著者
藤永 太一郎 桑本 融 尾崎 豊子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1976, no.12, pp.1852-1855, 1976
被引用文献数
2

N,N'-ビス(o-ヒドロキシフェニル)エチレンジィミン(HPEI=H<sub>2</sub>hpei)がウランと反応して生成する錯体を種々の条件下において検討した。水溶液中で生成するhpei-U錯体は波長565nmに最大吸収をもち,連続変化法で求めた組成比はhpei:U=1:1であった。しかし,第四級アモニウム塩であるゼブィラミンの多量存在下ではレッドシフトし,最大吸収は645nlnに移るるゼフィラミン添加によってとくに吸光度が増大するわけではないが,錯体の組成比は変化し,hpei:U=2:1となる。1:1の組成比を有する錯体は,通常の有機溶媒には抽出されないが,2:1錯体は1,1,22-テトラクロロエタン(TCE),1,2-ジク誓ロエタンなど有機溶媒に抽出される。モル吸光係数はTCE中で1.41x10<sup>4</sup>,水中で1.44x10<sup>4</sup>であった。抽出法によるウランの分光光度定量では0~50μg,水溶液中の定量では0~120μgの間のウランについてBeerの法則が成立する。
著者
藤永 太一郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学教育 (ISSN:24326542)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.400-403, 1985-10-20 (Released:2017-09-15)

環境化学は, 人間活動の効果を考慮に入れた自然科学と技術の一分野である。したがって総合科学の代表的なものの一つであるが, 学術としての基礎が確立していないために公害対策技術と誤まって考える向きが多い。本稿では健全な環境の基本条件を化学の立場から考え, また将来の環境工学のあり方について述べる。環境化学の学問としての基礎は, Empedoklesが提唱したとされる4元説にあると考え, 気圏, 水圏, 岩石圏の化学反応と平衡を考察する。このため本稿の内容は主として化学であるが, 物理学, 生物学, 地学はもとより, 一部は社会人文科学の領域にも係っている。
著者
藤永 太一郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.400-403, 1985

環境化学は, 人間活動の効果を考慮に入れた自然科学と技術の一分野である。したがって総合科学の代表的なものの一つであるが, 学術としての基礎が確立していないために公害対策技術と誤まって考える向きが多い。本稿では健全な環境の基本条件を化学の立場から考え, また将来の環境工学のあり方について述べる。環境化学の学問としての基礎は, Empedoklesが提唱したとされる4元説にあると考え, 気圏, 水圏, 岩石圏の化学反応と平衡を考察する。このため本稿の内容は主として化学であるが, 物理学, 生物学, 地学はもとより, 一部は社会人文科学の領域にも係っている。
著者
藤永 太一郎 高木 修
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌
巻号頁・発行日
vol.86, no.1, pp.67-69, 1965
被引用文献数
1

塩素量測定の国際方式は標準海水を用いるMohr法銀滴定であるが,これまでそれについての詳しし滴定誤差の検討が行なわれていなかった。著者らは塩化ナトリウムと硝酸銀の濃度を種々に変えて滴定誤差を求め, Cl<sup>-</sup>の濃度が大きくなるにつれて誤差は大きくなるが,硝酸銀の濃度には関係しないことを見いだした。この誤差が塩素量決定にいかなる影響を与えるかを見るために標準海水を標準とする場合の誤差を理論的に求めたが,それらの滴定誤差が許容誤差&plusmn;O.01&permil;の範囲内におさまることがわかった
著者
藤永 太一郎 高木 修
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.142-143,A8, 1966
被引用文献数
1

塩素量測定の国際方式は滴定の方法としてMohr法銀滴定を定めているが,わが国ではFajans法も採用されている。しかしFajans法による滴定誤差は広い範囲の塩素量については検討されていなかった。著者らはこの滴定誤差を種々の濃度の塩化ナトリウム溶液を用い電位差法と比較することによって求めたが,その結果精度確度ともにMohr法より高く塩素量の誤差は偏差も含めて許容値の範囲内にあることがわかった。
著者
石橋 雅義 藤永 太一郎 伊豆津 公佑
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
日本化學雜誌
巻号頁・発行日
vol.81, no.10, pp.1549-1554, 1960

滴下水銀電極を用いる電流規正ポーラログラフイーにおいては,被還元物質の電流電位曲線および限界電流がその後放電物質の電極反応過程に左右される。すなわち,多量後放電物質の電極反応が不可逆な場合,限界電流値は通常のポーラログラフ法におけ大拡散電流に等しいが,後放電物質が可逆的に還元されるときにはそれよりも約10%小さい限界電流値を示す。本報では,いて定電流電解するさいの1滴の間の電位時間式を,後放電物質の電極反応を考慮して導出し流電位曲線式および限界電流,その結果から電の式を求めた。得られた諸式は実験結果とよく一致することを確かめた。
著者
藤永 太一郎 竹中 亨 室賀 照子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1974, no.9, pp.1653-1657, 1974
被引用文献数
1

號珀(コハク)は古代から装身具として用いられ,わが国においても遣跡や古墳から発掘されている。本研究においてはこれら発掘品の原産地の同定法の検討を行なった。資料は地質学的標準資料として,原産地の明らかな久慈,銚子,瑞浪,神戸のわが国主要産地0ものと比較のため撫順,バルティック,ニュージランド産出のものを,考古学的資料は京都府長池古填のもの2種と奈良県東大寺出古墳群のもの7種を用いた。融点測定を行なったが,発掘品をますべて3QO℃以上であり,完全に化石化していた。元素分析の結果はlC:耳:Oは久慈;33二52:4,銚子;91:142:4,瑞浪;184:3O<sup>2-</sup>:4,神戸;60:39:4とばらつきがあるが,東大寺山;22:32:4,長池;22:34:4とほぼ同様の比を示した。赤外吸収スペクトルは全波長領域にわたって産地特有のパターンを示した。とくに久慈産の褐色のものと黄色のもの,および撫順産の2種は同-のパターンが得られた竃これらの事実から,日本産號珀についても赤外吸収スペクトルによって産地の同定を行ないうることが判明した。東大寺幽12号古墳の6種および長池古墳の2種はいずれも同-の産地であり,久慈産のものと同定された。このことから古墳時代においてすでに東北地方と近畿地方の間で交易のあったことが推論される。
著者
藤永 太一郎 竹中 亨 室賀 照子
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.25, no.11, pp.795-799, 1976-11-10
被引用文献数
1

日本産のコハクについて赤外吸収スペクトルにより産地同定が可能であることを報告したが,本報では更に新たに得た外国産の資料についても検討し,これらも同様に産地同定できることを明らかにした.又,本邦産のコハクについても新しく資料を入手し詳しく検討した.資料は地質学的標準資料として久慈I,久慈IIの久慈産と,海鹿島,波止山No.1-1,波止山No.1-2,長崎海岸No.5,犬吠崎No.6-1,酉明浦No.7,酉明浦No.8の銚子産,竹折の宿の岐阜産,外国産として撫順III,Palmnicken, Dominica,及びDalmatiaのRetiniteを用いた.又,考古資料としては千葉県銚子市の粟島台遺跡のもの2種,奈良県富雄丸山古墳,於古墳,慈恩寺脇本古墳より出土したものを用いた.元素分析の結果は地質学的資料はC:H:0=43〜208:70〜350:4,考古学的資料はC:H:O=19〜56:29〜91:4で,考古学的資料のほうがばらつきは少ない.赤外吸収スペクトルは全波長領域にわたって産地特有のパターンを示し,同一産地は同一パターンであった.考古出土品の原産地については富雄丸山古墳,於古墳,脇本古墳の2資料はいずれも久慈産のスペクトルの特徴をそなえており,粟島台遺跡の2資料は銚子産のものと同定した.これは古墳時代に東北久慈のコハクが,近畿地方にまでゆきわたっていたことを示している.