著者
竹内 章 飯田 弘之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.2370-2376, 2014-11-15

柔軟な戦略に基づいた人間らしい思考をコンピュータで実現するため,ゲームにおけるクリティカルな局面の識別は重要である.本研究は,将棋における投了局面の識別に着目する.共謀数や証明数と類似の指標は,投了局面を識別するのに有効である.有利な局面に制限した探索におけるノード数が勝ちの反証数と類似であることから,この探索の有効分岐因子を用いた投了モデルを提案する.提案モデルの妥当性を確認するため,プロ棋士による投了に至る局面を分析する.提案モデルによって,有効分岐因子が減少することをとらえ,プロ特有の投了が説明できる.For implementing a human-like thinking based on flexible strategies, the critical positions identification in games is important. This study focuses on the resignation positions identification in shogi. Similar factor to conspiracy numbers or proof numbers is effective to identify the resignation positions. Since the number of nodes in the search restricted to advantageous positions is similar to disproof numbers for wins, we propose a resignation model using the effective branching factor of the search. In order to confirm the validity of the proposed model, we analyze many positions leading to resignation by professional shogi players. Recognizing that the effective branching factor is reduced, the proposed model can explain the characteristic resignation positions.
著者
東 育生 橋本 剛 飯田 弘之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. GI, [ゲーム情報学] (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.65-70, 2000-05-31
参考文献数
7
被引用文献数
1

本稿は,完全情報ゲームと不完全情報ゲームの戦略的架け橋について論ずる.完全情報ゲームと不完全情報ゲームの間に,果して戦略的架け橋のようなものが存在するか否かを調べるためにいくつかの実験を行なった.実験にあたり,3つの新しい麻雀種 : (a)超完全情報麻雀,(b)完全情報麻雀,(c)部分的完全情報麻雀,を考案し,これら3種類の麻雀種に,(d)通常の麻雀を加えて全部で4種類の麻雀に関する実験を実施した.実験に参加した全てのプレイヤーにアンケート形式による調査に基づく,不完全情報多人数ゲームと完全情報多人数ゲームの比較検討を報告する.
著者
竹内 章 飯田 弘之
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.2370-2376, 2014-11-15

柔軟な戦略に基づいた人間らしい思考をコンピュータで実現するため,ゲームにおけるクリティカルな局面の識別は重要である.本研究は,将棋における投了局面の識別に着目する.共謀数や証明数と類似の指標は,投了局面を識別するのに有効である.有利な局面に制限した探索におけるノード数が勝ちの反証数と類似であることから,この探索の有効分岐因子を用いた投了モデルを提案する.提案モデルの妥当性を確認するため,プロ棋士による投了に至る局面を分析する.提案モデルによって,有効分岐因子が減少することをとらえ,プロ特有の投了が説明できる.
著者
佐々木 宣介 飯田 弘之
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.2990-2997, 2002-10-15
被引用文献数
6

本研究では,ゲームのルール変遷の根底にあるゲームの性質の変化に着目し,将棋の歴史的変種を比較する.最初に,ゲームの性質に関する比較を行うための2つの指標を提案する.これらの指標はそれぞれ,ゲームの面白さとゲームの決定複雑性を表すもので,平均可能手数,平均終了手数に基づいて算出される.すでに廃れてしまった将棋種に関しては,コンピュータプレイヤを用意し,それらのデータを採取した.本研究で用いたコンピュータプログラムは駒価値をベースにした評価関数を持ち,先読み探索を行う.各将棋種に対して駒価値を自動学習するために,Temporal Difference学習法を適用した自動対戦の実験を行い,各将棋種に対するデータを採取し,比較を行った.重要な知見として,大駒付加よりも持ち駒使用ルールがルール変遷の過程でより大きなインパクトを与えていること,そして,あまり難しくなりすぎないようにルールが洗練されてきたことが分かった.This study explores how the evolutionary changes of the rules affect the characteristics of the games in the Shogi species from the viewpoint of evolutionary selection.For this purpose,we propose two measures based on the average number of possible moves and the average game length:(1) measure for entertainment, and (2) measure for decision complexity.For games where no grandmaster games are available, the statistics of specific features,such as the average number of possible moves and the average game length,are obtained by the method of self-play experiments.Then we made computer programs that performed lookahead search using an evaluation function based simply on piece-material balance.To obtain the appropriate piece values of Shogi variants,we apply Temporal Difference Learning method.Based on the data obtained by the above self-play experiments,Shogi variants including the modern Shogi and ancient Shogi variants are analyzed and compared.Through the analysis,we observed that the inclusion of the reuse rule was more important step than the inclusion of the major pieces in the course of evolutionary changes from Heian Shogi toward modern Shogi.We believe that the proposed measures are useful tools for building a genealogical tree of chess-like games.
著者
佐々木 宣介 橋本 剛 梶原 羊一郎 飯田 弘之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ゲーム情報学(GI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.53, pp.91-98, 1999-06-24
被引用文献数
4

将棋,チェス,象棋(中国将棋)の3種のゲームは起源を同じくし,世界三大将棋とされている.本論文では,与えられたゲームに対して平均合法手数と平均終了手数から求められる√<B>/Dという値がチェスライクゲームにおける重要な指標となり得ることを示し,また,ゲームの歴史的変遷の過程で,この指標がある値に収束するという仮説を提案する.さらに,コンピュータプログラムによる自動プレイにより,世界三大将棋および日本の将棋類を対象として平均合法手数と平均終了手数などの統計的データを採取した.その結果,将棋類の進化的変遷において,持駒再使用ルールの付加が現代将棋に進化する上で重要な変化であることを確認した.本研究の最終目的は,ゲームの進化や発展における普遍的な法則を見出すことである.SHOGI, CHESS, and XIANGQI (Chinese chess) are the major world-wide-popular chess-like games which have been played for many centuries. In this paper, we propose an estimate given by √<B>/D for the average possible moves B and game length D. We also propose a method called self-random play to analyze games, by which we perform experiments with the above three chess-like games and SHOGI variants. The results of the experiments suggest us that the reuse rule of SHOGI is an important step in the course of evolutionary changes of SHOGI. The present aim is to explore the universal way of the evolution of the games.
著者
佐々木 宣介 梶原 羊一郎 飯田 弘之
出版者
一般社団法人日本応用数理学会
雑誌
日本応用数理学会論文誌 (ISSN:09172246)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.327-334, 2000-12-15

It is supposed that HEIAN SHOGI is an ancient variant of the MODERN SHOGI (Japanese CHESS). When two experienced players play a game of HEIAN SHOGI, they often reach a 'King-and-Gold vs King'endgame. This paper presents the results of computer analyses of this 'King-and-Gold vs King'endgame to explore the evolutionary changes of the characteristics of games. The analyses were done in the various sizes of square board. The loop positions, that are included neither in the winning position of 'King-and-Gold'side nor in the obvious draw positions, appear in larger than 11×11 board, and these loop positions account for above 80% of all positions. And the number of steps of the longest position-to-mate approach to a certain value. These results mean that the characteristics of games radically change in the different size of the board. It is hoped that these results give us important suggestion to suppose why the ancient SHOGI variant changes to 9×9 board (MODERN SHOGI).
著者
飯田 弘之
出版者
情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.527-532, 2012

本稿では,ゲームの三つの側面(競技性・遊戯性・知的相互作用)に注目し,「ゲーム=知層」の観点からゲーム研究の流れについて概観する。競技性を重視したミニマックス戦略から相手モデル探索への移行,遊戯性の主要因の一つであるスリル感に基づくゲーム洗練度の理論,そして,ゲーム場における知的相互作用として試合中の情報の流れをモデル化するゲーム情報力学を紹介する。ゲームにおける人間とコンピュータの知能の相違に焦点をあてながら,投了に現れる知性の豊かさ,相手モデルにみる人間の知性の賢さ,ゲームのルール変遷に現れるスリル感の変遷,そして,ゲーム情報力学のアプローチによるゲーム場における知的な相互作用の解析例を示す。 : In this article we present an overview of game research based on the model of three masters: the master of winning, the master of playing and the master of understanding. They correspond to each of the three aspects that games possess: competitiveness, entertainment, and interaction between intelligences of players. Then the human intelligence and artificial intelligence are compared with focus on the “resigning” in games, and “opponent modeling”. Moreover, we introduce two innovative approaches: “game-refinement theory” and “game information dynamics” to observe the two aspects of games: entertainment and intellectual interaction, respectively. A man-machine match is shown to analyze the information energy in the field of game.
著者
石飛 太一 飯田 弘之
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2015論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.126-131, 2015-10-30

探索中に得られた情報を探索以外の目的に利用することはときに有効であると考えられる.本研究では,証明数探索で求められた証明数・反証数および探索ノード数を詰め将棋コンクールにおける順位と比較し,これらの探索指標をパズル問題の感性評価のために用いる.これらの探索指標はパズル問題において難易度を表すことを確認し,コンクールの順位付けと難易度には密接な関係があることがわかった.
著者
佐々木 宣介 飯田 弘之
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.2990-2997, 2002-10-15

本研究では,ゲームのルール変遷の根底にあるゲームの性質の変化に着目し,将棋の歴史的変種を比較する.最初に,ゲームの性質に関する比較を行うための2つの指標を提案する.これらの指標はそれぞれ,ゲームの面白さとゲームの決定複雑性を表すもので,平均可能手数,平均終了手数に基づいて算出される.すでに廃れてしまった将棋種に関しては,コンピュータプレイヤを用意し,それらのデータを採取した.本研究で用いたコンピュータプログラムは駒価値をベースにした評価関数を持ち,先読み探索を行う.各将棋種に対して駒価値を自動学習するために,Temporal Difference学習法を適用した自動対戦の実験を行い,各将棋種に対するデータを採取し,比較を行った.重要な知見として,大駒付加よりも持ち駒使用ルールがルール変遷の過程でより大きなインパクトを与えていること,そして,あまり難しくなりすぎないようにルールが洗練されてきたことが分かった.
著者
竹内 章 鵜木 祐史 飯田 弘之
雑誌
研究報告ゲーム情報学(GI)
巻号頁・発行日
vol.2015-GI-33, no.13, pp.1-7, 2015-02-26

プロ棋士レベルの柔軟な戦略や芸術性評価の実現には,エキスパート特有の何らかの評価指標が関与しているものと想定される.そのような評価指標の有力候補として,局面の難易度があげられる.本稿では,将棋を題材とした局面の難易度推定のために,ゲーム木のリーフノードにおける評価値の正/負の比率を計測し,カルマンフィルタを用いて解析する手法を提案する.提案手法を用いてプロの棋譜を解析した結果,ルートノードとリーフノードの評価値の相関係数に着目することで,局面の難易度を推定できることを確認した.
著者
飯田 弘之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ゲーム情報学(GI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.64, pp.25-32, 2004-06-18
被引用文献数
4

本稿では,ゲームの均衡という視点からゲームの諸性質を論じる。ゲームの終了手数は表面的には均衡状態がどれほど続いたかを示している。プレイヤの実力と終了手数の関係にはシーソーゲームの法則が働いている。ゲームの進化は,歴史の流れの中で人の知が何を求めてきたかを断片的に示している。ゲームという不確定性の中に公平性とスリルを求めてきたという点では世界共通であるが,引分けの生起率においては世界のチェス種の中で日本将棋が独自性を顕にしている。This paper discusses games' various characteristics in terms of game equilibrium. Game lengths indicate how long the equilibriums last on surface. The principle of seesaw game is in effect between playing strength and game lengths. Evolution of games reveals a glimpse of what human intelligence has sought in the history. All the games in different parts of the world are similar in the fact that man plays them while seeking both thrill and fairness from them. However, in terms of the possibility of draw, or lack thereof, there is no equal to the Japanese shogi among all the chess-variant games.
著者
作田 誠 飯田 弘之
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.1-10, 2002-01-15

不完全情報2人ゲームである衝立将棋の詰め問題を題材として,不確定性を持つ問題をAND/OR木探索として決定論的に解く手法を導入する.このAND/OR木は詰将棋など通常の完全情報2人ゲーム問題において生成されるものに比べてより一般化されており,節点はそれぞれ不確定性を持つ.探索アルゴリズムとして,局面表を活用した全幅深さ優先反復深化探索(ID),および証明数探索の深さ優先版の一種であるPDSを実装し動作を調べた.またPDSを不確定性のあるAND/OR木の探索に特化させたUPDSを開発しパラメータを変化させて動作を調べた.さらに,UPDSにおいて実行時にパラメータを順次変化させて解けるまで繰り返し探索を行うdpUPDS,および,UPDS,IDにおいて不確定性の探索閾値を小さな値から順次増加させて解けるまで繰り返し探索を行うuidUPDS,uidIDというバリエーションを考案・実装し動作を調べた.dpUPDS,uidUPDS,uidIDは解答能力が高く,特にuidUPDSはすべての問題を解いた.しかし,確実に最適解を得る効率の良い探索法は課題として残る.
著者
飯田 弘之
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

将棋ソフトは近年大幅に改善されてきた。早指しであればコンピュータが名人に勝つことも不可能ではない。本研究で開発した将棋ソフトTACOSは,研究開始当時,他の将棋ソフト同様,序盤や中盤などいくつかの致命的な欠点があった。本研究における様々な技術的進歩によってTACOSの強さは大幅に改善され人間を超えるほどに至った。顕著な進歩の例として,証明数を用いたAND/OR木探索があげられる。その他多くの改良により名人レベルに到達できた。
著者
佐々木 宣介 飯田 弘之
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.2990-2997, 2002-10-15

本研究では,ゲームのルール変遷の根底にあるゲームの性質の変化に着目し,将棋の歴史的変種を比較する.最初に,ゲームの性質に関する比較を行うための2つの指標を提案する.これらの指標はそれぞれ,ゲームの面白さとゲームの決定複雑性を表すもので,平均可能手数,平均終了手数に基づいて算出される.すでに廃れてしまった将棋種に関しては,コンピュータプレイヤを用意し,それらのデータを採取した.本研究で用いたコンピュータプログラムは駒価値をベースにした評価関数を持ち,先読み探索を行う.各将棋種に対して駒価値を自動学習するために,Temporal Difference学習法を適用した自動対戦の実験を行い,各将棋種に対するデータを採取し,比較を行った.重要な知見として,大駒付加よりも持ち駒使用ルールがルール変遷の過程でより大きなインパクトを与えていること,そして,あまり難しくなりすぎないようにルールが洗練されてきたことが分かった. : This study explores how the evolutionary changes of the rules affect the characteristics of the games in the Shogi species from the viewpoint of evolutionary selection. For this purpose, we propose two measures based on the average number of possible moves and the average game length: (1) measure for entertainment, and (2) measure for decision complexity. For games where no grandmaster games are available, the statistics of specific features, such as the average number of possible moves and the average game length, are obtained by the method of self-play experiments. Then we made computer programs that performed lookahead search using an evaluation function based simply on piece-material balance. To obtain the appropriate piece values of Shogi variants, we apply Temporal Difference Learning method. Based on the data obtained by the above self-play experiments, Shogi variants including the modern Shogi and ancient Shogi variants are analyzed and compared. Through the analysis, we observed that the inclusion of the reuse rule was more important step than the inclusion of the major pieces in the course of evolutionary changes from Heian Shogi toward modern Shogi. We believe that the proposed measures are useful tools for building a genealogical tree of chess-like games.
著者
田中 盛一 藤井 勝之 徳田 浩 飯田 弘之 乾 伸雄 小谷 善行
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第50回, no.人工知能及び認知科学, pp.151-152, 1995-03-15

将棋において詰将棋の分野というのは大変重要な位置にある。詰将棋が将棋の勝ち負けを決する重要な要素に成りうるからである。そのため多くの将棋システムでは、まず詰将棋の探索を行ない、詰め手が存在しなければ通常の探索を行なうことが多い。しかし詰将棋探索ははとんどの場合不詰めを返してくるので、かなり時間の消費になる。詰将棋探索をまったくしないのはリスクが大きく、重要な場面で詰みが読めずに負けることになってしまう。そこで、本研究では詰みがあるかどうかを静的に判定する評価関数の実現を試みた。この評価関数は、ある将棋の局面を引数としてその情報から探索をせずに詰みがあるかどうかを数値で返す関数である。これは参考文献における一手詰めの計算の発展課題であるといえる。本稿で用いる用語を次のように定義する。王の退路 王手をかけられずに王が移動できる場所相手側の利きや、味方の駒、盤外、などによつて移動できない場所を8から引いた数である。したがって、0~8の整数値をとる。自勢力 先手の利きがあり、後手の利きがない場所