- 著者
-
諫早 直人
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2008
今年度も韓国、日本の諸機関において実地調査を遂行した。とりわけ韓国に関しては、これまでにおこなってきた清州新鳳洞古墳群出土馬具や高霊池山洞古墳群出土馬具に対する調査成果について、前者は共同、後者は単独で公表することができた。また、新たに嶺南大学校博物館が所蔵する慶山林堂古墳群出土遺物、そして昌原大学校博物館が所蔵する蔚山中山里遺跡出土遺物について、それぞれ韓国人研究者との共同調査をおこなった。その概要についてはすでに一部発表をおこなっており、今後も引き続き調査を継続する予定である。また、日本の宮崎県六野原古墳群出土馬具についても所蔵先の研究者と共同で報告をおこなった。以上のような実地調査やその共同報告作業の成果にもとついて、雑誌・学会発表をおこなった。とりわけ今年度は日本列島古墳時代の馬具にづいて検討をおこなった。具体的には初期轡について検討をおこない、それらの製作技術と系譜について明らかにした。さらには轡だけでなく初期馬具全体に対する検討結果について口頭発表をおこなった。また東アジアにおける鉄製輪鐙の出現について検討をおこない、現状では日本列島に世界最古の鉄製輪鐙が存在することを明らかにした。このような今年度の成果をこれまでに進めてきた中国東北部や朝鮮半島の研究成果と総合し、博士学位論文『古代東北アジアにおける騎馬文化の考古学的研究』を京都大学大学院文学研究科に提出した。これによって、本研究が課題として掲げた騎馬文化と王権の関係、そして古代国家形成における馬の果たした役割についてモデル化を試み、騎馬文化東漸の歴史的メカニズムを解き明かす、という所期の目標を達成することができた。