著者
小野 雅史 小池 俊雄 柴崎 亮介
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.514-525, 2016-11-01 (Released:2016-11-01)
参考文献数
14
被引用文献数
1

研究データの共有に向けた研究コミュニティーの合意形成ならびにポリシー設計を,国家の枠組みを超えて包括的に実施しようとする活動が国際的に進行しているが,実際にはオープンデータ先進国の欧米豪においても,立場の違いからさまざまな言説が存在する。特に政策と実践とのギャップについては慎重に議論されており,研究現場の実態を把握するためにさまざまな調査が行われている。国内でも,急速に変化する国際動向に対応すべく,オープンサイエンスに関する議論が始まるようになったが,現在のところ,国内の研究現場の実態調査はまだほとんど行われていない。こうした背景から,本稿では地球環境情報分野の研究者の協力の下,研究データ共有に関する意識調査を実施した。本調査から,自身のデータの提供を前向きに考えている研究者であっても,さまざまな事情から完全な実現には至っていない実情等が明らかとなった。
著者
北本 朝展 川崎 昭如 絹谷 弘子 玉川 勝徳 柴崎 亮介 喜連川 優
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.413-421, 2015-09-01 (Released:2015-09-01)
参考文献数
6
被引用文献数
3

地球環境情報統融合プログラムDIASは,大規模かつ多様な地球観測データを中心に,社会経済データなどとも統融合することで,環境問題など社会課題の解決に有用な情報を国内外に提供することを目的とする。DIASは研究データの基盤システムを構築するだけでなく,基盤システム上のアプリケーション開発を主導するコミュニティを確立している点で,世界的にもまれなプロジェクトである。本稿ではまずDIASの概要を紹介し,DIASが基盤システム,アプリケーション開発,研究開発コミュニティという3つのシステムから構成されることを述べる。次にデータ共有の観点から,データアクセス,メタデータ,データポリシーに関するDIASの考え方をまとめる。そして,DIASが国際的な社会課題解決に貢献した例として,チュニジアを対象に行った気候変動予測に基づく洪水対策の立案に資するデータ統合解析を紹介する。最後にDIASの研究開発における今後の方向性について考える。
著者
越村 俊一 江川 新一 久保 達彦 近藤 久禎 マス エリック 小林 広明 金谷 泰宏 太田 雄策 市川 学 柴崎 亮介 佐々木 宏之
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2021-07-05

リアルタイムシミュレーション,センシングの融合による広域被害把握,被災地内外の人の移動と社会動態把握,医療需要および被災地の医療活動状況を入力としたマルチエージェントシミュレーションで構成する仮想世界でのwhat-ifの分析を通じて,物理世界となる被災地での災害医療チームの活動を支援するための「災害医療デジタルツイン」を構築する.災害医療の最前線で活動する研究者との協働を通じて,南海トラフ連続地震により連続して来襲する津波のリスク下において,医療システムの一部の機能が一定期間低下しても,被災地内外の災害医療の機能を速やかに回復できる医療レジリエンスの再構築を先導する.
著者
黒川 茂莉 石塚 宏紀 渡邊 孝文 村松 茂樹 小野 智弘 金杉 洋 関本 義秀 柴崎 亮介
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告モバイルコンピューティングとユビキタス通信(MBL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.18, pp.1-6, 2014-05-08

携帯電話通信時の位置情報履歴は,全国を網羅的に人々の移動が把握可能であるため,都市交通施策などへの応用が期待されている.都市交通施策のあり方を検討するために国士交通省を始め各自治体で実施されているパーソントリップ調査では,人々の滞在地,滞在時間だけでなく滞在目的も重要な調査項目となるが,滞在目的推定の研究はいまだ不十分である.そこで本稿では,携帯電話通信時の位置情報履歴から,個人の滞在地及び滞在時間を検出し,自宅,職場,お出かけ先などの各滞在地に対する滞在目的を推定する手法を評価する.評価では,利用同意を得た 1250 名の 4 週間の位置情報履歴と行動に関する Web アンケート結果を用いた.Location information associated with communication records of mobile phones has paid attention as a probe for person trips. In this paper, we evaluate a methodology to estimate semantics of significant places extracted from locations associated with communication records. The accuracy of the methodology is demonstrated by experiments using actual communication records of 1250 subjects.
著者
砂原秀樹 山内正人 金杉洋 柴崎亮介
雑誌
マルチメディア、分散協調とモバイルシンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.1024-1026, 2014-07-02

位置情報を含むさまざまな情報を収集し活用することで有益な情報を生み出すことは可能であるが、そこに含まれるパーソナル情報をどのように扱うべきかについてはさまざまな議論がある。「情報銀行」の取組は、パーソナル情報を取り扱うHUBとなる組織を介し、安全にそして安心してパーソナル情報を預けられるようにし、それらを活用する試みである。本論文では、「情報銀行」の構想について紹介すると共に、それが目指す仕組み、特に技術的課題について述べる。また、「情報銀行」を実現するため我々はインフォメーションバンクコンソーシアムを設置した。ここでは、技術、社会受容性、利活用について検討を行い、「情報銀行」を実現するための研究・開発・実証実験を行う予定である。実現のためには、技術的課題だけを解決すればよいのではなく、そのメリットを正しく認識し、こうした仕組みが社会に受け入れられるために必要な事柄を整理する必然性がある。この組織は、こうした課題に取り組み、その成果を公開していくことを目標としている。ここでは、インフォメーションバンクコンソーシアムの活動についても概説する。
著者
有冨 孝一 上坂 克巳 柴崎 亮介
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.623-634, 2010 (Released:2010-12-20)
参考文献数
56

図面による土木構造物のモデル化は,寸法値により設計意図を適切に表現できる.しかし,図面上の座標値は,表現できる精度が用紙の大きさにより制約を受けるので,実寸大の座標値を正確に再現できない.また,平面直角座標系による座標値は地球の曲率による縮尺補正,標高差による投影補正が必要である.しかし,これらの補正では1万分の1の精度までしか補正できず,標高軸が現場の標高軸と異なる.  本研究は,土木構造物の3次元設計モデルを,地球を3次元多様体空間と仮定し,任意の地点で地表の水平面が重力方向の方向軸と鉛直な3次元直交座標系を使用でき,設計長と実測延長と比較検証して一致することを示した.
著者
金杉 洋 瀬戸 寿一 関本 義秀 柴崎 亮介
出版者
一般社団法人 地理情報システム学会
雑誌
GIS-理論と応用 (ISSN:13405381)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.43-48, 2019-06-30 (Released:2021-06-30)
参考文献数
6
被引用文献数
1

OpenStreetMap (OSM), well-known as one of famous and continuous Volunteered Geographic Information (VGI) activities to establish open geospatial database, has been updated and maintained by a lot of volunteers all over the world day by day. In addition, OSM has attracted various kinds of users due to its worldwide coverage and open license. However, as volunteer mappers have generated or have edited OSM data, data quality such as positional accuracy, completeness and freshness is heterogeneous in different regions. Therefore, it is required and important for OSM users and mappers to evaluate data quality quantitatively and regularly. Especially, in Japan, there are not existing researches dealing with nationwide usability of OSM road data by comparing with other road data. Toward discussing significant criteria of data quality assessment, this paper describes the comparison results between OSM road data and Digital Road Map (DRM), on the perspective of positional difference and area coverage in 1 km grids and city boundaries.
著者
穴井 宏和 柴崎 亮介
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.228-239, 2022-04-25 (Released:2022-04-25)
参考文献数
22

本研究の目的は,起業家の出身大学・出身企業とスタートアップの地理的近接性が成長に影響することを明らかにすることである.起業家の出身大学・出身企業は,外部リソースを調達するためのソーシャルキャピタルである.スタートアップのミッションは,社会課題を解決してイノベーションを引き起こすことと短期間で高成長を実現することとである.一方で,創業初期のスタートアップには,成長のためのリソースが不足している.起業家は,社会的なつながりであるソーシャルキャピタルを通してリソースを動員する必要がある.本稿では,スタートアップが成長するためには,単にスタートアップ集積地に立地することでは効果がなく,リソースとの近接性が成長要因であることを主張する.
著者
長井 正彦 大平 亘 小野 雅史 柴崎 亮介 吉田 智一 瀬下 隆
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.27-33, 2017 (Released:2017-06-30)
参考文献数
14
被引用文献数
1

農業に関する用語のセマンティックな標準化を検討し,標準化された農業用語を通して農業情報の相互流通を支援するために,農業オントロジー,農業用語の構築および管理をするためのツールを開発した.オントロジーは,厳格に概念の整理方法を規定してきちんと作成するものから,自然言語処理に使うため構造化された語彙集,一般の辞書レベルまで幅広く定義されているが,本研究では,農業情報の標準化や共有化のキーとなる情報として,一般的な農業用語集,農業ITシステムで扱われているキーワード,また標準化された農業共通語彙などを農業オントロジー情報として収集した.構造化されていない農業用語に関しては,RDF/SKOSに変換し,統一されたフォーマットで管理するオントロジーブローカーを開発した.収集・登録した農業オントロジー情報のマッチングを行い,言葉の揺らぎや,同義語,同意語等の関連付けができるようにし,横断的に検索できるようなWebAPIを構築した.オントロジー構築ツールを通して,現在運用されている農業ITシステムで用いられている農業語彙から,徐々に標準化された農業に関する名称への変換を支援することを目指す.
著者
穴井 宏和 柴崎 亮介
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.1055-1062, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
18

本研究の目的は、(1)スタートアップ及びそのエコシステムの集積状況を明らかにする、(2)エコシステムの空間的な特徴と課題を抽出して、スタートアップ支援政策等に生かすことである。既存研究では、スタートアップのみ、投資家のみの立地分析を行ったものが多かった。一方で、スタートアップ、投資家、大学・研究機関などで構成されるエコシステムを一体的に研究した例は少ない。本研究では、スタートアップとその支援機関の共集積の状況を2変量ローカルモラン統計量によって明らかにしたのが特徴。検証の結果、スタートアップの集積がありながら支援機関が少ないエリアとして、東新宿、代々木、五反田、茅場町、芝浦などがあることが明らかになった。これらの地域は、政府・民間のスタートアップ支援によってエコシステムを強化できる可能性がある。
著者
中村 克行 趙 卉菁 柴崎 亮介 坂本 圭司 大鋸 朋生 鈴川 尚毅
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.7, pp.1143-1152, 2005-07-01
被引用文献数
22

本論文では, 複数のレーザレンジスキャナを用いた歩行者トラッキングの方法, 及び駅での検証実験について述べる.提案手法は, ネットワークを利用して複数のレーザスキャナを同期させ, 得られた足断面のレンジデータから歩行者トラッキングを行う.トラッキングアルゴリズムは次の機能で構成される: レンジデータのクラスタリングによる足候補の検出, 足候補のグルーピングによる歩行者候補の検出, 歩行者候補の動きベクトル検出, 歩行モデルに基づく拡張カルマンフィルタによる既存軌跡の延長処理.提案手法を東京都内の駅構内コンコースに適用した結果, 最大で約150人を同時にトラッキングすることができた.トラッキング精度は, 通勤ラッシュ時において8割を超えた.広範囲における高密度の群集計測への応用が期待される.
著者
金杉 洋 松原 剛 柴崎 亮介 杉田 暁 福井 弘道
出版者
一般社団法人 地理情報システム学会
雑誌
GIS-理論と応用 (ISSN:13405381)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.57-62, 2017-12-31 (Released:2019-12-31)
参考文献数
8
被引用文献数
1

The number of climbers in Japanese mountains have increased for recent years, and climbing and hiking have been getting constructive fields in tourism. However, some climbing beginners, especially middle aged and older people, who are overconfident on own physical strength sometimes encounter serious accidents and distresses. Actually, an accident and a distress in a mountain have also increased in these years. In order to achieve safer mountain climbing, it would be effective to aggregate and analyze individual climbing experiences in accordance with not only individual conditions but also mountain environments even if there is poor network connection and power supply. Therefore, this paper aims to organize available datasets for analysis of practical behavior of mountain climbers, and describes methods to obtain climbing behavior data even for middle and older people under poor network and power environment. In particular, we implemented a cloud system to aggregate online-submitted climbing plans, and a check-in app using individual owned IC-cards. Finally, this paper describes some findings and discussions through our field experiments.
著者
帷子 京市郎 鈴木 智之 中村 克行 趙 卉菁 柴崎 亮介 仲川 ゆり
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. CVIM, [コンピュータビジョンとイメージメディア] (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.158, pp.229-236, 2007-03-19
参考文献数
13
被引用文献数
1

本論文では,面的に測距を行うレーザスキャナを用いた群集の追跡手法,及び駅での検証実験により求められた群衆流動の可視化の方法について述べる.提案手法は,複数のレーザスキャナを時間的・空間的に同期させ,計測された歩行者の足断面のレンジデータから複数の歩行者を追跡する.追跡アルゴリズムは,レーザポイントに対して単純な時空間的クラスタリングを行うことで,実時間の処理を可能にしている.さらに得られた多数の軌跡データに対して位置と方向を考慮した三次元的なカーネル密度推定を行うことで,群衆流動の方向や通行密度,サイズといった情報の可視化を行う.また,得られた軌跡に対してOD別通行量の精度を評価した.
著者
小川 芳樹 秋山 祐樹 金杉 洋 柴崎 亮介
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.140-155, 2018 (Released:2018-04-13)
参考文献数
17
被引用文献数
2

将来予測されている南海トラフ地震が発生した場合における危機管理対応を的確に実施するために,本研究は高知市周辺を対象として,近年の観測技術の向上に伴い蓄積されている観測ビッグデータを用いて被害予測に適用可能なミクロデータを整備することで高精細な被害推定を目指す.そのためにGPS付帯の携帯電話のプローブデータ,住宅地図,電話帳などのジオビッグデータを用いて時空間内挿することで,季節ごとの数日間ずつを対象に15分単位の詳細な人の流動が把握できる人流データを開発した.また,整備した人流データを用いて津波・倒壊・火災による人的被害を統合的に推定する環境を構築した.さらに,多様な被害推定結果を分析することで地域ごとの被害尤度分布を明らかにし,地域ごとに起こり得る最大被害・最尤被害を明らかにした.その結果,地域により被害が大きくなりやすい地域とそうでない地域の分布が明らかになった.
著者
松原 剛 金杉 洋 熊谷 潤 柴崎 亮介
雑誌
マルチメディア,分散協調とモバイルシンポジウム2016論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.1550-1555, 2016-07-06

平常時から継続的に人々の流動や分布を把握することは,様々な分野の基盤情報として需要が拡大しつつある.人々の流動を把握する手段として,屋外においては GPS を利用した衛星測位技術が確立しているが,地下や屋内等 GPS が利用できない場所では,様々な屋内測位手法が提案されており,施設ごとに独立して設置されている.人々の流動や分布の変化を屋内施設 ・ 地下空間に渡って捉えるには,少なくとも施設単位の粒度で位置を特定する必要がある.本論文では東京都内の地下鉄駅を対象に,携帯電話網の通信で参照される基地局セル ID と各地下鉄駅の対応表を作成し,地下鉄利用時の利用駅の推定を試みた.
著者
黒川 茂莉 石塚 宏紀 渡邊 孝文 村松 茂樹 小野 智弘 金杉 洋 関本 義秀 柴崎 亮介
雑誌
研究報告モバイルコンピューティングとユビキタス通信(MBL)
巻号頁・発行日
vol.2014-MBL-71, no.18, pp.1-6, 2014-05-08

携帯電話通信時の位置情報履歴は,全国を網羅的に人々の移動が把握可能であるため,都市交通施策などへの応用が期待されている.都市交通施策のあり方を検討するために国士交通省を始め各自治体で実施されているパーソントリップ調査では,人々の滞在地,滞在時間だけでなく滞在目的も重要な調査項目となるが,滞在目的推定の研究はいまだ不十分である.そこで本稿では,携帯電話通信時の位置情報履歴から,個人の滞在地及び滞在時間を検出し,自宅,職場,お出かけ先などの各滞在地に対する滞在目的を推定する手法を評価する.評価では,利用同意を得た 1250 名の 4 週間の位置情報履歴と行動に関する Web アンケート結果を用いた.
著者
木村 元紀 柴崎 亮介 長井 正彦
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.28, 2014

画像から人を認識・追跡することは,防犯用途や人流動の計測などの実用上重要であり,多くの研究がなされている。しかし,そのほとんどは固定カメラを利用したものであり,カバーできる範囲は広くない。本研究では小型無人航空機にカメラを搭載し,空中を移動しながら撮影した画像列から人を認識・追跡する手法を提案する。提案手法は広範囲における人流動の可視化や災害時の要救助者の発見などに役立てることができる。