著者
伊東 保志 赤滝 久美 三田 勝己 渡壁 誠 伊藤 晋彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.J86-D2, no.1, pp.130-139, 2003-01-01

筋音図(Mechanomyogram; MMG)とは収縮筋上の体表面上に現れる微細な振動を記録した信号であり,筋線維の収縮に伴って発生する側方向への圧力波に起因し,筋の機械的な活動を反映する.本研究では,筋力低下に至るまでの持続性収縮時の非定常なMMGを時間-周波数解析し,筋疲労に伴う運動単位の活動様式の変化をMMGから推察することを目的とした.実験では,上腕二頭筋を最大随意筋力の20%と80%(20%と80% MVC)で等尺性に持続収縮させ,このとき記録されたMMGを短時間フーリエ変換法を用いて解析し,RMS 振幅と平均周波数を求めた.20% MVCでのMMGのRMS振幅は収縮開始時に若干減少した後に漸増した.平均周波数は当初増大したが,その後はほぼ一定値を保った.一方80% MVC の場合,RMS 振幅は連続的に減少し,平均周波数はいったん増大した後に減少した.このようなMMGのRMS振幅と平均周波数の経時的変化は筋疲労の発生に伴うMU 活動様式の変化を反映しており、MMGによる筋疲労のモニタリングの有用性が示唆された.
著者
三田 勝己 石田 直章 赤滝 久美 伊藤 晋彦 小野 芳裕 沖 高司
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.8, pp.563-566, 1993-08-18

二分脊椎患者の立位姿勢における身体動揺を床反力作用点の軌跡として記録し,これを手掛りに彼らの姿勢調節能力に検討を加えた.対象はL_3〜_5麻痺レベルをもち,屋外歩行が可能な二分脊椎患者(9〜18歳)とした.患児の前後方向の身体動揺は装具を装着した開眼の状態がおおむね健常者の閉眼時に相当し,閉眼するとその2倍に増大した.装具の有無は身体動揺と密接な関連を示したが,その影響は開眼,閉眼時の違いほど大きくはなかった.左右方向の身体動揺量は前後方向より幾分か少なかったが,類似した特徴を示した.しかし,装具の有無との関連は前後方向より低かった1
著者
須藤 元喜 千葉 亜弥 上野 加奈子 矢田 幸博 赤滝 久美 三田 勝己
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.175-182, 2010
被引用文献数
3 1

下肢の細胞外液貯留における不快感は女性の代表的な愁訴の1つであり,むくみと呼ばれている.むくみは筋ポンプ運動による改善が勧められていることから,筋疲労との関連が考えられるが,その詳細については明らかになっていない.そこで,下肢におけるむくみと疲労の関連性を明らかにするために,化粧品販売職の女性182名にアンケート調査を行い,153名から有効回答を得た.その結果,下肢の疲れを94%,むくみを90%の回答者が感じており,疲れとむくみの意識は重なる部分が多く,下肢組織外液貯留の心理的評価には疲労の項目が必要であると考えられた.また,疲れ,むくみ感覚が最も多かった部位はふくらはぎであり,疲れで78%,むくみで85%の回答者が感じていた.また,むくみの不快感の原因を67%が大きさ,疲労の不快感の原因は66%が痛みという言葉でそれぞれ特徴的に表現していた.これらの結果をもとに心理的な疲れとむくみを評価するVAS主観評価調査表20項目を作成した.作成したVAS(visual analogue scale)主観評価調査表を用いて立ち仕事およびデスクワークの勤労女性19名を評価した.測定は就労前の午前9時から10時までの朝方と,就労後の午後4時から5時までの夕方に実施し,就労前後および立位と座位の勤労姿勢を比較した.全被験者19名の就労前後のVAS主観評価の結果は,20項目中16項目で不快感が有意に増加した.就労姿勢別の解析では,デスクワーク群9名に比して立ち仕事群10名の就労前後の不快感上昇が,足首周囲長,ふくらはぎ周囲長,下肢の重さ,ふくらはぎの痛み,足首の痛み,土踏まずの痛みの7項目で有意に増加していた.アンケート調査を手がかりに作成したVAS主観評価調査表は組織外液貯留の下肢不快感を実際の労働条件において評価することができた.
著者
三田 勝己 宮治 眞 赤滝 久美
出版者
愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002

「重症心身障害児」(以下,重症児と略す)とは重度の知的障害と重度の肢体不自由が重複した人たちである。全国の重症児数は約36,000名と推計されており,そのうち2/3の約24,000名が居宅で家族によってケアされている。本研究は,重症児施設と居宅を通信回線で接続し,在宅ケアを支援するITシステムを開発し,その有用性を実証することを目指した。本年度は,在宅重症児の実態調査結果を踏まえて在宅支援システムの機能を決定し,これを実現できるシステムのハードおよびソフト開発を行い,さらに,主として技術的問題を明らかにするための試験運用を行った。本在宅支援システムは以下の7つの機能から構成された:音声情報機能,画像情報機能,バイタル情報機能,モニタリング機能,遠隔操作機能,自動収集機能,データベース機能。試験運用フィールドにはIT利用の有効性が高い地域として,北海道旭川市にある北海道療育園(重症児施設)が在宅支援を行っている地域を選んだ。運用のプロトコルとしては,居宅システムのみでのバイタル測定を1日1回実施した。測定項目は血中酸素飽和度,脈拍数,呼吸数,体温,血圧,心電図の6項目であった。これらは6時間毎にセンターシステムから自動収集された。また,週1回,センター(北海道療育園)からの接続により医師の電話診療を行った。その内容は健康状態や疾患の診察,日々測定されたバイタルデータに関する診断,生活に関する指導・相談を行った。以下,明らかとなった技術的問題の概要を述べる。(1)もっとも大きな問題はバイタルデータの自動収集機能がほとんど稼働せず,また,電話診療が時々できないことがあった。(2)居宅システムの電源ケーブル,接続ケーブルが多く,居宅内でのトラブルの原因になりやすいとの意見がでた。(3)ISDN回線が有線接続のため,特に居宅システムを居室間ですら移動できなかった。無線LANや携帯電話を利用したモバイル化の必要性が示唆された。(4)居宅からセンター(重症児施設)へ接続するためのセンター側の受け入れ体制がなく,特に急変時を考えると是非とも整備を要請される課題であった。