著者
長澤 多代
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は,大学教育における教員と図書館員の連携という観点から,クイーンズ大学及びエッカード・カレッジのケース・スタディを完成させ,すでに明らかにしたケースのモデルも含めて比較分析をすることである。クイーンズ大学については,文献調査に加えて,2012年度から2014年度までに3度の訪問調査を行い,関係者への聴き取りや観察調査によって得たデータや内部資料をもとに,教員と図書館員の連携構築のモデルを構築している。エッカード・カレッジについては,訪問調査がかなわなかったために,文献調査に加えて,元図書館長への聞き取りを行った。以上の調査で得たデータをもとに,ケース間の比較分析を進めている。
著者
長澤 多代
出版者
三重大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

2年間の調査で得たデータをもとに,記述的ケース・スタディと解釈的ケース・スタディを作成している。2009年度には,文献調査と訪問調査によって,ウエスタン・オンタリオ大学に関する基礎的な情報を得た。2010年度には,記述的ケース・スタディを学会で発表するとともに,追跡調査を実施した。現在,この記述的ケース・スタディをもとに,解釈的ケース・スタディを作成し,ここで得られたモデルを他大学のケース・スタディで得られたモデルと比較検討する準備をしている。
著者
長澤 多代
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.228-243, 2015

本稿では,教員と図書館員の連携を促す行為/相互行為の戦略について,アーラム・カレッジのケース・スタディをもとに明らかにした。分析の結果,図書館関係者が【教員に対する直接的な支援】を実施して図書館の学習・教育支援機能に対する教員の理解を深めようとしていること,その中で,【着任前後の教員】を主な支援対象に定めたり,図書館や図書館員が【協力的であることを印象づけ】たり,【教員と教員をつない】だり,図書館内外や学内外の【いつでもどこでも】可能な限り支援をしたりしようとしていることが明らかになった。
著者
長澤 多代
出版者
三田図書館・情報学会
雑誌
Library and information science (ISSN:03734447)
巻号頁・発行日
no.77, pp.51-86, 2017

【目的】大学図書館が提供する情報リテラシー教育に関する研究の中で, 教員と図書館員の連携の重要性を指摘する論文は数多くある。だが, その多くが実践報告の中で当事者が指摘するものであり, 第三者の立場で分析したり理論の構築を目指したりするものではない。また, 教員と図書館員の連携構築に焦点をあてた議論はほとんど見られない。本研究の目的は, 図書館情報学分野の研究の中で, 大学教育における教員と図書館員の連携構築について, どのような研究論文があるのか, また, どのような研究方法や理論枠組みが用いられているのか, その中で何が論じられているのかを明らかにすることである。【方法】研究の方法は文献レビューのひとつの手法であるシステマティック・レビューである。この手法をもとに, 研究の手順を厳密に定め, 文献を選択する基準と除外する基準を明確にして文献を厳選し, 内容分析によって分析対象となる文献を全体として統合する。これによって, 大学教育における教員と図書館員の連携構築に関する研究の全体像を明らかにする。【結果】大学教育における教員と図書館員の連携構築をテーマとする研究論文の分析をもとに, 次のことを明らかにした。①本テーマの論文に占める研究論文の割合は極めて少ない。②著者には, 図書館情報学や図書館情報学以外の研究者もいるが, 大学図書館員が最も多い。③本テーマの研究論文を継続して発表している著者は限定されている。④質的研究が多い。⑤理論枠組みを用いる研究論文は多くない。⑥本テーマの研究において中心的な役割を果たす論文を特定できない。⑦図書館員による連携構築のための戦略として, <<教育開発>>, <<目標や手段の共有>>, <<個々の教員との人的交流>>, <<図書館外とのつながり>>がある。その戦略に影響を与える条件として, <<教員への対抗意識>>, <<図書館の対応力>>, <<認証評価への対応>>, <<教員の図書館(員)観>>, <<教員中心の大学文化>>がある。Purpose : This paper aims to identify what research papers on building collaboration between teaching faculty and librarians in higher education have been published in Library and Information Science ; which methodologies and theoretical frameworks have been applied ; and what themes have been discussed.Methods : In this systematic review, research papers were carefully selected based on replicable search strategies and inclusion and exclusion criteria defined for this study. The data were analyzed through a content analysis, and an overall picture of building collaboration between teaching faculty and librarians in higher education was constructed.Results : The study clarified the following points : 1) there were considerably fewer research papers on this topic than the number of practical reports ; 2) regarding authors of these research papers, there were many more college and university librarians than researchers in Library and Information Science or other disciplines ; 3) there were a limited number of researchers who continued studying this topic ; 4) most of the research papers were qualitative studies ; 5) only a few papers applied theoretical frameworks ; 6) core papers regarding this topic were not identified. 7) As for factors of librarians' strategic approaches to teaching faculty, "educational development," "shared goals and means," "building interpersonal relationships" and "working with other campus units" were identified, and as factors of the intervening conditions in the library, institutional and social contexts, "librarians' sense of rivalry with teaching faculty," "library's competence in collaboration," "accrediting agencies," "teaching faculty's attitudes towards libraries/librarians" and "campus hierarchy" were identified.原著論文付録
著者
長澤 多代
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究の目的は,教育の質保証を目指した大学教育において,図書館員が教員と連携を構築するための戦略とその実現に影響を与える図書館内外の条件をテーマ的コード化の手法をもとに明らかにすることである。米国のミシガン大学については訪問調査を行い,関係者への聞き取りや内部資料の調査によって得たデータをもとに戦略と条件からなるモデルを構築した。このモデルについては国際学会で口頭発表する準備を進めている。カナダのウエスタン大学,フィンランドのタンペレ大学でも同様に訪問調査をもとに同様のデータを収集し,データの整理と分析を進めている。
著者
金丸 明彦 下田 研一 長澤 多代
出版者
大学図書館研究編集委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.1-14, 2003-12

長崎大学では、大学教育機能開発センターが主催する第8回ファカルティ・ディベロップメント(FD)の中で、附属図書館が「情報検索の方法」ワークショップを担当した。本稿では、最初に第8回FD全体の実施の経緯をたどり、次に「情報検索の方法」に焦点をあてて、その目的と内容を紹介し、実施を通して得られた成果と課題について報告した。その結果、成果として、教員への教育活動支援が学生の情報利用の促進につながったこと、課題として、教員への広報活動や職員の資質向上など教育活動支援の体制を図書館内に整備することがあるとわかった。
著者
長澤 多代
出版者
京都大学
雑誌
京都大学高等教育研究 (ISSN:13414836)
巻号頁・発行日
no.19, pp.99-110, 2013-12-01

In Japan, colleges and universities have undergone massive educational reform since the 1990s. By switching to active learning and activating course design, they have been training students as active and lifelong learners. In this context, college and university libraries have provided various learning support services to students and instructional support services to faculty members. To further enhance learning outcomes, these services should be integrated into both course instruction and educational reform. The purpose of this paper is to discuss how college and university libraries can actively engage in educational reform, from the perspectives of information literacy instruction and learning commons. Most libraries have provided students with information literacy instruction such as course-related instruction in the courses. Some have developed pathfinders as navigators to information resources. During the past decade, the number of learning commons has increased significantly in Japan. In learning commons, as well as physical spaces such as collaborative learning areas and work station areas, various learning support services relating to information retrieval resources and writing papers have been designed by faculty members, librarians, ICT support staff and student assistants.
著者
長澤 多代
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.18-34, 2012-03-31

本稿の目的は,アーラム・カレッジの解釈的ケース・スタディによって,"図書館員による教員へのアプローチの中で,何が教員と図書館員の連携を促す要因となっているのか"という研究課題を明らかにすることである。文献調査及び訪問調査で得た情報を帰納的分析法で分析した。その結果,次のことが明らかになった。1)アラーム・カレッジの教育目標が【学ぶ方法の習得】であるために,多くの授業科目で課題探求型の課題を与えている,(2)学生の[情報リテラシー]は低く,図書館員は初歩的な「図書館サービス」に多くの時間と労力を投じているという【図書館員の気づき】があった。[学習成果]は低く,無関心や誤解という[教員の図書館観]のために,教員は学生の図書館利用を促さなかった,(3)図書館員は,教員との【つながり方を開拓】することが重要であると考え,自身の役割を【ファシリテーター】と捉え,【事前対策的な働きかけ】によって教員との連携を構築しようとした。
著者
長澤 多代
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.185-201, 2012-12-30

本稿の目的は,アーラム・カレッジの解釈的ケース・スタディによって,"図書館員による教員へのアプローチの中で,何が教員と図書館員の連携を促す要因となっているのか"という研究課題を明らかにすることである。文献調査や訪問調査で得た情報を帰納的分析法で分析した。本研究課題について,これまでに,原因となる条件,文脈,現象について明らかにしていた。今回明らかにしたのは,学習支援に関する行為/相互行為の戦略である。その結果,次のことが明らかになった。・図書館員は,高い学習効果を得られる学習支援を実現するためには,【カスタマイズ型の支援】が有効だと考えた。・これを実現するために,【課題探求型の授業科目】を担当する教員に焦点を定めて学習支援の案内をしたり,各授業科目の【課題に関する主題】を支援内容に反映させたり,【教える好機】に支援を実施したり,各教員を担当する【MYライブラリアン】を設定したりした。
著者
長澤 多代
出版者
大学図書館研究編集委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.80, pp.79-91, 2007-08
被引用文献数
1

本稿では,ウェイン州立大学の図書館情報学プログラムが開講する専門科目である「図書館員のための教育方法論」の内容と方法,新しい大学図書館員像であるブレンディツド・ライブラリアンに求められる専門能力に関する提案をもとに,情報リテラシー教育を担当する図書館員に求められる専門能力について検討した。その結果,情報リテラシー教育を担当する図書館員に求められる専門能力として,情報リテラシー,教育方法論,教育工学に関する知識及び技術に加えて,大学経営に関する知識や技術,コミュニケーションの能力があるとわかった。This paper explains competencies expected from librarians involved in information literacy instruction, based on the contents and methods taught in "Instructional Methods for Librarians", a professional course provided by the Library and Information Science Program, Wayne State University, and also based on the proposals for 'blended librarians' as a new model for academic librarians. As a result, librarians involved in information literacy instruction would be expected to have competency not only in terms of their knowledge and skills in information literacy, pedagogy and instructional technology, but also in university administration and communication.