著者
大西 真理子 庄司 一郎 小川 宣子 中上 寧 長岡 俊治 下村 道子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.305-313, 2004-04-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
20
被引用文献数
4

炊飯過程において調味料の添加が, 飯粒の水の吸水・膨潤にどのような影響を及ぼしているのか, 米の品種に違いがみられるのかを食塩を用いて検討し, 以下の結果が得られた.(1) 米の粗タンパク質およびみかけのアミロース含量はコシヒカリよりも初霜の方が多かった.(2) コシヒカリと初霜の飯の物性をテクスチュロメーターによって測定した.低圧縮測定した付着性については両品種とも食塩飯粒は普通飯粒よりも有意に減少していた.高圧縮測定した中心部の硬さ, 付着性, 凝集性のいずれも, コシヒカリについては, 食塩添加による影響はみられなかったが, 初霜については, 特に硬さについては有意に増大し (p<0.001, n=20), 付着性は減少傾向がみられ, 凝集性は有意な増加を示した.(3) 飯粒横断面の組織は, コシヒカリでは, 食塩飯粒と普通飯粒は同様の形態を示し, 胚乳細胞は表層部, 中心部ともに膨潤していた.初霜の食塩飯粒では, 飯粒の表層部は膨潤しているが, 中心部の胚乳細胞は小さく, 膨潤が抑制されているのが観察された.組織構造への食塩添加の影響は, 品種問に違いがみられた.(4) コシヒカリと初霜の白米 (掲精度90%) における蒸留水の吸水率は, 両品種間に差はなかったが, 食塩水の吸水率は, 蒸留水のそれよりも有意 (p<0.01) に低かった.また, 白米中心部 (搗精度50%) では, 蒸留水における吸水率は, 両品種間に差がみられ, 初霜の蒸留水の吸水率はコシヒカリの蒸留水のそれよりも低く, 食塩水においても有意に低かった.(5) 初霜の米粒を蒸留水および食塩水に浸漬したときの粗タンパク質の溶出は, 両浸漬水でみられ, 蒸留水におけるよりも食塩水の方が溶出率は高かった.そして, 溶出タンパク質のうちグロブリン, アルブミンおよびグルテリンが多いことをSDS-PAGE分析により確認することができた.
著者
谷口 優 清野 諭 藤原 佳典 野藤 悠 西 真理子 村山 洋史 天野 秀紀 松尾 恵理 新開 省二
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.269-277, 2015-07-25 (Released:2015-08-13)
参考文献数
25
被引用文献数
1 3

目的:本研究では,1.身体機能,骨格筋量,及び身体機能と骨格筋量に基づくサルコペニアと認知機能との横断的な関連 2.身体機能,骨格筋量,及びサルコペニアと認知機能低下との縦断的な関連をそれぞれ明らかにすることを目的とした.方法:群馬県草津町在住の65歳以上を対象とした介護予防健診データをもとに,ベースライン調査(2008年から2011年)が完了した805名を横断的解析対象者とし,その後2012年までに再度認知機能検査が完了した649名を縦断的解析対象者とした.身体機能は,握力及び通常歩行速度から身体機能得点を算出した.認知機能はMini-Mental State Examination(MMSE)により評価し,追跡期間中の年平均変化量0.5点以上の低下を認知機能低下(CD)有りと定義した.結果:身体機能,骨格筋量及びサルコペニアと認知機能との間にそれぞれ有意な横断的な関連性がみられた.縦断的解析では,平均追跡期間3.0±1.1年に201名(31.0%)のCDがみられた.重要な交絡要因を調整したロジスティック回帰分析を行った結果,CD有りに対する身体機能[OR=0.75(95%信頼区間0.65~0.87)]に有意な関連性がみられたが,骨格筋量には有意な関連性はみられなかった.AWGS(Asia Working Group for Sarcopenia)基準による身体機能と骨格筋量の組み合わせにより分類した低身体機能かつ骨格筋量正常群は,身体機能と骨格筋量いずれも正常群に比べてCD発生リスクが有意に高かった[OR=2.10(1.18~3.38)].一方,低身体機能かつ低骨格筋量群(サルコペニア)ではCD発生に対する差の傾向がみられた[OR=1.57(0.93~2.63)].結論:地域在宅高齢者の身体機能,骨格筋量及びサルコペニアは,それぞれ認知機能の関連要因であった.高齢期の身体機能は,CDに対して社会医学的要因とは独立した予測因子であり,骨格筋量が正常であっても低身体機能の高齢者は将来認知機能が低下するリスクが高いことが示唆された.
著者
秦 俊貴 清野 諭 遠峰 結衣 横山 友里 西 真理子 成田 美紀 日田 安寿美 新開 省二 北村 明彦
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.477-492, 2021-07-15 (Released:2021-07-20)
参考文献数
58

目的 本研究の目的は,食品摂取の多様性を向上させるための10食品群の摂取チェック表(以下,食べポチェック表)について,使用した効果を明らかにする。方法 東京都大田区において実施した2016年と2018年の郵送調査に応答した65-84歳の8,635人を対象とした。2017年7月より大田区において,協力の得られたスーパーマーケットなどの機関に設置する等の方法で普及させた食べポチェック表について,2018年にチェック経験を尋ね,「習慣的にチェックしている」,「チェックしたことがある」と回答した者をチェック経験あり群に分類した。2016年の人口統計学的変数,社会経済的変数,身体的変数,医学的変数,生活習慣関連変数および食品摂取多様性スコア(DVS)の計37の共変量から傾向スコアを算出し,チェック経験あり群となし群の比を1:1としてマッチングし,2年間のDVSの変化をチェック経験あり群となし群各876人について二元配置分散分析を用いて比較した。また,2018年のDVS 3点以下および7点以上を従属変数として,チェック経験なし群に対するあり群の多変量調整済みオッズ比(OR)を多変量調整ロジスティック回帰分析にて算出した。結果 2018年に食べポチェック表のチェック経験があると回答した者の割合は11.9%であった。マッチング後のチェック経験あり群となし群のDVSの平均値±標準偏差は,2016年ではそれぞれ3.9±2.2点,3.9±2.3点,2018年ではそれぞれ4.5±2.4点,4.1±2.4点であり,チェック経験と時間による有意な交互作用が認められた(P<0.001)。2018年でのチェック経験あり群となし群のDVS 3点以下割合は,それぞれ35.2%,43.8%であり,DVS 7点以上割合は,それぞれ21.7%,16.8%であった。チェック経験なし群に対するあり群の2018年のDVS 3点以下のOR(95%信頼区間)は0.68(0.56-0.83)であり,2018年のDVS 7点以上のOR(95%CI)は1.40(1.10-1.78)であった。結論 食べポチェック表の普及とその活用により,高齢者の食品摂取の多様性が向上した可能性が示された。ただし,チェック表を使用した場合でも,欠食や社会的孤立,社会参加がないこと,およびフレイル傾向がある場合は食品摂取の多様性は向上しにくいことが示唆された。
著者
丸山 昌一 西 真理子 厳島 行雄
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.117-127, 2005 (Released:2017-06-02)

本報告では、事後情報が提示される媒体の違いが目撃者の記憶に及ぼす影響について検討した。参加者は、16枚からなるオリジナルスライドを提示された後に、事後情報として他の参加者による感想をVTRによる音声付き動画、または同一の内容を逐語化し紙面に印字したものによって提示された。ターゲット刺激3点の再認成績について各個に検討を行った結果、刺激項目の種類によっては、「ビデオ」による事後情報の提示が「紙面」による提示よりも強い誤情報効果をもたらすことが示唆された。これは「テレビなどによる視覚情報の方が事後情報として強い影響力を持つ」という仮説を支持する傾向ではあるが、本実験において用いたビデオ刺激が映像的に派手な演出を抑えたものであったことからも、紙面提示条件の誤情報検出力が上がったことによる影響も考えられた。このことは、参加者が個々のぺースで事後情報に触れることができたことによって、差異検出原理(Principle of Discrepancy Detection)が働いたものであると解釈することができる。なお提示モードにかかわらず事後情報効果を受けやすかった対象は、ある種の文脈における特定の動作を描写した項目であり、スクリプトの影響がその理由として考えられた。
著者
北村 明彦 阿部 巧 藤原 佳典 新開 省二 清野 諭 谷口 優 横山 友里 天野 秀紀 西 真理子 野藤 悠 成田 美紀 池内 朋子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.134-145, 2020

<p><b>目的</b> 高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施が進められる中,生活習慣病やフレイル関連の各因子が地域在住高齢者の自立喪失に及ぼす影響の強さ(ハザード比)と大きさ(寄与危険度割合)を明らかにする。</p><p><b>方法</b> 群馬県草津町において,2002~11年の高齢者健診を受診した65歳以上の男女計1,214人(男性520人,女性694人)を対象とし,平均8.1年(最大13.4年)追跡した。自立喪失は,介護保険情報による要介護発生または要介護発生前の死亡と定義した。生活習慣病因子として,高血圧,糖尿病,肥満,腎機能低下,喫煙,脳卒中・心臓病・がんの既往等を,機能的健康の関連因子として,フレイル区分,低体重,貧血,低アルブミン血症,認知機能低下を採り上げた。フレイル区分は,phenotypeモデルの5つの構成要素(体重減少,疲弊,活動量低下,歩行速度低値,握力低値)のうち3項目以上該当をフレイル,1~2項目該当をプレフレイルと定義した。Cox比例ハザードモデルを用いた回帰分析により,各要因保有群における自立喪失発生の多変量調整ハザード比(HR),集団寄与危険度割合(PAF)を算出した。</p><p><b>結果</b> 自立喪失発生者数は475人(要介護発生372人,要介護発生前死亡103人)であった。対象者全体でみると,自立喪失の多変量調整HRはフレイル,プレフレイル,認知機能低下,脳卒中既往,喫煙において1.3~2.2倍と有意に高値を示した。自立喪失のPAFは,プレフレイルが19%,フレイルが12%と他の要因に比し高率であった。男性では自立喪失のPAFは,プレフレイルが19%と最も大きく,次いで喫煙が11%であり,女性では,フレイル,プレフレイルがともに18%,腎機能低下が11%であった。前期高齢者では,フレイル,プレフレイルの他に脳卒中既往,貧血,低アルブミン,認知機能低下,喫煙,糖尿病における自立喪失の多変量調整HRが有意に高く,自立喪失のPAFは,プレフレイルが18%,フレイルが13%,喫煙が11%であった。</p><p><b>結論</b> 高齢者健診の受診者を対象とした検討の結果,自立喪失に寄与する割合が最も大きい要因はフレイル,プレフレイルであった。前期高齢期からフレイル予防,ならびに生活習慣病の予防・改善を図ることが集団全体の自立喪失の低減に寄与すると考えられた。</p>
著者
藤原 佳典 西 真理子 渡辺 直紀 李 相侖 井上 かず子 吉田 裕人 佐久間 尚子 呉田 陽一 石井 賢二 内田 勇人 角野 文彦 新開 省二
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 = JAPANESE JOURNAL OF PUBLIC HEALTH (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.702-714, 2006-09-15
参考文献数
29
被引用文献数
16

<b>目的</b>&emsp;高齢者の高次生活機能である社会的役割と知的能動性を継続的に必要とする知的ボランティア活動&mdash;子供への絵本の読み聞かせ&mdash;による介入研究&ldquo;REPRINTS&rdquo;を開始した。その 1 年間にわたる取り組みから得られた知見と課題を整理し,高齢者による社会活動の有効性と活動継続に向けた方策を明らかにする。<br/><b>方法</b>&emsp;&ldquo;REPRINTS&rdquo;プログラムの基本コンセプトは高齢者による「社会貢献」,「生涯学習」,「グループ活動」である。対象地域は都心部(東京都中央区),住宅地(川崎市多摩区),地方小都市(滋賀県長浜市)を選び,2004年 6 月一般公募による60歳以上ボランティア群67人と対照群74人にベースライン健診を行った。3 か月間(週 1 回 2 時間)のボランティア養成セミナーを修了後,6~10人単位のグループに分かれ地域の公立小学校,幼稚園,児童館への定期的な訪問・交流活動(主な内容は絵本の読み聞かせ)を開始し,2005年 3 月に第二回健康診査を行った。<br/><b>結果</b>&emsp;ベースライン健診において,孫のいない者の割合(41.8% vs. 20.3%,<i>P</i>=0.006),就学年数(13.4&plusmn;2.5 vs. 12.3&plusmn;2.5年,<i>P</i>=0.008),過去のボランティア経験あり(79.1% vs. 52.7%, <i>P</i>=0.001),通常歩行速度(86.7&plusmn;12.3 vs. 81.3&plusmn;12.9 m/分,<i>P</i>=0.012)で,ボランティア群は対照群に比べそれぞれ有意に高かったが,他の諸変数では両群に有意差はなかった。第二回健診時点での活動継続者56人は社会的ネットワーク得点で,孫,近隣以外の子供との交流頻度および近隣以外の友人・知人の数が対照群に比べて有意に増加した。社会的サポート得点でボランティア群は対照群に比べて友人・近隣の人からの受領サポート得点は有意に減少したが,提供サポート得点は有意に増加した。ボランティア群は対照群に比べて「地域への愛着と誇り」,健康度自己評価,および握力において有意な改善または低下の抑制がみられた。<br/><b>結論</b>&emsp;9 か月間の世代間交流を通した知的ボランティア活動により健常高齢者の主観的健康感や社会的サポート・ネットワークが増進し,地域共生意識および体力の一部に効果がみられた。自治体との協働により,新たな地域高齢者のヘルスプロモーションプログラムを構築しうることが示唆された。
著者
藤原 佳典 天野 秀紀 熊谷 修 吉田 裕人 藤田 幸司 内藤 隆宏 渡辺 直紀 西 真理子 森 節子 新開 省二
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.77-91, 2006 (Released:2014-07-08)
参考文献数
32
被引用文献数
4

目的 在宅自立高齢者が初回介護保険認定を受ける関連要因を,要介護認定レベル別に明らかにする。方法 新潟県与板町在住の65歳以上全高齢者1,673人を対象にした面接聞き取り調査(2000年11月実施,初回調査と称す)に1,544人が応答した。ベースライン調査時の総合的移動能力尺度でレベル 1(交通機関を利用し一人で外出可能)に相当し,未だ要介護認定を受けていない1,225人をその後 3 年 4 か月間追跡した。この間,介護保険を申請し要支援・要介護 1 と認定された者を軽度要介護認定群,要介護 2~5 の者を重度要介護認定群,未申請で生存した群(以降,イベント未発生群と称す)に分類し,男女別にイベント未発生群と軽度あるいは重度要介護認定群との間で初回調査時の特性を比較した。つぎに Cox 比例ハザードモデル(年齢,老研式活動能力指標の手段的自立,慢性疾患の既往は強制投入し,単変量分析で有意差のみられた変数すべてをモデルに投入したステップワイズ法)を用いて,要介護認定に関連する予知因子を抽出した。成績 追跡対象者のうち初回調査時に BADL 障害がなく,かつ申請前の死亡者を除く1,151人を分析対象とした。うちイベント未発生群は1,055人,軽度要介護認定群は49人,重度要介護認定群は47人であった。男女とも共通して在宅自立高齢者の軽度要介護認定に関連する予知因子として高年齢と歩行能力低下(男は「1 km 連続歩行または階段昇降のいずれかができないまたは難儀する」のハザード比が7.22[95%CI 1.56-33.52] P=0.012;女は「1 km 連続歩行・階段昇降ともにできないまたは難儀する」のハザード比は3.28[95%CI 1.28-8.42] P=0.014)が,また重度要介護認定の予知因子として高年齢と手段的自立における非自立(4 点以下のハザード比は男で3.74[95%CI 1.59-8.76] P=0.002;女で3.90[95%CI 1.32-11.54] P=0.014)が抽出された。また,男性のみ重度要介護認定に重度認知機能低下が,女性のみ軽度要介護認定に入院歴と咀嚼力低下が抽出された。結論 在宅自立高齢者の要介護認定の予知因子は,高年齢を除き,大半は介護予防事業により制御可能であろう。今後,これら介護予防事業の効果が学術的に評価されることが期待される。
著者
横山 友里 清野 諭 光武 誠吾 西 真理子 村山 洋史 成田 美紀 石崎 達郎 野藤 悠 北村 明彦 新開 省二
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.10, pp.752-762, 2020-10-15 (Released:2020-12-23)
参考文献数
38
被引用文献数
1

目的 「運動」「栄養」「心理・社会参加」を柱としたフレイル改善のための複合プログラムへの参加がその後の要介護・死亡発生リスクや介護費に及ぼす影響を,傾向スコアマッチングを用いた疑似実験的デザインにより検証した。方法 鳩山コホート研究参加者742人のうち,2011年度(47人)と2013年度(30人)に開催した3か月間のフレイル改善教室のいずれかの年度に参加したフレイルまたはプレフレイルの計77人を介入群とした。不参加群は,鳩山コホート研究参加者の中から,介入不参加者(介入対象外であった者のほか,介入対象であったものの,教室参加を拒否した者を含む)を対象に,傾向スコアを算出し,介入群との比を1:2としてマッチングすることにより,設定した。傾向スコアで完全にマッチングできた対象者は介入群70人,不参加群140人,計210人であった。住民異動情報・介護保険情報を突合し,32か月間(教室終了後24か月)の追跡による要介護(要支援含む)・死亡発生リスクをCoxの比例ハザードモデルを用いて算出した。また,ガンマ回帰モデルを用いて介護費の比較を行った。結果 要介護の発生率(対千人年)は介入群が不参加群に比し,有意ではないものの低い傾向を示し(介入群:1.8 vs.不参加群:3.6),不参加群に対する介入群の要介護認定のハザード比と95%信頼区間(95%CI)は0.51(0.17-1.54)であった。また,介入群と不参加群の間で介護費発生の有無に有意な差はみられなかったものの,介護費については,受給者1人あたりの追跡期間中の累積の費用,1か月あたりの費用の平均値はそれぞれ,介入群で375,308円,11,906円/月,不参加群で1,040,727円,33,460円/月と介入群では約1/3の低額を示し,累積の費用(コスト比=0.36, 95%CI=0.11-1.21, P=0.099),1か月あたりの費用(コスト比=0.36, 95%CI=0.11-1.12, P=0.076)ともに,不参加群に比べて介入群で低い傾向がみられた。結論 本研究では統計的な有意差は認められなかったものの,フレイル改善のための複合プログラムの実施により,その後の要介護発生リスクおよび介護費を抑制できる可能性が示された。今後,より厳密な研究デザインによるさらなる検証が必要である。
著者
川平 正博 中村 文彦 嶋田 博文 西 真理子 岩坪 貴寛 塩満 多華子 前田 弘志 大迫 絢加 宮崎 晋宏 久住 勇介 村田 明俊 大迫 浩子 堀 剛
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.61-66, 2023 (Released:2023-02-21)
参考文献数
22

骨転移診療では,骨関連事象(SRE)の発症予防,早期診断,治療が重要となる.骨転移に対して多職種チーム介入を行うことで,生存期間延長やADL改善が期待できるか後方視的に検討した.2020年8月~2022年7月まで当院で骨転移カンファレンス(BMB)を実施した進行がん患者75名を,SRE発症前後のBMBによるチーム介入別に2群に分け,比較検討を行った.両群ともにチーム介入後にNRSは改善したがPSの改善はなく,両群で生存期間に差は認めなかった(15.3 vs. 9.0カ月,HR: 0.74,95%CI: 0.42–1.29,p=0.29).当院BMBでは発症したSREに対しては早急にチーム介入できていた.しかし,当院BMB後のSRE発症割合は22.6%であり,今後はSRE発症予防に積極的に取り組む必要がある.
著者
皆元 文恵 梅田 勇一 冨永 麻衣子 上西 真理子 鵜木 友都 松本 弥一郎
出版者
一般社団法人 日本老年薬学会
雑誌
日本老年薬学会雑誌 (ISSN:24334065)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.33-40, 2022-12-31 (Released:2023-01-27)
参考文献数
17

At Iizuka Hospital, we organized a polypharmacy team to engage in multidisciplinary collaboration and we began interventions aimed at prescription optimization for inpatients. During the interventions, we confirmed the patient’s willingness for pharmacotherapy. After that, we evaluated the merits and demerits of continuation or discontinuation of the drugs considering the patient’s condition, life prognosis, and time to benefit. In this study, we considered the investigated results of 100 patients who experienced intervention by the polypharmacy team. Of the 49 patients who reduced their medications after the polypharmacy team intervened, the most common reason for medicine reduction was long-term administration, and the most common pharmacological category of medicine reduction was gastrointestinal medication. The polypharmacy team at Iizuka Hospital intervenes for the Departments of General Internal Medicine, Transitional and Palliative Care, and Orthopedic Surgery, and we hope polypharmacy team interventions will be expanded to more departments to optimize prescribing in the future.
著者
横山 友里 吉﨑 貴大 小手森 綾香 野藤 悠 清野 諭 西 真理子 天野 秀紀 成田 美紀 阿部 巧 新開 省二 北村 明彦 藤原 佳典
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.665-675, 2022-09-15 (Released:2022-09-10)
参考文献数
36

目的 食品摂取の多様性得点(DVS)は,日本人高齢者の食品摂取の多様性を評価する指標として,疫学研究や公衆衛生の現場において幅広く活用されている。一方,本指標は1990年代の開発以降,見直しが行われておらず,現在の日本人高齢者の食生活の実態を必ずしも十分に反映できていない可能性がある。本研究では,構成食品群の改訂による改訂版DVS(MDVS)の試作および妥当性の評価を行うことを目的とした。方法 鳩山コホート研究の2016年調査に参加した357人(年齢:76.2±4.6歳,男性:61.1%)を対象とした。DVSおよびMDVSは,各食品群の1週間の食品摂取頻度をもとに,ほぼ毎日食べる食品群の数を評価した。DVSの構成食品群は肉類,魚介類,卵類,牛乳,大豆製品,緑黄色野菜類,果物,海藻類,いも類,油脂類とし,MDVSの構成食品群は平成29年国民健康・栄養調査における65歳以上の食品群別摂取量のデータをもとに,主菜・副菜・汁物を構成する食品群の摂取重量および各栄養素の摂取量に対する各食品群の寄与率をもとに,その他の野菜,乳製品を追加することとした。栄養素等摂取量は,簡易型自記式食事歴法質問票を用いて調べた。「日本人の食事摂取基準(2020年版)」で推定平均必要量が定められている14の栄養素について,必要量を満たす確率およびそれらの平均を算出した。DVS,MDVSと各指標との相関分析および相関係数の差の検定を行った。結果 MDVSとたんぱく質エネルギー比率,脂質エネルギー比率,食物繊維,カリウム摂取量,改良版食事バランスガイド遵守得点との有意な正の関連がみられ(偏相関係数の範囲(r)=0.21-0.45),炭水化物エネルギー比率との有意な負の関連がみられた(r=−0.32)。また,MDVSと14の栄養素の必要量を満たす確率の平均との有意な正の関連がみられた(r=0.41)。これらの関連の程度はDVSとMDVSで同程度であり,相関係数の差は有意ではなかった。結論 栄養素摂取量や食事の質との関連からみた妥当性はDVSとMDVSで同程度であった。DVSの改訂にあたっては全国の大規模集団を対象に精度の高い食事調査を用いたさらなる研究が必要である。
著者
北村 明彦 木山 昌彦 野藤 悠 山岸 良匡 横山 友里 谷口 優 清野 諭 新開 省二 西 真理子 村木 功 阿部 巧 山下 真里 陣内 裕成
出版者
地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所)
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

地域住民の疫学研究により、生活因子(身体活動、食事、喫煙、飲酒、精神的ストレス等)、医学的因子(脳卒中、心疾患、動脈硬化、メタボリックシンドローム等の生活習慣病、及び低栄養、サルコペニア、認知機能低下、うつ等の老年症候群)、社会的因子(社会参加、近隣・地域との交流、ソーシャルサポート等)がフレイルの発症に及ぼす影響を中年後期、前期高齢期、後期高齢期の年齢層別に明らかにする。
著者
清野 諭 北村 明彦 遠峰 結衣 田中 泉澄 西 真理子 野藤 悠 横山 友里 野中 久美子 倉岡 正高 天野 秀紀 藤原 佳典 新開 省二
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.399-412, 2020-06-15 (Released:2020-07-02)
参考文献数
39

目的 本研究の目的は,大都市在住高齢者を対象としてフレイルの認知度とその関連要因を明らかにすることである。方法 東京都大田区で実施したフレイル予防のための地域介入研究のベースラインと2年後調査データを用いた。2016年7月に,郵送法によって65-84歳の男女15,500人の健康度や生活実態を調査した。2018年 7 月に同一集団のフレイル認知度を調査し,この有効回答者10,228人をフレイル認知度の解析対象とした。さらに,これに2016年の調査データを結合できた9,069人を対象として,フレイル認知度の関連要因を検討した。フレイルについて「意味を知っている」または「聞いたことはあるが意味は知らない」と回答した者の割合を認知度とした。これを目的変数とし,年齢,婚姻状況,家族構成,教育歴,等価所得,BMI,既往歴の数,食品摂取多様性得点,腰痛,膝痛,飲酒,喫煙,抑うつ,運動習慣,社会活動,社会的孤立,フレイルの有無を説明変数とした決定木分析とマルチレベルポアソン回帰分析を適用した。結果 フレイルの認知度は20.1%(男性15.5%,女性24.3%)と推定された。決定木分析による認知度の最も高い集団は,社会活動と運動の習慣があり,かつ食品摂取多様性得点が 4 点以上の女性であった(認知度36.3%)。フレイル認知の独立した有意な関連要因は,年齢(1 歳ごと:多変量調整済み prevalence ratio[PR]=1.03,[95%信頼区間=1.02-1.04]),性(女性:1.35[1.21-1.51]),教育歴(高等学校:1.27[1.11-1.45],短大・専門学校以上:1.47[1.28-1.70]),等価所得(250万円以上/年:1.12[1.01-1.25]),運動習慣(あり:1.26[1.11-1.43]),食品摂取多様性得点(6 点以上:1.37[1.21-1.55]),社会活動(あり:1.33[1.20-1.49]),社会的孤立(あり:0.75[0.67-0.85]),フレイル(あり:0.72[0.62-0.84])であった。結論 フレイルの認知度は低水準であった。高年齢で社会経済状態や社会活動・運動・食習慣が良好な女性ではフレイルという用語が比較的よく認知されていた。一方,フレイル対策が必要な者ではフレイル認知度が低いという実態が明示された。ハイリスク者のフレイル予防・改善を促す具体策の検討が急務である。
著者
北村 明彦 清野 諭 谷口 優 横山 友里 天野 秀紀 西 真理子 野藤 悠 成田 美紀 池内 朋子 阿部 巧 藤原 佳典 新開 省二
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.134-145, 2020-02-15 (Released:2020-02-22)
参考文献数
27

目的 高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施が進められる中,生活習慣病やフレイル関連の各因子が地域在住高齢者の自立喪失に及ぼす影響の強さ(ハザード比)と大きさ(寄与危険度割合)を明らかにする。方法 群馬県草津町において,2002~11年の高齢者健診を受診した65歳以上の男女計1,214人(男性520人,女性694人)を対象とし,平均8.1年(最大13.4年)追跡した。自立喪失は,介護保険情報による要介護発生または要介護発生前の死亡と定義した。生活習慣病因子として,高血圧,糖尿病,肥満,腎機能低下,喫煙,脳卒中・心臓病・がんの既往等を,機能的健康の関連因子として,フレイル区分,低体重,貧血,低アルブミン血症,認知機能低下を採り上げた。フレイル区分は,phenotypeモデルの5つの構成要素(体重減少,疲弊,活動量低下,歩行速度低値,握力低値)のうち3項目以上該当をフレイル,1~2項目該当をプレフレイルと定義した。Cox比例ハザードモデルを用いた回帰分析により,各要因保有群における自立喪失発生の多変量調整ハザード比(HR),集団寄与危険度割合(PAF)を算出した。結果 自立喪失発生者数は475人(要介護発生372人,要介護発生前死亡103人)であった。対象者全体でみると,自立喪失の多変量調整HRはフレイル,プレフレイル,認知機能低下,脳卒中既往,喫煙において1.3~2.2倍と有意に高値を示した。自立喪失のPAFは,プレフレイルが19%,フレイルが12%と他の要因に比し高率であった。男性では自立喪失のPAFは,プレフレイルが19%と最も大きく,次いで喫煙が11%であり,女性では,フレイル,プレフレイルがともに18%,腎機能低下が11%であった。前期高齢者では,フレイル,プレフレイルの他に脳卒中既往,貧血,低アルブミン,認知機能低下,喫煙,糖尿病における自立喪失の多変量調整HRが有意に高く,自立喪失のPAFは,プレフレイルが18%,フレイルが13%,喫煙が11%であった。結論 高齢者健診の受診者を対象とした検討の結果,自立喪失に寄与する割合が最も大きい要因はフレイル,プレフレイルであった。前期高齢期からフレイル予防,ならびに生活習慣病の予防・改善を図ることが集団全体の自立喪失の低減に寄与すると考えられた。
著者
田中 泉澄 北村 明彦 清野 諭 西 真理子 遠峰 結衣 谷口 優 横山 友里 成田 美紀 新開 省二
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.12, pp.744-754, 2018-12-15 (Released:2018-12-27)
参考文献数
20

目的 大都市部在住の高齢者における孤食の実態についてその頻度を含めて明らかにするとともに,孤食と食品摂取の多様性との関連を示す。方法 2016年6月に,東京都大田区に在住する65歳以上の男女を対象とし,15,500人に自記式調査票を郵送した。回答を得た11,925人(回収率76.9%)のうち,データ欠損を含まない8,812人(有効回答率56.9%)を分析対象とした。毎食一人で食事をとる1週間当たりの日数を孤食頻度として0,1~3,4~6,7日群に分類した。食品摂取多様性得点(DVS)は,10の食品群それぞれの1週間あたりの摂取頻度から算出し,3点以下の場合をDVS低値と定義した。統計解析は,DVSまたは各食品群について「ほぼ毎日食べる」の有無を従属変数,孤食頻度を独立変数,年齢,居住地域,BMI,教育歴,等価所得,就業,独居,既往歴,飲酒,喫煙を調整変数とした二項ロジスティック回帰分析を行った。結果 男性の47.1%,女性の48.5%が週1日以上の孤食であり,さらに男性の14.9%,女性の16.9%が週7日(毎日)孤食であると回答した。孤食頻度0日群と比較して,男性ではすべての頻度の孤食群でDVS低値に対するオッズ比が1.51~2.00と有意に高値を示した。女性では,孤食頻度7日群でのDVS低値のオッズ比は1.15(95%信頼区間0.92-1.43)と有意差はみられなかった。男女とも孤食習慣のある群では,非孤食群と比較して緑黄色野菜類,果物類,油を使った料理を「ほぼ毎日食べる」オッズ比が有意に低値を示した。結論 大都市部の高齢者では,男女ともに半数近くに孤食習慣があることが明らかとなった。孤食群は非孤食群と比較して年齢や等価所得,同居家族の有無とは独立して食品摂取の多様性が低い傾向を示した。本成績は,孤食習慣のある大都市部高齢者の低栄養対策に資する有用な知見となると考えられる。
著者
桃田 茉子 浅野 良輔 永谷 文代 宮川 広実 中西 真理子 安田 由華 柴田 真理子 橋本 亮太 毛利 育子 谷池 雅子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.88.16215, (Released:2017-09-30)
参考文献数
39
被引用文献数
3

This study sought to examine the reliability and validity of the Japanese version of the Behavior Rating Inventory of Executive Function (J-BRIEF). In this study, BRIEF was administered to evaluate executive function in everyday life in 91 subjects with autism spectrum disorder (ASD; ages 12–15; 72 boys) and 2,230 community samples (CS; ages 12–15; 1,083 boys). For this purpose, we applied categorical confirmatory factor analysis, which revealed that the scale was composed of two factors and eight subscales of the high test-retest stability. Reliability was confirmed using an external criterion (ADHD-Rating scale: ADHD-RS). Receiver operating characteristic analysis revealed an optimal cut-off of 118.5 (sensitivity = 0.811, specificity = 0.828). This study confirmed the reliability and the validity of J-BRIEF.