著者
関村 オリエ
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2019年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.271, 2019 (Released:2019-03-30)

近代核家族の概念に下支えされてきた性別役割分業が終焉を迎えつつある中で、都市郊外空間の地域社会は新たな変容を続けている。それは、働き盛りの父親たちによる地域への参加である。もっぱら生産領域において賃金労働に勤しんできた男性たちによる再生産領域での動向は、どのような展開を見せているのであろうか。本研究の目的は、子どもを育てる父親たちに着目することで、子育てを足掛かりとした彼らの地域参加やそこでの実践を明らかにしようとするものである。本研究では、インタビュー調査により収集した語りなどを中心とした質的データを使用した。調査対象地域は、京阪神大都市圏において大規模な郊外住宅地域が広がる大阪府豊中市であり、対象者は子どもを育てる30代~50代の父親たちである。彼らは、会社員や自営業者として現役で働きながら、地元のサークル活動や任意団体、PTAなどに参加し、さまざまな地域の活動に従事する人々である。インタビュー調査では、世帯構成、生活実態、地域・家庭との関わり方などを把握するための質問票を用いて、対面式で尋ねた。本研究で焦点を当てた父親たちは、任意団体や自治会、そして子どものPTA活動への参与、これらを通じた地元住民や地域の人々との交流により、都市郊外空間の地域社会における新たな関係の構築を試みていた。彼らは、自らの子どもたちが学び、生活を送る場である地域をより良くしたいという強い動機から、地域活動への参加を果たし、精力的に活動を行っていた。教育や環境などに取り組む彼らの事例は、男性たちが、職場を軸とした生産労働に従事する行為主体のみならず、地域を中心とした生活者としての行為主体でもあるという新たな側面を伺わせるものであった。ただし、生活の基盤となる家庭内における家事やケア労働については、分担をめぐって限定的であり、その参与に必ずしも積極的ではない人も存在した。本研究では、男性たちの地域参加やその実践・認識が、実は生産領域に由来するものであることが見えてきた。
著者
熊谷 圭知 石塚 道子 大城 直樹 福田 珠己 森本 泉 森 正人 寄藤 晶子 倉光 ミナ子 関村 オリエ
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では、欧米中心に展開してきたジェンダー地理学を再構築し、日本からの発信とグローバルなネットワーク構築をめざした。具体的には、1)2013年8月の京都国際地理学会において、「ジェンダーと地理学」研究委員会と共同し、プレ会議(奈良)を開催。2)海外の主導的なフェミニスト地理学者(2012年年1月にDivya Tolia-Kelly氏、2013年3月にDoreen Massey氏)を招聘。学会での議論の場を創出した。研究成果は、2014年,英文報告書(Building Global Networks through Local Sensitivities )に刊行し、内外に発信した。