著者
野尻 洋平 寺島 拓幸 水原 俊博
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.59-77, 2019-07-31

本稿の目的は,アメリカ北西部に位置するオレゴン州ポートランド市における消費文化について,現地での観察調査およびインタビュー調査の知見をふまえつつ,消費社会学的な視点から考察を行なうことである。「全米一住みたい街」と形容されるポートランドは,都市計画・都市政策の成功した街,参加民主主義の成功事例として有名であり,さらには魅力的な消費文化の発信地として世界的に知られている都市である。本稿では,ポートランド消費文化を特徴づける要素として,エコ,ローカル,DIY 志向を取り上げ,それぞれについて考察を行なう。また,既存のポートランド消費文化が影響をこうむる可能性のある,いくつかの社会的な変化についても併せて指摘する。
著者
野尻 洋平
出版者
日本社会学理論学会
雑誌
現代社会学理論研究 (ISSN:18817467)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.124-136, 2009 (Released:2020-03-09)

本論の目的は、D. ライアンの監視社会論の方法的背景を探ることである。その方法として、ライアンの「監視の両義性」テーゼに着目し、その成立過程と方法的背景を検討していく。本論であきらかとなったのは、ライアンの「監視」概念および、監視の両義性を主軸とする監視社会論が、キリスト教的な社会倫理に基づいた方法および視座から導出されているということである。以下の論述は、監視の両義性テーゼが析出される場面を見届けたうえで(2章)、そのテーゼが導出されるような方法および視座が、1980年代後半におけるかれの情報社会論においてすでに現れていたことを検証し(3章)、さらに70年代半ばから80年代前半までのライアンの初期の仕事を跡付けることによって、ライアンの倫理的・思想的背景がキリスト教的社会倫理に基づくことを確認する(4章)。最後に、そのような方法的・思想的背景を携えたライアンが、現代における社会の監視化にいかなる「解決」を与えているのか、さらにはライアンの問いをいかなるかたちで定式化することができるのかについて考察し、結論を述べる(5章)。ライアンは、これまで監視を論じるうえでさまざまな論者によって引用・言及されてきた。しかしながらかれの議論の方法的背景まで検討をくわえたものは存在しないため、上述のような観点からその思考を跡付けし、理論内在的な検討をおこなう必要があるだろう。
著者
野尻 洋平
出版者
経済社会学会
雑誌
経済社会学会年報 (ISSN:09183116)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.69-80, 2017 (Released:2021-04-01)

As a characteristic social phenomenon in the late modern era, we can point out the existence of social acts to cope with risk through consumption, namely “anti-risk consumption.” Ulrich Beck and Zygmunt Baumann depict the social mechanism that evokes concerns about risks to consumers and that anxiety drives people into “anti-risk consumption.” In this paper, we explore by analyzing the quantitative research data collected in the Tokyo metropolitan area about the relationship between health anxiety, which is one example of “anxiety about physical care” exemplified by Baumann, and health consumption related to eating habits. The results of the analysis are as follows. First, if we focus on health consumption related to eating habits, we must be cautious about assuming a one-way mechanism between health anxiety and health consumption as anti-risk consumption. Secondly, it can be pointed out that in the late modern era where risk individualization is occurring, the composition of households plays a definite role in reducing health anxiety.
著者
野尻 洋平
出版者
日本社会学理論学会
雑誌
現代社会学理論研究 (ISSN:18817467)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.67-79, 2013 (Released:2020-03-09)

本稿の目的は、「子どもの見守り」技術としての監視技術の導入・受容をおもな題材として、後期近代における監視社会の特質を個人化論の観点から検討することである。監視社会と個人化はともに、1980 年代半ば以降に現代という時代のメルクマールとなった社会現象である。前者についてはD. ライアンが、後者についてはU. ベックやZ. バウマンが精力的に議論を展開してきた。当初これらの現象は個別に論じられてきたが、近年の日本では三上剛史が監視社会と個人化の関連性を指摘している(三上 2010)。だが、かれの指摘は抽象的もしくは断片的なものにとどまっている。現代における監視社会形成のメカニズムは、個人化の内的論理と密接に接合することによってより明瞭になると考えられるため、上記の課題を検討することが必要である。本稿では、2000 年代以降の日本社会において社会的な注目をあつめた「子どもの見守り」を題材に、監視社会が出現する社会的なメカニズムを、個人化論の諸概念をもちいて理論的に説明することを試みる。
著者
間々田 孝夫 水原 俊博 寺島 拓幸 廣瀬 毅士 朝倉 真粧美 呉 金海 野尻 洋平 遠藤 智世
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は東アジアを調査地域として、グローバル化する消費文化についてアメリカ型への画一化と非アメリカ的な多様化の実相を理論的、実証的に明らかにしようとするものである。2007~2008年度の期間、将来的な東アジアでの本格調査を見据えて東アジア地域の消費文化について文献の検討をとおした理論研究をおこなった。また、こうした理論研究をふまえて国内(首都圏)では大規模質問紙調査を実施して一定の成果をあげた。