著者
鈴木 信孝
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.141-151, 2018

妊娠中のハトムギ使用について解説した.市販のハトムギ茶を妊娠中に摂取して流産や早産になるという証拠はなく,産後に市販のハトムギ茶摂取を禁ずる科学的根拠もない.したがって,妊婦が常識の範囲内でハトムギ茶を飲用もしくはハトムギ調理品を食することは,問題ないと考えた.ただし,ハトムギ摂取に過敏になっている妊婦は,無理にハトムギ飲食を行う必要はない.また,妊娠中のハトムギ摂取に関しては医師に相談することが肝要である.妊娠中のハトムギの製薬であるヨクイニンの内服については,必ず産婦人科医師の管理のもとに行うべきである.また,ハトムギの栄養補助食品も,妊娠中は中止するか,もしくは医師と相談の上で使用するのが望ましい.ただし,妊娠中にこれらの医薬品や食品を飲み続け,流産,早産,児の奇形等が発症したとする報告はない.妊娠中はハトムギ摂取を控えるべきであるという伝承については,ハトムギに麦角菌が感染し,産生された麦角アルカロイドによる子宮収縮が深く関与していたという仮説を立てた.また,小麦・大麦・ライ麦,トウモロコシなど麦角菌に感染する可能性のあるイネ科植物の麦角アルカロイド汚染の有無を知ることは,妊婦の流産・早産予防上,重要であることも指摘した.
著者
鈴木 信孝
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:13478397)
巻号頁・発行日
vol.131, no.4, pp.252-257, 2008-04-01
被引用文献数
2 5

欧米の先進諸国において,補完代替医療(CAM)の利用頻度は近年急速な増加傾向にある.また,わが国でも,患者自身の治療選択における自己決定意識の高まりに加え,インターネットの普及などから,実際の医療現場でもCAMの利用者が急速に増加していることが指摘されている.このような背景のもとに,2001年に厚生労働省がん研究助成金による研究班が組織され,わが国におけるがんの補完代替医療の利用実態調査が全国規模で行われた.そして,がん患者の44.6%(1382/3100名)が,1種類以上の代替療法を利用していることが明らかになった.さらに,利用されているCAMの種類としては,健康食品・サプリメント(漢方・ビタミンを含む)が96.2%と群を抜いて多いことや,使用頻度の高いものとしてアガリクス(60.6%),プロポリス(28.8%),AHCC(7.4%),漢方薬:OTC(7.1%)などがあることもわかった.また,半分以上の患者が,十分な情報を得ずにCAMを利用していることや,患者と医師の間にCAMの利用に関して十分なコミュニケーションがとれていないことも判明した.たしかに,サプリメントが薬理学的に高い効果を示すかどうかは懐疑的である.しかし,患者側の立場としては,たとえわずかであっても効果が認められるものがあれば取り入れたいと思うのは当然であろう.今後,氾濫するサプリメントの情報の中で,科学的に的確なものを見極め,総合的な医療としてサプリメントなども利用した健康管理も必要となろう.本稿では,まずCAMを概説し,わが国における食品の分類,サプリメントの安全性や米国で進む植物性医薬品(Botanical Drug)の研究・開発についても解説する.<br>
著者
鈴木 信孝 杉本 勇人 橋本 慎太郎 許 鳳浩 上馬塲 和夫
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.57-60, 2019-03-31 (Released:2019-04-10)
参考文献数
7
被引用文献数
2 2

ハトムギの外殻・薄皮・渋皮を含む全粒熱水抽出エキス(Coix-seed Reactive Derivatives;CRD)摂取が有用であった両膝から下腿前面の摩擦性黒皮症の1例を経験したので報告した.患者は,58歳男性.柔道整復師という職業柄,両膝をつき衣服で皮膚が擦れることが多く,20年来,両膝蓋部から下腿前面にかけて広範囲に強い色素沈着を認めていたが,CRD含有食品(CRD 4.2g/日)を6ヶ月間摂取したところ,病変は著しく改善した.本例は,通常の業務を行っていたにも関わらず,CRD摂取により摩擦性黒皮症が軽快した例であった.今後は,同様な例についてさらに検討を加えたいと考えている.
著者
鈴木 信孝 橋本 慎太郎 許 鳳浩 上馬塲 和夫
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.61-65, 2019-03-31 (Released:2019-04-10)
参考文献数
6
被引用文献数
4 4

ハトムギの外殻・薄皮・渋皮を含む全粒熱水抽出エキス(Coix-seed Reactive Derivatives;CRD)摂取が有用であった両手指の難治性貨幣状湿疹の1例を経験したので報告した.患者は52歳,女性.2012年3月に湿疹が多数出現し,全身に広がった.貨幣状湿疹の診断のもとにステロイド軟膏と抗ヒスタミン薬の内服を受けるも,好転しないため,発症から3年目の2015年に薬を中止した.2017年10月からCRDを1包あたり2.2 g含有する栄養補助食品を1日当たり2包摂取し始めたところ,急速に病変は改善し始め,摂取1ヶ月目には完治し,現在に至っている.本例は,発症から5年半という長期にわたって,とくに両手指に発疹と強い掻痒感が続いていたが,CRD摂取により,約1ヶ月という短期間に根治をみた例である.
著者
山本 樹 山田 勝久 鈴木 信孝 許 鳳浩 高橋 正征
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.67-77, 2018-09-30 (Released:2018-10-12)
参考文献数
84
被引用文献数
1

海洋深層水(Deep Sea Water: DSW)とは200m以深に存在する海水である.海洋深層水の豊富なミネラル分, 清浄性, 富栄養性といった特性を活かした産業利用では, 日本が最先端を行っている.また, 海洋深層水の資源活用, とくに未病や予防医学への応用についても世界中から注目を集めるようになった.そこで今回, 特に, 生活習慣病である脂質異常症, 高血圧症, 糖尿病, 動脈硬化症をはじめ, アトピー性皮膚炎, 骨粗鬆症, がん, 消化性潰瘍, 白内障, 便秘症における海洋深層水の基礎・臨床医学研究成果をレビューしたので報告する.
著者
鄒 歩浩 福沢 嘉孝 阿部 哲朗 許 鳳浩 太田 富久 鈴木 信孝
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.35-41, 2016

カイジ顆粒は健康食品として日本に入ってきたが,もともと中国では新薬として開発され,処方薬の一つとなっているため,基礎研究や臨床応用も数多く,エビデンスも積み重ねられてきた.カイジ顆粒の応用は多岐に渡るが,本総説はデータのもっとも多い肝臓癌に対するカイジの影響についてまとめた.
著者
上馬塲 和夫 仲井 培雄 許 鳳浩 王 紅平 大野 智 林 浩孝 新井 隆成 鈴木 信孝
出版者
日本補完代替医療学会 = The Japanese Society for Complementary and Alternative Medicine
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.119-126, 2007

西洋ではすでに広く家庭で活用され安全性と有効性がわかっている,特に不眠に用いられるバレリアンやレモンバームなどを含むハーブティーの睡眠への効果と安全性の検証を試みた.不眠で悩む病院職員志願者女性 14 名(年齢 21&ndash;62 歳:35&plusmn;11 歳,BMI 21&plusmn;3 kg/m<sup>2</sup>)を対象として,文書による同意を取得し,オープン試験によって 1 週間の対照観察期間の後 1 週間,ハーブティーを夕方 2 回摂取させた.睡眠の質の変化を,OSA 睡眠調査表とVAS (Visual Analogue Scale) で評価した結果,摂取開始の翌日の夜において,対照期間より入眠と睡眠維持について睡眠の質が向上する傾向を認めた.また睡眠の質の悪い群で効果が高く,眠気や胃腸症状を認める例も 19%程度は認めたが継続しても全例自然消失したことから,安全性には問題がないと思われた.<br>
著者
林 浩孝 大野 智 新井 隆成 鈴木 信孝
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.197-208, 2008 (Released:2008-11-14)
参考文献数
21

「特定保健用食品」のうち,生活習慣病の 1 つである動脈硬化に関連して「食後の血中中性脂肪が上昇しにくいまたは身体に脂肪がつきにくい」表示をした食品については,現在のところ,再許可等特定保健用食品を含め約 70 種類の商品がある.そのうちのいくつかについて,安全性・有効性について解説する.
著者
許 鳳浩 鈴木 信孝 榎本 俊樹 浦田 哲郎 須藤 慶太 宇住 晃治 上馬塲 和夫
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.103-108, 2018-09-30 (Released:2018-10-12)
参考文献数
26

新規精米技術を用いた特殊無洗米であるプレナス金芽米(以下PL米)摂取の生活習慣病関連因子に及ぼす影響について検討した.対象は施設の入所者で,重篤な疾患を有しない者25名(男6,女19)とした.方法は,コントロール無洗米を2ヶ月間毎食摂取(対照群)させた後,PL米を4ヶ月間毎食摂取させ(試験群),合計6ヶ月間観察した.評価項目は,血圧,体脂肪率,HbA1cなどの生活習慣病関連因子とした.結果は,PL米の摂取により,収縮期血圧は有意に低下し (p=0.008),拡張期血圧は低下傾向を示した(p=0.079).体脂肪率は,PL米摂取により低下傾向を示した(p=0.064).HbA1c値は,PL米摂取により低下したが,有意な変化ではなかった(p=0.050).しかし,HbA1c値が摂取前で正常値以上の高値を示した者(n=5)を除外し,正常値範囲だった者(n=19)を層別解析したところ,PL米摂取により有意にHbA1c値は低下した(p=0.003).また,中医体質調査票(CCMQ-J ver.2.0)を用いた試験結果を層別解析したところ,健康度の高い者では,平和質が有意に向上し,気虚質,痰湿質,湿熱質や気鬱質が有意に改善した.以上より,PL米は生活習慣病の予防に役立つ可能性が示唆された.
著者
上馬塲 和夫 浦田 哲郎 鈴木 信孝 新井 隆成 ストロング ジェフリー・マイケル 大野 智 林 浩孝
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.97-103, 2009 (Released:2009-07-07)
参考文献数
9
被引用文献数
2 3

キウイフルーツの新鮮なジュースを凍結乾燥した食品の高齢者に対する便通促進効果と QOL に対する影響について検討した.軽度から中等度の便秘で悩む 60 歳以上の高齢者 42 名(60~84: 67±6 歳)を医師の判断のもと対象者として,文書による同意を取得した後,1 週間の対照観察期間をおいて,当該食品を 4 週間 1 日 3 回 2 カプセルずつ,計 6 カプセル/日を摂取させ,排便状態と腹部の自覚的所見,全身的な QOL について調査した.その結果,開始後 14 日目からは摂取開始前日と比較し,排便回数や便性が有意に向上し,開始後 28 日目まで持続した.QOL 調査票によっても,皮膚の状態やむくみなど手足の外見所見,腰痛や頭痛などの痛みによる QOL の低下が改善した.結論として,キウイフルーツの新鮮ジュース凍結乾燥食品が,60 歳以上の便秘で悩む高齢者において,便通を促し,腹部の不快感を改善させ,生活の質を向上させる効果があることが示された.安全性の点では,明らかな問題は認められなかった.
著者
鈴木 信孝
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.693-702, 2006-11-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
5
被引用文献数
2 1

補完代替医療は近年脚光をあびており、Complementary and Alternative Medicine (CAM) と呼ばれている。CAMとは具体的には、サプリメント (健康補助食品) 、ハーブ療法 (ハーブティー、アロマセラピー) 、鍼灸、指圧、気功、伝統医学、温泉療法、音楽療法、抗加齢医学等々を包含している。米国では国立補完代替医療センター (NCCAM) が設立され、全米の少なくとも60%医学校で代替医療の講義が行われている。また、米国の健康保険組合はCAMのうちカイロプラクティックと鍼灸治療を給付の対象にし始めた。我が国のCAMの種類は、サプリメント42.0%、マッサージ31.2%、リフレクソロジー20.2%、アロマセラピー14.6%、指圧13.2%、ハーブ12.3%であり、サプリメントを使っている患者が圧倒的に多いことが注目されている。そこで、本稿ではCAMの中でも特にサプリメントについて概説した。
著者
許 鳳浩 鈴木 信孝 榎本 俊樹 浦田 哲郎 須藤 慶太 宇住 晃治 上馬塲 和夫
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.103-108, 2018

新規精米技術を用いた特殊無洗米であるプレナス金芽米(以下PL米)摂取の生活習慣病関連因子に及ぼす影響について検討した.対象は施設の入所者で,重篤な疾患を有しない者25名(男6,女19)とした.方法は,コントロール無洗米を2ヶ月間毎食摂取(対照群)させた後,PL米を4ヶ月間毎食摂取させ(試験群),合計6ヶ月間観察した.評価項目は,血圧,体脂肪率,HbA1cなどの生活習慣病関連因子とした.結果は,PL米の摂取により,収縮期血圧は有意に低下し (p=0.008),拡張期血圧は低下傾向を示した(p=0.079).体脂肪率は,PL米摂取により低下傾向を示した(p=0.064).HbA1c値は,PL米摂取により低下したが,有意な変化ではなかった(p=0.050).しかし,HbA1c値が摂取前で正常値以上の高値を示した者(n=5)を除外し,正常値範囲だった者(n=19)を層別解析したところ,PL米摂取により有意にHbA1c値は低下した(p=0.003).また,中医体質調査票(CCMQ-J ver.2.0)を用いた試験結果を層別解析したところ,健康度の高い者では,平和質が有意に向上し,気虚質,痰湿質,湿熱質や気鬱質が有意に改善した.以上より,PL米は生活習慣病の予防に役立つ可能性が示唆された.
著者
永井 栄美子 奥田 みずほ 潘 凌風 鈴木 信孝 許 鳳浩 滝埜 昌彦 瀧川 義澄 伊勢川 祐二 榎本 俊樹
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.61-66, 2017-09-30 (Released:2017-10-06)
参考文献数
15
被引用文献数
3 3

目的:近年,インフルエンザウイルス(IFV)において薬剤耐性株が出現し始め,問題となっている.新たなIFVの予防法や治療法の開発を行うことを目的に,ハトムギ反応生成物 (Coix-seed Reactive Derivatives: CRD)エキスの抗IFV作用を検討した. 方法:MDCK細胞にH1N1 A/Puerto Rico/8/34(PR8)株を感染させ,CRDエキス含有培地で24時間培養した.24時間後に上清のみを回収し,上清中のウイルス力価をフォーカス法により測定した.PVPP処理によりCRDエキス中のポリフェノールを除去し,除去前のCRDエキスとの抗IFV作用を比較した. 結果:CRDエキスはPR8株の増殖を阻害した.また,Time of addition assayの結果,CRDエキスはIFVの吸着時を最も阻害していることが判明した.さらに,CRDエキスのPVPP処理による検討から,ポリフェノールが有効成分である可能性が示唆された. 結論:CRDエキスはPR8株に対して抗IFV作用を示し,さらにIFVの細胞への吸着阻害のみならず,IFVの増殖時においても阻害作用を示した.また,CRDエキスの抗IFV作用にはポリフェノールが関与していることが示唆された.
著者
塚原 寛樹 松山 明正 阿部 哲朗 許 鳳浩 太田 富久 鈴木 信孝
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.57-62, 2016-09-30 (Released:2016-10-14)
参考文献数
10
被引用文献数
3

目的:アスタキサンチン含有飲料の肌におよぼす影響を検討する. 方法:肌の衰え(加齢による肌のたるみ,肌の乾燥など),肌のくすみが気になる30歳以上50歳未満の日本人女性を対象に試験を実施した.試験結果を客観的に評価するために,二重盲検法による群間比較を行った.被験者20名をアスタキサンチン含有飲料(アスタキサンチン3 mg含有)摂取群とプラセボ飲料摂取群(対照群)に無作為に割り付けを行い,試験食品摂取前,試験食品摂取4週後および8週後に紅斑,皮膚水分量,皮膚水分蒸散量,皮膚粘弾性,顔面画像解析(VISIA)などについて評価を行った. 結果:群間比較において,皮膚水分量,皮膚水分蒸散量,皮膚粘弾性,紅斑およびキメの項目でアスタキサンチン含有飲料群がプラセボ飲料群に比較して有意に優れていた. 結論:アスタキサンチンは肌のバリア機能の障害を抑制し,肌の保水力を維持し肌の乾燥を緩和すると同時に,紅斑,皮膚粘弾性,キメに対する効果を有すると考えられた.試験食品に起因すると考えられる有害事象はみられず,アスタキサンチン含有飲料は肌にとって有用な飲料であると考えられた.
著者
石原 克之 川端 克司 鈴木 信孝 關谷 暁子 上馬塲 和夫 川島 拓也 中出 祐介 許 鳳浩 麦田 裕之 佐久間 塁 古賀 秀徳
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.35-40, 2014

じゃがいもには葉酸が含まれており,じゃがいもを原料とするポテトチップスには,フライ調理することにより濃縮され,じゃがいも以上に葉酸が含まれている.葉酸は胎児の先天性疾患の予防から若い女性へ積極的な摂取が勧められているビタミンである.また葉酸は,循環器疾患の危険因子として知られるホモシステインの血中濃度を下げる効果が期待されている.そこでポテトチップスの経口摂取におけるヒトへの葉酸の吸収および血中ホモシステイン濃度について検討した.<br> その結果,ポテトチップス摂取後の血清中の葉酸濃度は摂取 1,3,6 時間後に有意に増加し,摂取 3 時間後にはビタミン B<sub>6</sub> も有意に増加した.また,血漿ホモシステイン濃度は摂取 6 時間後に有意に減少した.<br>
著者
鈴木 信孝
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.131, no.4, pp.252-257, 2008 (Released:2008-04-14)
参考文献数
9
被引用文献数
4 5

欧米の先進諸国において,補完代替医療(CAM)の利用頻度は近年急速な増加傾向にある.また,わが国でも,患者自身の治療選択における自己決定意識の高まりに加え,インターネットの普及などから,実際の医療現場でもCAMの利用者が急速に増加していることが指摘されている.このような背景のもとに,2001年に厚生労働省がん研究助成金による研究班が組織され,わが国におけるがんの補完代替医療の利用実態調査が全国規模で行われた.そして,がん患者の44.6%(1382/3100名)が,1種類以上の代替療法を利用していることが明らかになった.さらに,利用されているCAMの種類としては,健康食品・サプリメント(漢方・ビタミンを含む)が96.2%と群を抜いて多いことや,使用頻度の高いものとしてアガリクス(60.6%),プロポリス(28.8%),AHCC(7.4%),漢方薬:OTC(7.1%)などがあることもわかった.また,半分以上の患者が,十分な情報を得ずにCAMを利用していることや,患者と医師の間にCAMの利用に関して十分なコミュニケーションがとれていないことも判明した.たしかに,サプリメントが薬理学的に高い効果を示すかどうかは懐疑的である.しかし,患者側の立場としては,たとえわずかであっても効果が認められるものがあれば取り入れたいと思うのは当然であろう.今後,氾濫するサプリメントの情報の中で,科学的に的確なものを見極め,総合的な医療としてサプリメントなども利用した健康管理も必要となろう.本稿では,まずCAMを概説し,わが国における食品の分類,サプリメントの安全性や米国で進む植物性医薬品(Botanical Drug)の研究・開発についても解説する.
著者
許 鳳浩 阿部 哲朗 鈴木 信孝 太田 富久 川端 克司
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.1-8, 2017

シイタケ菌糸体抽出物は癌化学療法との併用時に,患者のQOLを維持・改善することが報告されている.本研究では,様々な治療背景および様々なステージのがん患者のQOLに及ぼすシイタケ菌糸体抽出物の影響を検討した.16施設で73症例を対象にシイタケ菌糸体抽出物を4週間(1,200 mg/day)連日経口摂取させ,摂取前後のQOLをEORTC-QLQ-C30調査票でスコア化した.シイタケ菌糸体抽出物摂取後のQOLスコアは被験者全体では,摂取前スコアに比べ,心理的,疲労スコアで有意に改善した.特にステージ3,4の被験者では,総体的,身体的スコアの改善も観察された.シイタケ菌糸体抽出物の経口摂取の併用は,進行性がん患者のQOLを改善することが示唆された.
著者
鈴木 信孝 上馬塲 和夫 宋 函 滝本 裕子 鈴木 里芳 川端 豊慈樹 大野木 宏 仲井 培雄
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.149-155, 2012 (Released:2012-10-24)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

ガゴメ昆布フコイダンの高年齢者に対する安全性と免疫機能に対する効果をオープン試験により評価した.高年齢者(69.4 ± 6.9 歳)18 名(男性 7 名,女性 11 名)にガゴメ昆布フコイダン(1 日摂取量 50 mg)と乳酸菌を配合した食品を 8 週間摂取してもらい,摂取前と摂取 4 週間後および摂取 8 週間後に血液検査,尿検査,QOL 調査,免疫機能検査を行った.その結果,いずれの検査においても臨床上問題となる変動は見られなかった.また,試験食品に起因し臨床上問題となる有害事象も認められなかった.免疫機能検査においては,血中の IgE の有意な低下が認められた.以上の結果から,ガゴメ昆布フコイダンは高年齢者に対し安全性の高い機能性食品素材であることが示された.