著者
平井 章一 Jian XING 甲斐 慎一朗 堀口 良太 宇野 伸宏
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.A_36-A_45, 2017-04-01 (Released:2017-04-01)
参考文献数
11

本研究は,都市間高速道路における休憩行動の実態が体系的には明らかではない背景の下,休憩行動のモデル化の前段として,ETC2.0 プローブデータの走行履歴情報を利用したトリップ毎の休憩行動データベース構築手法を検討し,休憩行動抽出に際しての走行履歴情報の特性把握,休憩行動の定量的な把握と,基礎分析を通じてモデル化に向けた知見の整理を行った。 休憩行動データベース構築にあたっては,非渋滞時では高い精度で休憩行動を抽出できた。また,「通過」と「休憩」の判定が難しい渋滞時に対しても,簡易な判定方法を示した。また,基礎分析を通して,車種構成の偏りや日跨ぎのトリップの不生成などの,現状での ETC2.0 プローブデータ利用の留意点や,休憩時間分布や休憩回数等の基礎集計結果,1 トリップ中の複数回休憩の関係性などの知見を得た
著者
後藤 誠 石田 貴志 野中 康弘
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.A_90-A_98, 2019-02-01 (Released:2019-02-06)
参考文献数
10

高速道路の交通性能は、道路条件や走行環境条件(気象条件)、交通条件によって変化することが知られており、そのうち交通条件はドライバーの属性や自動車の性能に依存し、経年的に変化している可能性があったことから、QV の経年変化を分析した。平成 15 年から平成 28 年を対象に 39 地点の QV 図を比較した結果、ほぼ全ての地点で自由流時速度や実現最大交通量、渋滞発生後捌け交通量が経年的に低下していることを確認した。また、実現最大交通量は平均で約 7%、平均速度は 7 ~ 9% 低下していることを明らかにした。これらより、交通性能の経年的な低下傾向は広いエリアで同様に発現していることから、局所的な地点の特性によるものではなく、社会全体の様々な制度変化やドライバー属性の変化等がこれに影響している可能性があることを示唆した。
著者
幸坂 聡洋 宮本 和明 前川 秀和
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.3, no.5, pp.21-28, 2017-07-01 (Released:2017-07-01)
参考文献数
26

2012 年、国土交通省及び警察庁は自転車の車道通行を大原則とした「歩行者・自転車・自動車を適切に分離した自転車通行空間設計」の考え方等をとりまとめ、新たな自転車通行空間として自転車レーンが位置づけられた。自転車レーンは、自動車交通量の多い道路においても整備されるケースがある。しかし、その効果を交通事故の観点から報告している例は少ない。 そこで、本研究では、東京都区内の自動車交通量の多い道路3区間における自転車レーン整備前後の交通事故発生状況を分析した。その結果、自動車交通量の多い道路では自転車レーン整備後に自動車対自転車の交通事故件数の増加がみられた。さらに、増加した交通事故の特徴を明らかにし、これを踏まえた自転車通行空間の安全性向上に向けた改善方策の検討を課題として提示した。
著者
松田 啓輔 柳原 正実 小根山 裕之
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.A_78-A_86, 2020-02-01 (Released:2020-02-06)
参考文献数
9

交差点の安全性や効率性について、交差点構造や現示パターンに着目した研究はあるが、信号灯器の位置に着目した研究は少なく、灯器位置の違いによる運転挙動の違い等の知見も十分に得られていない。 そこで本研究では、信号灯器の位置に着目し、日本で主流の交差点の右手前・左奥(far)と、ドイツなどで主流の交差点の左手前(near)による、交差点性能の違いについて、ドライビングシミュレータを用いた実験により得られた運転挙動データを用いて評価した。交差点性能を評価するための指標として、安全性については、「通過判断率と追突可能性」及び「交錯点通過時間差」、円滑性については「交差点の交通容量」を用いた。その結果、far より near の方が、円滑性および安全性の両方で性能が高い可能性があることを示した。
著者
両角 岳彦 割田 博 赤羽 弘和 稲吉 龍一 加藤 周平
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.B_13-B_21, 2017-02-01 (Released:2017-02-01)
参考文献数
3

都市高速道路の側壁には、自動車による擦過痕が相当数存在する。これらは、接触した部位や角度、車両速度によって、様々な色彩や形状を示す。特に、大型貨物車は施設接触後も自走可能な場合が、より小型な車両と比較して多く、物損事故としても記録が残りにくい。本研究では、高速道路側壁をビデオ撮影し、擦過痕画像を取得した。また、擦過痕画像は正対化により詳細な特徴を抽出し、位置情報と共にデータベース化した。擦過痕の分布状況と事故データを比較し、危険区間を抽出した。これらと道路幾何構造を統合分析し、擦過痕が形成された車両挙動の仮説を構築した。また、大型貨物車の実測検証を行い、速度変化の実態と、線形により加速が始まる箇所を確認した。
著者
金子 雄一郎 芦田 佳輝
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.A_65-A_74, 2016-02-05 (Released:2016-02-05)
参考文献数
5

本研究は、鉄道の運転見合わせ時における他社線等への振替輸送のうち、路線バスに着目してその実態を把握したものである。具体的には、バス事業者が保有している振替輸送の実績データを用いて利用動向を把握した上で、運転見合わせの発生時間帯や支障時間の程度、路線エリアなどとの関係を分析した。さらに、鉄道利用者を対象に Web アンケート調査を実施し、運転見合わせ時における交通行動や路線バスへの振替輸送の利用経験の有無などを把握した。その結果、鉄道の運転見合わせ時において、支障時間が長い場合にはエリアに関わらず振替輸送の利用が多く、一方で支障時間が短い場合には、バスによる移動距離が短いエリアを中心に利用される傾向が見られるなど、路線バスへの振替輸送が一定の役割を果たしている実態が明らかになった。
著者
山中 英生 原澤 拓也 西本 拓弥
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.A_15-A_21, 2017-04-01 (Released:2017-04-01)
参考文献数
13

国・警察による「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」では,自転車専用通行帯や車道混在を中心とした自転車ネットワーク形成方針を示している.一方,自転車利用者の多くは車道通行に不安を感じており,車道部の自転車通行空間の普及には “安全感” 確保のための街路交通条件を明らかにすることが肝要と言える.本研究は、自転車の車道走行時の安全感に影響を与える要因を明らかにすることを目的としている.そのため,東京都内の街路交通特性の異なる街路 22 区間についてビデオクリップ・アンケートを用いて、サイクリストの安全感とその要因への意識を調査し、安全感に影響を与える要因及び街路交通特性との関係を分析した.その結果,「追い越され」の要因が高く,レーン設置,通行帯幅確保が安全感向上に寄与することが明らかになった.
著者
村井 宏徳 加藤 明里 神戸 信人 高瀬 達夫 鈴木 弘司 森田 綽之
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.B_67-B75, 2017-02-01 (Released:2017-02-01)
参考文献数
2

宮崎県児湯郡川南町の一般国道 10 号には,沿道商業施設の往来等から,乱横断する歩行者・自転車が多く,死亡事故が発生する単路区間が存在していた.このため,交通安全対策として,我が国で初めて信号機を設置せず,横断歩道を食い違いに配置した無信号の食い違い二段階横断施設が導入された.本研究は,我が国で初めて導入された,この二段階横断施設の導入効果を明らかにするために,導入前後に実施した各種調査の結果を用いて,二段階横断施設の安全性,円滑性の評価と,横断特性の変化を分析した.分析の結果,二段階横断施設の利用者が増加して乱横断が減少し,車両と接近した横断の減少や横断待ち時間の短縮等の安全・円滑面の効果が確認できた.また,歩道部より横断待ち時間が短縮する等の食い違い二段階横断の特性が確認できた.
著者
飯田 健太 小根山 裕之
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.A_163-A_171, 2017-02-01 (Released:2017-02-01)
参考文献数
27

本研究は,ラウンドアバウトの課題の一つと考えられる,出口の進行方向がわかりにくい,方向感覚がなくなるなどの問題に対応するため,ローマ数字を表示した案内標識をラウンドアバウト環道内に設置し,ドライバーの迷いの軽減効果について,ドライビングシミュレータを使用した評価実験により分析したものである.環道走行時の迷いを主観的に 5 段階評価したときの平均値が,原案と改良案の間には有意な差があることなどから,提案した案内標識は出口の進行方向をわかりやすくするために効果があったことを示した.一方,アイマークレコーダーの分析により,改良案は標識への注視割合が高くなり,前方への注意が削がれる可能性があることが指摘された.
著者
合田 理人 外井 哲志 大枝 良直
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.A_82-A_90, 2022-02-01 (Released:2022-02-18)
参考文献数
13

今後老朽化の進む高速道路の点検や補修のための工事によって各所で車線規制による渋滞の頻発が予想される.このときの交通状況を改善する合流方法として交互合流法がある.工事車線規制渋滞時の交互合流を定着させるためには, ドライバーに交互合流に関する適切な情報を提供して心理的負荷を軽減し,交互合流への協力意識を向上させる必要がある.そこで本研究では,交互合流に関する情報を道路標識で提供するドライビングシミュレータを作成し,情報内容の違いによるドライバーの心理や合流区間での運転挙動の変化を分析した.その結果,ドライバーが走行する車線やその隣接車線でのとるべき行動を道路上で教示することで,ドライバーの心理的負荷を軽減し,交互合流への協力意識を向上させ,さらにより安全でスムーズな合流行動を促進し得るという結果を得た.
著者
坪井 志朗 三村 泰広 嶋田 喜昭 菅野 甲明
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.A_342-A_348, 2023-02-01 (Released:2023-02-24)
参考文献数
9

近年、自転車が身近で有用な移動手段として重要な役割を担っている。また、自転車が安全に走行するためには、自転車と自動車、自転車同士、自転車と歩行者との錯綜機会を少なくすることが重要である。本研究では、愛知県内において自転車通行空間を整備している区間を対象に、事故件数の変化やその要因分析から自転車関連事故への影響について検討した。その結果、自転車通行空間整備前後1年間の短期的な自転車関連事故件数の変化の面では即効的な整備効果は確認できなかったこと、車道混在や自転車専用通行帯を整備することで自転車関連事故が減少するものの、車道混在整備では自転車が第一当事者となる事故が、自転車専用通行帯整備では自転車が第二当事者かつ単路での事故や出合頭の事故が増加する恐れがあることが示唆された。
著者
元田 良孝 宇佐美 誠史 堀 沙恵
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.B_1-B_5, 2017-02-01 (Released:2017-02-01)
参考文献数
6
被引用文献数
2

ここでは運転免許更新時の高齢者の意識を調査し、主として自己の運転評価と運転免許返納意識について分析を行った。盛岡運転免許センターに更新の手続きに来た70 歳以上の 155 名にアンケート調査を行った結果、運転頻度が低い人、運転の自己評価の低い人、苦手な運転行為がある人は運転免許返納の意識が比較的高いことが明らかになった。高齢運転者が運転免許更新時の実技で指導員による指摘と自分の意識する苦手な運転に違いがあり、自己評価とのギャップが存在する。返納を促進するためには公共交通等の整備とともに運転免許更新時等で自分の客観的な運転技量を認識させる必要がある。
著者
月田 光 羽藤 英二
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.A_194-A_202, 2022-02-01 (Released:2022-02-18)
参考文献数
6

新たな交通モードの挿入により駅まち空間の改変が進むなか、近年では歩行者回遊が大きなテーマとなっている。歩行者の回遊行動は経路選択モデルで記述され、経路を列挙する必要が無い再帰的ロジットモデルが使われることも多いが、既存のモデルでは全ての交差点間で同じ所要時間が仮定されているなど、将来価値の低減が正しく評価されておらず、歩行者回遊の特徴である逐次的な意思決定を正しく評価できていない。そこで本研究では、リンク長が異なるネットワークにも適用可能な、リンク長に対して一般化された時間割引率を持つ再帰的回遊モデルの定式化を行った。8 つの駅まちネットワークでパラメータ推定とバリデーション比較を行うことでモデルの妥当性とパラメータの転移可能性を検証し、さらに従来型のモデルと尤度を比較することでモデルの優位性を示した。
著者
増田 慧樹 羽藤 英二 小関 玲奈 飯塚 卓哉
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.11-20, 2022-01-01 (Released:2022-01-01)
参考文献数
25

次の災害に備えるにあたり,過去の復興都市計画の定量評価が重要である.その際,空間整備コストと避難完了人数のトレードオフを考慮する必要がある.本研究では,道路整備コストを最小化し避難完了人数を最大化するネットワークの容量構成パターンを求める,避難ネットワークデザイン問題を定式化する.また定式化において,避難スケジューリングの再現に適した再帰ロジットモデルを用いる.これを三陸沿岸に適用し,実際の人口分布と,チリ地震津波以降の高台移住施策が異なった場合の人口分布シナリオで結果を比較し,過去の復興都市計画をパレートフロンティア上で評価した.道路整備が避難に与える影響の人口分布による違いの考察や,パレート解における道路容量拡張パターンと実際の道路建設の比較により,本評価手法の有用性を示した.
著者
和田 健太郎 邢 健 大口 敬
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.1-10, 2022-04-01 (Released:2022-04-01)
参考文献数
27

高速道路ボトルネックでは渋滞発生後の捌け交通量が渋滞発生時容量より低下する現象「Capacity Drop (CD)」が一般的に観測される.この現象は古くから知られているものの,そのメカニズムについては必ずしも明らかになっていない.本研究は,高速道路サグ・トンネル部を対象に近年提案された連続体交通流理論 (Jin, 2018; Wada et al., 2020) に基づき,CD 現象を実証的に分析する.具体的にはまず,従来の CD 現象の仮説と残された課題を明確化した上で,新たな理論の考え方,構成要素,予測される帰結を整理する.そして,理論的に予測される渋滞中の交通流特性と実観測データ(感知器および ETC2.0 データ)を定性的/定量的に照らし合わせることで,理論を検証するとともに,CD 現象に対する従来にない解釈が可能であることを示す.
著者
和田 健太郎 甲斐 慎一朗 堀口 良太
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.A_1-A_8, 2022-02-01 (Released:2022-02-18)
参考文献数
15

本研究は,高速道路サグ・トンネルボトルネックを対象として,渋滞発生後の捌け交通量が渋滞発生時容量より低下する現象「Capacity Drop (CD)」の影響を低減する走行挙動を考察する.具体的にはまず,近年提案された連続体交通流理論に基づき 2 種類の CD 回避運転挙動を提案し,その定性的特性について論じる.続いて,提案した挙動を実現する(自動運転)車両の混入率と捌け交通量の低下度合いの関係を理論およびシミュレーションにより定量的に分析する.そして,(i) CD 低減にはボトルネック区間の緩慢な追従走行(i.e., 勾配変化に対する補償遅れ)による速度回復遅れを防ぐことが肝要であること,(ii) ボトルネック下流における加速挙動の改善は一部車両のみではその効果が限定的であること,を明らかにする.
著者
金子 雄一郎 芦田 佳輝
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.A_65-A_74, 2016

本研究は、鉄道の運転見合わせ時における他社線等への振替輸送のうち、路線バスに着目してその実態を把握したものである。具体的には、バス事業者が保有している振替輸送の実績データを用いて利用動向を把握した上で、運転見合わせの発生時間帯や支障時間の程度、路線エリアなどとの関係を分析した。さらに、鉄道利用者を対象に Web アンケート調査を実施し、運転見合わせ時における交通行動や路線バスへの振替輸送の利用経験の有無などを把握した。その結果、鉄道の運転見合わせ時において、支障時間が長い場合にはエリアに関わらず振替輸送の利用が多く、一方で支障時間が短い場合には、バスによる移動距離が短いエリアを中心に利用される傾向が見られるなど、路線バスへの振替輸送が一定の役割を果たしている実態が明らかになった。
著者
鈴木 美緒 細谷 奎介 屋井 鉄雄
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.21-30, 2016-01-01 (Released:2016-01-01)
参考文献数
8
被引用文献数
3

近年,国道においても車道上自転車走行空間の整備が増えつつあるが,駐停車車両によって道路左端を占拠され,利用率が低下する問題が指摘されている.そこで本研究では,自転車の駐車車両追い越し挙動を観測し,その挙動に対する影響要因を実走観測およびサイクリングシミュレータ(CS)実験により明らかにすることで,整備において検討すべき項目を抽出した. その結果,実走観測では,車種や利用者属性の違いにより追い越し挙動が異なる傾向が見受けられ,CS 実験により,自転車レーンの整備により自動車に自転車の存在を認識させやすい追い越し挙動の実現が期待される結果となった.また,主観や車線数等の空間的な制約でデザインするのではなく,自動車交通の特性や挙動分析等によって道路を評価し,デザインする必要性が示唆される結果となった.
著者
後藤 梓 中村 英樹
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.A_107-A_115, 2015-02-06 (Released:2015-02-06)
参考文献数
13

階層型道路ネットワーク計画では,個別道路の設計・運用に際して目標となる階層数・階層別目標旅行速度・道路間隔について,拠点配置特性や需要特性,目標旅行時間を考慮して適切に設定することが重要である.本論文では,これらの値を目標旅行時間達成状況と建設費用に基づいて設定する手法を提案 する.ここでは,トラフィック機能とアクセス機能のトレードオフ関係から変数の組み合わせが現実的であり,かつ比較検討可能なシナリオ数とするため,接続階層間では目標旅行速度比と道路間隔比の間に比例関係を仮定し,さらに目標旅行速度が最低と最高となる階層をそれぞれ所与とする.この手法のもと,典型的な拠点配置,格子状ネットワークを想定したケーススタディを行い,階層数が拠点間距離別旅行時間や建設費用に及ぼす影響について考察を行った.
著者
中西 航 福冨 義章 布施 孝志
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.A_1-A_6, 2017-04-01 (Released:2017-04-01)
参考文献数
14

歩行空間の性能評価において歩行者流の密度-速度関係を考える場合、この関係がミクロスケールで地点依存しうる課題がある。しかし、現状の測定手法では地点依存を考慮した適切な測定箇所の設定は容易でない。これに対し、密度-速度関係の空間内での分布をも詳細に把握できれば、より精緻な設備配置や流動制御への展開が期待できる。本研究では、歩行者流の密度-速度関係に空間相関構造を組み込み、空間全域の測定データをひとつの回帰式でモデル化する方法を示す。空間フィルタリング手法である Harmonic Spatial Filtering により定式化し、横断歩道での実データに対し密度-速度関係と空間内の相関構造とを推定した。空間相関を考慮しない場合と比べて回帰精度の向上を示すとともに、推定された空間相関構造を解釈した。