著者
鈴木 廣一 西尾 元 田村 明敬 宮崎 時子
出版者
大阪医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

この研究の契機はABO式血液型(以下ABOと略)遺伝子座でde novoの組換え例を発見したことである。各対立遺伝子の配列からみて、親子のいろいろな型の組み合わせのなかで、de novoの組み換えによって子の表現型に矛盾が生じるというのは特定の組み合わせに限られ、非常に稀なことと考えられる。このことは逆に表現型の矛盾として現れない組換えがかなりの頻度で存在している可能性を示している。このような推察から、一般集団をスクリーニングした結果、組換え体ががなりの頻度(1〜2%)存在していることを明らかにした。これらの組換え体をまとめると、12種類の可能な組み合わせのうち、A1-O1、B-A1、B-O1、B-O1v、O1-O1v、O1v-A1、O1v-Bという7種類の配列構成(例えばA1-O1というのは、遺伝子の5側がA1遺伝子の、3側がO1遺伝子の配列であることを示す)であった。O1v-Aには配列の変換領域が異なるものがあったので、あわせて7種類8個となる。これらはいずれも、エクソン2から7までの間に配列の変換領域をひとつもっていたが、イントロンVとエクソン7の2ケ所に変換領域のあるO1v-B-O1vという配列構成をもった組換え体も見いだした。この組換え体の成因としては交叉よりも遺伝子変換が考えやすい。以上のように、わずか300人足らずの集団調査で、予想される組換え配列12とおりのうち7つを見いだしたことは、ABO遺伝子領域では、新規の組換えを繰り返してきていることを示している。近傍に相同の配列をもった遺伝子などが報告されていないことから、相同遺伝子がタンデムに配列している領域に起こりやすい交叉よりも、遺伝子変換のような機構が関わっている可能性が高く、高等生物における遺伝子変換機構を研究するモデル領域になると考えられる。
著者
小松 正憲 西尾 元秀 佐藤 正寛 千田 雅之 広岡 博之
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.157-169, 2009-05-25
参考文献数
35
被引用文献数
1 2

黒毛和種繁殖肥育一貫経営農家経営において,BMSナンバーや枝肉重量(CW)に関与するQTLアリル型情報はどの程度収益上昇に活用できるかを,初期QTLアリル頻度 (<I>p</I>),計画年数 (<I>T</I>),DNAタイピング料金(<I>C<SUB>TYP</SUB></I>),使用する精液差額(<I>SEM</I>),種雄牛と繁殖雌牛の割合(<I>R (s/d)</I>)を変化させて検討した.その結果,BMSナンバーに関わる<I>Q</I>アリルを1個持つことで得られるBMSランク上昇分(Δ<I>BMS<SUB>QTL</SUB></I>)を1.0,BMSナンバー1ランク上昇分の枝肉単価(<I>CWP<SUB>BMS</SUB></I>)を150円/kg, <I>CW</I>を440 kg, CWに関わる<I>Q</I>アリルを1個持つことで得られる枝肉重量上昇分(Δ<I>C<SUB>WQTL</SUB></I>)を20 kg, 黒毛和種去勢枝肉単価(<I>CW<SUB>PU</SUB></I>)を1,900円/kgとした場合,QTLアリル型情報は,黒毛和種繁殖肥育一貫経営農家の経営に充分活用できると考えられた.また,以下のことが明らかになった.QTLアリル型情報を経営に活用する際,集団における<I>p</I>の頻度,<I>SEM</I>および<I>T</I>数が重要であり,<I>C<SUB>TYP</SUB></I>と<I>R (s/d)</I> の重要性は低かった.<I>C<SUB>TYP</SUB></I>が5千円/頭,<I>SEM</I>が1万円程度以下で,1頭当たり1万円程度の収益上昇を確保するためには,<I>p</I>の頻度は,BMSナンバーでは0.6~0.7以下,CWでは0.4~0.5以下であることが示唆された.繁殖雌牛集団のQTLアリル型情報は,<I>p</I>の頻度が0.5~0.7程度の範囲内,<I>T</I>数がBMSナンバーで6年以上,CWで8年以上であれば,収益上昇に貢献できることが明らかになった.
著者
佐藤 正寛 西尾 元秀
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

適切な制限付き選抜法を決めるため、まず選抜反応を予測するためのモンテカルロ法によるコンピュータシミュレーションプログラムを開発し、次に選抜候補個体の中から次世代の種畜を選抜するための制限付き選抜法のプログラムを開発した。両者のプログラムを組み合わせてすべての個体に制限を付加した制限付きBLUP法(AR-BLUP法)と選抜候補にのみ制限を付加したPR-BLUP法の選抜反応を比較した結果、PR-BLUP法は、選抜反応および近交係数の点でAR-BLUP法に比べ望ましい選抜結果の得られることが明らかとなった。さらに、制限付き選抜を行うための指標として、育種価の適切な重み付け値の算出方法を考案した。