- 著者
-
横澤 直人
関本 義秀
- 出版者
- 公益社団法人 日本都市計画学会
- 雑誌
- 都市計画論文集 (ISSN:09160647)
- 巻号頁・発行日
- vol.54, no.3, pp.1475-1482, 2019-10-25 (Released:2019-11-06)
- 参考文献数
- 18
我が国では1990年代以降,国際化の進展や本格的な少子・高齢化社会の到来を背景に,都市計画分野において分権化が進められてきた.各種の権限移譲に伴い,地方自治体が地域の実情に即した柔軟な計画策定が可能になった半面,市町村間での計画の不整合や競合が課題となってきた.従来の研究では,主として実証的な立場から都市計画策定段階における広域調整の必要性が示されてきたが,実際に広域調整を行うための支援手法は開発されてこなかった.本研究では,都市計画マスタープラン及び立地適正化計画を念頭に置いて,都市計画の方針及び立地規制の厳格さの調整問題を対象として,市民の立地行動と計画の影響を考慮した将来土地利用予測シミュレーションを構築し,広域調整の影響評価手法を開発した.シミュレーションを富山県内の市町村に対して適用し,検証実験や現地でのヒアリング調査,実際の事例との比較などを通じて手法の妥当性を確認するとともに,広域調整の影響に関する新たな知見を獲得することが出来た.今後は,シミュレーションの高度化や他の広域調整問題への対応,ユーザビリティ改善などを図ることが望まれる.