著者
吉田 武美 沼澤 聡 山元 俊憲 中谷 一泰 黒岩 幸雄
出版者
昭和大学
雑誌
がん特別研究
巻号頁・発行日
1993

生薬センソ成分のブファリン(Bu)およびブファジエノリドが、ヒト由来白血病細胞HL60、K562、U937、ML1およびTHP-1細胞を5〜10nMの低濃度で分化誘導を引き起こし、分化誘導能と、Na^+,K^+-ATPase阻害の間に高い相関性(0.987)が存在することが明らかになった。Buの生体内代謝物3α-Buの効果は、ほとんど認められなかった。^3H-BuのK562細胞への結合は、スカッチャード解析の結果、Kd=6.05,Bmax=521.2fml/10^6cellsが得られ、^3H-ウワバイン(^3H-Oub)よりKdは小さく、Bmaxは同程度であることを明確にした。^3H-Buの結合は、高濃度Oubにより置換され、両者は同一作用部位を共有した。Oub耐性K562細胞株を作成し、同様に検討したところ、Buの分化誘導能は、著明に減弱し、^3H-Buの結合も半減した。また、Bu抵抗性のM1細胞に対する^3H-Buの結合はK562細胞に比べ1/10程度であった。Buは、K562細胞への^<45>Ca^<2+>の取り込みを顕著に上昇させたが、Oub耐性株では、ほとんど認められなかった。Buは、癌遺伝子産物(c-myc、c-myb等)も大きく変動させ、またras-raf系を介してMAPkinaseを活性化すること、U937細胞でアポトーシスを誘発することが明らかになった。抗Bu抗体の作成に成功し、正常ヒト血清に抗Bu抗体と交差するBu様の分化誘導物質が存在する可能性があることを、各種ヒト由来各種白血病細胞、Oub耐性株およびM1細胞に対する作用をBuと比較検討することにより、示唆した。Buは、FM3A担癌…C3Hマウスに対し、1日1回0.5mg/Kg腹腔内投与により。顕著な抗腫瘍効果および延命効果を認めたが、WiDr担癌ヌードマウスに対する効果は認められなかった。この投与条件では、in vitroで得られたこれら癌細胞に対し、細胞毒性を示す濃度よりかなり低いことから、免疫系への影響を調べたところ、Bu処置C3HマウスではNK細胞活性が著明に高いことが明らかになった。以上のように、Buは、Na+,K+-ATPase阻害を一義的作用部位として分化誘導作用を示すことともに、in vivoでは免疫系を介した抗腫瘍作用を有することが示唆された。Buの多彩な作用が明らかになり、今後の展開が期待される。
著者
伊藤 葉子 長尾 康博 伊田 喜光 山元 俊憲 黒岩 幸雄
出版者
一般社団法人 日本医療薬学会
雑誌
病院薬学 (ISSN:03899098)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.319-326, 1995-08-10 (Released:2011-08-11)
参考文献数
9

We found that an impurity was formed in the 1% dibucaine injection solution following ordinal treatment using the high-pressure steam method. The impurity was isolated and characterized to be 2-hydroxy-N-[2-(diethylamino) ethy1-4-quinolinecarboxamine (debutyl-dibucaine)], which was caused from the thermal degradation of dibucaine brought about by the sterilization process. The degradation of dibucaine with dealkylation was found to be affected under the thermal treatment, time and temperature conditions. In addition, suitable sterilization conditions were established to maintain the purity of the 1% dibucaine injection solution at more than 99.5%.

1 0 0 0 OA 毒薬世相学

著者
山崎 幹夫 丹羽口 徹吉 押田 茂實 黒岩 幸雄
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.467-473, 1982-06-01

現代人の生活の中には, 毎年多くの新しい化学物質がとり入れられて来ており, これが我々の生活を豊かにする反面で, 毒としての面も持っている.複雑多岐にわたる現代生活の中で, あるものは犯罪として用いられるものもある.今日は, 毒物を日頃とりあつかっておられる先生方に, 昔から現代に至る毒についてお話を伺った.
著者
山元 俊憲 寺田 賢 吉田 武美 吉村 三郎 黒岩 幸雄
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
衛生化学 (ISSN:0013273X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.326-330, 1981-10-31
被引用文献数
3

Sympathomimetic amines, amphetamine and methamphetamine, were determined as trifluoroacetyl derivatives by gas chromatography (GC) equipped with a flame-thermionic detector (FTD). Resolution of these derivatives was carried out in a glass column (3 mm×1 m), packed with 1.5% SE-30 on Chromosorb W (AW-DMCS) at 110℃, with helium at a flow rate 50 ml/min. Detection limit of these amines was 0.1 ng. In a case of the autopsy samples from 4.5 month-postmortem suspected the intoxication of methamphetamine, we could detect the amine by FTD-GC, and the content was calculated to be 12.5 μg per g wet weight liver.