った。また回分実験によって活性汚泥での分解除去性を検討した。SPE-LC/MS/MS法を用いて47のPPCPを分析した。下水処理場での調査を行った結果、流入水中から多くの医薬品類が検出され、検出濃度のオーダーは10ng/L〜10μg/Lのオーダーであった。カフェイン(10μg/L)、アセトアミノフェン(8.4μg/L)、ベザフィブラート(2.7μg/L)、テオフィリン(2.0μg/L)、クラリスロマイシン(1.4μg/L)、スルピリド(1.1μg/L)などが流入水から高濃度で検出された。生物処理による除去率は-30〜100%であり、物質によって除去率が大きく異なった。オゾン処理により二次処理水中に残留した医薬品の約80%が除去されたが、ジソピラミドやケトプロフェンはオゾン処理によっても約60%程度しか除去されず、オゾン処理後も100ng/L以上の濃度で残留していた。また、生物処理によるリスク削減効果としては二次処理により流入水中で1以上あったハザード比が1以下に削減され,オゾン処理によって0.1以下まで削減された。通常の活性汚泥と不活化処理した活性汚泥による除去速度定数との差を見かけ上の生分解速度定数と定義し、生分解性を評価した。特に抗菌剤以外の医薬品は活性汚泥による除去に生分解が寄与していることが示唆され、抗菌剤以外の医薬品は実際の処理揚での除去率と見かけ上の生分解速度定数に正の相関がみられた。