- 著者
-
鹿子木 康弘
奥村 優子
- 出版者
- 一般社団法人 日本発達心理学会
- 雑誌
- 発達心理学研究 (ISSN:09159029)
- 巻号頁・発行日
- vol.29, no.4, pp.164-171, 2018 (Released:2020-12-20)
- 参考文献数
- 18
研究を国際的に発信する意義を考えたとき,それは個人によって異なり,さまざまな動機や理由が存在するかもしれない。ある研究者にとっては,日本の子どもの独自性を主張する機会であったり,他の研究者にとっては,文化比較研究の発表の機会であったりするのかもしれない。しかし,筆者らは,日本という独自性を意識するというより,欧米の研究者と同様に,そして彼らと肩を並べるつもりで,普遍的な発達の現象を見つけ出したいという単純な動機によって,自身の研究を国際誌に発表してきた。本論文では,まず筆者らが国際誌に投稿してきた乳児研究を概観する。具体的には,発達早期の社会的認知発達,特に他者の行為理解のメカニズム,道徳・向社会性の発達,社会的学習といったテーマに関する実証実験を紹介する。そして,それらの研究を国際誌に発表する中で感じた,筆者なりの国際競争の中で研究を行う意義やその課題について考察し,日本の発達心理学の行く末を考えてみたい。