著者
山下 三平 阿野 晃秀 丹羽 英之 森本 幸裕 佐藤 正吾 深町 加津枝
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.22-00156, 2023 (Released:2023-02-20)
参考文献数
43

本研究はグリーンインフラの一つである雨庭のデザインに役立つ知見を得るために,伝統的な枯山水庭園である京都の相国寺裏方丈庭園を対象とした雨水収支の実測評価を試みた.また新しい雨庭のデザインと維持管理に寄与する提案を行った.実測評価の主な知見は以下のとおりである:1) 本庭園は京都の100年確率日雨量推定値を上回る307.5mmの雨水を貯留だけで流出抑制できる.2) 本庭園は増水時に平均82.7%,最小でも57.8%,減水時は平均32.7mm/h,最小でも14.1mm/hで浸透できる.3) 本庭園には短期の集中的強雨と長期の分散的弱雨のいずれの降雨パターンにも対応する高い浸透機能が確認される.4) 砂礫地質で10-15cmの径を含む構成が,高い浸透機能の持続に寄与すると推察される.
著者
藤井 基弘 深町 加津枝 森本 幸裕 奥 敬一
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.587-592, 2012 (Released:2013-08-09)
参考文献数
22
被引用文献数
2 2

The traditional event, “Kyoto Gozan-Bonfire” is one of the annual fire festivals carried out at the Eastern, Northern and Western Mountain surrounding Kyoto city on August 16. It is in conjunction with the famous O-bon festival in Japan, a tradition of seeing the spirits of the dead off. Ritual organizing committees exist at Ginkakuji, Matsugasaki, Nishigamo, Kinugasa and Saga areas. This special tradition is no longer confined to these special areas, but has expanded to involve wider a resident of Kyoto and Japanese. Traditionally, Japanese red pines had been used as bonfire material and also as local resources for daily life or annual events, but the fuel revolution in 1955 caused abandonment of forestry management. As a result, red pines are scarce and only one of five organizing committees can barely manage to get them. There are other additional problems in continuing this tradition despite the people’s intentions to preserve. So, we studied to distinguish the morphology of each bonfire and features of the ritual organizing committees and what is necessary to make this event a success from three point of views: material, talented personnel and funding.
著者
小川 菜穂子 深町 加津枝 奥 敬一 柴田 昌三 森本 幸裕
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.627-632, 2005-03-31
被引用文献数
2 3

The objective of this study is to find a way in which the factors relating to the succession of the village landscape of Sasabuki (thatched roof with dwarf bamboo, Sasa palmata) in the Tango Peninsula, can be determined, by understanding the processes of change occurring within its landscape, the causes of the decreasing number of Sasabuki houses, and the practical difficulties in maintaining them. We chose Kamiseya in Miyazu City, Kyoto Prefecture, analyzed documents concerning Kamiseya and we interviewed local residents, asking them how they maintained and managed Sasabuki roofs, and the reasons why they gave up Sasabuki. Then, we selected 6 other cases of thatched houses, and did the same analysis as the previous. In Kamiseya, management of Sasabuki houses was previously supported by system of mutual assistance. From 1960 to 1970, Sasabuki houses dramatically decreased. The causes were lack of labor due to rapid depopulation and aging, and a reduction of dwarf bamboo resources in both quantity and quality, because Kayaba had been replaced by artificial forests. Of those surveyed, the householder's personal attachment to Sasabuki have allowed for the maintenance. It is significant to devise a system, which manages and utilizes Sasabuki in order to allow the succession of Sasabuki village landscape.
著者
駒ヶ嶺 光 法理 樹里 松下 京平 深町 加津枝
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.21-26, 2023-08-31 (Released:2023-10-12)
参考文献数
21

本研究は,小学生時の自然体験と,その後の自然との感情的つながり,環境態度,環境配慮行動との関係性を把握することを目的とした。アンケート調査によってデータを収集し,分散分析を行ったところ,自然との感情的つながりと環境配慮行動の頻度は,小学生時の自然体験の頻度が高いほど有意に高かった。環境態度には自然体験の頻度は関係しなかった。また,自然体験の体験地域は,自然との感情的つながり,環境態度,環境配慮行動に関係しないことが明らかになった。
著者
小田 龍聖 深町 加津枝 柴田 昌三
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.38-43, 2016 (Released:2017-01-30)
参考文献数
6
被引用文献数
2

本研究は,多様な河川環境を評価する指標種として魚類の採捕調査をするとともに,地域住民に対するアンケート調査によって,住民の魚類の認知度や,藻刈りや清掃などの河川環境活動への意識の把握を試み,それらから河川環境の実態と住民の意識・意向を踏まえた住民主体の河川環境管理の在り方を検討することを目的とした。調査の結果,住民の魚類に対する認識と実態とには乖離があるものの,より詳しく魚類を認識している住民は,河川美化活動への意識に明確な傾向が見られた。
著者
小田 龍聖 深町 加津枝 柴田 昌三
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.51-56, 2019-08-31 (Released:2019-12-27)
参考文献数
27

琵琶湖疏水は,2015 年に重要文化的景観の選定を受けた岡崎地域を代表する都市水系である。重要な水生生態系として琵琶湖疏水をとらえ,これらの基盤となる沈水植物の流入と分布を調査した。琵琶湖疏水内の85 区画で調査を行い,この調査では11 種の流入および8 種の沈水植物が確認された。被度と底質の分布を用いてnMDS による分析を行ったところ,疏水分線では泥底質とオオカナダモが,疏水白川では中礫底質とササバモがよく見られた。疏水分線・疏水白川の両方に出現したネジレモは,細礫底質でよく見られた。
著者
藤井 基弘 深町 加津枝 森本 幸裕 奥 敬一
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
日本造園学会 全国大会 研究発表論文集 抄録
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.32, 2012

伝統行事「京都五山送り火」は、京都市内を取り囲む東山・北山・西山に灯される火の祭典の一つで、日本の伝統的なお盆の行事である。そして、今やこの送り火は特定の地域の伝統行事となるだけでなく、「お精霊送り」として広く人々の間に定着し、人々の"心の共有財産"となっている。本研究では、銀閣寺地域・松ヶ崎地域・西賀茂地域・衣笠地域・嵯峨地域それぞれの送り火の形態や祭祀組織の特徴を明らかにすることを目的にした。そこでこの行事を貴重な地域の文化として今後も継承するための方策を資材、人材などの側面から考察した。
著者
木村 栄理子 深町 加津枝 古田 裕三 奥 敬一 柴田 昌三
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
日本造園学会 全国大会 研究発表論文集 抄録
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.51, 2007

本研究は、京都市嵯峨嵐山における竹林景観の管理状況の実態と、景観保全施策について明らかにし、景観保全施策が景観を良好に保つためにどのような役割を果たしているか検証した。対象地の竹林の管理状況と景観保全施策とを比較検討した結果、古都保存法による買取制度により、景観上重要な私有地の竹林を行政所有とになり、竹林の消失が抑制されていた。しかし、竹林景観を適正に管理する体制は確立しておらず、一部の地元住民の有志に頼った管理がなされているにすぎなかった。また、厳しい景観保全施策の対象外の地域において、竹材や筍生産林として管理が行なわれ、竹林景観として維持されていること等が明らかになった。
著者
阿部 佑平 柴田 昌三 奥 敬一 深町 加津枝
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.93, no.6, pp.270-276, 2011 (Released:2012-03-13)
参考文献数
42
被引用文献数
3 1

京都市では, 左京区の北部山間地域でササの葉が採集され, 京都市内で食品の包装や祇園祭厄除け粽の作成に利用されてきた。本研究では, ササの葉の採集・加工方法と流通・利用状況を明らかにするとともに, 最近まで京都市内でササの葉を生産し, 利用する体制が維持されてきた要因を明らかにすることを目的とした。調査の結果, 当地域の花脊別所町と大原百井町の集落周辺の里山で, 裏に毛のないササの当年生葉が採集され, 天日乾燥されていたことが明らかになった。また, 広葉樹の択伐といった里山管理がササの旺盛な生育につながっていた可能性が示唆された。このような地域の知恵や技術により, 品質の良いササの葉を生産し, 利用する体制が最近まで維持されてきたと考えられた。一方, 2004年から2007年にかけて京都市内のササが一斉開花・枯死した以降は, 他の産地のササの葉が利用されていた。また, ササの葉の生産に関して後継者も不足していることが明らかとなった。京都市において再びササの葉を生産し, 利用していくうえで, ササの葉の生産に必要な労働力を確保すること, ササの葉の生産に関する地域の知恵や技術を伝えていくことが重要であると考えられた。
著者
深町 加津枝 佐久間 大輔
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.276-280, 1997-03-27 (Released:2011-07-19)
参考文献数
134
被引用文献数
6 13
著者
深町 加津枝 奥 敬一
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.813-818, 2004 (Released:2005-12-12)
参考文献数
23
被引用文献数
3 3

Amanohashidate is an outstanding landscape in Miyazu, Kyoto Prefecture, which is based on natural forms of a sand spit and row of pine trees, harmonizing natural and human elements. At the same time, it has played a role as a unique local landscape in the daily lives of the local people. In this study, we clarified features of the historical landscape in Amanohashidate and its subsequent changes after the Meiji period, focusing on (1) changes in the sand spit and pine rows of Amanohashidate, and (2) changes in the view points and landscapes of Amanohashidate. Also, we evaluated the landscapes of the local people, and discussed future landscape management of the area. Resulting from the evaluation, it can be seen that the local people are strongly attached to their landscapes, which are close and frequently used in their daily lives. They take a strong interest in not only the scenery, but also the quality of the environment. They wish to have both the conservation and the recovery of pine groves and landmark trees, which are nearby and representative of their local environment. On the other hand, we found differences in the desired landscapes and feeling of different residential areas especially with newly developed landscapes.
著者
奥 敬一 深町 加津枝 森本 幸裕 奥 敬一
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.587-592, 2000-03-30
被引用文献数
8 2

京都大学芦生演習林を訪れた48グループの一般利用者を対象として写真投影法による調査を行った。得られたテータから,現実の森林レクリエーション行動下において体験され,評価される森林景観を,視対象,視点,視距離,地形,構図などの複合的な要素からなる景観型として整理し,それらの操作可能性を論じるとともに,景観型と来訪者の利用形態との関係を検討した。その結果,林内散策行動の条件下で景観体験となりやすい景観のパターンが抽出された。また,レクリエーション利用者の環境に対する態度は,異なる複数のタイプとしてとらえられ,多様な景観体験を確保したレクリエーション地域計画の必要性が示唆された。
著者
那須 將 深町 加津枝 森本 幸裕
出版者
Japanese Institute of Landscape Architecture
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.619-622, 2011
被引用文献数
1

Shinsen are offerings offered at Shinto shrines on the occasion of shrine festivals. We investigated shinsen offerings made at Kyoto's Kamo-wake-ikazuchi-jinja (also known as Kamigamo Shrine) between June 2009 and May 2010. We surveyed all offered items and investigated which biological resources were used, and how and from where they were supplied. We found that totally 2243 items were offered. There were 137 different kinds. 105 kinds of biological resources were used as ingredients. Some of the supply routes for shinsen ingredients were based on ancient customs. The Adogawa region in northern Shiga Prefecture, for example, was a supply area for the shrine based on a system through which the shrine bestowed the region with river fishing rights and rice farming land as a compensation for its supply of ayu fish (Plecoglossus altivelis altivelis) used as items in shinsen offerings. Through shinsen offerings, a great variety of biological resources were used in a sustainable way. We found, however, that some biological resources used in shinsen such as the futabaaoi (Asarum caulescens) are difficult to obtain today.
著者
ニーフ アンドレアス SINGER Jane 水野 啓 勝見 武 乾 徹 藤井 滋穂 原田 英典 小林 広英 藤枝 絢子 深町 加津枝
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は沿岸コミュニティが大規模災害からの復興するために必要な要件を、タイ、フィジー、ベトナム、日本の事例を学際的に比較することで検証するもので、以下の成果が得られた。(1)タイ南部で2004年に津波被害を受けたPhang Nga省の住民の再定住過程について現地調査を実施し、観光業や漁業を中心とする経済復興に際して外部からの援助の不適切な配分が住民間の格差を導くことを確認した。また少数民族Moklenのコミュニティにおいては、不適切な住宅整備や観光開発により災害の影響が拡大している現状が確認された。(2)フィジー西部Ba川流域において、2009年と2012年の洪水による影響と復興過程について約120件の聞き取り調査を行い、物的・人的支援が高い効果をもたらしているとともに、下流部の村落においては災害時の情報共有や相互扶助によるソーシャル・キャピタル向上の自助努力が被害軽減や迅速な復旧に寄与していることが判明した。(3)ベトナム中部フエ省で1999年、2009年に洪水被害を受けた60世帯で聞き取り調査を実施し、住居や生計を含む多様な災害の影響と、復旧過程における社会的ネットワークや生業多様化戦略の重要性を検証した。(4)宮城県気仙沼市および南三陸町における自然公園周辺地域を対象としてケーススタディを実施し、震災時に自然公園に関する施設などがどのような役割を果たしたかをふまえ、国立公園と地域をつなぐ「資源」や「人材・組織」の観点から今後の国立公園の保全管理や利用のあり方について考察した。(5)これらの事例研究に際し、災害前後と復興過程における生活に対する満足度をスコア化して回答する新しい調査法を提案・実践し、災害の影響や回復状態の個人間・世帯間の差異が明確に把握できることを確認した。
著者
奥田 裕規 井上 真 斎藤 暖生 土屋 俊幸 藤掛 一郎 三俣 学 八巻 一成 奥 敬一 垂水 亜紀 深町 加津枝 田中 求 大地 俊介 大久保 実香 横田 康裕
出版者
独立行政法人森林総合研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

脆弱化した社会組織を活性化させるためには、地域社会に新しいアイ デンティティを形成する社会変化を促す必要がある。このような社会変化を促すためには、「内 発的発展」が重要な役割を果たす。「内発的発展」は、地域住民を結ぶネットワーク上に存在し、 ネットワークは、地域住民共通の「大切なもの」を守ろうとする「思い(紐帯)」で結ばれてい る。そして、地域の「大切なもの」を守ろうとする「思い」が強ければ強いほど、そのための 取組が活発化し、「地域資源(コモンズ)」に対する要求が高まる。
著者
深町 加津枝 奥 敬一
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.647-652, 2002-03-30
被引用文献数
9 12

薪炭利用などをとおし地域住民と密接な結びつきがあった里山ブナ林の多くは,今日,面積の減少や管理放棄など,保全上の様々な課題を抱えている。本研究では,里山ブナ林の景観を対象とした評価実験を行い,都市住民との比較から里山ブナ林に対する地域住民の景観評価と継承意識の特徴を分析した。レパートリーグリッド法による分析からは,繁茂度,自然性など里山ブナ林の景観に対する印象軸を抽出し,土地利用履歴ごとの景観の評価構造を示した。多元的評価尺度を用いた景観評価では,地域住民と都市住民との里山ブナ林の評価に大きな差異があり,地域住民の継承意識が水土保全機能,身近さ,美しさに規定されることを明らかにした。
著者
高原 光 深町 加津枝 大迫 敬義 小椋 純一 佐々木 尚子 佐野 淳之 大住 克博 林 竜馬 河野 樹一郎
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

堆積物中に残存している花粉や微小な炭(微粒炭)の分析から,特に過去1万年間には,火が植生景観に強く影響してきたことを解明した。特に1万~8千年前頃には火事が多発して,森林植生の構成に影響を及ぼした。また,過去3千年間には,農耕活動などに関連して火事が多発し,照葉樹林やスギ林などの自然植生はマツ林と落葉広葉樹林へと大きく変化した。火入れによって,ナラ類を中心とする落葉広葉樹林が成立する機構も解明できた。草原や里山景観の形成には,火入れが強く関連していることが明らかになった。