著者
熊谷 圭知
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.15-33, 2013 (Released:2013-04-19)
参考文献数
19
被引用文献数
1

わたしはフィールドワークを「研究対象の存在する場所に身を置いて,一次資料を集める調査方法」と定義している.フィールドワークは調査研究者と調査対象/フィールドとの間の相互作用であり,フィールドワーカーがそのかかわりを引き受けることを意味する.わたしは,1980年以来,パプアニューギニアの首都ポートモレスビーの移住者集落と,高地周縁部(セピック川南部支流域)の村でフィールドワークを続けてきた.そして,90年代半ばごろから,フィールドワーカーがフィールドに何を還せるのかを考えるようになった.ポートモレスビーでは,セトルメントやインフォーマル・セクターの排除の動きの中で,JICA専門家として,都市貧困対策の公論形成にかかわった.クラインビット村では,自らのフィールドワークの成果をピジン語で村人に提示するとともに,「場所の知」の協働構築の可能性を模索している.それらは試行錯誤の繰り返しではあるが,かかわりの過程としてフィールドワークをとらえることは,人文地理学の常識とされる調査する者と調査されるものの二項対立を越える必要な一歩となる.
著者
熊谷 圭知
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理学会大会 研究発表要旨 2010年 人文地理学会大会
巻号頁・発行日
pp.56, 2010 (Released:2011-02-01)

社会文化地理学: 本報告では、日本の男性と男性性の変容を、地理的想像力とナショナリズムの問題に関連させて論じる。近年の日本の急速な社会経済変化は、日本の若い世代、とりわけ若い男性に大き打撃を与え、稼ぎ手としての男性という戦後家族モデルにもはや依拠できない若い男たちのジェンダー・アイデンティティに影響を及ぼしている。本報告では、新たな男性性のタイプとして「草食系男子」「オタク」「ネオ(プチ)ナショナリスト」を取り上げ、それが今後の日本の社会的・経済的・政治的変化といかに関連するかについて試論を提示したい。
著者
熊谷 圭知
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第47回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.36, 2013 (Released:2013-05-27)

本報告の目的は、エスノグラフィーへの空間/場所論の再定位である。グローバル化の中で、「場所」への関心が高まり、文化人類学においても、空間や場所が注目されている。その源泉には3つの志向性がある。①身体や物質性への注目、②日常生活実践や共同性(の喪失やその復興)への関心、③フィールドワーク、エスノグラフィーの再構築である。その意味と課題を、私のパプアニューギニアでのフィールドワークをふまえて論じる。
著者
山本 健兒 熊谷 圭知 栗原 尚子 竹内 啓一 寺阪 昭信 山田 晴通
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

欧州の大都市自治体はEUROCITIESを通じてEUに都市政策を推進させる行動や、相互の経験交流を進めてきた。これを受けて、EUも当初、文化遺産の保全や環境問題に焦点をあてる都市政策を、社会的排除、失業、移民の統合、経済的活力などを重視する都市政策を1990年代半ば以降推進している。EU主要都市によるグローバリゼーションとEU統合への文化的対応に関して2つの論点が浮かび上がる。第1は移民マイノリティの生活実態とこれに対するホスト社会の対応、第2は都市の建造環境の整備保全という論点である。第1については、オランダへのモルッカ移民の統合、スペインへの移民のラテンアメリカ化、同じドイツ都市といえどもベルリンとミュンヘンでは移民比率の高い街区の様相に大きな違いがあることが明らかとなった。移民とホスト社会との間で対立が激しいというわけではなく、移民たちはドイツ都市を故郷と認識する傾向にある。しかし、移民は失業などでより厳しい立場にある。また中国を含む世界各地からの移民がパリ、ローマ、バルセロナでも可視的存在となっている。第2の論点について、イタリアでは都市政府の政権交代が建造環境の変化に大きく影響すること、フランスでは文化遺産としての建造物の保全に中央政府の力がより大きく働くことが判明した。ロンドンの影におかれやすいイギリスのその他の主要都市は、欧州文化首都として指定を受けることによって大陸部のEU主要都市との競争に対応しようしている。2つの論点のいずれに主眼をおこうとも、都市住民あるいは訪問外国人に対して都市の物理的な構成は大きな意味を持つ。欧州各国主要都市の動向を総括するならば、外的圧力に対する文化的対応は政治的対応とならざるを得ず、中央政府の力が強いフランスと地方政府の力が強いドイツを両極として、各都市を位置づけうる。その際に鍵をなすのは、参加と自治のありようである。

1 0 0 0 OA 場所論再々考

著者
熊谷 圭知
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100235, 2015 (Released:2015-04-13)

報告者は、「場所論と場所の生成」と題した報告を2012年春の地理学会で行い、「場所論再考――グローバル化時代の他者化を越えた地誌のための覚書」(お茶の水地理52、2013年)を著した。本報告の目的は、その後に翻訳が刊行された場所論をめぐる重要な著作、ハーヴェィ『コスモポリタニズム』(大屋定晴訳、2013年)と、マッシー『空間のために』(森正人訳、2014年)を加えて、場所論を再度検討することである。
著者
熊谷 圭知 石塚 道子 大城 直樹 福田 珠己 森本 泉 森 正人 寄藤 晶子 倉光 ミナ子 関村 オリエ
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では、欧米中心に展開してきたジェンダー地理学を再構築し、日本からの発信とグローバルなネットワーク構築をめざした。具体的には、1)2013年8月の京都国際地理学会において、「ジェンダーと地理学」研究委員会と共同し、プレ会議(奈良)を開催。2)海外の主導的なフェミニスト地理学者(2012年年1月にDivya Tolia-Kelly氏、2013年3月にDoreen Massey氏)を招聘。学会での議論の場を創出した。研究成果は、2014年,英文報告書(Building Global Networks through Local Sensitivities )に刊行し、内外に発信した。
著者
高木 彰彦 遠城 明雄 荒山 正彦 島津 俊之 中島 弘二 山野 正彦 源 昌久 山本 健児 熊谷 圭知 水内 俊雄 久武 哲也 山野 正彦 源 昌久 山本 健兒 熊谷 圭知 水内 俊雄 内田 忠賢 堤 研二 山崎 孝史 大城 直樹 福田 珠己 今里 悟之 加藤 政洋 神田 孝治 野澤 秀樹 森 正人 柴田 陽一
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

公共空間と場所アイデンティティの再編について、地理思想史、理論的研究、経験的研究の観点から検討を行った。研究成果として、『空間・社会・地理思想』10(2006)、『空間・社会・地理思想』11(2007)、『空間・社会・地理思想』12(2008)を毎年刊行したほか、英文報告書として『Reorganization of public spaces and identity of place in the time of globalization : Japanese contribution to the history of geographical thought(10)』(2009)を刊行した。