著者
谷口 恭章 出口 芳樹 斉田 勝 野田 寛治
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.104, no.6, pp.433-446, 1994 (Released:2007-02-06)
参考文献数
51
被引用文献数
7 8

皮膚刺激薬(counterirritants)の外用鎮痛作用を各種疼痛モデルを使用して検討した.マウスでのホルマリン疼痛モデルにおいて,ホルマリン注射後5分以内に認められる一過性の疼痛反応(early phase:E相)に対して,l-メントールおよびペパーミント油はその外用適用により明らかな鎮痛作用を示した.サリチル酸メチルやdl-カンファーにおいても軽度ながら鎮痛作用が認められた.これとは対照的にインドメタシンの経口投与はホルマリン注射後20分前後をピークとする持続性のある疼痛反応(late phase:L相)に対してのみ鎮痛作用を示した.麻薬性鎮痛薬であるモルヒネは両相に対して明らかな鎮痛作用を示した.E相でのl-メントールの鎮痛作用はナロキソンおよびデキサメタゾン処置により顕著に拮抗され,ベスタチンにより増強された.また,l-メントールはマウスの熱板法やラットの後肢加圧法においても鎮痛作用を示した.一方,l-メントールはラットのカラゲニン足浮腫に対しては軽度の抑制作用を示したが,in vitroでのプロスタグランジンE2生合成阻害作用は示さなかった.また,l-メントールはモルモットにおいて軽度の表面および浸潤麻酔作用を示した.これらの知見により,皮膚刺激薬であるl-メントールの外用鎮痛作用は直接的な抗炎症作用によるものではなく,その作用機序として内因性オピオイド系の活性化とともに局所麻酔作用を含む局所効果が一部関与する可能性が示唆された.
著者
菊地 勝弘 遊馬 芳雄 谷口 恭 菅野 正人 田中 正之 早坂 忠裕 武田 喬男 藤吉 康志
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.715-731, 1993-12-25 (Released:2009-09-15)
参考文献数
7
被引用文献数
1 2

冬季の海上の層積雲の雲頂の構造と反射率の関係を調べるために、航空機によるステレオ写真観測法を使った観測が1989年1月から1991年1月にわたって、日本海の若狭湾沖および奄美諸島周辺の太平洋上で行われた。最初に、雲頂高度と反射率との間の関係が調べられ、両者の間にはかなりよい相関が認められた。特に奄美諸島周辺での観測では高い相関が認められた。次にCloud area ratio(雲の領域率)と雲頂の反射率との関係が調べられた。その結果、低い反射率の雲域では雲頂高度が比較的低くて雲層が薄く、また、その高度差は大きく、雲頂の形状は鋸の歯のように鋭かった。一方、高い反射率の雲域では雲頂高度が高くて雲層が厚く、そして一様で形状は平で台形のような形をしていた。しかし、奄美諸島北部の例では、雲頂高度が他の2例に比して低く、しかも最高雲頂高度と最低雲頂高度との高度差が400m以上もある層積雲であったにもかかわらず、その反射率は比較的高かった。この反射率の違いはliquid water pathの差によるものと推定される。
著者
遠藤 辰雄 谷口 恭
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1985

電気ゾンデとして降水粒子の電荷と雲内の大気電位傾度の二要素を交互に時分割で測定して送信するものを製作した。これをレーダにて予め到来時を予測した降雪雲に合わせて飛揚し、それを自動追尾するラジオゾンデ受信機の空中線制御の方位角に合わせてレーダの縦断面の走査をしながら追跡した。得られた観測結果の7例中6例について、降雪雲の下部半分や雲底近くは正の電位傾度であるのに対して、上半分や雲頂近くでは、逆に負の電位傾度であることが共通していた。このことは降雪雲の電気的性質の一つとして特筆すべきことである。例外のケースはレーダエコーから判断して、一連の攪乱の末期のものであったと判断された。電気ゾンデとレーダの同時観測については、最も条件の良い例から順に詳しく解析してみた。そのレーダのRHI図の縦断面図によるとエコーが尾流雲の形で風のシャーによって進行方向に対して約2/3の勾配で前傾しているのがわかった。これは海上から上陸すると、さらに前傾が進んでいくが、電気ゾンデは幸いに、その尾流の中をつらぬく様に飛航した。その中で雲の下部は正電場で、そこの降水粒子の電荷の負が卓越していた。また雲の上半分の電場は負で、そこの電荷は正で逆相関である。電場の符号の変り目には空間電荷密度が算出されるので、雲層全体の中層付近は正の空間電荷が存在していることになる。また雲頂近くには負の空間電荷が同様に計算される。冬の雷は通常の落雷と異って正の電荷が落ちることで注目されている。この研究によって得られた電気的構造によると、その正電荷は雲の中層の空間電荷か、またわ雲の上半分に存在する降水粒子の正電荷のいずれかであるが、それらに対する反対符号の電荷と単に重力分離しているだけでなく風のシヤーによって水平にひきはなされていて、これが大地に対し露出するために正極性落雷になると考えられる。
著者
馬場 安紀子 谷口 恭子 折原 俊夫 古谷 達孝
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.96, no.12, pp.1215, 1986 (Released:2014-08-08)

臨床的に鎖骨等の骨直上に好発する特異な色素沈着症いわゆるfriction melanosis(FM)の皮疹を呈し,しかも病理組織学的にアミロイドの沈着が認められた6症例を報告した.症例は男性1例,女性5例,年齢29~52歳,全例ナイロンタオル使用歴を有した.皮膚科外来を受診した種々の皮膚疾患患者を対象に,ナイロンタオルに関するアンケートを実施したが,男性274人中123人(44.9%),女性364人中234人(64.3%),総計638人中357人(56.0%)にナイロンタオル使用歴があり,年齢別では10,20,40各代の順に使用率が高かった.上記のアンケート調査638人中,骨直上に色素沈着が認められたものは,ナイロンタオル非使用者281人中1例(0.4%),使用者357人中18例(5.0%)の計19例(男性8例,女性11例)であった.当科において皮膚生検を施行したFM例は合計9例で,うち6例にアミロイドの沈着が認められた.自験例はFMに併発した続発性アミロイドーシスと考えられるが,本症と限局性皮膚アミロイドーシスの1型であるmacular amyloidosisとの関係についても論じた.
著者
菊地 勝弘 太田 昌秀 遠藤 辰雄 上田 博 谷口 恭
出版者
北海道大学
雑誌
海外学術研究
巻号頁・発行日
1987

今日まで研究代表者によって報告された低温型雪結晶は, ー25℃以下の比較的低温下で成長し, その頻度は, 時には結晶数全体の10%を占めることが明らかにされたが, これらの結晶形は, 複雑多岐で, まだ, 十分分類もされておらず, 「御幣型」や「かもめ型」は便宜上名付けられたもので, 正式の名称はない.一方, 極域のエアロゾルはその季節変化, 化学成分に注意が払われてきてはいるが, 降水粒子の核としての性質, つまり低温型雪結晶の結晶形, 成長との関連については全く注目されていない. この研究では, 低温型雪結晶を極域エアロゾルの性質を加味して総合的に研究し, 低温型雪結晶の成長機構を行らかにしようとするものである.昭和62年12月17日成田を出発した一行は, オスロで機材の通関を行い, ノールウェイ極地研究所で研究計画の打合せを行った後, 12月22日アルタおよびカウトケイノの研究観測予定地に機材と同時に到着した. 両観測地点共, 翌12月23日より観測を開発した. 第1図に観測地の地図を示した.今冬のヨーロッパは, ノールウェイを含め暖冬で, 観測期間中気温がプラスになったり, みぞれが降ることもあり, 必ずしも低温型雪結晶の観測に恵まれた条件とは言えなかったが, 以下に示すような膨大な試料を得ることができ, 必ずしも低温型雪結晶の観測に恵まれた条件とは言えなかったが, 以下に示すような膨大な試料を得ることができ, 成功であった. 得られたデータは次のようなものである. 偏光顕微鏡写真35ミリカラーフィルム65本, 35ミリモノクロームフィルム:2本, レプリカスライドグラス:340枚, 電顕用レプリカフィルム:205枚, ミリポアフィルターによるエアロゾル捕集:110枚, テフロンフィルターによるエアロゾル捕集:40枚, 降雪試料瓶:60本.この内, 低温型雪結晶を110個観測することができた. 特に今回は, 低温型雪結晶の「御幣型」に特徴的な成長がみられた. 即ち, 結晶成長の初期の段階であると考えられている凍結雲粒が1対の双晶構造をもって凍結し, それから両側に御幣成長したと思われる結晶が数多く発見された. 第2図はアルタで, 第3図はカウトケイノで今回新らたに観測された御幣型の雪結晶である. 更に地上気温が高かったためであろうか, それぞれのスクロール(渦巻状)から板状成長しているものも認められた.極域エアロゾルに関するアルタの観測では, 南側の内陸からの風系で直径0.3μm以上の粒子濃度は10個/cm^3であったが, 強風の場合は1個/cm^3まで減少し, カナダ北極圏よりやや少な目であった(第4図). 一方, 北側の海からの風系では, 1μm以上の粒子が増加した. これらの風系に対するエアロゾルと低温型雪結晶の中心核との関係については, 昭和63年度の調査総括により解析され, 明らかにされるであろう.