著者
飯田 弘之 中川 武夫 長谷川 敦史 岡根谷 敏久 Muangkasem Apimuk 曾根 彰吾 石飛 太一
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.132-142, 2013-09-30

本論文において,新たな情報力学モデルを提案し,その応用について探求する.最初のモデルはゲーム結果の確かさに関連し,二番目のモデルはゲーム結果の不確かさに関連する.これらのモデルを将棋とサッカーに適用する.そして,エンタテイメント性の質,ゲーム進行パターン,アドバンテージの依存性,勝率といったゲーム情報の時間推移を可視化するために有効であることを確認する.提案モデルの応用例として取り上げたサッカーの情報力学モデルから,FIFA女子世界サッカー選手権決勝の試合は典型的な均衡がとれたゲームであることがわかる.また,この試合で日本チームはアメリカチームに勝利したが,日本チームが最後まであきらめなかったことが示唆される. : This paper is concerned with novel information dynamic models and their application. The first model is relating to certainty of game outcome, and the second one is to the uncertainty. They have been applied to Shogi and Soccer. It is found that these models are useful for visualizing the detail processes in the game, such as the quality of entertainment, game pattern, together with time dependency of the advantage and winning rate. It is suggested that FIFA Women's World Cup Germany 2011Final is a typical balanced game in which Japan got the win against USA, but fighting spirit of Japanese players was slightly stronger than that of American players.
著者
長谷川 敦章
出版者
(公財)古代オリエント博物館
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本研究では,大型遺跡の調査や地中海世界からの影響に偏っている北レヴァントの先行研究を顧み,中規模遺跡など北レヴァント内の周縁地域の調査,在地物質文化の検討,シリア内陸部を含めた北レヴァントの周辺地域との比較検討を行い,従来の偏った歴史像を再構築する。最終年度となる第3年目の本年度は,天理参考館での補足的な調査を行うとともに,これまでの研究成果を積極な公開に重きをおいた。天理参考館での調査では,前年度行った受け入れ研究機関である古代オリエント博物館収蔵資料の後期青銅器時代おけるキプロス土器の比較資料として,テル・ゼロール出土のwhite Slip wareの資料調査を行った。この成果を踏まえ,white Slip wareの施文技術についての系譜について研究し,本研究が対象としている,後期青銅器時代の東地中海で重要な役割を果たしたキプロス島の社会変遷を,土器の施文方法の変化から繕いた。その成果を日本西アジア考古学会第17回大会にて発表し,これらの成果を巡って,同地域を対象としている参加研究者と議論を交わした。また,ワルシャワで行われた国際学会"8th International Congress on the Archaeology of the Ancient Near East"にて,本研究で中心となるつの地域の一つ,エル・ルージュ盆地の拠点遺跡テル・エル・ケルクと,ユーフラテス中流域に位置するテル・ガーネム・アル・アリ遺跡での発掘調査に基づく新知見を同地域を対象としている海外の研究者に対して公表し,広く意見を求めた。また,本研究の成果を広く一般向けに公開する目的で,東北学院大学で開催された公開シンポジウム「ユーラシア乾燥地域における河水利用一水が育む歴史・文化・環境」講演をし,ユーラシア乾燥地域という大きな枠組みで本研究の成果を位置づけを試みた。
著者
長谷川 敦章
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

昨年度の研究活動において,北レヴァントの海岸部であるシリア・アラブ共和国ラタキア県における遺跡踏査および測量調査を行った。これにより本研究の目的の一つである,調査対象が地中海沿岸の大規模テル型遺跡への偏重の是正を試みた。本年度の研究では,この成果を周辺地域と比較し位置づけていく調査・研究を実施した。特に本研究のねらいの一つである,先行研究で疎かにされてきた,内陸地域との関係に焦点をあてるため,以下の3地域で調査を行った。その一つは,ラタキア県の東に隣接する,北レヴァントの内陸部であるシリア・アラブ共和国イドリブ県のエル・ルージュ盆地である。当該地域では,テル・エル・ケルク1号丘遺跡の発掘調査を行った。本調査では,ラタキア県,ひいては該期の東地中海世界に極めて特徴的なミケーネ土器が出土した。この事例は内陸地域では極めて珍しく,ミケーネ土器の東限域を示す可能性がある。またこの成果は,これまで東地中海世界と隔離されて考えられがちであった北レヴァント内陸地域の歴史的位置づけに再考を促すものである。第2の調査は,ラタキア県の北側に位置するトルコ共和国アンタキア県における考古学的踏査である。この地域は北レヴァントを南北に流れるオロンテス川下流域であり,ラタキア県と比較する上で重要な資料を得ることができた。第3の調査は,ユーフラテス中流域に位置するテル・ガーネム・アル・アリ遺跡である。当該遺跡周辺は考古学的調査の空白地域であり,その成果は極めて貴重である。メソポタミア地域の西端にあたり,北レヴァントに影響を与えたメソポタミアの文化を考える上での一つのケーススタディになると考えている。東地中海世界に果たした北レヴァントの歴史的意義について再考するためには,上述した地域での成果を詳細に分析し,北レヴァントの歴史的重要性を内陸地域との関係性で捉え直し,歴史の再構成を試みる必要がある。