著者
福田 珠己
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.727-743, 1996-09-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
49
被引用文献数
1 11

本稿では,沖縄県竹富島において島を代表する存在である「赤瓦の町並み」が,どのように保存され今のような姿に至ったか,また,「赤瓦の町並み」が町並み保存運動の中で,伝統的建造物群保存地区という文化財としてどのように再生されていったか,伝統文化の創造という観点から考察する.町並み保存のプロセスを検討していくことによって,「伝統的」であると見なされている町並みが本来はいかなるものであるのか,さらに,「伝統的」であるとはいかなることなのかが,明らかになるのである. 本研究の視点は,文化と真正性,伝統文化の創造,観光と伝統をめぐる諸研究と共通するものであり,本研究で取り上げた文化財として位置づけられている伝統的町並みは,研究者・行政・住民の三者の思惑が絡み合ったところに生じたもので,近年注目されっっある「ふるさと」の文化,地域の伝統文化を考える上で,格好の素材でもある.
著者
福田 珠己
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
地理学評論. Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.727-743, 1996-09-01
参考文献数
49
被引用文献数
15

本稿では,沖縄県竹富島において島を代表する存在である「赤瓦の町並み」が,どのように保存され今のような姿に至ったか,また,「赤瓦の町並み」が町並み保存運動の中で,伝統的建造物群保存地区という文化財としてどのように再生されていったか,伝統文化の創造という観点から考察する.町並み保存のプロセスを検討していくことによって,「伝統的」であると見なされている町並みが本来はいかなるものであるのか,さらに,「伝統的」であるとはいかなることなのかが,明らかになるのである.<br> 本研究の視点は,文化と真正性,伝統文化の創造,観光と伝統をめぐる諸研究と共通するものであり,本研究で取り上げた文化財として位置づけられている伝統的町並みは,研究者・行政・住民の三者の思惑が絡み合ったところに生じたもので,近年注目されっっある「ふるさと」の文化,地域の伝統文化を考える上で,格好の素材でもある.
著者
福田 珠己
出版者
一般社団法人 人文地理学会
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.403-422, 2008 (Released:2018-01-06)
参考文献数
120
被引用文献数
5 7

In the last decade, geographers, especially cultural geographers, have conducted a considerable number of studies on home and domestic space. The topic of home, which was considered to be familiar and banal and had been neglected in the discipline of geography, has now been given renewed focus from various perspectives. This paper aims to review the current studies of geographies of home by considering some theories in cultural geography. Subsequently, it aims to explore the possible ways of developing critical studies of geographies of home in Japanese contemporary society.The trend toward geographies of home is examined from the following three viewpoints: The first is in moving beyond the separation of public and private spheres. Although humanistic geographers emphasized emotions and subjective meanings in their anthropocentric thought, feminist geographers have made great contributions towards conquering dualistic thinking. They have considered the idea of home as political, ambiguous, fluid, and multiscale. The second viewpoint is the oscillating consideration between mobility and stability, which stems from postcolonial studies. This involves focusing on the politics of belonging and alienation, that is, roots and routes, spatial politics and gendered geographies, and collective memory and its materialization. The third viewpoint is non-representational theory in the discipline. This theory includes a variety of ideas―materiality, performativity, post-human, affect, hybridity, etc. It can be said that parts of current research are going beyond the interpretation of representation and focusing on the ‘here and now.’ From the viewpoint of geographies of home, materiality and perfomativity are rather important for both theoretical development and social practice.How are the recent studies on geographies of home influencing Japanese academia ? It is very important to directly face the current conditions of Japanese homes. These conditions in Japanese society can be considered as a ‘cult of domesticity.’ Home plays a critical role both in policymaking and in space consumption. The fixed idea of home is definitely not adequate in deepening our consideration of home and geography. At present, it is important for us to develop critical thinking of home at the points of intersection between the material and immaterial, public and private, and mobility and stability.

3 0 0 0 OA 場所の経験

著者
福田 珠己
出版者
The Human Geographical Society of Japan
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.269-281, 1991-06-28 (Released:2009-04-28)
参考文献数
59
被引用文献数
6 5
著者
福田 珠己
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2009年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.253, 2009 (Released:2009-06-22)

1 問題の所在 「郷土」とは,所与の存在として「そこにある」ものなのであろうか。『郷土―表象と実践』(「郷土」研究会 2003)で議論されたのはそのような対象としての郷土ではない。むしろ,社会的実践の中で郷土なるものがどのように策定され具体化されているのか,そのことが問題とされたのである。 本報告は,このような「郷土」の理解を継承するものである。具体的には,明治から昭和にかけて,ある意味で,郷土となるものとかかわり続けた人物,棚橋源太郎に焦点をあて,郷土なるものがどのように具体化・視覚化されたのか,彼の思想との関連から考察する。 2 棚橋源太郎と博物館 棚橋源太郎(1869-1961)は,多様な顔を持つ。理科(博物学)教育を中心とした学校教育、社会教育(生活改善運動)、博物館と多岐にわたる活動を精力的に展開してきた人物である。そのような人物を取り上げるのには理由がある。それは,地理学的知の実践が、狭い意味での学問分野の中に限定されるものではないからである。つまり,地理学者,あるいは地理教育者として名を連ねている者のみが地理学的知の実践者ではないのである。 他方,棚橋の活動期間が極めて長いことも,今回注目する理由の一つである。明治初期から昭和にかけて,様々な社会的状況の中で,郷土なるものに向かい合い続けてきたことに注目することによって,学校教育(あるいは地理教育)の枠の中で郷土なるものを検討してきた従来の郷土研究とは異なった視点を提供できると考えるからである。 棚橋源太郎の生涯を振り返ると,時期によってその活動にいくつかの特徴を見出すことができる。ここでは,棚橋の生涯を振り返りながら,特に,郷土との関連から説明していこう。 第一に,博物学教育者として,理科教材や実科教授法について,思想や方法を展開した時期があげられよう。後の東京高等師範学校で学び,その後,附属小学校に赴任する頃,明治30年頃までがそれにあたる。この時期の棚橋は,実物を重視した理科教育(博物学教育)の展開のみならず,当時導入された郷土教育の教授法にも力を注いだ時期である。この時期の郷土教育については,地理学においても検討されているところである。 第二は,教育博物館への関心が高まった時期である。具体的には,東京高等師範学校附属東京教育博物館主事となった1906年(明治39)から,2年間のドイツ・アメリカ留学をへて,1924年(大正13)に東京教育博物館を退職する頃までがそれに該当する。実科教授法や郷土教育を論じる中でも,学校博物館について言及していたが,この時期には,本格的な教育博物館を立ち上げることに力を注いだ。また,西洋の博物館事情を積極的に紹介した時期でもある。 第三は,1925年(大正14)の二度目のヨーロッパ留学を経て,日本赤十字博物館を拠点として博物館活動を展開する時期である。この時期,棚橋は,郷土博物館設立の運動にも関与するが,通俗教育(社会教育)へと軸足を移していること,また,日本の博物館界の基盤形成を行い,同時に,国際的な視野で博物館を論じたことも特筆すべきことである。 3 考察 棚橋源太郎が実践しようとした,あるいは,視覚化しようとした「郷土」とはどのような存在なのだろうか。また,どのような思想や社会状況と関わっているのだろうか。本報告では,第一に,理科教育から郷土教育,通俗教育へと棚橋の活動の重点が移動していく中で,「郷土」はどのような役割を果たしたのかという点,第二に,郷土なるものがいかなるスケールで思考・実践されてきたかという点,すなわち,様々なスケールで展開される思考・実践の中に「郷土」を位置づけることに焦点をあて,郷土なるものの具体化について論じていきたい。 【文献】 「郷土」研究会 2003. 『郷土―表象と実践』嵯峨野書院.
著者
倉光 ミナ子 福田 珠己
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2020, 2020

<p><b>1. はじめに</b></p><p> アジア女性資料センター(2020)はCovid-19と呼ばれる新型ウィルスの感染拡大が社会において、より弱い立場に置かれている女性や子どもたちに多大な負の影響を及ぼす可能性を指摘し、ジェンダー視点に基づいたCovid-19の影響を分析・考察し、それに基づいた提言を行う重要性を論じている。Covid-19のさらなる感染拡大を防ぐために、多くの先進諸国では「Stay at home」(日本では「#Stay home」や「#うちで過ごそう」)という呼びかけが行なわれ、それに基づき、様々な政策が展開されてきた。「ホーム(home)」の重要性については、1970年代には人文主義地理学の立場から主張されていたが、学際的な潮流ともかかわりながら「ホーム」の地理学研究が本格化したのは、1990年代以降、フェミニズムの影響を受けてからのことである。Covid-19の下で突如として現れた「ステイホーム」は何をもたらすのか。フェミニスト地理学の視点から考察・分析することは必要不可欠であると考える。</p><p><b>2.Covid-19によって再確認された点</b></p><p> 2011年の東日本大震災の折に、災害や危機というものが、第一に「平常時からの意思決定における女性の不在や、社会的・経済的なジェンダー不平等が、危機への対応において強く現れ、危機が過ぎ去ったあとにも、女性・少女の権利に長期的に影響をおよぼすこと」(アジア女性資料センター 2020)、第二にもともとそこの地域が抱えていた問題を先鋭化あるいは深刻化させることが指摘されている。同様のことは「ステイホーム」においても確認される。</p><p> まず、先進諸国政府等が「ステイホーム」と呼びかけた際には、フェミニスト地理学が批判してきたように、「ホーム」に暗黙のうちに「両親と子どものそろっている温かい家庭」(異性愛カップルによる家庭、近代家族)や「居心地のよい空間」というイメージが付与されていた。イメージの一面性や、これらがもたらす違和感は、企業やインターネットが使用したロゴ、特別定額給付金が世帯主に支給されたこと、そして、ホームレスや非正規就労者で仕事ともに住処を失った人や、家に帰ることのできない少女たちが行き場を失う報道からも明らかだろう。</p><p> 次に、先進諸国、とりわけ都市の「ホーム」が公私二元論に基づく、「プライベート」、「ケア」の空間であり、その管理・維持がたいてい女性によって成り立っていることである。2020年2月末の日本政府による全国一律の一斉休校や在宅勤務により「ケア」を一手に引き受けざるをえなかった女性たちの嘆きや怒りは様々なところで報道された(その一方で、狭い自宅では仕事ができず、車の中でオンライン会議に参加する夫の話もある)。</p><p> さらに、フェミニスト地理学が指摘してきたように、「ステイホーム」は、ホームが誰にとっても等しく安全な場所でないことも明らかにした。</p><p><b>3.さらなる「ホーム」の展開へ向けて</b></p><p> 「ステイホーム」はすでにフェミニスト地理学が論じてきた点だけでなく、さらなる「ホーム」の展開の可能性を示している。「ステイホーム」を通して、だれもが「ホーム」の意義を再考し、これまでの公私二元論や異性愛規範に基づいた「ホーム」とは別の次元の「ホーム」が想像され、つくられるのか、今後に期待したい。</p><p><参考文献リスト></p><p>アジア女性資料センター 2020.COVID-19とジェンダー: 分断と差別ではなく権利と連帯にもとづく対応を.http://jp.ajwrc.org/3808(最終閲覧日2020年7月17日)</p>
著者
熊谷 圭知 石塚 道子 大城 直樹 福田 珠己 森本 泉 森 正人 寄藤 晶子 倉光 ミナ子 関村 オリエ
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では、欧米中心に展開してきたジェンダー地理学を再構築し、日本からの発信とグローバルなネットワーク構築をめざした。具体的には、1)2013年8月の京都国際地理学会において、「ジェンダーと地理学」研究委員会と共同し、プレ会議(奈良)を開催。2)海外の主導的なフェミニスト地理学者(2012年年1月にDivya Tolia-Kelly氏、2013年3月にDoreen Massey氏)を招聘。学会での議論の場を創出した。研究成果は、2014年,英文報告書(Building Global Networks through Local Sensitivities )に刊行し、内外に発信した。
著者
高木 彰彦 遠城 明雄 荒山 正彦 島津 俊之 中島 弘二 山野 正彦 源 昌久 山本 健児 熊谷 圭知 水内 俊雄 久武 哲也 山野 正彦 源 昌久 山本 健兒 熊谷 圭知 水内 俊雄 内田 忠賢 堤 研二 山崎 孝史 大城 直樹 福田 珠己 今里 悟之 加藤 政洋 神田 孝治 野澤 秀樹 森 正人 柴田 陽一
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

公共空間と場所アイデンティティの再編について、地理思想史、理論的研究、経験的研究の観点から検討を行った。研究成果として、『空間・社会・地理思想』10(2006)、『空間・社会・地理思想』11(2007)、『空間・社会・地理思想』12(2008)を毎年刊行したほか、英文報告書として『Reorganization of public spaces and identity of place in the time of globalization : Japanese contribution to the history of geographical thought(10)』(2009)を刊行した。