著者
小林 哲郎 難波 光義 黒田 暁生 松久 宗英 山田 研太郎 今村 洋一 金重 勝博 浜口 朋也 川村 智行 佐藤 譲 高橋 和眞 丸山 太郎 西村 理明 勝野 朋幸 楠 宜樹 清水 一紀 柳澤 克之 粟田 卓也 雨宮 伸 日本先進糖尿病治療研究会
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.403-415, 2014-06-30 (Released:2014-07-02)
参考文献数
79
被引用文献数
1

最近,持続インスリン皮下注入療法(Continuous subcutaneous insulin infusion:以下CSII)と持続血糖モニタリング(Continuous glucose monitoring:以下CGM)が糖尿病の治療機器として普及しつつある.我々はCSIIおよびCGMに関する科学的根拠をもとに,これをコンセンサスステートメントとしてまとめた.CSIIでは適応,臨床効果,リスク管理など,さらに,運用法の実際的な要点,シックデイ,妊娠,食事・運動などに関する注意などについて述べた.CGMに関してもその適応と効果,糖尿病治療への活用法,注意点を述べた.CSIIおよびCGMは1型糖尿病,2型糖尿病の一部や妊娠中の糖尿病症例にも重要な臨床機器であり,このステートメントをもとに内科および小児科領域の患者教育に適応できる具体的なガイドラインの作成が望まれる.
著者
西村 理明
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.3, pp.586-592, 2018-03-10 (Released:2019-03-10)
参考文献数
10

2009年,血糖値を連続して測定するCGM(continuous glucose monitoring)機器が我が国において承認された.現在,測定したデータをダウンロードして結果を閲覧するCGM機器については,2機種が承認されている.一方,直近の測定値が画面に表示されるリアルタイムCGM機器に関しても,2017年9月に保険点数が確定した.持続皮下インスリン注入療法(continuous subcutaneous insulin infusion:CSII,通称:インスリンポンプ)機器に,リアルタイムCGM機能を追加したsensor augmented pump(SAP)については,2014年から国内での使用が可能となった.さらに,人工知能を活用し,両者を連動させる機器の開発も進行しており,アメリカでは実用化されている.これらの機器の導入により,糖尿病患者における療養指導及び血糖コントロールは,新時代に突入することになるであろう.我が国の糖尿病患者におけるさまざまな負担を少しでも軽減してくれるように,本稿で触れた機器がそのポテンシャルを十分に発揮できる環境が整えられることを強く望む.
著者
神谷 英紀 姫野 龍仁 渡会 敦子 馬場 正之 西村 理明 田嶼 尚子 中村 二郎
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.645-654, 2023-08-20 (Released:2023-08-30)
参考文献数
29

JDCP studyベースライン時の2型糖尿病患者5,451人の糖尿病性対称性多発神経障害(DSPN)の有病率と特徴を調査した.DSPNは糖尿病性神経障害を考える会の簡易診断基準を用いて診断し,有病率は35.8 %であった.DSPNの有意なリスク因子は,年齢(OR 1.57;95 %CI 1.42-1.73),糖尿病罹病期間(1.32;1.21-1.43),BMI(1.19;1.09-1.30),収縮期血圧(1.06;1.01-1.10),HbA1c(1.15;1.09-1.22),ビグアナイド薬の使用(1.22;1.06-1.39),インスリン療法(1.59,1.36-1.84),TC(0.98;0.96-1.00),運動療法(0.85;0.73-0.98)であった.本調査により日本人2型糖尿病患者におけるDSPNの有病率と特徴およびリスク因子が明らかとなった.
著者
難波 光義 岩倉 敏夫 西村 理明 赤澤 宏平 松久 宗英 渥美 義仁 佐藤 譲 山内 敏正 日本糖尿病学会―糖尿病治療に関連した重症低血糖の調査委員会―
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.826-842, 2017-12-30 (Released:2017-12-30)
参考文献数
34
被引用文献数
6

糖尿病に対する薬物治療の進歩の一方で,患者の高齢化などを背景とした低血糖リスクの増大が憂慮されている.このため,わが国の糖尿病実臨床における治療に関連した重症低血糖の調査を行った.日本糖尿病学会学術調査研究等倫理審査委員会の承認のもと,2015年7月に同学会認定教育施設631施設の研修責任者に対して調査への参加を依頼した.参加意思を表明した施設には,倫理審査の必要書類を送付し,各施設の倫理審査委員会での承認後,Web登録システム(症例データは匿名・非連結)を利用してデータ登録を依頼した.本調査研究は,同学会学術調査研究委員会の予算で行った.施設実態調査(施設データ)および,個々の症例から同意取得後に症例調査(症例データ)を実施した.重症低血糖の定義は,『自己のみでは対処できない低血糖症状があり,発症・発見・受診時の静脈血漿血糖値が60 mg/dL未満(毛細管全血50 mg/dL未満)が明らかにされていることが望ましい』とし,調査期間は2014年4月1日から2015年3月31日としたが,施設データは193施設から,症例データはそのうち113施設から総数798症例の登録があった.回答を得た193施設中,149施設(77.2 %)に救急部が併設されており,1施設あたりの同部への年間総救急搬送件数(中央値)は4962件,このうち重症低血糖は17.0件(0.34 %)をしめた.回答施設における重症低血糖による年間受診総数は2237人であり,1施設あたり6.5人であった.重症低血糖による年間入院総数は1171人で,1施設あたり4.0人であり,重症低血糖による年間受診数の52.3 %を占めていた.798例の症例データをまとめると,病型は1型240人,2型480人,その他78人,年齢は1型54.0(41.0-67.0)歳,2型77.0(68.0-83.0)歳であり,2型が有意に高齢で(P < 0.001),BMIは1型では21.3(18.9-24.0)kg/m2,2型では22.0(19.5-24.8)kg/m2で,2型の方が高値であった(P = 0.003).推算糸球体濾過量(eGFR)は1型73.3(53.5-91.1)mL/min/1.73 m2,2型50.6(31.8-71.1)mL/min/1.73 m2となり,2型の方が低値であった(P < 0.001).重症低血糖発生時点のHbA1cは全体で7.0(6.3-8.1)%,1型7.5(6.9-8.6)%,2型6.8(6.1-7.6)%であり2型で低値であった(P < 0.001).重症低血糖の前駆症状の有無に関しては全体で有35.5 %,無35.6 %,不明28.9 %,前駆症状の発現率は1型で41.0 %,2型で56.9 %となり,1型の方が前駆症状の発現率は低かった(P < 0.001).2型の治療薬はインスリン使用群(SU薬併用29人含む)292人(60.8 %),SU薬群(インスリン未使用)159人(33.1 %),インスリン・SU薬未使用群29人(6.0 %)であった.調査対象798例のうち296例(37.2 %)は,過去にも重症低血糖で救急受診した既往を有していた.以上のようにわが国の糖尿病治療に関連する重症低血糖の実態が初めて明らかになった.今後は重症低血糖の高リスク者や既往者に対し,低血糖の教育と治療の適正化による発症予防対策が急務であることが明確となった.
著者
根本 昌実 杉沢 勇人 西村 理明 田嶼 尚子 宇都宮 一典
出版者
THE JAPAN DIABETES SOCIETY
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.98-102, 2011-02-28
被引用文献数
1

日本人成人1型糖尿病患者におけるハネムーン期発現に関与する臨床的因子を明らかにする目的で検討を行った.新規発症後のインスリン量が0.5単位/kg体重/日未満をハネムーン期と定義し,30症例(18~76歳,男:女=13:17)を,ハネムーン期を示す1型糖尿病(H群)と示さない1型糖尿病(NH群)に分類し,身体的及び検査所見を検討した.H群は19症例(63.3%)を占め,NH群と比較して尿中CPR高値(p=0.0022),LDL-コレステロール高値(p=0.01),自己免疫性甲状腺疾患の合併が多い(p=0.0002),退院時のインスリン必要量が少ない(p=0.004)特徴を認めた.発現までの期間は1.9±2.0ヶ月,持続期間は16.0±4.9ヶ月であった.ハネムーン期発現には残存膵インスリン分泌能,脂質代謝,自己免疫疾患合併の関与が示唆された.<br>
著者
西村 理明
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.4, pp.922-930, 2013 (Released:2014-04-10)
参考文献数
18

現在,糖尿病患者における血糖コントロール指標として,主にHbA1cが用いられている.しかし,HbA1cを指標とした介入試験において,心血管疾患の発症予防に成功した研究は皆無である.HbA1cだけでは把握できない血糖変動の是正を含めた血糖コントロールを行う必要があるのではなかろうか.近年,血糖変動の把握を可能とする機器が登場し,血糖変動と心血管関連エンドポイントとの関連を示す報告がまだ少数ではあるが登場してきた.
著者
西村 理明
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.4, pp.802-808, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
14

現在,糖尿病患者における日々の血糖変動を見る手段として,血糖自己測定(SMBG)が最も普及している.しかし,このSMBGだけでは血糖変動を詳細に捉えることが困難な症例も存在する.この問題を解決すべく,持続血糖モニター(continuous glucose monitoring:以下CGM)が欧米で開発され,すでに臨床応用されている.最新型のCGM機器は,リアルタイムで血糖値並びにそのトレンドを示すことができるので,糖尿病の管理に新たな時代をもたらすことは間違いないと確信している.