著者
谷口 敦夫
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.136, no.6, pp.330-334, 2010 (Released:2010-12-06)
参考文献数
20
被引用文献数
2 1

かつて日本では痛風はまれな疾患であった.しかし,現在では日本での痛風の有病率は欧米に匹敵する.高尿酸血症も成人男性の20~30%に達する.このように痛風・高尿酸血症は日常診療で遭遇することの多い疾患であり,充分なコンセンサスの得られた治療ガイドラインが必要である.そこで,2002年に日本痛風・核酸代謝学会は高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインを作成し,標準的な治療法を示した.第2版は2010年1月に発刊され,第1版で示された高尿酸血症・痛風治療の基本を踏襲しつつ,第1版発刊以後の新たなエビデンスが加えられている.高尿酸血症には尿酸塩沈着による合併症と,尿酸塩の沈着が直接関連しない合併症がある.痛風は前者であり,このほかに痛風結節,痛風腎,尿路結石がある.一方,後者には生活習慣病あるいはメタボリックシンドロームがある.痛風では痛風発作と称される激しい関節炎や組織障害をきたす痛風結節が注目されがちである.しかし,痛風はあくまで高尿酸血症の合併症の1つであり,全身的な代謝異常としての認識が必要である.尿酸塩の組織沈着という観点から,高尿酸血症は血清尿酸値7.0 mg/dlを超える場合と定義されているが,第2版では最近の疫学調査の結果も重視し,血清尿酸値7.0 mg/dl以下であっても血清尿酸値が上昇する場合には生活習慣病のリスクが高まることに留意すべきであることが加えられた.一方,高尿酸血症・痛風の治療においては,基礎療法として生活指導が重要である.薬物治療では痛風関節炎(痛風発作)の治療と高尿酸血症の治療を区別する必要がある.高尿酸血症の治療については,痛風あるいは痛風結節の有無・高尿酸血症に伴う合併病態の有無・高尿酸血症の程度を考慮して治療方針を立てていく.このガイドラインが,高尿酸血症・痛風の臨床において有効に活用されることを期待する.
著者
山中 寿 田中 榮一 中島 亜矢子 古谷 武文 猪狩 勝則 谷口 敦夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.12, pp.2638-2644, 2017-12-10 (Released:2018-12-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1

日常診療に基づくreal world data(RWD)に基づくreal world evidence(RWE)は,良質な日常診療のために近年,その必要性がますます高まっている.Real world dataの1つである関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)患者の大規模コホートIORRA(Institute of Rheumatology,Rheumatoid Arthritis)は,2000年以来17年間に亘る患者調査を行い,診療実態の変遷,治療薬の変化,合併症の状況,薬剤経済学的検討,ゲノム情報の影響等多岐にわたる研究を行い,既に123編の英文論文を発表してきた.その結果,臨床医が日常診療で感じていることを経時的に定量的に示すことができ,多くが臨床医の実感を裏付けるものであった.多くの内科医が日常遭遇する慢性疾患の長期的アウトカムを示すことのできる観察研究データベースは,ますます重要性が増すものと考えられ,多くの疾患分野において同様の研究が行われることを期待する.
著者
谷口 敦夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.10, pp.2500-2505, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
12
被引用文献数
2

シクロホスファミドとアザチオプリンは膠原病領域の重篤な病態を中心に用いられることが多い.シクロホスファミドはDNAなどを架橋することにより作用を発揮する.経口投与,あるいはパルス静注療法が用いられる.総投与量が多くなると悪性腫瘍の発生が増加する.アザチオプリンはプリンヌクレオチド合成経路を抑制し,活性代謝物がDNAなどに組み込まれることで作用を発揮する.副作用では消化器障害が最も多く,アロプリノールとの薬物相互作用に注意する必要がある.
著者
立石 睦人 谷口 敦夫 森口 正人 原 まさ子 柏崎 禎夫
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 = Japanese journal of clinical immunology (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.152-158, 1997-06-30
参考文献数
19
被引用文献数
4 1

ループス腎炎以外の膠原病難治性病態に対するシクロホスファミド大量静注療法(CYパルス)の有用性を検討した.対象はステロイド薬をはじめとした従来の治療法に抵抗性を示した各種膠原病35例であった.著効ないし有効と判定し得たのは35例中20例(57.1%)であり,その病態は全身性エリテマトーデス(SLE)の中枢神経症状2例,血管炎2例,慢性関節リウマチ(RA)の間質性肺炎2例,血管炎2例,関節炎2例,血小板減少症1例,多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)の筋炎2例,間質性肺炎2例,強皮症(PSS)の間質性肺炎1例,抗リン脂質抗体症候群(APS)の血小板減少症2例,若年性関節リウマチ(JRA)の皮膚血管炎1例,ベーチェット病(BD)の中枢神経症状1例であった.一方,副作用は35例中9例(25.8%)に認められた. CYパルスは膠原病の難治性病態,特に中枢神経症状,血管炎,間質性肺炎,自己免疫性血小板減少症などに対して試みる価値のある治療法と考えられた.
著者
谷口 敦夫
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.136, no.6, pp.330-334, 2010-12-01
参考文献数
20
被引用文献数
1

かつて日本では痛風はまれな疾患であった.しかし,現在では日本での痛風の有病率は欧米に匹敵する.高尿酸血症も成人男性の20~30%に達する.このように痛風・高尿酸血症は日常診療で遭遇することの多い疾患であり,充分なコンセンサスの得られた治療ガイドラインが必要である.そこで,2002年に日本痛風・核酸代謝学会は高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインを作成し,標準的な治療法を示した.第2版は2010年1月に発刊され,第1版で示された高尿酸血症・痛風治療の基本を踏襲しつつ,第1版発刊以後の新たなエビデンスが加えられている.高尿酸血症には尿酸塩沈着による合併症と,尿酸塩の沈着が直接関連しない合併症がある.痛風は前者であり,このほかに痛風結節,痛風腎,尿路結石がある.一方,後者には生活習慣病あるいはメタボリックシンドロームがある.痛風では痛風発作と称される激しい関節炎や組織障害をきたす痛風結節が注目されがちである.しかし,痛風はあくまで高尿酸血症の合併症の1つであり,全身的な代謝異常としての認識が必要である.尿酸塩の組織沈着という観点から,高尿酸血症は血清尿酸値7.0 mg/dlを超える場合と定義されているが,第2版では最近の疫学調査の結果も重視し,血清尿酸値7.0 mg/dl以下であっても血清尿酸値が上昇する場合には生活習慣病のリスクが高まることに留意すべきであることが加えられた.一方,高尿酸血症・痛風の治療においては,基礎療法として生活指導が重要である.薬物治療では痛風関節炎(痛風発作)の治療と高尿酸血症の治療を区別する必要がある.高尿酸血症の治療については,痛風あるいは痛風結節の有無・高尿酸血症に伴う合併病態の有無・高尿酸血症の程度を考慮して治療方針を立てていく.このガイドラインが,高尿酸血症・痛風の臨床において有効に活用されることを期待する.
著者
佐藤 和人 宮坂 信之 谷口 敦夫 西岡 久寿樹
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.58, no.7, pp.659-659, 1988-07-25

第6回学内病理談話会 昭和63年4月16日 東京女子医科大学中央校舎1階会議室