- 著者
-
酒井 宏治
- 出版者
- 国立感染症研究所
- 雑誌
- 若手研究(スタートアップ)
- 巻号頁・発行日
- 2008
高熱と急性の呼吸器症状を伴うインフルエンザ様症状を呈し入院した海外渡航者からウイルスが分離された。そのウイルスは、過去3例のみ論文報告のある極めて稀なオルソレオウイルスのネルソンベイウイルスに属する新型レオウイルスであった。本研究では、その分離株の性状解析を実施すると共に、インフルエンザやSARSとの類症鑑別を視野にいれたウイルス遺伝子検出系および血清学的診断系の開発、動物感染実験を行い、新興感染症としての新型レオウイルスのコントロール法の確立を試みた。1.分離株の塩基配列決定:分離株の4つのSセグメントの全塩基配列決定を行った。特に、同時期に分離されたKamparウイルス、HK23629/07株と非常に近縁であることがわかった。2.ウイルス遺伝子検出系の開発:Sセグメントの配列情報から、(1)保存性が高く、(2)哺乳類レオウイルス及び鳥類レオウイルスに反応せず、(3)ネルソンベイウイルス群特異的なプライマーセットを作製し、RT-PCRでの迅速かつ高感度な遺伝子検出システムを構築した。3.血清学的診断系の確立:(1)ウイルス中和試験、(2)間接蛍光抗体法、(3)不活化濃縮精製ウイルスを抗原としたELISAのシステムを確立した。4.動物感染実験:マウス感染実験では致死性の呼吸症状が認められた。カニクイザル感染実験では、急性の呼吸器症状は認められたが、顕著な高熱、致死性は認められなかった。