著者
鈴木 里芳 徳田 春邦 鈴木 信孝 上馬塲 許 鳳浩 川端 豊慈樹 太田 富久 大竹 茂樹
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.75-85, 2013 (Released:2013-10-30)
参考文献数
35
被引用文献数
8 2

ハトムギ [Coix lachryma-jobi L. var. ma-yuen Stapf] の子実は,これまで伝統薬として,中国や日本で古くから利用され,抗腫瘍,抗肥満,抗糖尿など様々な機能を持つことが報告されている.われわれは以前よりハトムギの渋皮,薄皮,外殻の生物作用に着目してきた.今回,従来より漢方などで使われてきたハトムギの子実の熱水抽出エキス(ヨクイニン)を比較対象として,子実,渋皮,薄皮,外殻のすべての部分を含む熱水抽出エキス (CRD),ハトムギの有用成分である Monoolein と Trilinolein の抗腫瘍,抗炎症作用を検討した.ヒト由来癌細胞に対する細胞増殖抑制作用については,乳癌細胞 (MCF-7),肺癌細胞 (A-549),喉頭癌細胞 (Hep-2) を用いて評価した.結果は両エキス,Monoolein, Trilinolein ともに各癌細胞に対して弱い増殖抑制効果を認め,その作用はヨクイニンよりも CRD, Monoolein, Trilinolein の方がより強かった.また,発癌予防作用については,ヒトリンパ腫由来の Raji 細胞と発癌プロモーターである TPA (12-O-Tetradecanoylphorbol-13-acetete) を用いて,特異抗原発現能により評価した.結果は両エキス,Monoolein, Trilinolein ともに特異抗原発現を減少させた.また,ヨクイニンより CRD, Monoolein, Trilinolein がより強く発現を抑制した.一方,Monoolein は Trilinolein よりも強く抑制した.次に,ハトムギの抗炎症作用を検討するために,マウス皮膚上皮由来正常細胞に被検物質を作用させ,紫外線 (UVB) 照射前後ならびに加熱障害前後の細胞形態変化により評価した.結果は UVB 照射前後にかかわらずヨクイニンよりも CRD, Monoolein, Trilinolein が有意に細胞障害を抑制した.また,加熱障害前後については,ヨクイニンの方が CRD より細胞障害を抑制し,Monoolein は Trilinolein より有意に細胞障害を抑制した.以上のことから,子実以外にも渋皮,薄皮,外殻が有用であることが示唆された.さらに,Monoolein と Trilinolein は抗腫瘍,抗炎症を有することが示された.
著者
鈴木 信孝 許 鳳浩 上馬塲 和夫
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.1-6, 2019-03-31 (Released:2019-04-10)
参考文献数
8
被引用文献数
1

ジャワしょうがのエキス食品であるジャワしょうがバングレの成分,安全性や健康機能性,とくに脳機能賦活作用についての最新知見を紹介した.ジャワしょうがバングレは,in vitroにおいてNGF非存在下でも神経細胞の新生ならびに突起伸展作用を有することが徐々に明らかとなってきた.また,動物実験で,主成分バングレンが血液脳関門を通過することや空間学習能力と記憶力の改善作用をもたらすことなどが報告されている.さらに,ヒトにおいて軽度認知障害(MCI)に対する効果の検討も始まった.以上,ジャワしょうがバングレは,認知症に対する機能性食品として有望なものの一つであると思われた.
著者
鈴木 信孝
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.141-151, 2018-09-30 (Released:2018-10-12)
参考文献数
20

妊娠中のハトムギ使用について解説した.市販のハトムギ茶を妊娠中に摂取して流産や早産になるという証拠はなく,産後に市販のハトムギ茶摂取を禁ずる科学的根拠もない.したがって,妊婦が常識の範囲内でハトムギ茶を飲用もしくはハトムギ調理品を食することは,問題ないと考えた.ただし,ハトムギ摂取に過敏になっている妊婦は,無理にハトムギ飲食を行う必要はない.また,妊娠中のハトムギ摂取に関しては医師に相談することが肝要である.妊娠中のハトムギの製薬であるヨクイニンの内服については,必ず産婦人科医師の管理のもとに行うべきである.また,ハトムギの栄養補助食品も,妊娠中は中止するか,もしくは医師と相談の上で使用するのが望ましい.ただし,妊娠中にこれらの医薬品や食品を飲み続け,流産,早産,児の奇形等が発症したとする報告はない.妊娠中はハトムギ摂取を控えるべきであるという伝承については,ハトムギに麦角菌が感染し,産生された麦角アルカロイドによる子宮収縮が深く関与していたという仮説を立てた.また,小麦・大麦・ライ麦,トウモロコシなど麦角菌に感染する可能性のあるイネ科植物の麦角アルカロイド汚染の有無を知ることは,妊婦の流産・早産予防上,重要であることも指摘した.
著者
鈴木 信孝 川島 拓也 許 鳳浩 上馬塲 和夫
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.133-139, 2018-09-30 (Released:2018-10-12)
参考文献数
7
被引用文献数
2 2

ハトムギの外殻・薄皮・渋皮を含む全粒熱水抽出エキス(Coix-seed Reactive Derivatives: CRD)とビタミン剤(葉酸・B1・B6・B12)併用療法が奏功した難治性疣贅の2例と膣壁コンジローマの1例を報告した.今後は,CRDやビタミン剤の至適摂取量・期間を把握するために,さらに症例を集積したいと考えている.
著者
鄒 歩浩 福沢 嘉孝 阿部 哲朗 許 鳳浩 太田 富久 鈴木 信孝
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.35-41, 2016-09-30 (Released:2016-10-14)
参考文献数
55

カイジ顆粒は健康食品として日本に入ってきたが,もともと中国では新薬として開発され,処方薬の一つとなっているため,基礎研究や臨床応用も数多く,エビデンスも積み重ねられてきた.カイジ顆粒の応用は多岐に渡るが,本総説はデータのもっとも多い肝臓癌に対するカイジの影響についてまとめた.
著者
許 鳳浩 長谷部 久乃 石原 克之 伊藤 政喜 上馬塲 和夫 鈴木 信孝
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.23-26, 2017-03-31 (Released:2017-04-05)
参考文献数
12

フルーツグラノーラの摂取が排便状況およびQOLに与える影響について検討するため,排便回数が週に5回以下の女性20名(平均年齢20.0 ± 1.1歳)を対象としたオープン臨床試験を行った.フルーツグラノーラ1日当たり50 gを,1食の主食に置き換えて2週間連続摂取させ,摂取前後の排便状況やQOLを比較した.試験の結果,フルーツグラノーラ摂取後は,摂取前と比べて摂取2週間目で排便回数の増加( p =0.014),排便量の増加(p =0.024)が見られ,全体的なQOLの向上(p =0.011)も認められた.このことから,フルーツグラノーラの摂取は排便状況の改善やQOL向上に有効である可能性が示唆された.
著者
鈴木 信孝 許 鳳浩 上馬塲 和夫
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.113-116, 2018-09-30 (Released:2018-10-12)
参考文献数
18
被引用文献数
3

Coix-seed Reactive Derivatives (CRD)の摂取がアレルギー性疾患に有効かもしれないという証拠が集積されつつある.そこで今回,CRDのTh1/Th2バランスに対する影響について検討した.健常な成人8名にCRD 6g/日を4週間摂取させ,摂取前後の血中Th1/Th2の値を比較した.結果は,Th2とTh0が有意に減少し,有意ではなかったものの相対的にTh1/Th2は上昇した.今後はさらに例数を増やしてCRDの免疫調節作用について検討したい.
著者
伊藤 まゆ 三樹 美夏 林 浩孝 新井 隆成 鈴木 信孝 上馬塲 和夫
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.111-118, 2009 (Released:2009-07-07)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

コラーゲン含有飲料の 1ヶ月間摂取による顔面皮膚の変化を,計測機器による指標を使って予備的に検討した.61 名の健常女性(年齢 25–68,34±8 歳)を対象とし,文書による同意を得た後,コラーゲン 5 g 飲料/日摂取群(30 名)と 10 g 飲料/日摂取群(31 名)に無作為に割り付けし,摂取前と後 1 週目と 1ヶ月目の顔面(両頬部)皮膚水分と下眼瞼の皺数を測定した.皮膚水分と皺数に関して,改善した反応例と変化がない無反応例に分類したところ, 10 g 摂取群では 5 g 摂取群より高い 5 割の反応率が得られた.反応例は無反応例より摂取前において皺数が多く皮膚水分が低いこと,皺数は 1 週間目から有意な改善をみることが示された.また本飲料が安全であることも示された.今後,皮膚の異常性状例を対象にして,コラーゲン 10 g/日を,1 週間あるいは 1 ヶ月月間投与する二重盲検試験により有効性を評価する研究の必要性が示された.
著者
長谷部 久乃 石原 克之 伊藤 政喜 許 鳳浩 鈴木 信孝
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.21-27, 2016-03-31 (Released:2016-04-16)
参考文献数
5
被引用文献数
1

女性のQOLを網羅的に把握し,フルーツグラノーラ摂取がQOLに及ぼす効果について検討した.方法は,インターネットを介したアンケート調査(株式会社LSTT製・女性のためのQOL調査票)により,3,460名の身体的・精神的なQOLを調査した.また,便秘気味108名,そうでない者57名の合計165名に対し,フルーツグラノーラを自由に摂取させ,試食前後のQOLの比較を行った. スクリーニング調査の結果,非便秘気味の者は便秘気味の者と比べ,全てのカテゴリーで有意に満足度が高かった.また,フルーツグラノーラの摂取習慣がある者は,精神的側面のQOLスコアが有意に高かった. さらに,フルーツグラノーラを摂取することで,全体的なQOLスコアの上昇が見られた.このことから,フルーツグラノーラの摂取は女性のQOL向上に有効である可能性が示唆された.
著者
鄒 歩浩 許 鳳浩 鈴木 信孝
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.1-7, 2014 (Released:2014-05-01)
参考文献数
54

カイジが健康食品として初めて日本に紹介されてから 10 年近く経過した.カイジはがん治療分野ではエビデンスが蓄積され,統合医療に詳しい医療関係者にも知名度は上がってきた.また,カイジは呼吸器や腎疾患などがん以外にも有効性が確認されている.本総説ではカイジのさまざまな科学的エビデンスを詳述する.
著者
許 鳳浩 阿部 哲朗 鈴木 信孝 太田 富久 川端 克司
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.1-8, 2017-03-31 (Released:2017-04-05)
参考文献数
16

シイタケ菌糸体抽出物は癌化学療法との併用時に,患者のQOLを維持・改善することが報告されている.本研究では,様々な治療背景および様々なステージのがん患者のQOLに及ぼすシイタケ菌糸体抽出物の影響を検討した.16施設で73症例を対象にシイタケ菌糸体抽出物を4週間(1,200 mg/day)連日経口摂取させ,摂取前後のQOLをEORTC-QLQ-C30調査票でスコア化した.シイタケ菌糸体抽出物摂取後のQOLスコアは被験者全体では,摂取前スコアに比べ,心理的,疲労スコアで有意に改善した.特にステージ3,4の被験者では,総体的,身体的スコアの改善も観察された.シイタケ菌糸体抽出物の経口摂取の併用は,進行性がん患者のQOLを改善することが示唆された.
著者
上原 静香 吉川 智香子 吉田 美鶴 水野 誠 笠 明美 許 鳳浩 鈴木 信孝
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.33-38, 2019-03-31 (Released:2019-04-10)
参考文献数
11
被引用文献数
2 3

ハトムギ全粒熱水抽出エキスの顔面肌に及ぼす影響を検討した.方法は,28~58歳(44.5±11.6歳)10名にハトムギ全粒熱水抽出エキスを1 g/日,8週間摂取させ,各種皮膚パラメーターを計測した.結果は,肌の透明感の指標である頬内部反射光測定で,摂取8週間後に青色内部反射光の総量が有意に増加した(p=0.011).さらに,肌表面のキメは,摂取4および8週間後に有意な改善効果が認められた(p=0.007, p=0.042).角層剥離状態についても,摂取4および8週間後に有意な改善効果が認められた(p=0.0002, p=0.020).以上のことから,本ハトムギ全粒熱水抽出エキスは,1 g/日と比較的少量摂取でも,優れた美肌効果をもたらすことが示唆された.
著者
高橋 二郎 本江 信子 大木 史郎 北村 晃利 塚原 寛樹 許 鳳浩 鈴木 信孝
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.9-17, 2015 (Released:2015-04-10)
参考文献数
40
被引用文献数
1 1

赤色のカロテノイドであるアスタキサンチンは,優れた抗酸化作用や様々な生理作用を有すことが知られることから,機能性健康食品素材として注目されている.これまで約 10 年の間に,アスタキサンチンに関する臨床試験が数多く実施され,その中で食品としてのアスタキサンチンの安全性が報告されている.本総説では,これら安全性に関する臨床試験の報告と,遺伝毒性及び急性・亜慢性毒性等の毒性試験の報告を,効能研究及び安全性試験の報告が最も多いヘマトコッカス藻由来アスタキサンチン製品である,富士化学工業のアスタリールを中心にまとめた.更に,最新の研究に基づいて,医薬品との相互作用に関与する薬物代謝酵素へのアスタキサンチンの影響を考察した.ヘマトコッカス藻由来アスタキサンチンであるアスタリールの安全性は,多岐に渡るエビデンスにより確立されている.