著者
黒田 祐二 桜井 茂男
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.86-95, 2003-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
28
被引用文献数
12 6

本研究は, 友人関係場面における目標志向性と抑うつとの関係に介在するメカニズムを明らかにすることを目的として行われた。両者に介在するメカニズムとしては, Dykman (1998) により提唱されたディストレス生成モデル (目標志向性が対人行動を通してネガティブな出来事を促進 (ないし抑制) し, その結果抑うつが促進 (ないし抑制) される) に加えて, 新たにユーストレス生成モデル (目標志向性が対人行動を通してポジティブな出来事を促進 (ないし抑制) し, その結果抑うっが抑制 (ないし促進) される) を提唱し, この2つのモデルを検討した。重回帰分析による結果から, 3つの目標と抑うつとの関係はいずれもユーストレス生成モデルで説明できることが示された。すなわち,(1) 「経験・成長目標→関係構築・維持行動及び向社会的行動→ポジティブな出来事の発生→非抑うつ」,(2)「評価一接近目標→関係構築・維持行動→ポジティブな出来事の発生→非抑うつ」,(3)「評価一回避目標→関係構築・維持行動の不足→ポジティブな出来事の非発生→ 抑うつ」,という結果が示された。本研究の関連する既存の研究領域及び教育的介入に対する示唆が論じられた。
著者
黒田 祐二 有年 恵一 桜井 茂男
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.24-32, 2004-03-31 (Released:2013-02-19)
参考文献数
23
被引用文献数
7 3

本研究の目的は, 大学生の親友関係における関係性高揚と精神的健康との関係について検討すること, 及び, その関係に相互協調的-相互独立的自己観が及ぼす影響について検討することであった。結果から, 日本の大学生において, 自分たちの親友関係を他の親友関係より良いものであると評価する「積極的関係性高揚」と, 悪くはないと評価する「消極的関係性高揚」は, 相対的幸福感・自尊感情・充実感と正の関係を示し, 抑うつと負の関係を示すことが見出された。さらに, この関係性高揚と精神的健康との関係は, 相互協調的自己観ないし相互独立的自己観が自己に内在化されている程度によって異なることが示された。すなわち, 相互協調的自己観の低い者より高い者において, そして, 相互独立的自己観の高い者より低い者において, 関係性高揚 (積極的関係性高揚及び消極的関係性高揚) と精神的健康との関係が強くなることが示された。
著者
山川 修 黒田 祐二 伊藤 雅之
出版者
福井県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

学習者の内部状態が,フレドリクソンのポジティビティとネガティビティの比率(P/N比)で測定をすることで,安定的に測定できることがわかった.そして,P/N比が高い(1を越える)学生と低い(1を越えない)学生の間で学習行動に違いが見られることがわかった.さらに,ポジティブ心理学が教えるポジティビティをあげる取組を学生に実行してもらったところ,ポジティビティがほとんど全員で向上していることがわかった.ただ,この結果は,この授業内の学習コミュニティがうまく機能していた結果とも考えられるので,取組とポジティビティ向上の因果関係は,今後のさらなる研究が必要である.
著者
黒田 祐二
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.415-420, 2016
被引用文献数
1

Although research has indicated that dysfunctional attitudes (DA) and depressogenic inferential styles (DIS) lead to depression when negative life events occur, little is known about how these factors function when negative life events do not occur. This longitudinal study examined the hypotheses that DA and DIS at Time 1 would lead to positive life events at Time 2 (four weeks later) in the absence of, but not in the presence of, negative life events at Time 2. This study also examined whether the effects of DA and DIS on positive life events differ depending on initial levels of depression. Hierarchical regression analyses showed that in the prediction of positive events, interactions of DA and DIS with negative events and depression were not significant. The main effect of DA was significant and positive; the main effect of DIS was significant and negative. The results indicate that the effects of DA and DIS on positive events differ, and the effects do not depend on the frequency of negative events.
著者
黒田 祐二 桜井 茂男
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.86-95, 2003
被引用文献数
6

本研究は, 友人関係場面における目標志向性と抑うつとの関係に介在するメカニズムを明らかにすることを目的として行われた。両者に介在するメカニズムとしては, Dykman (1998) により提唱されたディストレス生成モデル (目標志向性が対人行動を通してネガティブな出来事を促進 (ないし抑制) し, その結果抑うつが促進 (ないし抑制) される) に加えて, 新たにユーストレス生成モデル (目標志向性が対人行動を通してポジティブな出来事を促進 (ないし抑制) し, その結果抑うっが抑制 (ないし促進) される) を提唱し, この2つのモデルを検討した。重回帰分析による結果から, 3つの目標と抑うつとの関係はいずれもユーストレス生成モデルで説明できることが示された。すなわち,(1) 「経験・成長目標→関係構築・維持行動及び向社会的行動→ポジティブな出来事の発生→非抑うつ」,(2)「評価一接近目標→関係構築・維持行動→ポジティブな出来事の発生→非抑うつ」,(3)「評価一回避目標→関係構築・維持行動の不足→ポジティブな出来事の非発生→ 抑うつ」,という結果が示された。本研究の関連する既存の研究領域及び教育的介入に対する示唆が論じられた。
著者
黒田 祐二 桜井 茂男
出版者
筑波大学
雑誌
筑波大学心理学研究 (ISSN:09158952)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.129-138, 2001

In recent years, research into childhood depression has continued to increase. This research has focused on the cognitive factors and behavioral factors for intra-personal vulnerability to childhood depression, and ...
著者
黒田 祐二 有年 恵一 桜井 茂男
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.24-32, 2004-03

本研究の目的は,大学生の親友関係における関係性高揚と精神的健康との関係について検討すること,及び,その関係に相互協調的-相互独立的自己観が及ぼす影響について検討することであった。結果から,日本の大学生において,自分たちの親友関係を他の親友関係より良いものであると評価する「積極的関係性高揚」と,悪くはないと評価する「消極的関係性高揚」は,相対的幸福感・自尊感情・充実感と正の関係を示し,抑うつと負の関係を示すことが見出された。さらに,この関係性高揚と精神的健康との関係は,相互協調的自己観ないし相互独立的自己観が自己に内在化されている程度によって異なることが示された。すなわち,相互協調的自己観の低い者より高い者において,そして,相互独立的自己観の高い者より低い者において,関係性高揚(積極的関係性高揚及び消極的関係性高揚)と精神的健康との関係が強くなることが示された。The purpose of the present study was (1) to investigate relations between the enhancement of close friendship and the mental health of Japanese college students, and (2) to examine whether that relationship varied with the students' scores on interdependent-independent construal of the self. The results were as follows (1) "Active enhancement", in which participants evaluated their close friendship as better than others and "passive enhancement" in which participants evaluated their close friendship as not worse than others', were positively correlated with subjective happiness, self-esteem, and fulfillment sentiment, and negatively correlated with depression. (2) Correlations were stronger for participants who scored high on interdependent construal of the self than for those who scored low on that measure. Similarly, correlations were stronger for participants whose scores were low on independent construal of the self than for those whose scores were high.