著者
辻 英明 菅野 格朗
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.113-116, 2003
参考文献数
3
被引用文献数
7

前報において,閉め切った室内に微小な昆虫が入る主要因は換気扇稼働(室内陰圧化)に伴う隙聞からの吸引であること,また吸引の影響は照明による誘引より大きい事例が示されている.そこで今回は,市販の給気用換気扇に防虫用フィルターを追加装着して室内に給気したところ,問題の微小昆虫の侵入を防止できた.この防虫用フィルターの追加装着による換気扇モータ一部の温度上昇は1℃にとどまり,負荷の増加も少ないことがわかった.
著者
辻 英明 笹原 剛志 菅野 博英 大場 淳司 神名川 真三郎
出版者
北日本病害虫研究会
雑誌
北日本病害虫研究会報 (ISSN:0368623X)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.50, pp.16-20, 1999-11-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
6
被引用文献数
1

1995~1998年にかけてササニシキBL栽培圃場に分布したイネいもち病菌レースを調べ, その分布変動要因を解析した。本品種栽培圃場では, 1996年までレース037が広く分布していたが, 1998年には本レースの分離地点数が減少した。これはササニシキBLでレース037に罹病性の構成系統の混合割合を1997年から減らしたためと考えられた。しかし, 1997年以降混合割合が増加した構成系統に対する親和性レースが新たに分離され, 1998年にはササニシキBLを構成する4系統全てが県内で確認されたいずれかのレースに対し罹病性となった。これは同質遺伝子系統の混合栽培においても短期間で親和性レースが出現し, いもち病に対する発病抑制効果が低下する可能性があることが示された。
著者
辻 英明
出版者
日本家屋害虫学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.87-99, 2000-01-30
参考文献数
41
被引用文献数
1
著者
辻 英明
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.5-9, 2005-06-30 (Released:2019-04-10)
参考文献数
8

緑茶の残渣,メロンの皮,バナナ(皮を含む),梨果実の芯,柿果実(断片),ハムの薄切り切片(水添加)等を個別のカップに入れ,隙間のある窓際に9〜12日間置き,12日〜17日目に発生している小型のハエ類の成虫,蛹,幼虫の定性的な観察を1999年9月中下旬に行った.その結果,バナナ,梨,柿にはキイロショウジョウバエが多数発生したが,オオキモンノミバエはわずかしか発生しないか,あるいは全く発生しなかった.しかし,メロンの皮からはオオキモンノミバエの蛹の発生数がショウジョウバエより多かった.ハムからは圧倒的多数のオオキモンノミバエが発生し,ショウジョウバエはわずかであった.緑茶の残渣には多数の小型のチョウバエ類と若干のニセケバエ(ナガサキニセケバエ)とノミバエが発生した.小型のチョウバエ類とニセケバエは他の残渣には発生していなかった.
著者
辻 英明 志澤 寿保
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.16-21, 2000-05-31
被引用文献数
6

数種殺虫剤を用い,直径5.5cmの処理ろ紙面の中心の無毒餌と,無処理面中心の無毒餌に接近摂食する個体数を比較し,処理面通過接触による死亡の起こり方も観察した.ペルメトリン水性乳剤処理(10倍希釈0.4cc)ろ紙は激しく忌避され(50分〜78分後3区平均87.7%忌避),死亡率は低かった(6日後平均5.6%).フェニトロチオン乳剤処理(10倍希釈0.4cc)ろ紙にはやや忌避性があったが(4区平均42.3%),長期間後に若干の死亡がみられた(6日後平均37.5%).ダイアジノンMC剤処理(10倍希釈0.4cc)ろ紙では忌避は少なく(2区平均-39.6%),ホウ酸粉末に次ぐ死亡率が得られた(6日後平均83.3%).プロペタンホス乳剤処理への忌避は殆どなかったが(10倍希釈で-61.3%,3倍希釈で16.4%),死亡率は低かった(10倍希釈3区6日後平均5.6%).ホウ酸粉末処理(200メッシュ篩過紛50mg)ろ紙に対する忌避は少なく(3区平均4.3%),殺虫効果は最も高く,かつ最も速やかであった(6日後3区100%).ホウ酸粉末剤+プロペタンホスのエアゾール剤(不快害虫用市販品)200mg(乾燥後の重さ)を処理したろ紙上(直径11cm)に市販ベイト(ヒドラメチルノン)を置いた場合,ベイト容器への侵入は阻害されず,無処理ろ紙上にベイトがある場合より1〜2日速くゴキブリが全滅した.
著者
辻 英明
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.67-71, 2007-10-15

既報のアリーナ内実験では,タバコシバンムシ成虫は夕方から潜伏場所から出て20時過ぎに活動のピークを示し,5月には歩行によって暗い方向に移動する傾向があり,7〜8月には明暗差別なく歩行移動し,8月には明るい方向に飛翔移動する個体も多かった.今回,より広い空間で観察する目的で,540mm×360mm×高さ250mmの室内の中央で成虫とシェルターの入った放飼カップを設置開放し,周囲に設置した餌入りの捕獲カップ14個と,水または蜂蜜水を含んだ脱脂綿の入った捕獲カップ14個への侵入状況を調査し,床や壁に残された個体の回収も行った.2006年6月4〜5日(実験A)と16〜17日(実験B)の各一昼夜の実験の結果,周囲の容器への侵入は,人為的振動の多い放飼カップ設置直後を除けば,夕方から夜間にかけて多くみられた.放飼カップを離れた個体のうち,周囲の捕獲カップに侵入した個体の割合は実験Aで11%,実験Bで29%,捕獲カップ以外で翌朝回収できた個体は実験Aで13%,実験Bで8%,その他は行方不明であった.餌場以外での活動も多いことは既報のアリーナ実験と共通の結果と言える.侵入した捕獲カップの位置にはある程度の方向性があり,散光ガラス窓(南側)に対面する明るい白壁(北側)の方向は少なかった.むしろ散光ガラス窓の下の逆光となる壁側(南側)に侵入が多かった.餌入りカップと水入りカップが同数の実験Aでは,侵入した成虫のうち8%(=1/12)が水入りカップに侵入し,餌カップと蜂蜜水入りカップが同数の実験Bでは,20%(=4/20)が蜂蜜水入りカップに侵入した.成虫は幼虫の餌に産卵するためだけでなく,自身の栄養摂取や水分摂取のためにも移動侵入すると言える.
著者
辻 英明 水野 隆夫
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.101-111, 1972
被引用文献数
7

チャバネ, ワモン, クロ, ヤマトの4種のゴキブリが本邦中部の加温されない環境で生活した場合, どのステージで冬を迎えるかを推定するため, 夏および秋を想定した27±1℃1日16時間照明(27℃-L), 20±1℃1日8時間照明(20℃-S), 15±1℃1日8時間照明(15℃-S)の実験条件下で飼育を行なった。結果は次の通りである。1) 27℃-Lでの結果 : 幼虫の令数, 幼虫期間, 卵(鞘)期間はそれぞれチャバネで6令40∿46日, 20日, ワモンで9令105∿161日, 39日, クロで8令84∿112日, 41日であった。ヤマトでは9令あり, 91∿140日で羽化する個体以外に, 終令(9令)で150日以上発育を停止する幼虫が約半数あった。ヤマトの卵鞘は約27日でふ化した。いずれの種も卵鞘の産出は正常であった。2)20℃-Sでの幼虫発育 : チャバネは200∿250日で羽化し, 各令平均して延長した。ワモンでは161日で大部分が6令に達したが, 500∿600日でも羽化できない個体が多く, 終令の遅延が極端とみられた。クロでは2令の延長が特別に著しく80日に及んだ。その延長を含め400∿480日の間に大部分が羽化した。ヤマトでは2令の延長が一層極端で140日以上に及んだ。一方越冬中採集された若令幼虫(2令)は300∿500日で成虫となった。3)20℃-Sでの産卵 : 20℃-Sで羽化したチャバネとワモンは卵鞘を産出せず, クロはわずかの異常卵鞘を産下したにとどまった。一方ヤマトは正常に産卵した。27℃-Lで産卵中の成虫を20℃-Sに移すと, チャバネは正常卵を産まなかったが, ワモンとクロは若干の正常卵を産んだ。4)20℃-Sでの卵のふ化 : チャバネでは, 27℃-Lで卵鞘を形成して24時間以内の成虫を20℃-Sで飼育しても幼虫が生じなかった。27℃-Lまたは20℃-Sで産まれた他種の卵鞘では, ワモンで約100日, クロで約120日, ヤマトで約64日でふ化がみられた。5)15℃-Sでの結果 : どの種類の幼虫も15℃-Sで100日以内には次の令以上に発育することは困難とみられた。27℃-Lでの産卵中の成虫を15℃-Sに移すと, ヤマトはさらに若干の卵鞘を産下したが, 他の種ではいずれも産卵が阻止された。またどの種の卵鞘もこの条件下に保つとふ化せず死亡した。6)以上の結果からPeriplaneta 3種の当年のふ化幼虫は年内に成虫にならず, 特に秋にふ化したクロとヤマトの幼虫は2令で冬を迎えると思われる。またこのような若令で越冬した場合Periplaneta 3種は次の年にも成虫にならない可能性がある。特にヤマトは夏期でも終令で発育を停止し, もう一度越冬する可能性が大きい。この場合, 1世代2年を要する"two-year life cycle"がむしろ正常であることが暗示される。一方, 長い成虫期間, 産卵期間, 卵鞘期間, 幼虫期間から考えて, Periplaneta 3種がすべてのステージで冬を迎えることは十分あり得ることと思われる。チャバネでは卵鞘の形成とふ化が20℃-Sでも妨げられるので, 卵や幼令幼虫で冬を迎える可能性は少ない。各ステージが冬の平均気温下で生存できるかどうかについての実験結果は別途に報告したい。