著者
日野林 俊彦 赤井 誠生 金澤 忠博 大西 賢治 山田 一憲 清水 真由子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

2011 年 2 月に日本全国より 45,830 人の女子児童・生徒の初潮に関わる資料を収集した。プロビット法による日本女性の平均初潮年齢は 12 歳 2.3 ヵ月 (12.189 歳)で、現在 12 歳 2.0ヵ月前後で、第二次世界大戦後二度目の停滞傾向が持続していると考えられる。初潮年齢は、睡眠や朝食習慣のような健康習慣と連動していると見られる。平均初潮年齢の地域差は、初潮年齢が各個人の発達指標であるとともに、進化的指標でもあり、さらには国内における社会・経済的格差や健康格差を反映している可能性がある。
著者
日野林 俊彦 赤井 誠生 金澤 忠博 大西 賢治 清水 真由子
出版者
藍野大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

初潮年齢は、個人の発達指標であるとともに、生活史理論から見ると進化発達的指標でもあり、発達の加速は進化における異時性の視点からも興味深い。近年、日本における平均初潮年齢は、低年齢化したままで変化は少ない。しかし、進化的傾向に逆行する、低年齢化の影響は、女性の発達に大きな影響を与えている。初潮年齢は、朝食や、睡眠時間のような健康習慣が悪化すると低い傾向が見られた。一方、性別受容は、既潮群の肯定率が低い。また、思春期前後では「保育士」ような、乳幼児に関わる職業が選択される傾向がみられるが、時代的に選択率が低下する傾向もみられ、思春期に子供への関心を高める効果が低下していることも考えられる。
著者
金澤 忠博 井﨑 基博
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

平均8歳の極・超低出生体重児220名のうち、自閉スペクトラム症(ASD)15.9%、注意欠如多動症(ADHD)が20.5%、限局性学習症(LD)が23.2%、知的障害は9.5%、境界知能は9.1%であった。重症のIVHとIUGR、CLD、ROPがIQを低下させ、重症のIVHは、ASD、ADH、LDの増悪にも関わり、IUGRもADHDやLDの発症に影響を与えていることが示された。一卵性双胎24組48名と二卵性双胎21組42名について、遺伝率と共有環境、非共有環境の寄与率を調べると、ASDや不注意に関しては遺伝率より周産期を含む共有環境の寄与率の方が大きいという特徴が確認された。
著者
今川 真治 中道 正之 大芝 宣昭 金澤 忠博 糸魚川 直祐 中道 正之
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

サル社会の中では、ケンカなどの敵対的行動をしながらも毛づくろいなどの親和的行動も行われる。これら2種の行動は、社会の中で他の個体と共存していくための不可欠な行動である。順位関係が比較的厳しいマカク属のサル類を対象として、この敵対的行動と親和的行動の関係が調べられた。野外で生息するニホンザル集団の場合には、生後4年間を通して、オスの子ザルが親しく付き合う同性の個体は一定であり、「仲間関係における恒常性」が認められた。敵対的行動に基づいて明らかとなったこれらの個体の間の順位は、その母ザルの順位関係とほとんど同じであった。親しく付き合う個体は互いに、順位が隣り合うか、近い個体であった。メスの子ザルの間でも、オスの子ザルと同様の傾向が確認できた。しかし、オスとメスの異性間における仲間関係の恒常性は認められなかった。ケージ内で飼育されている準成体、成体の親和的行動と敵対的行動の頻度を、ケージ内に止まり木が多数設置されて豊かな環境と止まり木の少ない乏しい環境で比較した。予想に反して、豊かな環境内では敵対的行動も親和的行動も生起頻度は少なかった。他方、乏しい環境ではどちらの行動の生起頻度も高くなった。この事実は、止まり木が少なく、互いに好ましい場所にサルが集まり、局所的に過密になり敵対的行動が多くなりやすいが、同時に、敵対的行動が生起した後の仲直り行動や、過密による心的緊張を低下させるための親和的行動が比較的頻繁に生起したためと考えられる。これらの事実は、環境条件に即して、サルが社会的緊張を軽減する行動を行っていることを意味している。