著者
鈴木 穣 柴山 慶行 岡本 誠一郎
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.87-96, 2017 (Released:2017-03-10)
参考文献数
34

公的機関の水質調査データ等を用いて, 霞ヶ浦 (西浦) における藍藻類の長期的消長に影響する主要水質因子の検討を行い, 藍藻類は, 底泥表面の溶存酸素濃度が低下し溶解性マンガン濃度が増加傾向にあるときに増殖する傾向にあることを明らかにした。水質の統計解析結果と合わせて, 底泥から溶出する溶解性マンガンが藍藻類の増殖に及ぼす影響を考察するとともに, 底泥表面の溶存酸素濃度の低下は, 海水侵入が主要因と考えられることを示した。併せて, 今後必要な調査・研究に関する提言を行った。
著者
西川 義文 室井 喜景 鈴木 穣 マフムド モタメド 猪原 史成 西村 麻紀 古岡 秀文 フェレイグ ラガブ 梅田 剛佑
出版者
帯広畜産大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

トキソプラズマは世界人口の3分の1のヒトに感染しており、様々な精神疾患や神経疾患の発症リスクになることが推測されている。しかし、本原虫感染が精神疾患の発症や行動異常に至るメカニズムは解明されていない。そこで本研究では、宿主中枢神経系を支配するトキソプラズマ由来ブレインマニピュレーターの解明を目的とした。脳機能に関与する宿主シグナルに影響を与える原虫分子として、TgGRAIを見出した。TgGRAIはNFkBのシグナルの活性化に関与し、TgGRAI欠損原虫株を用いたマウス行動測定の実験によりTgGRAIの恐怖記憶の固定への関与が示唆された。本研究により、脳機能を改変する原虫因子の存在が示唆された。
著者
八十島 誠 山下 尚之 中田 典秀 小森 行也 鈴木 穣 田中 宏明
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.27, no.11, pp.707-714, 2004-11-10 (Released:2008-01-22)
参考文献数
45
被引用文献数
4 5

In recent years, antibiotics resident in sewage and in the water environment have become an emerging public concern in many developed countries. However, limited knowledge is available on the occurrence of antibiotics in sewage and discharge from wastewater treatment plants (WWTPs) in Japan. Moreover, little is known on the significance of their occurrence in the water environment from the viewpoints of biological adverse effects. The objectives of this research were, therefore, to determine the occurrence of selected antibiotics, namely levofloxacin (LVFX) and clarithromycin (CAM). That are commonly used in Japan, in discharge from WWTPs and then to evaluate their possible effects on algal growth. Therefore, we developed a novel analysis method for LVFX and CAM in wastewater by LC/MS/MS whose detection limits and recovery ratios are 2-3ng·l-1 and 53-87%, respectively. We also conducted algal growth inhibition tests using Pseudokirchneriella subcapitata, and results showed that the EC50s of LVFX and CAM are 1200μg·l-1 and 11μg·l-1, LOECs are 630μg·l-1 and 6.3μg·l-1, and NOECs are 310μg·l-1 and 3.1μg·l-1, respectively, LVFX and CAM concentrations in secondary effluent of five WWTPs that use the activated sludge process ranged from 152-323ng·l-1 and 303-567ng·l-1, respectively, which indicates that the PEC/PNEC ratio of LVFX is less than one but that of CAM exceeds two at the maximum secondary effluents if a safety factor of ten is considered. This suggests a possibility of algal growth inhibition due to CAM in WWTP discharge in the case of insufficient dilution of the receiving waters.
著者
小原 雄治 加藤 和人 川嶋 実苗 豊田 敦 鈴木 穣 三井 純 林 哲也 時野 隆至 黒川 顕 中村 保一 野口 英樹 高木 利久 岩崎 渉 森下 真一 浅井 潔 笠原 雅弘 伊藤 武彦 山田 拓司 小椋 義俊 久原 哲 高橋 弘喜 瀬々 潤 榊原 康文
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)『学術研究支援基盤形成』
巻号頁・発行日
2016

①総括支援活動では、支援課題の公募を行い、領域外有識者による審査委員会により選考し、支援を行った。経費上限設定など多くの採択ができるように努めた結果、応募188件、採択93件(採択率49.5%)となった。支援の成果として2017年度に54報の論文発表がなされた。②大規模配列解析拠点ネットワーク支援活動においては、最先端技術を提供するためにそれらの整備や高度化を進めた。遺伝研拠点では染色体の端から端までの連続した配列完成を目指して、ロングリードシーケンサー(PacBio Sequel)、長鎖DNA試料調製技術、さらに1分子ゲノムマッピングシステム(Irysシステム)の最適化を進め、実際の試料に応用した。東大柏拠点では、1細胞解析技術を整備し支援に供するとともに、Nanopore MinIONを用いた一連の要素技術開発を進めた。九大拠点では微生物ゲノムのNGS解析最適化を進めた。札幌医大拠点ではLiquid Biopsyによる体細胞における低頻度変異検出技術開発を進めた。③高度情報解析支援ネットワーク活動では、支援から浮かび上がった課題を解決するソフトウェアの開発を進めた。支援で特に活用されたものは、真核2倍体用denovoハプロタイプアセンブラPlatanus2(東工大)、染色体大規模構造変異高精度検出アルゴリズムCOSMOS、変異解析結果の信頼性を評価するソフトウェアEAGLE(以上、産総研)、エクソン・イントロン境界におけるスプライソソーム結合頻度の解析パイプライン(東大)、であった。また、CLIP-seqデータの解析パイプライン、高速オルソログ同定プログラムSonicParanoid、ロングリード向けアラインメントツールminialign(以上、東大)は今後の活用が予想される。高度化等の成果として48報の論文発表がなされた。
著者
徳留 大剛 小和瀬 晋弥 鈴木 穣 寺田 直正 伊藤 浩一 前垣 雅治 増田 慶太 長田 淳
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.16-24, 2019-03-20 (Released:2019-04-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1

両心室ペースメーカーの左室(LV)リード植込み手技を行う前に冠静脈(coronary vein:CV)と左横隔神経(left phrenic nerve:LPN)の情報を得ることは植込み手技の戦略を立てるうえで重要である.今回,われわれは単純CTからCVとLPNの3D画像を作成し,その正確性について,20例のCRT植込み症例で検討した.評価方法については,CVは術中の造影画像と比較し,LPNはLVリードで横隔神経刺激が発生した部位と一致しているかを確認した.3D画像は全症例で作成でき,CVについては19/20例で一致,LPNは全10例で走行部位とペーシングでの横隔神経刺激発生部位が一致していたことから,3D画像は正確に描出できていると考えられた.単純CTから作成したCVとLPNの3D画像は,CRT植込みの術前に正確性の高い解剖学的情報を把握でき,有用である.(心電図,2019;39:16~24)
著者
阿部 健一郎 鈴木 穣 青木 不学
出版者
公益社団法人 日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集 第109回日本繁殖生物学会大会
巻号頁・発行日
pp.P-13, 2016 (Released:2016-09-16)

【目的】受精後の最初期に生じる遺伝子発現はzygotic gene activation(ZGA)と呼ばれている。マウスにおいてはまず1細胞期のS期にminor ZGAと呼ばれる遺伝子発現が生じ,この発現パターンは2細胞期のG1期まで維持される。その後,2細胞期のS期の進行に伴いminor ZGAとは大きく発現パターンが異なるmajor ZGAと呼ばれる遺伝子発現が生じる。これまでにmajor ZGAの特徴およびその機能については詳細に調べられているが,minor ZGAについては十分に明らかにされていない。そこで,受精後の最初の遺伝子発現であるminor ZGAの胚発生における役割を明らかにすることを目的として研究を行った。【方法】minor ZGAが開始される前に,RNA polymerase II(Pol II)のリン酸化酵素を可逆的に阻害する,5,6-dichloro-1-β- ribofuranosyl-benzimidazole(DRB)を培地に添加し,その後major ZGAが生じる2細胞期のS期にDRBを培地から除去し,転写を再活性化させた。これによりminor ZGAのみを時期特異的に阻害した。この条件下で胚発生を観察し,さらにRNAシーケンス解析によりDRB処理胚と未処理胚の遺伝子発現パターンを比較した。【結果】通常の胚は受精後96時間で95%が胚盤胞に到達するのに対し,DRB処理した胚では僅か7%しか胚盤胞に到達せず,65%の胚が2細胞期胚で発生を停止していた。さらに胚発生が停止した原因を究明するために,RNAシーケンス解析によりDRB処理した2細胞期胚と未処理の2細胞期胚の遺伝子発現パターンを比較したところ,本来2細胞期で発現が大幅に上昇するはずの,M期の進行に必要な3つの遺伝子が抑制されていた。これらの結果によりminor ZGAは胚発生の進行に必須なmajor ZGAを引き起こす役割があることが明らかになった。
著者
横山 稔之 坂本 祥駿 関 真秀 鈴木 穣 笠原 雅弘
出版者
社団法人 可視化情報学会
雑誌
可視化情報学会誌 (ISSN:09164731)
巻号頁・発行日
vol.40, no.156, pp.14-18, 2020 (Released:2021-02-04)
参考文献数
12

ゲノムの個体間の差異に着目し、数学的なグラフ構造としてゲノムを可視化するためのツールであるグラフゲノムブラウザを開発した。ゲノム科学の研究において、遺伝情報の総体であるゲノムを可視化することは、その差異を検証し、解釈する上で重要である。このとき、複数のゲノムを数学的なグラフ構造で表現するグラフゲノムをデータ構造として用いることで、ゲノム間の様々な差異をより自然に表現することが可能となる。ここでは、グラフゲノムの可視化をするためのゲノムブラウザであるグラフゲノムブラウザとして、MoMI-Gを紹介する。このツールでは、差異の可視化に必要となる様々な情報を表現するための可視化モジュールを実装した。またこれを用いて、がん培養細胞において発見されている融合遺伝子の可視化を行った。グラフゲノムブラウザは、複雑な差異に対し、可視化を通した探索的な解析を可能にする。
著者
鈴木 穣 宮原 茂 竹石 和夫
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
衛生工学研究論文集 (ISSN:09134069)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.65-74, 1990-12-20 (Released:2010-03-17)
参考文献数
8

An oxygen supply method to wastewater using gas permeable film in the form of tube was investigated for the purpose of reducing energy consumption for supplying oxygen. Oxygen transfer rate was measured in the case with or without biofilm, which proved the high rate of oxygen transfer with nitrifying biofilm supplied with ammonium substrate. Simultaneous nitrification and denitrification occurred, when the tube with nitrifying biofilm was applied to the treatment of wastewater, resulting in the high rate of organic matter removal. However, periodic sloughing of denitrifying biofilm which formed on the nitrifying biofilm was needed to keep the oxygen transfer rate high. Energy comsumptiom of the process using this tube was calculated to be less than 40% of that of the activated sluge process.
著者
渡邊 学 チェン アイリス 森 美香子 上野 絵美 中村 好孝 薮本 恵美子 阿部 佳澄 椿 真理 今村 清美 関森 悦子 西澤 理絵 若栗 浩幸 中川 貴之 望月 学 西村 亮平 佐々木 伸雄 鈴木 穣 菅野 純夫
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.1-6, 2012-04-10 (Released:2013-01-25)
参考文献数
15

イヌ舌組織における遺伝子発現、味覚受容体の構造の検討を行うため、遺伝子発現頻度解析および味覚受容体の構造解析を行った。正常イヌ舌組織よりRNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いてシークエンスを行った。シークエンスタグをイヌゲノムへのマッピングを行い各遺伝子の発現頻度を解析した。味覚受容体にマップされたシークエンスタグをもとに味覚受容体TAS2R40遺伝子およびアミノ酸配列を解析した。RNA-seq解析の結果、984,903シークエンスタグを得た。これらを用いてイヌゲノム上へのマッピングを行った。同定された遺伝子の中で、S100 calcium binding protein A8がもっとも高い発現を示した。また、骨格筋系遺伝子、心筋系遺伝子や解毒系遺伝子群の発現が認められた。味覚受容体をコードする遺伝子構造解析を行ったところ、TAS2R40、TRPV1、PKD1は既存の遺伝子構造よりも5' 端側にマップされるタグが認められ、これまでの遺伝子配列情報よりも完全長に近い遺伝子構造が推測された。また、TAS2R40遺伝子がコードするアミノ酸配列の相同性はヒトと76%マウスと62%であった。
著者
田中 宏明 藤井 滋穂 越川 博元 高田 秀重 鈴木 穣 山下 尚之 小森 行也
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

新たな汚染物質として、生活で広く使われている医薬品や化粧品などの日常用品(Pharmaceutical & Personal Care Product,PPCP)が潜在的な環境問題となり始めている。これらの多くは、難分解で、やや極性があるPersistent Polar Pollutant(P3)で、排水処理では取りにくいことが予想される。PPCPが水環境へ流出する状況を把握するため、広範囲な生活排水などを収集する下水道をターゲットに汚染実態と下水道での削減状況を捉えるとともに、バイオアッセイによる毒性データから初期リスク評価を行った。また回分実験によって活性汚泥での分解除去性を検討した。SPE-LC/MS/MS法を用いて47のPPCPを分析した。下水処理場での調査を行った結果、流入水中から多くの医薬品類が検出され、検出濃度のオーダーは10ng/L〜10μg/Lのオーダーであった。カフェイン(10μg/L)、アセトアミノフェン(8.4μg/L)、ベザフィブラート(2.7μg/L)、テオフィリン(2.0μg/L)、クラリスロマイシン(1.4μg/L)、スルピリド(1.1μg/L)などが流入水から高濃度で検出された。生物処理による除去率は-30〜100%であり、物質によって除去率が大きく異なった。オゾン処理により二次処理水中に残留した医薬品の約80%が除去されたが、ジソピラミドやケトプロフェンはオゾン処理によっても約60%程度しか除去されず、オゾン処理後も100ng/L以上の濃度で残留していた。また、生物処理によるリスク削減効果としては二次処理により流入水中で1以上あったハザード比が1以下に削減され,オゾン処理によって0.1以下まで削減された。通常の活性汚泥と不活化処理した活性汚泥による除去速度定数との差を見かけ上の生分解速度定数と定義し、生分解性を評価した。特に抗菌剤以外の医薬品は活性汚泥による除去に生分解が寄与していることが示唆され、抗菌剤以外の医薬品は実際の処理揚での除去率と見かけ上の生分解速度定数に正の相関がみられた。