著者
川畑 龍三 三池 徹 上船 雅義 岡部 弘高 高木 正見 甲斐 昌一
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.289-296, 2004-11-25
被引用文献数
2 5

本研究では、インゲンマメの葉がカンザワハダニによる食害を受けると、そのフォトン放射強度が増加することが明らかになった。その放射強度は経日的に増加し、ハダニが最もよく集まる葉脈付近で強い発光を示した。食害を受けた葉からの発光は、二つの異なったプロセスから成り立っており、おのおの傷害直後に起こる一過性の反応による発光過程と、食害によって誘導された防衛反応に起因する発光過程と考えられた。また、その放射スペクトルから、長波長(500-700nm)側では食害に伴う物理的損傷に対するストレス反応に起因し、一重項酸素の2光子過程(580、634nm)が関与していると推測された。一方、短波長域(300-400nm)の発光は傷害応答とともに食害ストレスに応答した防御物質生産等の防衛反応に起因すると考えられた。以上のように、食害応答と放射フォトンの強度変化との関連が示されたことから、フォトン計測が生体防衛機構の新たな先端計測手段として利用できる可能性が示された。特に、今回注目したフォトン計測は特別な手法を必要とせず、高感度かつリアルタイムで試料の測定が行えるので、広範な応用が可能である。
著者
川畑 龍三 三池 徹 上船 雅義 岡部 弘高 高木 正見 甲斐 昌一
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.289-296, 2004-11-25
参考文献数
26
被引用文献数
2 5

本研究では、インゲンマメの葉がカンザワハダニによる食害を受けると、そのフォトン放射強度が増加することが明らかになった。その放射強度は経日的に増加し、ハダニが最もよく集まる葉脈付近で強い発光を示した。食害を受けた葉からの発光は、二つの異なったプロセスから成り立っており、おのおの傷害直後に起こる一過性の反応による発光過程と、食害によって誘導された防衛反応に起因する発光過程と考えられた。また、その放射スペクトルから、長波長(500-700nm)側では食害に伴う物理的損傷に対するストレス反応に起因し、一重項酸素の2光子過程(580、634nm)が関与していると推測された。一方、短波長域(300-400nm)の発光は傷害応答とともに食害ストレスに応答した防御物質生産等の防衛反応に起因すると考えられた。以上のように、食害応答と放射フォトンの強度変化との関連が示されたことから、フォトン計測が生体防衛機構の新たな先端計測手段として利用できる可能性が示された。特に、今回注目したフォトン計測は特別な手法を必要とせず、高感度かつリアルタイムで試料の測定が行えるので、広範な応用が可能である。
著者
高木 正見
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.157-163, 1976-09-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
20
被引用文献数
8 8

アゲハ蛹期の天敵としてのアオムシコバチの働きを説明するため,野外調査といくつかの室内実験を行なった。野外調査は,福岡市東区箱崎にある温州ミカンほ場で,1972年と1974年に行なった。1. アゲハの蛹化は毎年5月から11月にかけて連続的にみられ,アオムシコバチもこの期間中ずっと活動していた。アゲハ蛹密度は8月中旬以降急に高くなった。アオムシコバチは,少しの遅れはあったがこれにすぐ反応し,高い寄生率を示した。しかし,その後他の天敵による死亡が増加してアオムシコバチの寄生率は低下した。2. このアオムシコバチの寄生率が低下した時期でも,アオムシコバチのアゲハ蛹攻撃率は低下しなかった。またこの時期には,アオムシコバチが攻撃した蛹から他の寄生者が脱出してきたり,その蛹がアリに捕食されるのを観察した。3. 野外で採集したアゲハ蛹1頭から,平均156.2頭,最高337頭のアオムシコバチが羽化してきた。4. 野外百葉箱でのアオムシコバチ雌成虫の寿命は,8, 9月に羽化したもので平均1ヵ月であった。10, 11月に羽化したものは,3ヵ月の寿命のものが多く,寄主体内で越冬したアオムシコバチが翌春羽化してきた時期まで生存していたものもあった。5. 野外ではアゲハの5令幼虫や前蛹の上に乗っているアオムシコバチが観察されたが,アオムシコバチが寄生可能なアゲハのステージは蛹期のみで,5令幼虫期・前蛹期のアゲハには寄生不可能であった。6. アゲハを寄主としたときのアオムシコバチの発育零点は12.2°Cで,卵から羽化までに要する有効積算温量は213.7°C日であった。この値をもとに計算した福岡地方でのアオムシコバチの年間世代数は9世代であった。7. 卵巣成熟はsynovigenicな型を示し,給蜜することにより,平均約140の成熟卵を保有した。8. 無給蜜の場合,1雌当り産仔数は平均189.3,最高311で,この資料をもとに計算したこの蜂の内的自然増加率は日当り0.28であった。9. 以上の結果をもとに,アゲハ蛹期の天敵としてのアオムシコバチの働きについて考察した。
著者
高木 正見
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.157-163, 1976-09-25
被引用文献数
1 8

アゲハ蛹期の天敵としてのアオムシコバチの働きを説明するため,野外調査といくつかの室内実験を行なった。野外調査は,福岡市東区箱崎にある温州ミカンほ場で,1972年と1974年に行なった。<br>1. アゲハの蛹化は毎年5月から11月にかけて連続的にみられ,アオムシコバチもこの期間中ずっと活動していた。アゲハ蛹密度は8月中旬以降急に高くなった。アオムシコバチは,少しの遅れはあったがこれにすぐ反応し,高い寄生率を示した。しかし,その後他の天敵による死亡が増加してアオムシコバチの寄生率は低下した。<br>2. このアオムシコバチの寄生率が低下した時期でも,アオムシコバチのアゲハ蛹攻撃率は低下しなかった。またこの時期には,アオムシコバチが攻撃した蛹から他の寄生者が脱出してきたり,その蛹がアリに捕食されるのを観察した。<br>3. 野外で採集したアゲハ蛹1頭から,平均156.2頭,最高337頭のアオムシコバチが羽化してきた。<br>4. 野外百葉箱でのアオムシコバチ雌成虫の寿命は,8, 9月に羽化したもので平均1ヵ月であった。10, 11月に羽化したものは,3ヵ月の寿命のものが多く,寄主体内で越冬したアオムシコバチが翌春羽化してきた時期まで生存していたものもあった。<br>5. 野外ではアゲハの5令幼虫や前蛹の上に乗っているアオムシコバチが観察されたが,アオムシコバチが寄生可能なアゲハのステージは蛹期のみで,5令幼虫期・前蛹期のアゲハには寄生不可能であった。<br>6. アゲハを寄主としたときのアオムシコバチの発育零点は12.2°Cで,卵から羽化までに要する有効積算温量は213.7°C日であった。この値をもとに計算した福岡地方でのアオムシコバチの年間世代数は9世代であった。<br>7. 卵巣成熟はsynovigenicな型を示し,給蜜することにより,平均約140の成熟卵を保有した。<br>8. 無給蜜の場合,1雌当り産仔数は平均189.3,最高311で,この資料をもとに計算したこの蜂の内的自然増加率は日当り0.28であった。<br>9. 以上の結果をもとに,アゲハ蛹期の天敵としてのアオムシコバチの働きについて考察した。
著者
岡崎 真一郎 玉嶋 勝範 雨川 公洋 桃下 光敏 高木 正見
出版者
九州病害虫研究会
巻号頁・発行日
vol.58, pp.66-72, 2012 (Released:2013-07-12)

2010年および2011年の5月下旬~6月上旬に,大分県の夏秋ピーマン現地施設で,アザミウマ類およびタバココナジラミの防除を目的にスワルスキーカブリダニを10a当たり50,000頭放飼した。本天敵は,1回の放飼で定着し,120日後まで生息が確認された。8月中旬以降,無放飼区のミカンキイロアザミウマ成虫密度が,1.6~3.8頭/花と高くなったのに対し,放飼区は0~0.1頭/花と低かった。無放飼区のタバココナジラミ成虫と老齢幼虫密度は,2.2頭/3葉以上となったのに対し,放飼区は0~0.2頭/3葉と低く,本天敵の2種害虫に対する密度抑制効果が認められた。一方,放飼区と無放飼区でヒラズハナアザミウマ成虫の発生推移に差はなく,密度抑制効果は認められなかった。また,ピーマンうどんこ病対策として,5~8月に4回,10a当たり3kgの硫黄粉剤を畝上散布したが,本天敵の生息密度に影響は認められず,両資材は併用可能であることが明らかとなった。
著者
高木 正見 中平 賢吾 岩瀬 俊一郎
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.91, no.11, pp.1071-1079, 2016-11

レンゲは,明治から大正・昭和にかけて,水田の裏作緑肥作物として,わが国の近代稲作農業に大きく貢献してきた。また,緑肥としての効用や飼料作物として利用できるだけでなく,養蜂業にとっては,春季の蜜源植物として,レンゲは重要な存在である。レンゲ蜜は,国産蜂蜜の中でも代表的な蜂蜜なので,"はちみつの王様"と呼ばれ,現在では希少性も伴って,国産レンゲ蜜は最も高価な蜂蜜の1つであり,その一方で,ピンク色に染まったレンゲの絨毯は,1960年代以前,わが国の春の田園風景にとって,欠かせないアイテムであった。ところが,わが国におけるレンゲの作付面積は,1960年以降急激に減少した。その原因としては,化学肥料の普及や,わが国の畜産が農家の役畜的飼育から畜産専業の用畜的飼育,とりわけ企業的多畜化へ変貌し,飼料としてのレンゲの利用価値が低下したことが大きかった。さらに,レンゲ作付面積の減少に追い打ちをかけたのが,1982年に海外から侵入した,アルファルファタコゾウムシ(Hypera postica,以下「アルタコ」と略)であった。養蜂家は,レンゲ栽培農家の減少に少しでも歯止めをかけようと,稲作農家にレンゲの種子を無料で配布し,水田裏作として播種してもらうという努力も行ってきた。しかし,アルタコによる被害は激甚で,稲刈り後に播種したレンゲが,開花する前に全滅するという事態が,九州から西日本全体に広がった。アルタコは,現在では全世界的な害虫であるが,もともとは,中東および中央アジアからヨーロッパにかけて分布する,マメ科牧草の害虫であった。わが国には,1982年に九州と沖縄に侵入し,分布を拡大し,現在は本州北部を除く日本全域に分布し,レンゲの害虫として問題になっている。しかし,米国から導入された寄生蜂,ヨーロッパトビチビアメバチ(Bathyplectes anurus,以下「Ba」と略)の効果が現れ始めた福岡県を中心にした西日本では,レンゲの花が回復しつつある。そこで本稿では,このアルタコのレンゲ害虫としての生態と,天敵である寄生蜂の導入の経緯,さらに,その寄生蜂を使った生物的防除を核にした本種の総合的害虫管理(IPM)について解説する。
著者
高木 正見 緒方 健
出版者
九州病害虫研究会
雑誌
九州病害虫研究会報 (ISSN:03856410)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.199-201, 1985-10-30 (Released:2009-05-22)
参考文献数
1
被引用文献数
1 1

Saula japonica is a native predator of Unaspis yanonensis in Japan. The seasonal prevalence and spatial distribution of S. japonica on citrus trees were examined in 1984 in an orchard where Coccobius fulvus, an introduced parasitoid of U. yanonensis had been released. The seasonal prevalence of both larvae and adults showed two peaks. The peaks of larvae were well synchronized with those of U. yanonensis, but those of the adults were not synchronized. Abundance of both larvae and adults did not vary with the part of the tree. More larvae and adults were, however, found on the undersurface of leaves as compared with the uppersurface.
著者
古屋 成人 土屋 健一 高木 正見
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

日本原産のイタドリが欧米諸国で大繁殖し、その被害拡大が深刻化している。そこで我が国のイタドリ群落に生息している植食性昆虫や植物病原菌類を利用した伝統的生物的防除法の開発を展開した。これまでに得られた研究成果に基づき、イタドリマダラキジラミの野外放飼実験が英国で開始された。しかしながら期待された防除効果は得られておらず、斑点病菌の撒布計画が立案されている。本研究では、斑点病についての生態学的知見を得る目的で、本病の発生状況、病原菌の接種条件の検討と分子追跡の手法の開発並びに発病に密接に関与した内生菌の探索などを行い、本病原菌を英国に導入させるための基盤を確立した