著者
野澤 直美 高木 翔太 福島 康仁 高橋 孝 村橋 毅 高野 文英
出版者
日本薬史学会
雑誌
薬史学雑誌 (ISSN:02852314)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.179-193, 2020 (Released:2021-01-28)

目的:硝石(硝酸カリウム KNO3)は,戦国時代から江戸末期のわが国において黒色火薬の原料として欠くことのできない物質であった.わが国における硝石製造には「古土法」,「培養法」および「硝石丘法」と呼ばれる 3 種の方法があった. 方法:本研究では,これらの 3 種の硝石製造方法について史学的調査,土壌中のイオン分析,および硝石精製の再現実験行い比較検討を行った. 結果:「古土法」は,経年した床下土から硝石を製造する全国で行われた方法なのに対して,「培養法」は,加賀藩領の五箇山や天領の白川郷の限られた地域においてのみ実施された手法であった.「培養法」は「硝石丘法」と類似するが,「硝石丘法」では人畜屎尿を屋外で積み上げ 1~3 年を経過させた土を使うのに対して,「培養法」では蚕の糞や山野草を養蚕家屋の床下に穴を掘り,約 4~5 年をかけて醸成した土から硝石を製した.実際に,これら 3 種の手法を再現して硝石製造を行った.いずれの手法においても硝石の結晶を析出させることができたが,「培養法」と「牛糞堆肥(硝石丘法の代用)」で析出する結晶は不定形であり,特に「牛糞堆肥」では繰り返しの再結晶が必要であった.「培養法」で得られる硝石の結晶量は,「古土法」の 3 倍だった.3 種の硝石製造法における土中の硝酸イオン(NO3 -)濃度をイオンクロマトグラフィー法で測定した結果,「培養法」の土に含まれる NO3-は,「古土法」よりも高く,また堆積期間が 1 年以内の「牛糞堆肥」であっても 20 年以上経過した「古土法」による土と同程度の NO3-が検出できた.「培養法」および「硝石丘法」では,アンモニア体窒素を豊富に含む蚕や人畜の排泄物を利用することにより,土中の NO3-濃度を高める生物学的手法であることがわかった. 結論:総じて 3 種の硝石製造法のなかでも「培養法」が,硝石製造の質や量の面で優れていることが判明した.本稿では,わが国の硝石製造法について,欧州の硝石製造法とも併せて論考する.

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