著者
西山 成 安部 陽一
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.124, no.2, pp.101-109, 2004 (Released:2004-07-26)
参考文献数
33
被引用文献数
13 14

レニン·アンジオテンシン系で中心的な役割を果たすアンジオテンシンIIは,副腎でのアルドステロンの産生·分泌を刺激する.アルドステロンは腎遠位尿細管に存在するミネラロコルチコイド受容体に作用してナトリウム·水代謝を調節するホルモンであることが知られているが,近年その強力な組織障害作用が明らかとなってきた.また,腎症患者にミネラロコルチコイド受容体拮抗薬を投与すると血圧の変化とは関係なくタンパク尿が著減するなど,アルドステロンの腎障害作用に対しても注目が集まっている.しかしながら,どのような機序によってアルドステロンが腎臓の組織障害を生じるのかについては全く解明されていない.これに対して現在我々は,動物モデルと培養細胞を用いて実験を行っている.ラットに食塩水とアルドステロンを長期間投与すると,タンパク尿と糸球体の肥大·細胞数の増加·メサンギウム領域の拡大を示す腎障害を生じるが,我々はこれらが組織中のNAD(P)Hオキシダーゼ発現増加による酸化ストレスの上昇,ならびにタンパク質リン酸化酵素であるMitogen-Activated Protein(MAP)キナーゼの活性化を伴っていることを明らかにした.また,これらすべての変化は選択的ミネラロコルチコイド受容体拮抗薬のみならず,抗酸化剤の投与によっても完全に抑制された.一方,ラット糸球体培養メサンギウム細胞においてもミネラロコルチコイド受容体は強く発現しており,培養メサンギウム細胞にアルドステロンを投与するとMAPキナーゼが活性化されて様々な細胞障害が生じた.このように,アルドステロンの今まで考えられなかった腎障害因子としての役割が次々と明らかになってきている.したがって,今後はレニン·アンジオテンシン·アルドステロン系として病態をとらえることが必要となってくるであろう.
著者
西山 成
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.132, no.4, pp.455-459, 2012-04-01 (Released:2012-04-01)
参考文献数
29
被引用文献数
3 3

In recent years, the focus of interest on the role of the renin-angiotensin system (RAS) in the pathophysiology of hypertension and organ injury has changed to a major emphasis on the role of the local RAS in specific tissues. In the kidney, all of the RAS components are present and intrarenal angiotensin II (Ang II) is formed by independent multiple mechanisms. Ang II is compartmentalized in the renal interstitial fluid and the proximal tubular compartments with much higher concentrations than those existing in the circulation. It has also been revealed that inappropriate activation of the intrarenal RAS is an important contributor to the pathogenesis of chronic kidney disease (CKD). Indeed, most national guideline groups now recommend the use of RAS inhibitors in preference to other antihypertensive agents for hypertensive patients with CKD. In this review, we will briefly summarize our current understanding of independent regulation of the intrarenal RAS. We will also discuss the impact of RAS inhibitors in preventing the progressive increases in the intrarenal RAS during the development of CKD.
著者
中田 翔 石田 茜 佐藤 駿 田中 優貴 鈴木 聡 Pradeep Abeygunawardhana 西山 成 和田 健司 石丸 伊知郎
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会学術講演会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.65-66, 2014

我々は,無限遠補正結像光学系の光学的フーリエ変換面に,直方体と傾斜プリズムによる透過型位相シフターを挿入した,波面分割型空間的位相シフト干渉法を提案している.これは,スマートフォンなどの結像光学系に,薄い傾斜ガラス板を挿入するだけで,ワンショット(1画像)で1ライン上のフーリエ分光イメージングが可能になる.近赤外領域の分光断層イメージングにより,皮膚などの生体膜表面や内部の成分計測を目指している.
著者
平野 俊英 西山 成信 秋重 幸邦
出版者
島根大学
雑誌
島根大学教育学部紀要. 教育科学 (ISSN:0287251X)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.21-29, 2001-12

平成10年に教育職員免許法が改正され,教員養成の方針転換が行われた。この背景には,平成9年の教育職員養成審議会第1次答申に示されたとおり,教員に対する社会的要請と教職課程の教育内容との乖離,免許制度の画一性・硬直性,不十分な教育内容・方法の3点が指摘される。変化の時代を生きる社会人に必要な資質能力や得意分野を持った個性豊かな教員を育成すること,大学教育の過密化回避と自主的カリキュラム編成などを背景として選択履修方式を導入すること,中学校における教科指導・生徒指導等に関わる教職科目の比重を高めることが,その具体的な改善策として提言された。 表1は改正された免許法に示された中学校教諭1種免許状取得に関わる単位数改正状況である。教科専門科目の必要単位数が半減した一方で,教職専門科目の必要単位数の増加と,教科・教職専門科目の選択履修方式の導入が行われたことがわかる。この改正を受けて,国立の教員養成系大学・学部のカリキュラム構造は大幅な変更が加えられた。全国的に見ると,各科目区分における必要単位数の変化は,教科に関する科目が平均15.6単位の減少(最大で34単位減少),教職に関する科目が平均11.4単位の増加(最大で31単位増加),教科又は教職に関する科目が新規に平均4.4単位設定(最大で20単位設定)となっている(1)。 本学教育学部では平成11年度以降の入学生から新カリキュラムによる教員養成を行っている。中学校教諭1種免許状取得をめざす理科教育専攻学生に対して,表2に示す単位数を卒業要件として必修又は選択必修として設けている。教科専門科目は実験を半減させることで,24単位から20単位へ必修単位が削減された。一方で,理科教育法科目は以前の4単位(中等理科教育法概説,中等理科教育法実験Ⅰ・Ⅱ)に加えて新たに6単位(中等理科教育臨床や中等理科教育法特講Ⅰ・Ⅱ等)を課すことで,10単位へ拡大された。その他に選択必修に6単位が設定されており,トータルでは30単位から36単位へと理科教育関連科目の単位数は拡大している。しかしながら,これら卒業要件上で必修・選択必修とされた単位数とは別に,免許法を根拠にして教科専門科目を40単位以上修得することを指導していた旧カリキュラムと比べると,新カリキュラムでは教科専門科目の大幅な削減,理科教育法科目の若干の充実という構図が明確に浮かび上がっている。 上述の教育職員免許法の改正内容や教員養成カリキュラムの改訂内容が,実際に履修学生の実態や教育現場・地域社会の要請に見合った妥当なものとなっているのかを,教員養成系大学・学部は継続的に評価するとともに,内容修正が必要かどうか適宜検討する必要がある。このような見地に立ち,本学が立地する島根県内の現職教員を対象に,免許法改正や教員養成カリキュラム改訂の認知度や,自身が履修したカリキュラムとの比較評価に関する調査を実施して彼らの認識を明らかにすることは,今後,教育現場に向けて本学がカリキュラム改訂の意義や成果をアピールする上で,さらには改訂に伴う実践的指導力の育成への効果を測る上で有効な情報を提供するものと考える。 よって,本研究はこの点を鑑み,実証的アプローチを用いて得られた中学校理科教員の認識の実態に基づいて,教員養成系学部における中学校理科教員養成プログラムの現状と課題について明らかにしようとするものである。